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2017/07/18

短編 目録

2017/03/15

魂の残り香5(完)

王都近郊の花畑、見渡す限りの花の絨毯を明るい日差しが見守り、緩い風が時折髪を揺らす。

「こんなところに連れてきて、どういうつもりなんじゃ?」

車椅子に乗ったリンドン伯爵を俺はここに連れてきた。車椅子を押すのは老執事だ。その他の護衛には馬車の近くで待ってもらっている。

「これであちらをご覧ください」

俺は望遠鏡をリンドン伯爵に渡した。

「ふむ」

ここからは2つの黒い点にしか見えないが、そちらに望遠鏡を向けた

「こっ、これはっ、まさかっ」

小さく呟いたリンドン伯爵はそれ以降何も言わなくなり、ただひたすら望遠鏡を覗き続けた。

「ふう…」

どれほどの時間そうしていただろうか。望遠鏡を目から外して執事に渡すと、老貴族は車椅子に深く座りなおした。

「これが答えです」

「どういうことなのか、説明してくれるかね?」

リンドン伯爵の俺に対する敵意は消えていた。

「ええ。俺は貴方に呼び出される一週間ほど前にトウェイン男爵から呼び出されておりました」


◇◇◇


「私が殺したのだ」

トウェインはどうやら自嘲しようとしているようだったが、それはうまくいかず、僅かに唇の端が震えただけだった。

「殺した、というのは物騒な話ですね」

「ああ、だが、私がリィサを殺したようなものだ…」

トウェインは懐かしむように目を閉じた。

「リィサは花の好きな女だった。そう、あれは、私達が結婚し、リィサが初めて私の領地に来たばかりの事だった」

そこまで言ってトウェイン男爵の顔が僅かに歪む。

「…あの日、俺は突然湧き出た領内の魔物を討伐せんと戦い、追い詰めていた。部下の中からはもう十分倒したから帰還する案も出ていた。だが、当時男爵位を得て結婚したばかりの俺は血気盛んだった。そしてその上に、新しく領主となった自分を領民に認めてもらいたいという思いで一杯だった。俺の城で留守番をしていたリィサの事が気にならなかったわけではないが、はっきり言ってしまえば魔物の討伐に比べればリィサの事など些事だと考えていたのだ」

頭を一度振ってさらに続ける。

「だが、リィサは俺の帰還が遅れたことを心配し、わずかな供を連れて花を摘みに森の奥にある沼地へと足を踏み入れた。そこには幸運を呼ぶと言われている花が生えていたからだった。そしてリーパーに襲われた」

「…なるほど」

リーパーは有り体に言えば触手型の魔物で、女性は襲われると種付けされることもある。しかし、近づかなければ襲われることもなく、その体液は薬にもなるため討伐されずに残されることも多い。

「魔物が魔物なだけに、襲われた事実を隠すものも多い。彼女も隠そうとした。だが、そもそも隠し通せるものではない。さらに不運なことに、彼女は種付けされていたのだ。…当然全て私の知ることとなり、彼女はそれら一連のショックで心を病んでしまったのだ」

なるほど。俺は頷く。

「私にできたことと言えば、彼女がリーパーに襲われた事実を一切隠すこと。それくらいだった」

トウェイン男爵は脱け殻となった妻の頬に手を添える。心を病んだ状態では人に会わせることもできなかったのだろう。それに、根も葉もない噂にしても間違った噂なら歓迎ということか。

「では、私の人形は」

「レナード殿の人形は私のいない間の看病と、リィサが寂しくないように話相手をするために購入した。素晴らしい仕事をしてくれたよ」

ふう、とここまで話してトウェイン男爵は息を吐いた。

「私は近々戦争に行くことになった。相手は帝国、おそらくは死ぬだろう。だが、リィサのいないこの世界で俺は生きていくつもりはない」

死を前にしているとは思えないほど男爵の表情は穏やかだった。

「そこでだ。最後に頼みたい仕事は彼女の、リィサの魂の入った人形なのだ」

「さすがにそれは…」

俺もさすがにそこまで手の内を曝け出す訳にはいかない。だが、トウェインは床に膝まずいて俺に頭を下げた。

「頼む。この通りだ。君の仕事はこれまで見てきたが完璧だった。そう、本当に魂の入った人形だった。頼む、ほんの一日でも良い。彼女を最後に花畑に連れていってやりたい。これが私の最後の願いなのだ。死にゆくものの願いをどうか、頼む」


◇◇◇


「お嬢様…トウェイン様…」

望遠鏡を下ろした老執事の目にも涙が浮かんでいた。

「トウェインは病気の感染を防ぐために、と言って私に娘の亡骸を見せることも拒みおった。それにワシとて世間の噂も耳にする。本当に病気だったのか、時間が経てば経つほどにそれすら分からなくなっておった。その上、先日、ワシも長くはないことが発覚したのじゃ。ワシは奴になんとか復讐しようと…」

「ええ、私も彼の噂については少々調べさせてもらいました。私の人形達もたくさん購入されていましたからね。だが、それは違った」

老貴族は頷く。

「分かっておる。いや、今分かった。あの子のあれほど幸せそうな顔を見れば、噂が間違いだったことくらい誰にでもわかる」

「どうされますか?あの男を殺すために彼女を準備しようとされたのでしょう?きちんとナイフはつけてありますよ」

老貴族はなにも言わず首を振るだけだった。

「じゃが…」

老貴族は絞り出すように言った。

「あやつはもうすぐ戦場へ行く。…ワシがそれを仕組んだんじゃ」

「ええ。厳しい戦いになると聞いています。彼の命は尽きるでしょう」

俺は煙草を取り出して火をつける。

「くっ、こんなことなら戦場になど行かせず…そうじゃ…今からでも遅くない。ワシが命を懸けてもう一度陛下に陳情すれば…」

老貴族の言葉を俺は遮った。

「お待ちください。お嬢様の魂は残り1日ほどで消えます」

「なんじゃと?」

「よろしいですか?人が死ぬ。すると、魂はこの世界に溶けていきます。私たちを包む水、森、光、風、森羅万象の中に彼女達は溶け込むのです。人形の中にある彼女の魂はそのほんの残り香にすぎません」

「で、では…」

「トウェイン男爵はもちろんご存じです。そして、その上で王命を受け入れたのです」

老貴族の顔がくしゃくしゃになった。

「くっ、そんなことが…うっ…うっ…」

のどかな花畑に場違いな老貴族の嗚咽が響く。

その時、不意に一陣の風が花畑を駆けめぐった。

それはまるで魂達が生者を慰めるような優しい風だった。

俺は二人にも届くことを祈りながら風に溶ける煙を見つめていた。
2017/03/15

魂の残り香4

「知りたいことはリンドン伯爵令嬢の噂とトウェインの出征の経緯、この二つだったな?」

散々自分の弱味を見せてしまった男は女の顔を見ずに封筒を投げた。

「ありがとう。さすが、早いわね」

女はそんな男の顔を楽しそうに見つめる。

「ふん、詳しくはその資料を読め。それから…」

「くれぐれも資料は人目につかないように、でしょ?」

「そうだ。俺はすぐに出る。お前もくれぐれも人目につかないように出てくれよ」

気配を消して男は裏口から出ていった。

「ふふ、結構溜まったわね」

女も笑うとその場から煙のように消えた。


◇◇◇


俺は煙を口から吐いた。

読んでいるのは盗賊ギルドから流出した資料だ。

「ふむ」

リンドン伯爵令嬢は数年前に死んだことになっている。

俺はさらに目を通した。これは国への提出書類の写しだ。

名前:リィサ=トウェイン
死因:病死
病名:ネクロム病
感染場所:トウェイン男爵領
経緯:トウェイン男爵領、森にて魔物に襲われ感染

ネクロム病と言えば、アンデッドに襲われた際に罹患する病だ。

だが、なぜ男爵の妻がそのような危険な森にいたのか、そこまでの背景は書かれてはいなかった。

続いて二人についての噂が綴られている。

様々な噂があるが、纏めてみると、トウェイン男爵がリィサを捨てるために画策した、というものと、リィサが望まぬ結婚に耐えられず自ら死を望んだ、という話が大筋のようだった。これは男爵よりも格上の伯爵令嬢を妻とすることになったトウェイン男爵への貴族達のやっかみ、さらに美しいリィサと野獣のようなトウェイン男爵の容貌から庶民が面白おかしく流した噂なのだろう。

