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目立つ二人

「ねぇ、ラルフ、僕ら見られてる気がするんだけど気のせいかな?」

「うむ、見られているな」

僕らは街について早速ハンターギルドに行こうとしたんだけど、歩く先々で視線を浴び続けていた。

(田舎者だからおかしいのかなあ?…そうだっ、まずは服装をなんとかしよう)

「ラルフっ、先に服屋さんに行こっか」

僕らは行き先を変更してギルドの近くにある服屋さんに向かった。

「えっと…ブティックルナ?ここって服屋さんだよね?」

『カランカラーン』

「いらっしゃいませ~」

売り子のお姉さんが声をかけてくれる。

「どういった服をお探しですかあ?」

僕はちょっと困ってしまう。

(どんな服?)

「えっと、…普通の服を下さい」

売り子のお姉さんが一瞬止まる。そして大爆笑。

(僕…変なこと言ったのかな?)

「キャハハハハハっ…ああ、ごめんなさい。普通の服って…くくくくっ」

「あ、あのぉ、なんだか歩いてたら周りの人から見られるんで…ぼ、私、田舎から出てきたから変な格好してるのかなって思って…」

やっと笑いが収まったみたいで答えてくれる。

「やだっ、それはあなたたちみたいな美男美女が歩いていたらそりゃ見るわよぉ」

「美男美女?誰が?」

「いやねえ、謙遜しすぎも良くないわよぉっ」

(ラルフはともかく僕まで?まさかね)

「でも、そうねぇ、分かったわ、あなたたちにぴったりの格好をさせてあげるわっ、お姉さんにまかせなさいっ。」

そう言うとお姉さんは急に目の色が変わって服を選び始めた。

しばらくして試着するよう言われる。

試着室でワンピースを脱いでいると『シャッ』と試着室のカーテンが開かれて店員のお姉さんが現れた。

「あらっ、まだだっ…??」

お姉さんが止まる。

「…どうしたんですか?」

「あなたっ、どうしてブラジャーしてないの??それにパンティも、それ男物じゃないっ?」

(そっか…しまったっ、男だってバレるっ)

「えっと…あのっ、すみません。これまで父さんと二人暮らしだったから…」

僕はしどろもどろになって言い訳する。

(あちゃー、これじゃあ言い訳にすらなってないぞ)

ところがお姉さんの顔が少し曇る。

「あっ、そっそうなんだ。良いのよ、気にしなくても。お姉さんがちゃんと選んであげるからね」

(なんだか都合がいいように解釈してくれたみたいだ)

そして服の前に下着を選んでもらって、再び服を着せられる。

(ワンピースやちょっとお嬢様みたいな格好が多いなあ。これじゃ戦えないんだけど…)

「あっ、あのっ、お姉さん」

「なぁに、あっ、アタシはマーガレットって言うのよ」

「マーガレットさん、僕…私はアオイです。彼はラルフ。あのですね。ぼ…いや私、ハンターギルドに入る予定なんです」

「えっ?そうなの?」

あからさまに驚くマーガレットさん。そんなに変かな?

「はい、あの、女の子でハンターって珍しいんですか?」

「うーん、そうでもないわよ。よくここに来てくれる人もいるし、ハンター用の服なんてのもあるくらいだから。せっかくだから揃えちゃう?あなたはどんな戦い方をするの?」

「えっと、防具はほとんどつけないんですけど、前衛で戦う感じです」

「ああ…レンジャーのような感じかしら。それならこんなのはどう?」

そう言って出してきた服は、茶色のショートパンツにベージュのTシャツ、それに黒いニーソックスだった。

着てみるととても動きやすい。

「いいわね。よく似合ってるわよ。ついでにこれも上に羽織ってみて」

パーカーが渡される。

「肌寒い時なんていいわよ。雨も通さないから雨具も兼ねられるわ。それにニーソックスも特殊な素材を使ってるから簡単には破れないわよ。ちょっとした魔物の攻撃くらいなら通さないわ」

「でも、ちょっとまだ暑いかも」

「オッケー、じゃあこれにしよっか」

そう言って中に着る服をTシャツからタンクトップに替える。

「マーガレットさん…これすごく良いですねっ」

そう言うとマーガレットさんはちょっと不満げだった。

「そう?こっちのほうが良いけどなあ」

そう言ってお嬢様のような格好を推してくる。

「あの、このズボンとTシャツとタンクトップをあと何着か買っていいですか?」

「そうね、じゃあこれとこれにしなさい。あと、スカートも1着どう?」

そう言ってミニスカートも数着買った。それにマーガレットさんいちおしのワンピースも1着だけ。

そして最初に気に入ったショートパンツとタンクトップ、パーカーを着たまま試着室から出る。

「ねえ、ラルフ、どうかな?」

「ああ、葵は何を着ても似合うぞ」

(そう言えばラルフに聞くだけ無駄だった)

