14周目 9月26日(日) 午後3時00分 権田泰三

管理人ほう

14周目 9月26日(日) 午後3時00分 権田泰三

『ヴヴヴヴヴヴ』

「あれ?権田先生、携帯が鳴ってますよ」

水泳部の試合が終わって学園のバスに乗り込んでから数分、斉藤がシートに脱いだまま忘れていたジャージを指差した。

「おっと…すまんすまん、ありがとな」

さっそくチェックするとメッセージが届いていた。メッセージの送り主の男の顔を思い浮かべて、ふとバスの前の方で生徒にしたり顔で話している斉藤を見た。

(おんなじぐらいの歳のはずなんやけどな。やっぱり人生経験っちゅうのはでかいんかもしれへんな)

これから学園で撮影会が行われる。その準備が出来たという内容に思わず口許が緩む。

(コスプレもええけど、教室とかもたまらんなあ)

「…先生?権田先生」

画面を見ながら色々と妄想していると、すぐ近くに斉藤がいた。

「おおっ、さっ、斉藤先生かっ。なっなんやねん、びっくりするやんか」

「いやあ、何度も呼んだんですけど…今日は駅で解散でいいんですよね?」

今更何を言うのかと訝しみつつ斉藤の顔を見る。駅で邪魔者をおろしてワシだけが学園に戻る予定だった。

「このバスは学園に戻るんですよね?僕は一度学園に戻ってデータの整理とかしたいんで先生も駅で降りていただいて大丈夫ですよ」

(はあ?何を言い出すんやこいつはっ。そんなんあかんに決まっとるやろっ)

「いやいやいや、たまにはワシが片付けするって話やったやろ?」

「ええ、だから片付けも僕がやっときますよ」

(ちゃうやろ?あーっ、こいつ、ほんまに空気読めへんやつやな)

イラっとしつつ、だがその時、面白いことを思いついた。

「ん?せやっ」

「はい?」

「ああ、いや、ワシもちょっと用があるし一緒に帰ろか」

すぐに携帯を操作して予定の変更を伝えると、また頬が緩んでしまうのだった。


◆◆◆

14周目 9月26日(日) 午後6時00分 斉藤孝之

体育教官室。

俺はパソコンに今日の試合のデータを打ち込んでいる。今日の試合で気がついたことも打ち込んで今後の指導方針や練習メニューを考える。

(うーん、…女子は全体的に筋力が足りていないか…)

やはりウエイトも入れていくべきなのだろうか。競泳はかなりハードなスポーツだ。俺は一人ずつを思い浮かべる。
自分は男子校だったので比べようもないが、当時と比べるとスタイルや容姿の良い生徒が多い気がする。そして女子だけに指導するときには気を使う。

(変な目で見てるとか噂になったら大変だからな)

そんなことを考えていると、教官室のドアが開いた。

「おったおった」

なぜ、この男が学園に寄る必要があったのか。確か学園に戻って荷物を片付けてくれるはずだったが、実際には何もせずに先程から教官室から出ていったり戻って来たりを繰り返し、かといってどうでもいいことを言いながら帰ろうとしない。

(まさか家で一人が嫌だとか…そんな理由じゃないだろうな…)

この中年男が結婚しているなんていう話は聞いたこともないし、そんな奇特な女がいれば顔を見てみたいものだ。
もちろん学生からの評判もすこぶる悪い。女子学生からは目を合わせるのも嫌という声を聞いたこともあるほどだ。

確かに一緒にいても女子学生や女教員の姿をイヤらしい目つきで追っているし、しゃべる内容も8割は下ネタだ。水泳部の顧問というのも女子学生の水着姿を見るためではないか、と思う時がある。

それにあの体形だ。まず体育教官としてあの体はないだろうと思う。俺はジムに通ったりジョギングをしたりして普段から体を鍛えている。そんなだから、ぶっちゃけ権田を尊敬などできない。

「斉藤先生、なにぼおっとしてんねん。疲れとるんやったら帰った方がエエで」

「いえ、大丈夫です。練習メニューを考えていたもので…えっと、それでどうしたんですか?」

いつの間にか心の中で権田を罵倒していたから権田の話を全く聞いていなかった。だが、そんな俺の様子を気にした風もなく権田はニタニタと黄色い歯を剥いて笑った。

「せやせや、それやっ。こないだ校内不純異性交遊あったん覚えてるか?」

数日前の出来事だ。学生が校舎裏で性行為をしていた件だ。実際目撃した者はいないが、たまたま俺と権田の二人で見回りをしていた時に起こったのでもちろん覚えている。

「ええ、ありましたね」

俺はため息をつきそうになった。

(結局は下ネタか…)

「あれな、誰か分かったらしいで」

「えっ?」

そんな話は俺のところにはきていない。
本当に誰だったのかが特定されればその学生は停学か。だが、そんな事が学園中に広まったら男子はともかく女子の方は恥ずかしくてそのまま退学せざるを得ないかもしれない。

「いや、まだ噂やねんけどな」

気になるか?と下卑た笑みを浮かべて権田は俺の隣の席に座った。忌々しいことに権田の席は俺の隣なのだ。
それから机の引き出しを開けると黒い布を取り出してこれ見よがしに広げる。