とは言え、これはトウェイン男爵の目論見通りになっていた。

さて、次にトウェイン男爵出征の経緯に俺は目を通す。

トウェイン男爵は戦争に行くと言っていた。もちろん王命により出征するというのは分かる。

だが、資料でもトウェイン男爵は最前線に名前が書かれていた。

普通最前線に行くのは平貴族や、その土地の豪族、騎士などが一般的で、そういう意味でもその土地の者ではないトウェイン男爵が一番最前線に行くのはおかしい。

誰かが動いたはず。

その時、御前会議の出席者の中に見知った名前があることに気がついた。

『リンドン伯爵』

なぜリンドン伯爵が出てくるのか。軍の要職に就いていたのだろうか。

読み進めるうちに俺は理解した。どうやら現在の軍務卿はリンドン伯爵の姉の嫁ぎ先だったらしい。

そのため、リンドン伯爵は王も出席する重要会議に顔を出すことが許された。

そこで何があったのか。答えは簡単だ。



◇◇◇


それから数日後、リンドン伯爵との約束の日になった。

その日も依頼された日と同じ、気持ちのよい晴れ渡った日だった。

「レナード様がお越しになりました」

再び俺はベッドのある部屋に案内される。

「ゴホッ、ゴホッ、すまぬな、レナード殿」

「いえ」

「…依頼の品はどこにあるんじゃ?」

「すみません、ここには用意しておりません」

俺の答えから一瞬間をあけて怒鳴り声が寝室に響いた。シンと静まり返っているだけにその声は屋敷の空気を震わせる。

「貴様っ、約束を違えるというのかっ。それがどういうことか分かっておるのかっ」

病床の老人とは思えない覇気のある声だ。さすがは伯爵と言ったところか。

だが、この程度のことは全く臆するようなことではない。俺はしっかりと老貴族の目を見つめて答えた。

「伯爵、『ここには』と俺は言ったんです」

「何をっ、ゴホッ、ゴホッ」

すっ、と執事が水差しを伯爵に手渡し、背中をさする。

「ほら、今日は天気も良いし暖かい。少し外に出ませんか?」

「む…ゴホ…ゴホ…」

俺の言葉に返事をしたのはこれまで一言も口を出さなかった執事の方だった。

「レナード様、旦那様は病の身。お医者様からも外出は避けるようにと言われておりますので」

なぜだかその時、トウェイン男爵とリィサの顔がちらついて、俺の中に嫌な気持ちが膨らんだ。少々人間と一緒に居すぎて毒されてしまったのだろうか。俺は盛大にため息をついて吐き捨てるように言った。