だけどマーガレットさんが僕らの姿を見て、アツアツねぇと呟いた。

「ああっ、そうだわっ」

マーガレットさんが何かに気がついたように大きな声を出す。

「そうだわ、寝巻きを準備するのを忘れていたわっ」

そう言って奥から薄い布を持ってきた。

「これが寝巻きなんですか?」

渡されて広げてみるとどう見てもスケスケだし、下着みたいに見えるけど。

着ても股のあたりまでしか無さそうな。

「アオイちゃん、これがここでの寝巻きなのよ」

(そうなんだ、いつもTシャツとかで寝ていたから知らなかった)

「へぇ…じゃあ、これも…」

買います、そう言おうとしたとき、後ろから出た拳にマーガレットさんの頭がポカッと叩かれた。

「マギー、何を嘘を教えてんだ」

「いったぁ、あっ、アンナっ」

「そこのお嬢さん、この人の言うことは嘘ばかりだから注意したほうがいい」

背の高いショートヘアの綺麗な女の人がいつの間にかマーガレットさんの後ろに立っていた。

「もうっ、アンナっ、せっかく夜のお供をプレゼントしようと思ったのにぃ」

振り返って涙目のマーガレットさんが文句を言う。

「何がプレゼントだ、買わせるつもりだったんだろ?」

「???」

僕は意味が分からず、二人のやり取りを見ていた。

「あのな、寝巻きなんてTシャツでいいんだよ」

アンナさんがそう教えてくれた。

「あっ、アオイちゃん、この人はハンターよ」

「えっ、そうなんですか?」

(こんな綺麗な人もいるんだ)

「まさか…アオイもハンターなのか?」

(「まさか」って言われた。そんなに頼りないかなぁ)

「えっと、これから登録に行こうかと…」

「ほう、では無事ハンターになったら一緒に仕事を受けよう」

「いいんですか?ありがとうございますっ」

「アンナはA級のハンターなのよ。わからないことは彼女に聞くといいわよ」

マーガレットさんが教えてくれた。

「ああ、なんでも聞いてくれ」

入口を見るとラルフが暇そうにしている。

「あっ、あの、ラルフの服も選んでもらえないですか?」

「もちろんっ」

ラルフの服はあっという間に決まった。なにせシャツにズボンだから。

さらにせっかくだからと、マーガレットさんが髪を少し切って整えてくれた。

「前髪を作ったほうがきっと似合うと思うの」

アンナの顔を見ると「私もそう思うぞ」そう言ってくれたのでお願いする。

さらに髪を後ろで束ねてポニーテールにしてくれた。

「たくさん買ってくれたし、髪留めのリボンはサービスしとくわね」

想像していた以上に時間がかかってしまったけど、いい人たちそうだったし、先程までの嫌な気持ちを忘れることができた。

だけど、店を出る段になって少し困ったことになった。

たくさん買いすぎたのだ。このまま荷物を持ってウロウロするわけにはいかない。

「マーガレットさん、アンナさん、良い宿屋ってありますか?」

「そうねえ、この近くだと銀狼亭っていうのがご飯も美味しいしお値段もお手頃って評判よ」

「うむ。確かに、あそこのご飯は美味いからな」

「わかりました。ありがとう。先に荷物を置いてからハンターギルドに行ってみます」

お礼を言って銀狼亭に向かう。

「銀狼亭だってさ、ラルフ。運命だね」

「俺は別にオーガでもドラゴンでもいいがな」

「でも、灰狼よりはいいでしょ?ふふふ」

銀狼亭は外見はそれほど豪華ではないけど石造りの清潔そうな宿屋だった。

とりあえず、入口のドアを開けると「いらっしゃいっ」と奥からおばさんが出てきた。

「あのっ、泊まりたいんですけどっ、大丈夫でしょうか?」

「ええ、宿の方ね。大丈夫よ」

評判がいいって聞いてたからちょっと心配してたんだ。

「良かったぁ、えっと二部屋お願いできますか?」

すると、おばさんがチラチラ僕とラルフを見る。

「ごめんねぇ、今空いてるのがひと部屋だけなの。ダブルだから二人でも泊まれるけど…」

(どうしよ。でも大丈夫だよね?)

「えっと…分かりました。じゃあひと部屋でいいのでお願いします」

おばさんはさすがは客商売。

何も言わず満面の笑みで部屋に案内してくれた。どうやら一階は食堂で二階が宿屋になっているようだ。

僕はおばさんについて一旦下まで降りる。

「えっと一泊素泊まりで一人6000イェン、2食の食事込で8000イェンよ、お風呂が使いたかったら先に予約してね」

そして、顔を寄せるようにして「うちは防音はなかなかのもんだから安心してくれていいよ」と言ってウィンクされてしまった。

「は…はぁ」

意味がよく分からず返事をしたらケタケタと笑われてしまった。

「じゃあ、食事付きでお願いします。えっと今日から3泊良いですか?」

「ええ、もちろんよ、じゃあ、先払いで48000イェンね」

僕は支払いをして部屋に戻る。

「荷物も置いたし、服もばっちりだし、よーし、ギルドに行くぞっ」
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