「あっ」

(まだ持ってたのか…)

それは通報のあった校舎裏を二人で見回りしていたときに権田が見つけたショーツだ。
俺は極力そっちに目を向けないようにしつつ聞いた。

「誰なんですか?」

これは好奇心とか疚しい気持ちではない。生徒を思うが故に聞いておかなければいけないからだ。

「それがな…」

権田はちょいちょいと手招きするの顔を近づけるとショーツが嫌でも目にはいる。

「高樹美紗…らしいで」

「ええっ?」

俺は大きな声をあげた。授業こそ持っていないが、かなりの美人で有名な高樹美紗のことは俺も知っている。
髪はストレートのボブで大きな瞳に小さな鼻と唇。実を言うと俺の好みのど真ん中だった。こんなことは誰にも言えないが何度か彼女を思って一人でしたこともある。

思わず権田の手にあるショーツを見た。

「いやいや、まさかなあ、高樹がこんなパンティ履いてるとはなあ」

黒の大人びたショーツはレースで飾られていて後ろなどは透けている。きっと尻の割れ目まで見えるだろう。

(こ、これをあの高樹美紗が…)

俺は高樹美紗の姿を思い浮かべて、スカートの中身を想像してしまった。

「でもな、ワシは水泳の授業ももっとるから分かるけどな、エロい体してんねんでえ」

権田は聞いてもいないことを話し出す。

「痩せとるわりに育っとるし、水着なんか着とると胸がきつそうやもんなあ」

自分の垂れた胸をわし掴んでニタニタと笑った。
教官としてはあるまじき態度に胸くそが悪くなるのだが、同時に頭の中では高樹美紗の水着姿が浮かぶ。

「プールサイドに上がるときなんかな、尻を突きだすやろ?ほんだらハイレグが食い込んでな…ひひひ」

「こないだは平泳ぎの時に後ろから見たんやけど、足開いて割れ目の筋がな…」

いけないことだと思うのだが、権田の言葉にいちいち想像してしまう。

(あぁ…高樹…)

「斉藤先生?斉藤先生?」

「はっ、えっ?」

一瞬トリップしていて返事に詰まってしまった。

「ワシな、そろそろ帰ろう思てたんやったわ」

「えっ、ええ、お休みの日にお疲れ様でした」

「斉藤先生も無理せえへんように、はよ帰りや」

そう言って権田はさっさと帰っていった。

「さあ、もうちょっとやったら帰るか…って…」

そう言いながら、隣の席を見ると黒い布が机の上にある。

(普通こんなものを忘れて置いて帰るか?)

明日の朝イチで来た先生がこれを見つけてしまったらどうするつもりなんだ。

(そうだ、片づけておかないと…)

俺はその黒いショーツを手に取った。

(これが高樹の…)

権田はこの匂いを嗅いでいた。
俺は周りを確認する。大丈夫、誰もいない。口の中がカラカラになっていた。

唾を出して飲み込む。

「ふう…」

そしてゆっくりと顔を近づけて…

『ガチャ』

俺の動きは素早かった。急いで後ろ手に回すと振り返った。

「せや、スマンスマン、片付けんの忘れてたんがあってな」

権田がニタニタ笑っていた。俺の心臓が早鐘のように叩く。

「ストップウォッチの箱だけスマンけど、部室に片しといてくれるか?」

「え、ええ…」

どうやら俺が何をしていたか気づいていないようだ。

「ほな、スマンけど頼むわ。ワシが行ってもエエんやけど、ほれ、あそこ暗いし人もおらへんやろ?気味悪いやん?」

「はは、権田先生はお化けが苦手ですか…」

あとから考えたら、暗がりでこいつに出会う方がよっぽど気味が悪い気もするが、この時は動揺を押し隠してなんとか愛想笑いを浮かべた。

「ひひ、ほな、今度こそ帰るわ」

「はい、お疲れ様です」

ドアが閉まると俺は震える膝で椅子に座り、大きくため息をついた。

(危なかった)

もう練習メニューなど考えるような気にはなれない。

「はあ…もう帰るか…」

そういえば権田から部室に片付けるよう言われていたことを思い出して立ち上がった。

水泳部の部室は他の部と違ってプールの更衣室の隣にある。俺は非常口の緑色の淡い光の中を歩く。俺の左手はストップウォッチの箱を持ち、空いた右手にはしっかり黒い布を握っていた。

(「あそこ暗いし人もおらへんやろ?」)

権田の声が頭をよぎる。
やってはいけないことだが、股間はずっと破裂しそうなほど昂っていて抜かずには帰れそうもなかった。その点ここなら誰も来ないだろう。

冷静さを装いつつ鍵を開けて中に入る。屋内ということもあり、水泳部の部室は埃などもなくて清潔だ。
俺は逸る気持ちを抑えつつ、棚にストップウォッチの箱を片付けると、ジャージのズボンを脱ぎ捨て、それからようやく握りしめていた高樹美紗のパンティを顔に押し当てた。

(おおっ…)

頭の中には高樹美紗の姿が浮かび、部室でこんなことをしている背徳感と相まって興奮が高まる。

目を閉じると高樹美紗の姿を思い浮かべた。ストーリーは題して『誰もいない部室で愛を育む二人』だ。
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