「見たところほっといたってあと数ヵ月の命だろう?それが二、三日縮んだところで変わりはしないさ。行かないと死ぬ前に後悔することになるぜ」

「なっ、…旦那様を愚弄するかっ」

当然老執事が目を見開いたが、そんな老執事を抑えたのは意外にも伯爵だった。

「いいだろう、レナード殿。ただし、それに見合ったものがなければお主の首はないぞ?」

俺はニッコリと笑う。

「必ずやご満足されるでしょう」
2017/03/14

魂の残り香3

この国の中央であり最重要都市、王都。
だが、だからといって人々の生活は他の街と比べて何ら変わるところはない。

もちろん歓楽街もその一つ。夜になれば酒場は冒険者や商人、その他、様々な人達で賑わう。だが、その中の一軒の店はその日特別な雰囲気に包まれていた。

レストラン兼酒場。普段30席ほどの店内には臨時で50人分の席が用意されていたが、それも全ての席が埋まって、立っている客さえいる。

「なあ、今日は一体どうしたんだい?」

普段店に来ない行商の商人が物珍しさに入ると、偶然見知った仲間がいたので訊ねた。

「お前知らないのか?」

普段から王都を拠点にしていた仲間の商人が店の奥にいる一人の女を目配せした。

美しいウエーブのかかった黒髪の女がピアノの横に立っている。肩が全て出た露出度の高いドレスは美しい体を惜しげもなく客達の目に晒していた。

「おっ、イイ女だねっ」

女は常連客や彼女のファンらしき客と談笑している。口に手をあてて笑う姿は、貴族のような上品なものではないけれど、屈託なく不思議な気品を感じさせる。

なるほど、これほどの上玉はたとえここ王都でも見たことがない。商人はこの酒場の理由が理解できた気がした。

だが、すぐに商人はその考えを改めることになるのである。

店の壁際に置かれたピアノ。その前に座っていた初老のピアニストが、鍵盤に指をかけた。すると、それまでざわめいていた店内が潮が引くように静まりかえった。

「しっ、始まるぞ」

「えっ?始まる…」

自分の声が思いのほか大きく響いて商人はキョロキョロと周りを見渡す。

「驚くのはここからだぜ」

仲間が小さく囁いた。

「ぇっ…?」

ピアノが落ち着いた伴奏を奏でる。

そして、女が歌い始めるや商人は自分の考えがいかに浅はかだったかということを思い知らされた。

「はあ…なんて…美しい…」

アルトで歌い出された一声、ただそれだけで商人は半分口を開けたまま固まった。

今夜ばかりは酒場に集う酔漢達もアルコールではなく女の歌に酔いしれる。


◇◇

酒場の奥の部屋。

ここは限られた人しか入ることが許されない特別な部屋。大きなベッドが奥に、そして、丸いテーブルと向かい合う二つの椅子。

女の歌が終わった酒場の酔っぱらい達の喧騒はこの部屋には聞こえない。完全に音を遮断した部屋なのだ。

そして、そこには先程歌っていた女と一人の男が向かい合っていた。女はドレスからマキシワンピースに着替えている。

「ごく」

苦虫を噛み潰したような表情でワインを喉に流し込む男。彼は若干16歳の時に英雄のパーティに所属して名をあげ、現在はこの街の盗賊ギルドのマスターをしている男である。

ところで、盗賊ギルドは名前だけ聞くと犯罪組織のようだが、実際には全くそのようなことはなく、むしろ逆の取り締まる側だとと言ってよい。

「それで、俺をわざわざ呼び出すということは何か聞きたいことがあるんだろう?」

また、同時に情報を集める組織でもあった。

「ふふ、焦らないで。夜は長いんだから」

椅子から立ち上がって、女が男のグラスにワインボトルを持った手を伸ばす。ノースリーブの美しい腋が男の目の前に晒された。

それだけではない。女の着ているワンピースは首もとまでしっかりとカバーしているものの、体の線がハッキリと出る。ある意味でミニスカート以上に扇情的だった。

「ふん、早く終わらせたいものだな」

ところが、男は女の姿にも全く動じる様子もなかった。また、女の方もそんな男の様子を楽しそうに見ているだけである。

「対価なら払うわよ。ふふ、それも特別なものをね♥」


◇◇◇


それから一時間後。

「うふふふ♥ほら?大きくなってるじゃない♥」

ベッドに男を押し倒した女はニッコリと微笑む。女はまた着替えていた。白のビスチェに白のパンティとガーターストッキングが褐色の肌によく映えている。

「くっ、レオノール…やめろっ」

馬乗りにされた男が悔しそうに女の名前を呼んだ。

「そんな顔をしてもダァメ♥」

女の背中からは蝙蝠のような翼が出ていて、尻からは先の尖った尾が出ている。

「ぐっ、こんな…」

「ほらぁ、好きなんでしょう?こういうの・が♥」

真っ赤な舌で形の良い唇を舐める。

「くっ」

「隠そうとしてもダァメ、だって貴方の魂に記憶が刻まれてるんだもん」

偽物のはずの女の姿に股間は熱くたぎる。

実は男は性的不能者だった。

男の初体験は精通した直後のことだった。古代のダンジョンに挑戦し、人型の魔族に無理矢理奪われた。そして、この出来事が彼の心をひどく傷つけたのだ。

もちろん英雄のパーティに選ばれてからというもの、女には不自由しなかったわけだが、男は一度も女を抱かなかった。

いや、実際には抱けなかったのだ。裸の女を目の前にしても勃つものも勃たなかったのである。

実は男は何度かこの女以外の口の固い娼婦に同様のことをさせてみたが、股間はピクリとも反応しなかった。

「ほらぁ、入るわよ、先っちょが入っちゃうわよぉ♥」

男の肉棒を摘まんで位置を合わせると女はゆっくりと腰を下ろす。

「うっ、あっ」

男は声を我慢しようとするが、あまりの快感に思わず口から呻き声が漏れた。

「あの時もこうされたんでしょ?それで、ほらぁ、見られながら射精しちゃった、そうでしょぉ?」

男の脳裏に一人の少女が思い浮かぶ。自分とパーティを組んでいた魔法使いの少女。彼の初恋の少女が震えながら犯される己を見ていた。

「くそがっ」

男は力を振り絞って女と体を入れ換えた。

ビスチェの紐を乱暴にほどいて柔らかい胸をきつく掴んだ。

「あの時とは違うっ、俺はっ」

大きく開いた足の間に腰を入れてそのまま挿入した。

「ああんっ♥もう、せっかちなんだからぁ♥」

男は少年のように腰を振った。

「あっ♥あっ♥あっ♥」

不意にこれまで魔族のようだった女が、今度はあの初恋の少女のように見えた。涙目でまるで処女のようにぎこちなく男を受け入れる。

「あんっ♥カイルぅ、わたし、わたしっ、おかしくなるよぉ♥」

「いっ、いいぞぅ、ミラッ、俺でおかしくなるんだっ」

男はその晩三度女の膣に射精した。


◇◇◇◇


それは一週間ほど前のこと。その日は雲に太陽が隠され、肌寒い日だった。

俺は早急に来るよう呼び出されてトウェイン男爵の家に向かった。

これまでも何度か来たことがあるトウェイン男爵の屋敷は石造りの要塞のような建物だ。これは貴族が贅を凝らした屋敷をたてるのに対して異色とも言える。

その分警備のために兵も少なくある意味では質実剛健とも言えるかもしれない。

屋敷の前に立つ二人の兵が俺に気づいて頭を下げた。

「レナード様が来られましたら入っていただけ、とのことです」

執事もいないため、勝手に石造りの廊下を歩き、俺は執務室に向かう。

「入ってくれ」

トウェイン男爵は大男だ。俺が180そこそこに対して見上げるほどなので優に二メートルはあるのではないだろうか。さらに筋肉と脂肪に覆われた体は左右にも大きく、さながら小山のように感じる。

その男爵が体を机に縮めて山のように積まれた書類を処理していた。

「この書類を終わらせないといけないので少しそこで待っていてほしい」

男爵は仕事を溜めるタイプには見えないのだが。

「すまぬな」

しばらくして漸く顔を上げた。

「今日来てもらったのは、人形を処分してもらうためだ」

「ほう」

確かに俺の店の青年も言っていた通り、トウェイン男爵はこれまでに何体もの俺の人形を購入している上得意様だ。

トウェイン男爵は俺から最高級の人形を買う。男爵クラスでは決して安くない買い物のはずだ。

だが、その人形達はその後一切どうなったのかこれまで分からなかった。メンテナンスにも呼ばれることはなかったので、使い捨てられていると思っていたのだが。

「壊れた、ということですか?」

「いや、そういうわけではない。戦争に行くことになったので処分を任せたい。それと、新しい人形を頼みたいのだが…ああ、まずは来てくれ」

男爵は俺を連れて地下の部屋に入った。

「ふむ」

そこは地下室という暗いイメージとは全く異なる花の香りに満ちた室内。その中央にある天涯つきのベッドに一人の女が眠るように横たわっていた。

「…こちらは?」

「私の妻だ…」

ウェイン男爵の言葉は過去形だったが、確かにこの女には生命が感じられない。だが、死んでからまだほとんど日は経っていないようだ。

「病気か何かですか?」

「私が殺したのだ」
2017/03/14

魂の残り香2

さて、俺が馬車を降りたのは王城の城下町、王都の目抜通りだ。

『人形工房レオナール』

これが俺の店の名前だ。

「む」

店に入ろうとしたところ、一陣の風が吹いた。石畳の埃が舞い、一枚の紙が俺の方に向かって飛んできた。

俺はそちらを向くこともなくそれを掴むと、店の扉を開けた。

『カランカラーン』

まず、店の一階は展示スペースとなっている。

「いらっしゃいませ…って、なんだ、ご主人様か」

丸いテーブルで珈琲を飲んでいた青年が立ち上がりかけて、俺だと分かって座り直す。

身長は180ぐらい、髪は黒髪に癖毛、浅黒い肌で三つ揃いのスーツを完璧に着こなしている。

「客は?」

「リンドン伯爵とゲイルート商会が来たよ。全く、人間っていうのは業が深いよね」

「お前に業なんて言葉が分かるのか?」

ふふん、と自信満々に笑って青年が新聞を読み始めた。

「おい…、新聞が逆さまだぞ。読めもしないのに格好だけは一丁前だな」

「そういえばさ、こないだトウェイン男爵のとこに行ってたじゃん。ねえ、トウェイン男爵って確かきれいな奥さんを殺したガチ変態だって噂だよね。どうしてあんな、社会不適合者に売るのさ」

