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2014/10/05

振り返ると後ろから追いかけてくる二人の姿が見える。

(「村正っ、ちょっと待って」)

村正が何か言おうとするのを遮って先に走る。

「ラルフ、早く下ろうっ」

階段を下りた最初の部屋は少し広めの空間だった。これまでと違って明かりが完全にない。

部屋の奥に人の気配がした。

(誰だ?)

後ろからラルフが携帯用のランプを投げ込む。これは小さなランプの形をしていて魔石の力で光を放つ。

「あっ、アンナさんっ」

薄明かりに照らされたアンナさんのもとに走り出そうとした僕の肩をラルフが掴んで止めた。

「待て、葵」

「え…なんで?」

「よく見ろっ」

ラルフの声でよく見るとアンナさんの動きが変だ。妙に緩慢で、僕の声が聞こえたはずなのに俯いたままだった。

「アンナ…さん?」

ゆっくりと顔を上げたアンナさんは愛用の槍を僕らに向かって構えた。

後ろから追いついた二人もまるで僕らが逃げられないように階段への通路に立つ。

さらにアンナさんの後ろから人が出てくる。その数は9人。ウィリアムさんの姿も見える。

(これって…いなくなった人全員…?)

全員が全員、虚ろで生気のない目をしていた。

「ラ…ラルフ?」

震える声でラルフを呼ぶ。

「葵、落ち着けと言っている。昔…こういう目つきを見た覚えが有る」

ラルフが何かを思い出すように顎に手を当てる。

「ラルフ、どういうこと?」

(「主殿」)

村正がようやく話しかけてきた。

(「ちょっと、村正、遅いよっ」)

(「全く、さっき言おうとしたら聞かなかったのは誰じゃ?」)

(「それは…って、そんなことより、これって何?どうなってるの?」)

村正とラルフが同時に口を開いた。

(「こやつらは操られておる」)

「こいつらは誰かに操られている」

「ええっ?誰に?じゃなくてっ、どうすればいいの?」

僕はラルフを見上げる。

「操っているものを殺せば解ける」

ラルフと僕が話している間にも、彼らは壁沿いを移動して、僕らを囲む。

僕らは背中合わせになってハンター達を警戒した。

(操られているだけなら、まだ助けられるってことだよね?)

「ねえ、ラルフ…操ってる奴はこの階層にいる?」

「いや…生き物の気配は無いな。むっ、5階層にもいないだと…どういうことだ?」

ラルフが再び考え込む。

(え?どうしよう?アンナさんやウィリアムさんを殺さずに突破して、5階層まで行けるか)

逡巡している間にも操られたハンター達はジリジリと詰め寄ってくる。徐々に僕らを包囲する輪が小さくなってきた。

(もう時間がないっ、どうするっ)

アンナさんがゆらりと動いた気がした。

「葵っ」

ラルフの声が聞こえる。

戦闘態勢に入っていない僕はぼんやりとアンナさんの槍の穂先が目の前に来るのを見ていた。

「あ…」

(やられる)

そう思って覚悟した瞬間、僕と槍の穂先の間に何かが割り込む。

『ドスッ』

「ぐうっ」

ラルフの痛みをこらえる声とともに僕の頬に血の雫がとんだ。

「ラルフっ」

一瞬遅れて僕が叫ぶ。

ラルフの肩に槍が刺さっていた。

「葵っ、大丈夫か?」

ラルフが後ろの僕を気にしたように言う。

「僕は大丈夫っ…だけど、ラルフはっ」

「俺は大丈夫だ。ぐっ」

痛みに耐えながらラルフが刺さった槍の柄を掴んだ。アンナさんが抜こうとしているようだが、ラルフの力で槍は抜けない。

ラルフのコートの裾から血が滴る。

僕は頭に血が上るのを感じた。

村正を抜くと、動けないラルフを狙って突っ込んできた数人のハンターの剣や槍を弾く。

「このぉっ」

『ギンッ』

そのうちの一人が態勢を崩した。

(今だっ)

そう思うけど相手は人間、それも仲間のハンターだと思うと斬れない。

「くっ」

一度態勢を崩したハンター達が再び武器を構えたまま僕らを取り囲む。

(ラルフの傷も軽くない…どうすればいいんだ?)

その時、アンナさんの口から言葉が漏れた。

「あ…おい……わたしを斬れ…」

アンナさんの顔を見ると苦しげに顔を歪ませて、だけど目に光が宿っていた。

「アンナさんっ」

「…今なら…うごけ…ない…はやく…して…くれ」

「でもっ」

「ううっ…はやく…しろぉ…」

アンナさんの目が再び暗い色に染まった。

「ぐうっ」

アンナさんの腕に力が込められたのかラルフの肩から再び血が吹く。

(どうする…どうすれば…?斬るしかないのか…)

不意に悩む僕の頭の中で村正からの声が聞こえた。

(「主殿、銀狼の言うとおり、操っている術者を倒すのも一つじゃが、もう一つ方法があるぞえ」)

のんびりした口調で村正が提案する。

(「村正っ、どういうことっ?早く教えてっ」)

(「ふむ。では、もう一度女騎士の心を読んでみるがいい」)

僕は今度は前に立つアンナさんの心を読もうとする。

やはり何も見えない。

(「主殿、もっと集中するのじゃ」)

僕は目を閉じて集中する。アンナさんの姿が瞼の裏に映る。

(「もう少しじゃっ」)

アンナさんの腕や足に一筋の紐のようなものが…

(見えたっ、これは…鎖…?)

(「そうじゃ、妾でその鎖を切るのじゃ」)

僕は目を閉じたまま抜刀する。

『ギャリンッ』

腕を縛っていた鎖を断ち切った。

さらに四肢を縛りつける鎖を切っていく。

目を開けると、アンナさんの体が崩れ落ちるのが見えた。

「むっ、葵っ、何をした?」

ラルフの声が聞こえる。ラルフが槍を引き抜くと傷口が光って、血が止まった。

(ラルフ…無事で良かった…)

「ラルフっ、そのまま警戒をお願いっ」

そう言うとウィリアムさんの鎖を切った。

(これはうまくいきそうだけど…相当力を使う…ということは…)

僕はこのあとに起こることを考えるとちょっと躊躇したくもなるけど、そんな場合じゃないと諦めて覚悟を決めた。

前方にいたハンター達の鎖を切り落とす頃には割れ目から漏れる愛液で動くたびに太ももの奥が『クチュクチュ』と鳴る。

さらに、おっぱいが張って、乳首がブラジャーの中で激しく勃起するのが分かった。

(んあっ、くぅんっ…もう少しっ、我慢しないと…あと二人だけっ)

そして、振り返ると残り二人の鎖を切り、これで囲んでいるハンターの鎖を全て切り裂いた。

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