管理人ほう

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2周目 9月21日(火) 午前8時30分 島津政信


教室に着いた俺は葛城に挨拶をする。

「おはよう、亜紀」

「おはよ…あれ…?」

(ん?なんかまずかったかな?)

「ねえ、美紗、ひょっとして熱ある?」

「え?そんな事ないよ」

「それならいいけど、なんか顔が火照ってるし、目もなんとなく潤んでいるみたいだから…」

「だっ、大丈夫…」

(そういえばちょっと暑いかも…朝の痴漢のせいかな?)

授業が始まってからも体、特に下腹部が気だるいような気がする。

(どうしちゃったんだろう俺の体。高樹に相談したいけど…なんて言えばいいんだ。まさか痴漢されて体の調子がおかしい…なんて言えないし)

昼休みになって俺は一人で昼ごはんを食べ終えた。

(高樹って葛城以外に友達いないんかな?まあ良いか。下手に勘ぐられても困るし…)

友達と喋っていた高樹が立ち上がった。友達に一言二言声をかけて教室の扉に向かう。

俺の横を通る時に目が合った。

(これはついて来いってことだな)

俺もさりげなく立ち上がって廊下に出る。

どんどん歩いていく高樹の後をついて行くと人気のない階段まで来たところでようやく立ち止まった。

「ねえ、携帯持ってきた?」

高樹が珍しく女口調で話す。

「ああ」

俺が答えて携帯を取り出すと

「ちょっと貸して」

そう言ってメールを打つ。

「はい」

返された。

「えっと、どうしたんだ?」

「うん、琢磨にしばらく距離を置こうってメールしといたから、絶対にメールが来ても勝手に会ったりしちゃダメだからね」

「えっ、ああ…?」

『キーンコーンカーンコーン』

ちょうど昼休み終わりのチャイムが鳴って教室を出た時と同じように時間差で教室に戻った。


◇◇◇◇◇◇

2周目 9月21日(火) 午後4時 島津政信


放課後になって、「先に帰る」と言ったら高樹が驚いて「一緒に帰る」って言ったけど、俺は部活を優先してもらうよう頼んだ。

「今週末の大会は大事な大会なんだ」

(主将の最後の大会。できることなら俺が出たかったが、このままじゃどうなるか分からない。それでも主将の最後の大会を無様な大会にはしたくないんだ)

そうしたらくれぐれも琢磨からのメールや電話を無視するよう言われた。

「分かった」

そうは言うものの朝の痴漢が気になって高樹の言葉は俺の耳を右から左に通り過ぎていくだけだった。

(こっちは琢磨どころじゃないんだよ…)

俺は一人で帰ることになり、駅に向かって歩く。

この時間なら空いているはずだし、きっと大丈夫、何もないはず。

高樹の体になって、初日の朝に痴漢に遭ったせいで不安が心の中に澱のように溜まっていた。

『間もなく~△△行き~快速電車がまいりまーす』

がやがやとした駅のホーム。思ってた以上に人が多い。

(この時間は学生が多いな、大学生も結構いる。…ああ、○○大学の学生か…)

俺の通う学園は大学の附属なので大学生がいるのもうなずける。

『プシューッ』

ドアが閉まり、電車が動き出した。

俺は運良く座ることができた。

目の前には大学生っぽい三人組が立っている。

(まあいい。とにかく家まで無事に帰るだけだ)

前の学生がぺちゃくちゃとしゃべるのをぼんやりと聞きながら電車にゆられる。

「なあ、俺の友達が朝、痴漢見たんだってさ」

「で、助けてやったのか?」

「いや、周りもみんな気がついてたみたいだけど助けなかったらしいよ」

「ふーん。その女の子もかわいそうにな、で?」

「それがその女の子がめちゃくちゃ可愛かったってそいつが言ってた」

「どんな子なんだ?」

「写真撮ったって言ってたな。なんかよ、見せてくれないんだよな。俺明日、その電車乗ってみようかな?」

「お前馬鹿じゃないのか?」

話を振ったほうがゲラゲラ笑っているが、俺の顔は青ざめていた。

(それって…まさか…見られて…写真まで…?)

チラッと大学生を見ると、そのうちの一人と目が合う。

慌てて目をそらして俯いた。

◇◇◇◇◇◇

2周目 9月21日(火) 午後4時50分 島津政信


家に帰るとまっすぐにバスルームに飛び込んだ。

今日一日濡れたパンツのままで気持ち悪くて、とにかく気分をリフレッシュしたかった。

『シャーッ』

生ぬるい湯が体に掛かる。顔を洗って、化粧を落とす。

次に髪を洗って最後にスポンジで体を洗う。

腕、足を洗って、脇腹、脇と洗った。

そして無意識に避けていた部分、胸にスポンジを当てた。

俺の頭に朝の感覚が蘇る。

胸を揉みしだく痴漢の手…

「んんっ」

無意識に胸を揉んでいた。

(だめだっ、これは高樹の体だぞ)

俺の気持ちとは裏腹に、指が乳首を摘む。

「ふぅぅん」

体がカクンと曲がる。

(気持ちいい…けど…朝ほどじゃない……くそっ、俺は何をやってるんだ)

俺はシャワーの温度を水に変えて体を冷やすとバスルームを出た。

その足で自分の部屋に戻ると服を着替えてベッドに寝転がる。

1日気を張っていたせいか、家に帰ってホットしたこともあってか睡魔が襲ってきた。

◇◇◇◇◇◇

9月21日(火) 午後9時 高樹美紗

夕食を食べたアタシは島津に電話をする。

部活が終わったあとから何度も電話をしていたが、電話に出ない。

本当は家まで見に行きたかったけどさすがにこの時間に外出する理由が見つからなかった。

(このあたりがみんなが言ってた家族の面倒くさいところなのかも)

アタシからすれば気にしてもらえるというだけで嬉しいけど。

『トゥルルルル…おかけになった電話番号は…プツッ、ツー、ツー、ツー』

(どうしよう、ちょっと眠いし、メールを送って寝ようかな…もうちょっと起きとこうか…うーん…)

布団に寝転がったアタシは初めての部活で心身ともに心地よい疲労感を感じていた。

次話 2周目 9月21日(火) 午後9時30分 島津政信
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