完全に無視しやがった。

「大切なことは金を払うか払わないかだ。文句言ってないで契約書をよこせ」

俺はそれでもグチグチと不満を口にする青年から売買契約書を受け取って、部屋の奥に向かった。





部屋の奥、さらに階段を下った先の金属製の扉を開けると、様々な器具の並ぶ地下室がある。ここが俺の工房であり秘密の部屋だ。

煙草に火をつけると、最上級のソファに寝転がって俺は契約書を確認する。

ゲイルート商会からは新たな人形を五体と書かれている。

ここは俺のお得意様であり向こうも俺無しには成功しなかったという点で持ちつ持たれつの関係だ。

ゲイルートの売っているものは春だ。もっとはっきり言えば娼館の経営でのしあがってきた新興の奴隷商人だ。

五体というまとまった数からしておそらく新しい店舗を出すのだろう。

ゲイルートのところには最初に挨拶がてら行くか、と今日の予定を考えつつ二枚目に移る。

リンドン伯爵も魔導人形を一体と書いてあるのだが…。

「リンドン伯爵…、リンドン…」

名前を呟いてみるが、顔が全く思い出せない。これまで顧客でなかったのは確かだが、夜会などでも見たことはなさそうだ。

まあどうせ俺に頼んでくる貴族など、大半は変態ばかりだ。

「とりあえず、行くか」

俺は考えるのをやめて立ち上がった。


◇◇


目抜き通りを一本奥に入った通称奴隷通り。

文字通り、奴隷を売買する店から始まり、娼館や柄の悪い呑み屋など、真っ当ではない店が軒を連ねる。

夜になれば客引きや酔漢などでごった返す通りも、この時間は気だるい雰囲気で眠っているように感じた。

空いている店は少ないが、その中の一つに俺は用があった。

ゲイルート商会の王都店。見た目には、ヤクザな店には見えない。だが、今やここは王都でも有数の奴隷を売買する商会なのだ。

俺が近づくと何も言わずとも黒服の男が扉を開けた。

店内は二階まで吹き抜けで、天窓が開いており明るく風通しもよい。

まだ昼下がりなので俺の他に客はいなかった。

「ややっ、レナード様っ」

俺がカウンターの紳士に名前を告げると、間もなくすばしっこいネズミを思わせる小柄な男が店の奥から出てきた。

「先程はお忙しいところをすみませんでした。わざわざ来てくださったのですか?」

奴隷の売買や娼館を取りしきる商会の主人とは思えない、この丁寧な口調の男がゲイルートだった。

「ああ。5体ってのが気になってな。新しく支店でも出すのか?」

すると男の眼鏡がキラリと光った。

「ええ、ここでは何ですから中へどうぞ」

奥の事務所に入ると、高級な革のソファに座るよう促され、座るや否や、ゲイルートから港湾都市に新店舗を出す計画を聞かされた。

「なぜ今更そんな街に作るんだ?」

ゲイルートの口から出た街の名前はかつて栄えた港湾都市だったが、今は陸路が整備されて活気はほとんどなくなっている。

「クフフ、ここだけの話なんですがね、近いうちに陸路の向こうで戦争が始まるそうで。そうすれば再び活気が戻るのです」

「なるほど」

「商人は商人の情報網があるのですよ」

新店舗の説明を受けた俺は、そのまま打ち合わせを始めた。

「五体の内訳は女2少年1それに黒服2でお願いします」

女と少年は客の相手をするため。黒服とは店の用心棒のことだ。

「港湾都市なものですから荒っぽい水夫も多いんで」

女は綺麗系の熟女と清楚な少女。これはなかなか見つからないらしく、何度も依頼されている。また、少年も一定数客が見込め、特に今回は客層が水夫ということで、1人欲しいらしい。水夫の中には長い航海でそっちに目覚めるものも多いからだ。

そして黒服もいつも通り。酔っ払った客はもとより、娼館という仕事の性質上、その縄張り(シマ)を牛耳るマフィアとは切っても切れない関係がある。

もちろんショバ代は払うが、足元を見られないために強力な黒服が必要なのだ。

「だが、奴隷を買えばそっちの方が安上がりなんじゃないのか?」

実際俺の人形はメンテナンスにも金がかかる。高い金を出して買った上にランニングコストもバカにはならない額だ。

「魂ですよ」

ゲイルートは当たり前のようにそう言った。

「はあ?」

「人の魂にはそれぞれ特徴があります。綺麗な真ん丸なもの、歪なもの、芳しい香りを放つものもあれば、ドブ鼠のような悪臭のある者もいます。レナードさんの人形には臭いがない。だからこそ万人に受け入れられるのです」

俺はゲイルートを見つめた。

「何ですか?私はその気はないですよ」

「ふははっ、いや、見直していたんだ。やはり若くして商会をこれだけ立派にする人間は違うな。よし、分かった。月末までに用意しよう」

俺は何度も礼を言うゲイルートに見送られ、次の依頼人のもとに向かう。


◇◇◇


さて、今日の最後の仕事だ。

リンドン伯爵邸は貴族街の一角にあった。一目見て古く歴史ある建物であることがわかる。

衛兵に会釈をして、門をくぐると広い庭を玄関に向かった。

そして、オークで出来た重厚な扉の前まで来たところで、俺はふと立ち止まって歩いてきた庭を見渡した。

貴族の屋敷の名に恥じない庭園ではあるがどこか違和感を感じる。

「む…?」

だが、考えても仕方の無いこと。

俺は玄関のノブの輪っかを二度叩いて待つ。

「レオナール人形工房のレナードと申します」

静かに扉が開いて現れた年老いた執事に名乗ると、事前にアポをとってあったため、待たされることもなく主人の部屋に案内された。

「レナード様が参られました」

「うむ。入ってもらえ」

俺が部屋に入ると執事も入って扉を閉めた。

「レナード殿、このような姿ですまぬな」

部屋はカーテンが閉まっていて外の明るさとは対照的に声の主の表情も見えなかった。

「構いませんよ。ところで、私をお呼びになったのは?」

これまでの客の中には病床の老人でも若い娘をはべらしていた者もいた。しかし、この老貴族はそういった連中とは異なるようだ。

「1つ作ってもらいたいものがあるのだ」

リンドン伯爵は説明を始めた。

「ワシの作ってもらいたいものは娘の姿をした人形なのだ。それも、まるで本物の人間のようなものを」

「なるほど」

俺は老貴族を観察する。特に娘をどうこうしたい、というような変態には見えない。

おそらくは家族の人形を作って慰めを得ようとでも考えているのだろう。

これは外れだったか、と俺は心の中でため息をついた。だが、そのとき、思いがけない言葉が老人の口から出た。

「それに、娘にはナイフを一本隠し持たせたいのだ」

「ほう?」

面白い。俄然興味が湧く。

「出来るかね?」

「もちろん出来ますよ」

俺は内心を悟られるような馬鹿ではない。目をそらすことなく真摯に頷いた。

「ええ、そうですね。期限は?」

「二週間で頼みたい」

「分かりました」

「では娘の資料をお渡ししよう」

老執事が主人から封筒を受け取り俺に渡す。

「それではさっそく取りかかりましょう」

外に出て、俺はこの屋敷に入るときに感じた違和感の正体に気がついた。花のあるべきところに花がない。

いや、恐らくはかつてはあったのだろう。その残り香のせいで違和感があるのだ。

俺はリンドン伯爵の用意した馬車で帰る道中、封筒を開いた。そして、ふとその中の一枚の写真を見て目を細めた。

「ほう、これは…」
2017/03/14

魂の残り香1

最初は蔦か何かだと思った。

だけど、ワンピースの内側に入ってきた時、ようやく私にもそれが何であるか理解できた。

「いっ、いやっ」

蔦だと思っていたものが私の足に絡みついた。その瞬間、顔から血の気が引く。

「あっ、ゃっ、いやああっ…」

叫び声をあげるよりも早く私の体は沼に向かって引きずりこまれた。

「お嬢様っ、くそっ、リーパーかっ」

一緒にいたのは結婚するにあたり実家から共に来てくれた侍女達と護衛の騎士が二人だけ。

「お嬢様ぁっ」

この声はミクル、彼女は自分の身を省みず沼に入ってきて私の体にまとわりつく触手を剥がそうとしてくれる。

だけど、私の目にはそんな彼女の横から近づく別の触手が映っていた。

「だめっ、ミクルっ、逃げ」

「きゃっ」

ミクルの腕に触手が絡みついた。

「お嬢様ぁっ」

徐々に体から力が抜ける。これがリーパーの体液の効果だろうか。

私の頭に浮かぶのは愛しい旦那様。

「ごめん…なさい…」

魔物に妻を汚された貴族など末代の恥。舌を噛み切れるなら今すぐ噛み切りたい。

だけど、そんなことすら出来ない無力な私はただ下着が破られ、太くヌメヌメとしたモノが胎内に入ってくるのを感じて意識を失った。


◆◆◆◆◆


開いた窓から入ってくる朝の気持ちのよい風に髪が揺れて目が覚めた。

「ふぅ…」

俺は一度大きく伸びをしてから、ダブルベッドに腰かけて煙草に火をつけた。

さて。

一枚の紙が枕元に落ちている。

『仕事抜きで最高だったわ。また指名してね』

俺は煙を吐いて、昨夜の女を思い出した。流石に高級な店だけあって容姿もスタイルも、それにもちろんテクニックも申し分なかった。

だが、その上で快楽に負けず客の要望に応える、その点こそが高級娼婦の良いところだ。ここでいう要望というのは朝にはきちんと帰ること。これこそが最も重要な点だ。安い娼婦ではこうはいかない。

これまで安い娼婦を買った結果、娼婦がなかなか帰らないことが何度もあった。俺はそんな経験からプロ意識の高い高級な娼婦を買うようにしている。

「さて…」

俺は吸い終わった煙草を灰皿で揉み消すとシャワールームに入った。





流石にもう早朝とは言えない時間ということもあって石畳の道を馬車や人が行き交っている。

宿の前で捕まえた馬車が停まったのは、王城の前だった。

衛兵に声をかけて俺は王城に入る。

そして、いつものことだが、まずは兵士の詰所に向かった。

「おや?レナードじゃないか、今日こそは私と手合わせしてくれるのか?」

詰所に入ったところで、いきなり話しかけられた。男のような口調で気安く話しかけてきたのがイザベラ、貴族の出で女の身ながら騎士団長までなった女傑だ。

「夜の手合わせならいつでも」

軽口を叩くと周囲の男達がギョッとしたように俺の方を見る。

「ふふ、それは私に勝ったらな」

そうイザベラが答えるのを聞いて兵達から安堵の息が漏れた。

イザベラに言い寄った男は数知れず。だが、この国でも一、二を争う剣の名手に勝てるものなどいないことは明らかで、なおかつイザベラは自分よりも強い男にしか興味はないと普段から吹聴しているのだ。

「もったいないことだな」

俺はぼそっと呟きつつ周囲を見渡した。数人の兵士がチラチラとイザベラを見ている。が、それも当然だろう。年齢は20歳そこそこ、凛とした容姿はこの国の兵達の間で王女と人気を二分しているそうだ。
それだけでなく、今は鎧を着ていないため、体にフィットした薄いインナーしか着ていない。

ピチピチのTシャツとスパッツ越しに女らしいスタイルが見てとれる。

「おっと、まずは仕事をするか」

俺は名残惜しいが、詰所で名前を書くと仕事場に向かった。


◇◇

「うくっ、んっ、あっ♥」

地下の部屋の中に呻き声が響いている。

「どうしたんだ、もうギブアップか?」

「くっ、あっ、ギブアップ…など…んっ♥ああっ」

クリトリスを舌先でつつくと思った通りに反応する。

「さっきまで、『くっ、…やるなら早くやれっ』とか言ってたのは誰だろうな?」

「そ…それ、んひゃあ♥」

「はあ、騎士団長がこんなんだとは、兵や騎士が知ったらどう思うだろうねえ」

「レナードだけぇ♥私がこんなことするのレナードの前だけだもんっ♥」

この地下室は俺の仕事場だ。そして、仕事を終えた俺の前にイザベラが再び現れたのだった。

「まさかドアの前でずっと待っていたとはな。道理で毎回仕事終わりの言いタイミングで来ると思ってたよ」

「だってぇ♥待ちきれなくってぇ♥」

スパッツを膝まで下ろした不自由な状態で尻を突きだしてくねらせる。

「ねっ、レナードぉ、もぉ我慢できないの♥ねっ、お願い?」

はいはい、そう言って俺はグチョグチョに濡れた騎士団長のオマンコに後ろからチンコを突っ込むのだった。

「ああっ、おっきぃ♥」

普段から鍛錬を怠らない体は俺の分身をきつく締め上げる。並みの男ならそう長くは持たないだろう。だが、相手は残念ながら俺だ。

「この締めつけも王国一だなっ」

「あんんっ♥」

褒められて膣が複雑に締めつけてくる。

「ねっ?気持ちいい?イザベラのオマンコ気持ちいいの?」

返事の代わりに一度グリグリっと膣奥に押しつけてやる。

「やっ、あっ、あっ、あっ、あああああっ♥」

体を仰け反らせてイザベラが達した。

「イッくぅぅぅ♥」

俺の精液を搾り取ろうと膣内がさらにきつく締まった。


◇◇◇


「今度来るときは本気で訓練しよう」

イザベラが王城の大門の前でそう言いながら握手を求めてきた。

「ああ」

さっきまでの蕩けた顔を微塵も出さないところは毎度感心させられる。

「じゃあな、また来てくれよ」

(ん?)

握手を終えるとイザベラは颯爽と王城に戻っていった。

俺も王城をあとにする。

ちょうど馬車が通りがかったので停めると御者に自宅の住所を告げた。

「ふう」

落ち着いたところで先程握手をした際に渡された紙を広げる。

『イザベラはあなたをお慕いしています。いつでも待っています』

可愛らしいところがあるじゃないか。俺はほくそ笑んで煙草に火をつけた。
2015/12/25

弟がサンタにもらったのは姉(俺)!?③(完結)

「あのね…悟志くんのお姉ちゃんが治してくれるんだけど」

(また姉ちゃんか…)

嫌な予感がする。だが、拓海の言葉に引っ掛かる。

(…ん?治す?医者か…?)

「なあ、その悟志くんのお姉ちゃんは何歳だ?何をしてる人なんだ?」

「え…、大学生…って言ってたよ?」

(大学生?医学部か?いや、待てよ。だとしても学生が治療するか?)

「それで、お前、どっか体おかしいのか?」

「…あのね、見ても笑わないでね…?」

「ああ、笑わない」

(笑う?)

不思議に思った俺の気持ちを察知したのか拓海が説明する。

「あのね、学校でみんなに笑われたんだ。それを悟志くんが家でお姉ちゃんに言っちゃったんだよ」

「学校で笑われるって、お前まさか虐められてんのか?」

拓海が慌てて首を振った。

「ううん、そんなんじゃないよ」

「?」

(一体何の話なんだ?)

拓海がズボンとパンツを脱ぎ始めた。

「ちょっ、お前、いきなり何をっ」

そんな俺の前に拓海のギンギンに勃起したチンコが現れた。まだ皮を被っているが…。

(なんだ…と、このサイズ…男の俺と同じか…いや…)

負けているとは思いたくはない。だが、顔に似合わないサイズに目が点になる。

「こんなだからみんなに笑われちゃって…」

(…当たり前だ…こんな奴クラスにいたら笑うに決まってるぜ)

「そしたら悟志くんのお姉ちゃんが治してくれるって言って…」

「ゴクリ…ちなみにどうやって…」

「他の人には言っちゃダメだって言われてるんだけど…お姉ちゃんなら良いよね?」

「ああ、大丈夫だから安心して言ってみな」

もはや嫌な予感しかしない。

「えっと…悟志くんのお姉ちゃんは僕のオチンチンを舐めたり擦ったり…」

「分かった、もういい」

俺は拓海の言葉を途中で遮った。

(悟志の姉ちゃんめ…なんつー変態だよ)

気持ちが重くなる。

「お姉ちゃん、お願い」

拓海が上目遣いに俺を見る。

(これをしないと戻れないのか…)

目の前でピンク色のチンコがピクピクと震えていた。

(くっ、なんでこんなことに…)

俺は拒否反応を起こす体をどうにか動かし、拓海のチンコに手を伸ばす。

(一度だけ、一度だけだ…)

「うわあっ」

触れた瞬間、拓海が声をあげた。

「痛かったか?」

「ううん、お姉ちゃんの指が冷たくて驚いただけ。大丈夫だからお願いっ。僕、我慢するからっ」

(そうだ、これは治療なんだ)

治療、治療、と念じつつ再び触ろうとすると拓海が変な顔をした。

「お姉ちゃん、消毒…」

(消毒?)

「悟志くんのお姉ちゃんが口で消毒しないとバイ菌が入るって…」

(なんちゅう嘘を…マジかよ…)

あわよくば手だけで、と考えていたが仕方ない。

ベッドに寝転ぶ拓海のチンコに顔を被せる。

髪を耳にかけて、皮被りのチンコを見た。

(クソッ、こんなことに誰にも言えねえ)

間違いなく自分の黒歴史になる事を意識しつつ、口を大きく開いた。

「あっ、お姉ちゃん、あったかい」

拓海は気持ち良さそうに目を閉じるが、俺の方はそれどころじゃない。

(俺がいつも舐めさせてる女はこんな苦しかったのか…)

拓海のチンコで口が一杯になって息をするのも辛い。だが、イカせないと終わらない。

「グッ…むん…ゲェ…」

いつも女がするように首を動かそうとすると喉の奥に当たって嘔吐(えず)いてしまった。

とは言え、日々奉仕を受けているせいなのか、すぐにコツをつかんだ俺は拓海をイカせるために激しく吸いながら頭を上下に振る。

『ジュボッジュボッ、ジュボッジュボッ』

「お姉ちゃんっ、だめっ」

「むん?」

突然拓海が叫んだ声を理解する前にチンコが膨らむ。

「んんっ、グェ」

喉の奥に精液がぶつかって再び嘔吐(えず)いて俺はチンコを口から離した。

「ケホッ、ケホッ、…うえぇ」

(の、飲んじまった…)

勢いよく出た精液を飲み込んだ口の中は精液の苦い味と青臭い匂いでいっぱいになった。

「すごい…いっぱい出たよぉ…悟志くんのお姉ちゃんの時より凄い…」

(おいおい…マジかよ…?)

拓海の言葉など耳に入ってこない。俺は信じられないものを目にした。

うっとりした拓海の言葉とは裏腹に、その凶悪なモノは硬度とサイズを維持したままなのだ。

「えっ、お姉ちゃん…?うわあっ!」

(満足させるしかねえっ、それならイッた直後の今だっ)

亀頭に口を被せて舌を皮と亀頭の間に捩じ込む。苦味は増したが、俺は気にせず皮の中で回転させるように舌を動かした。

(イケっ!イッちまえっ!)

「なにこれっ、しゅごいよぉぉ!」

再び拓海の亀頭が膨らんで精液が噴射した。

「ウグッ…」

二度目の射精は覚悟していたが、それでも量は多く、口の中が一杯になった。

(うえ…顎が痛い…)

精液を今度はティッシュに吐こうと口を離した俺はゾッとする。

「ゴクン」

あまりの衝撃で、口に溜まった精液を飲み込んでしまったことすら分からなかった。

「お姉ちゃん…しゅごい…」

俺の前には皮が剥け、ますます危険な形となったチンコがそびえていた。

(底無しかよ…)

拓海のチンコはもはや怪物だ。だが、もう一度フェラチオをしようにも普段使わない顎は悲鳴をあげている。

(手でやるしかない)

片手でおさまらないサイズに成長したモンスターを両手で擦る。

『ジュブッ、ジュブッ、ジュブッ』

亀頭の先から先走り液が溢れ、両手が薄い粘液まみれになる。

「お姉ちゃん…足りないよ、お口でお願い」

(こんなヤバいもん咥えたら顎が外れちまう。…だが、このままじゃ満足させられねえ…)

その瞬間、一生女のままという言葉が頭をよぎった。

(ぐ…俺は男だっ、必ず元に戻るっ)

「お姉ちゃんっ、何するのっ?」

俺は拓海の股間に跨がってチンコを掴んだ。

「拓海…絶対にお前を満足させてやるからな」

ところが、初めての経験でチンコがうまくハマらず、何度も位置を確認した。

(クソッ)

やぶれかぶれになった俺はパーカーのファスナーを下ろして脱ぎ捨てると股間を見ながら腰を下ろす。

『チュプ』

粘膜に亀頭が当たった。

ゾワッと背中に鳥肌が立つが覚悟は決まっている。

(やるしかねえっ)

体を下ろすと亀頭が俺のマンコを押し広げた。

「くッ、うあぁぁっ」

『ジュブッ』

大きく傘を開いた亀頭が入り口を通る。

(なんだっ、なんだ、これっ)

目の前が真っ白になる。

(ダメだっ)

一度抜こうとするが、そのまま体重に従ってチンコが体をこじ開ける。

「ぁ…ぁ…ぁぁ…」

『ジュブジュブジュブ…』

そしてズンッと奥に響いた。

「んああああっ」

その瞬間、背中が意識もしていないのに反り返った。

(何だこれっ、ヤバいっ、くるっ)

意識がとびそうになって、ビクンッビクンッと体が痙攣する。

「はぁ、はぁ、はぁっ」

それから、気がつくまでどれくらい時間が経っただろう。

「お、姉ちゃん?大丈夫?」

心配そうな声にようやく俺は拓海を見た。

「ぁ…」

まだ拓海のチンコに貫かれたままで、体の中心に焼けた杭が打ち込まれたような感覚がある。

「ど…うだ…たくみ?」

俺は何もしていないが、拓海のチンコを俺のマンコが無意識に締める。

「くぅっ」

膣を通して拓海のチンコの形がダイレクトに頭に映し出された。

(ダメだっ…こんな…このままじゃ拓海のチンコの形になっちまう)

「おねえちゃんっ、これっ、すごいよぉっ。やわらかくてっ、ウネウネしてっ」

拓海が腰をそらせた。

「んあぁ、たくみっ、動いたらっ、ふぁっ、ダメだっ」

「だって、だって、がまんできないよぉ」

拓海が涙目で腰を押し付けてくる。

「あっ、ダメだっ…てぇっ」

(ヤバいっ、もっ、あっ、イクっ)

女の快感は男の何倍もあると聞いてはいたが、そんな生易しいものではなかった。

目の前に何色もの光の筋がとんで、訳がわからなくなる。

「あっ、あっ、あっ、おかしっ、おかしくなりゅっ、あっ、らめっ、たくみぃっ」

俺は人生で初めての膣内イキを味わった。

「おねえちゃんっ、おねえちゃんっ」

ところが拓海は止まらない。

「ちょっとまってぇっ、いまっあっ、らめっ、らめっ、たくみっ、いまはっ、がまんしてぇっっ」

「おねえちゃんっ、がまんできないよぉっ、でるぅっ」

(こんな状態で射精なんてぇ)

「らめっ、ぬいてっ、はやくっ、あんっ」

「また出ちゃうよぉっ」

拓海の三度目とは思えない射精に、俺は意識を失った。

◇◇◇

「…ん…」

「…ちゃん…」

「…えちゃん…」

目を開くと拓海の顔があった。

「お姉ちゃん、よかった。ありがとうっ。見てっ、ほらっ、治ったよ」

拓海は既にパンツを履いていたが、あの凶悪なモノは確かに収まったようだった。

時計を見ると既に日付が変わっていた。

(凄かったな…)

そうぼんやりと考えて、元々の目的を思い出した。

(そうだっ)

「拓海……満足したか?」

「うんっ」

満面の笑みで拓海が答える。

「よしっ、…おいっ、サンタっ、聞いてるんだろっ?」

すると『聞いておるよ、ホホホ』と頭の中に声がこだます。

「拓海を満足させたんだっ、約束通り元に戻せっ」

すると、意外な言葉が返ってきた。

『ホッホッホッ、では拓海くん、お姉ちゃんとお兄ちゃんのどっちがいい?』

拓海にもこの声は聞こえているらしくキョロキョロと周りを見ていた。

「何言ってんだ?なぜ拓海に聞くんだよっ?」

『ん?ワシは言ったはずじゃよ。男に戻るか聞くと。じゃが、和巳君に聞くとは言うとらんと思うがの』

(確かあの時…)

一気にサンタに怒りがこみ上げる。

「てっ、てめえっ、騙しやがったなっ。許さね…」

そう言いかけて、それどころじゃない事に気づく。

(そうだっ、拓海、拓海が男に戻ると言えば…)

「…拓海っ?なあ、お兄ちゃんに戻ってほしいよな?なっ?」

拓海は首をかしげて、無邪気に言った。

「僕、お姉ちゃんのままがいい」

目の前が真っ暗になった。

「おいっ、まさかっ、待って、ちょっと待ってくれよぉっ」

だが、俺の懇願は無慈悲に無視された。

『それじゃの。プレゼントは渡したぞえ』

鈴の音を鳴らしながらサンタが去っていく。

(ちょっと待てえええっ)

しゃがみこむ俺の耳に拓海の純粋な声が響いた。

「お姉ちゃん、これからもよろしくね」


【終】
2015/12/24

弟がサンタにもらったのは姉(俺)!?②

「拓海、入るぞ」

俺が扉を開くと机に向かっていた拓海が振り返った。

「……お兄ちゃん?」

「よく分かったな」

子供らしい屈託のない顔で俺を見る。女なら可愛い、と思うのかもしれないが、あいにく俺は男だ。

(我慢だ…我慢しないと)

俺をこんな姿にした原因が目の前にいると思うとぶん殴ってやりたいが、必死でこらえる。

「うん、何となく分かるよ…まさか…ほんとにお姉ちゃんになったの?」

パアッと拓海の顔が明るくなって走り寄ってきて、立ち止まった。

「どうした?」

「えっと…お兄ちゃん…怒ってない…?」

(クソ怒ってるに決まってんだろっ)

だが、堪える。

「怒ってないぞ」

「本当?」

「ああ、本当だ。拓海のためにケーキを買ってきてやったから食えよ」

拓海に近づいて、勉強机にケーキを置くと拓海が俺に抱きついてきた。

「わあいっ、お姉ちゃん」

俺は拓海の背中に手をまわしつつ数時間の辛抱だと心に言い聞かせる。

拓海は俺の体に顔を押し付ける。そして「お母さん」と呟いた。

(そうか…そういや、こいつ母親を知らないんだったな)

拓海が生まれてすぐにお袋は死んじまったんだ。俺が今の拓海の歳くらいだったが、俺は親父に似てどちらかと言うと拓海の方がお袋に似ている。

ほんの少しだが、センチメンタルな気持ちになった俺は拓海に聞いた。

「なあ、拓海はなんでお姉ちゃんが欲しかったんだ?」

「えっと…優馬くんのお姉ちゃんも悟志くんのお姉ちゃんも優しいからお兄ちゃんもお姉ちゃんになったら優しくなってくれるかなって思って…」

それを聞いて頭がくらくらした。

(こいつ…バカか?んなわけねーだろ。やっぱ男に戻った暁には一回シメねえと)

だが、戻るためにはまずは満足させないといけない。

(満足させるって言ってもなあ、何をしたら良いんだ?)

ケーキを口に運ぶ拓海に聞いてみることにした。

「なあ、その…優馬くん?のお姉ちゃんは、どう優しいんだ?」

「えっと…一緒に遊んでくれる」

(小●生と遊ぶ?一体何をして遊んでんだ?)

だが、男に戻るためにはこれからこいつと遊んでやるしかない、そう考えると頭が痛くなる。

「分かった。じゃあ今からお兄ちゃ…いや、お姉ちゃんが遊んでやる。で、優馬くんのお姉ちゃんは何をして遊んでくれるんだ?」

拓海は少し恥ずかしそうにモジモジとし始めた。

「言ってみな。今日はお姉ちゃんがしてやるからな」

それでもなかなか言わない拓海を必死に宥め透かす。

(早くしねえと終わらねえんだよ)

「…おままごと」

小さい声でポツリと言った。

「はあ?」

(おままごとってあれか?お父さん役だのお母さん役だのしてやるガキの遊び…って…女の子の遊びだろ?)

「マジで言ってんのか?」

拓海は頷く。

(まあ…仕方ないか)

「分かった、で…お姉ちゃんは何役なんだ?」

「いつも優馬くんのお姉ちゃんはお母さんで僕は赤ちゃんなんだ」

(?…普通はお父さんじゃないのか?)

「ああ、分かった。いつもやるようにしよう」

そう言うと拓海が俺をベッドに座らせて仰向けに寝る。

(?)

「これでどうするんだ?」

まさか頭を撫でて眠らせる、とかじゃないよな?

「優馬くんのお姉ちゃんは『おっぱいの時間よ』って言って、僕におっぱいを飲ませてくれるんだ」

(はあ?おっぱいってのは牛乳って意味か?)

「おっぱいを飲ませるって哺乳瓶か何かでか?」

「違うよ」

拓海の目は明らかに俺の胸を見ている。

「待て待て待て、おかしいだろ?それはなんか変だぞ。お前、マジで言ってんのか?」

それを聞いた拓海が寂しそうな顔をした。

「やっぱりお兄ちゃんじゃ遊んででくれないんだ」

「いや、そうじゃない…そうじゃない、が…クソッ、分かった、分かったから。今はお姉ちゃんだからな。やってやるよ」

(何なんだ、優馬くんの姉ちゃんってのはっ)

パーカーのチャックを下ろして胸を片方出すと、拓海の上半身を起こして抱き上げ、顔に胸を近づける。

「ひっ」

拓海の口が乳首に吸い付いた瞬間、味わったことのない電流が体を襲った。

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「あっ、ああ。大丈夫だ」

乳首からくる快感は男の時とは段違いだった。

拓海が吸うのに合わせて声が出る。

「ンッ、…んンッ」

(何だこれっ、ちょっ…うおっ)

これまでも女に乳首を攻められたことはあったが、それとは比較にならない。

さらに拓海は歯でコリコリと甘噛みする。

「あンッ」

思わず高い声が出てしまった。

「ちょっ、拓海っ、こんなことホントにしてんのか?」

(こいつ…上手すぎやしねーか?)

「んっと…優馬君のお姉ちゃんもなんだか涙目で苦しそうにしてるよ。でも、それが良いんだって」

拓海が乳首を口から出して答える。

「それで、お前、こんなことしてて楽しいか?」

すると拓海は少し恥ずかしそうに頷いた。

(母親がいないからか…?)

「お姉ちゃん、もう少し良い?」

拓海は俺の乳首に顔を寄せるとペロッと舐めた。

「んぁっ」

そして、空いた胸を手でつかむ。

「あっ、それはっ、お前っ…んんああっ」

小さな手が乳首を摘まんで引っ張った。

(くそっ、力が…抜ける…)

拓海の手の動きはまるで老練な男のそれだった。俺は気を抜けば喘いでしまいそうになるのをこらえて、拓海が満足するのを待つ。

「お姉ちゃん、おかしくなるの?」

拓海が俺の顔を見て、何かに気がついたようにそう言った。

「優馬君のお姉ちゃんも、おかしくなるんだって…それで、おかしくなりそうになったら、こうするんだよ」

拓海が片手で思い切り乳首をつねって、もう片方の乳首を先ほどまでより力を込めて噛んだ。

「んあああぁぁぁっ」

ビクンッと俺の体が反応した。

(…あああ…。優馬の姉ちゃん…拓海を仕込みやがったな)

女としての絶頂を幼い弟に味わわされるとは、俺はなんだかプライドが粉々に砕かれた気がした。

両手をベッドについて「はぁ、はぁ」と荒い息を繰り返す俺に拓海は少し心配そうに見る。

「お姉ちゃん、大丈夫?優馬君のお姉ちゃんがおかしくなる時は笑ってるんだけど…楽しくなかった?」

拓海は性については相当子供のようだ。もっとも、だから、優馬君の姉ちゃんにこんなことを教えられているのだろうが。

「だ…大丈夫…楽しかった、よ…それで、満足したか…?」

なんとかそう言った俺だが、拓海はまだ何か言いたいようだ。

「あのね…お姉ちゃん、僕の体ちょっとおかしいんだ…」

2015/12/24

弟がサンタにもらったのは姉(俺)!?①【クリスマス企画】

「クソッ」

俺の名前は佐藤和巳。年齢は二十二歳、身長は180センチを越え、鍛えた体はよくスポーツ選手と間違われる。容姿も整っているとは言いがたいが、切れ長の目と少し厚い唇がセクシーだと言われる。

決まった恋人はいない。だが、セフレは2人、皆俺より歳上の大人の女だ。

そんな俺がクリスマスに一人イルミネーションに彩られた街を歩いていたのには理由がある。セフレの一人と食事の約束していたのがドタキャンされたのだ。

(愛梨のやつ、何が「クリスマスはやっぱり彼氏と」だよ。「彼氏なんていらないっ。和巳の方がキモチイイっ」とか先週も叫んでたのは何なんだよ。理彩は理彩で…「ごめんなさい、旦那が帰ってくることになっちゃって」じゃねえよ)

仕方なく一人街を歩いていたが、カップルだらけの街はイラつくだけだった。

時間は六時半、腹が減ってきたこともあって寒さが沁みる。

(チッ、帰るか)

このままここでいても気分が悪くなるだけだ。俺はさっさと家に帰ることにした。

◇◇◇

「ガチャ」

郊外のベッドタウンにある一軒家。ここが俺の家だ。と言ってももちろん親父の家なんだが。

帰ってリビングの扉を開くと、ガキが一人洗濯物を畳んでいた。

「あっ…」

俺の顔を見て怯えた表情になった。機嫌が悪いのを察したのだろう。

このガキは拓海、俺の弟だ。母親が早くにこの世を去って、家事を手伝うよくできた弟だ。

「おいっ」

ダイニングの椅子にドカッと座って乱暴に呼ぶと、弟がこわごわ立ち上がった。

「拓海、今日の飯は?」

「ぇ…、お兄ちゃん食べてくるって…」

「ああ?親父の分があるだろうが?」

拓海がカレンダーを見る。今日から数日間出張と書かれていた。

「チッ」

俺は隣の椅子を蹴り飛ばした。拓海は青い顔で立ちすくんでうんともすんとも言わない。

弟のそんな姿はさらに俺をイラつかせる。弟は性格も顔も俺とは正反対だ。女みたいな顔に腕や脚も細く、純粋で真面目。だからか知らないがやることなすこと俺をイラつかせる。

『ガタッ』

「おっ、お兄ちゃ…」

立ち上がった俺は無言で晩飯を買いに家を出た。

◇◇◇

「はぁ…」

僕はお兄ちゃんが家を出ていくと洗濯物を片付けて二階の自分の部屋に入った。

勉強机に座って窓の外を見ると星が輝いている。

(あーあ、なんでお兄ちゃんってあんな怖いんだろ)

僕は友達の家に遊びに行ったときのことを考える。

(優馬くんとこのお姉ちゃんも悟志くんのお姉ちゃんも優しいのに)

友達はお姉ちゃんが嫌いだとか、怖いとか言うけど、うちのお兄ちゃんよりも優しいのは間違いない。

(あーあ、お兄ちゃんがお姉ちゃんなら良かったのに…)

そう思った時だった。

『拓海君が欲しいのはお姉ちゃんかい?』

突然知らない人の声がして振り返る。

(あれ?誰もいない?)

『ホッホッホ』

頭にお爺さんらしき声が響くけど、やっぱり部屋には僕しかいなかった。

「誰?どこにいるの?」

すると窓の外に、トナカイとソリに乗ったお爺さんが浮いていた。

「サンタじゃ。今日は聖なるクリスマス。毎日お父さんを手伝って偉い拓海君にプレゼントを渡しに来たんじゃよ」

「へ?でも優馬くんはサンタさんはいないって…」

サンタさんはホッホッホと笑った。

「ワシはほれ、ここにおるじゃろ?じゃが、時間があまりないのじゃ。早速じゃが拓海君にプレゼントをやろう。む………よし、これでプレゼントは渡したぞい」

僕が呆気に取られて眺めている間にトナカイの引くソリは空に消えていった。

(…夢…かな?)

◇◇◇

『ガチャ』

コンビニで弁当を買って帰ってくるとリビングに拓海の姿は無かった。テーブルには俺の服が綺麗に畳まれて置かれている。

「チッ」

こういうところがまた癇に障る。

俺はソファに座ってテレビをつけて弁当を食い始めた。

「ふう」

食い終わってビールでも飲むかと立ち上がろうとした俺はなんだか違和感を感じた。

(ん?)

だが、違和感の正体はわからない。

(気のせいか)

だが、歩こうと一歩踏み出した瞬間に足に何かが引っ掛かって立ち止まる。

『バサ』

足元を見るとズボンが落ちていた。

(チッ、ベルトが切れちまったか?ツイてないにも程があるぜ)

しかし、ズボンの腰にはベルトがきちんと巻かれている。さらに、ズボンを上げてみて気がついた。

(俺が痩せた…いや…ズボン自体がでかくなってる?…そんな馬鹿な…)

目の端に黒いものが映った。

「誰だッ」

顔を振った瞬間、また別の違和感。

(まさか…)

首の辺りに触れると髪の毛らしきものが触れた。

(俺の髪が伸びている…?)

慌てて手で髪を掴む。

(何だとっ?)

『和巳君』

「誰だッ、どこだッ?」

『ホッホッホ、さすが兄弟じゃのお。同じことを言うのお』

周りを見ても誰もいない。

「あん?さてはテメエかっ、俺に何しやがった。早く戻さねえとただじゃおかねえぞ」

『ホッホッホ、恐い恐い。ワシはサンタじゃ。拓海君のお願いでお兄ちゃんをお姉ちゃんにしたんじゃよ』

「なっ、…はあ?意味わかんねえ…クソッ、要は拓海のせいかっ、あの野郎っ」

殴ってやろうと走り出しかけた俺に頭の中に声が響く。

『おお、そうじゃった。和巳君がもしも元に戻りたければ拓海君に今考えているような事はせん方が良いぞ』

「ああっ?戻せよッ」

『戻りたければ、そうじゃなあ…日が昇るまでに拓海君を満足させられたら、その時聞いてやろう』

「満足?満足って何だよっ、おいっ」

返事はない。

「クソッ、どうなってんだ?」

とりあえず洗面所に行くと鏡を見た。

「ゲッ…嘘だろ…」

お姉ちゃんにする、ってのは冗談でもなんでもなかった。

鏡に映る俺はロングヘアの女になっていた。少しウェーブのかかったワンレングスの髪は背中まで伸びて、顔の造形自体はよく見ないと自分とは分からないが、切れ長に少し厚い唇はまさしく俺だ。自分で言うのも何だが、なかなかセクシーな顔立ちだ。

身長も縮んで160ちょいくらいか。着ていた服を脱ぐと出るとこはきっちり出たイイ体をしている。で、最も大事なアレは…想像通り、無くなっていた。

(夢…じゃないよな………ってことは…)

あの変な声の言う通りだとすると戻るためには拓海を満足させないといけない。

「チッ」

胸くそ悪いがどうしようもない。俺は拓海が畳んだ洗濯物からパーカーを着てみる。20センチほど身長が縮んだせいでワンピースのようになった。

◇◇◇

「いらっしゃいませぇ」

コンビニに入ると先ほど弁当を買いに来た時と同じ店員が暇そうにカウンターで立っていた。しかし、俺を見ると「おっ」と言う顔をして、それから俺の体を、特に太ももを凝視する。

(クソッ)

母親のいない我が家に女ものの服などあるわけもない。下着も残念なことにサイズが違い過ぎて合わない。もしかしたら拓海の下着なら着ることができるかもしれないが、あいつに借りるなんて死んでも御免だ。

そんなことをするくらいなら、ということで下着も履かず、自分のパーカーを着ているだけだが、確かに少々扇情的な格好であることは間違いない。

店員の視線を浴びながらケーキコーナーに行く。

(確かさっき来たときはこの辺に…あった)

俺は苺の乗ったショートケーキを買ってそそくさとコンビニを出た。

(なるほど、女ってのはこんな風に視線を感じるもんなんだな)

店員が胸や足、尻をチラチラと見ていたことに俺は気づいていた。電車や道ですれ違う女を見るときは注意しないといけないな、と考えつつ寒い夜道を急いで家に帰った。