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2015/01/04

歓迎会

三日目の朝、教室に着くと、僕の机に書類が積まれていた。

(?)

近づくと、書類じゃなくて、大量の封筒。

(何だろう?)

周りのクラスメートが話すのをやめて僕の方を伺っているのがなんとなく感じられる。

椅子に座って一番上の封筒を持ち上げてみる。

表には「アリス・キャロル様」裏返すと「テッド・ライル」

「あー、昨日ラブレター受け取っちゃったからだね~」

「へ?」

「だからさ、受け取ってもらえると思ってみんな書いたんだと思うな、そう言えば昨日の返事はしたの?」

「うん。友達になったよ」

「へぇ?友達ねえ」

サラが横から僕の手元を見る。

「ねぇ…ひょっとして…それ全部?」

「うーん」

その時、机の中から何かがパサっと落ちた。

(?)

机の中もパンパンに封筒が入っている。

「うわっ、アリス…」

面白がっていたサラの顔が引き攣る。

数えてみると、ラブレター30通、サークル活動の勧誘が20通、よくわからない手紙が10通入っていた。

「はー。アリスは凄いわ。全部返事書くの?」

「うん。そのつもりだけど…」

「偉いわねぇ」


◇◇◇◇◇


「キャロルさん、お願いしますっ」

「えっ、でも私よりいい人が…」

「キャロルさんが良いんですっ」

サークルの部屋で、僕は一人の女の子から詰め寄られていた。

「分かったよ。でも一度だけだよ」

「ありがとうございますっ」

そして、僕の髪を触る。

「ああ、この質感。どんな髪型でもきっと似合う美貌…、アイデアがどんどん湧いてくる」

この女の子はドナ・リーパー。手紙をくれた中でも変わり種で、僕の髪を触りたいと言ってきた。

「今日は道具も時間もないんで簡単にやらせてもらいます」

そう言って凄い勢いで何かをしていたかと思うと、昼休みの終わりまでに完成した。

「毎朝弄らせて貰えると嬉しいんですが…」

「それはちょっと…うーん、考えさせて」

言葉を濁して僕は部屋を出た。

廊下を歩きながら頭を触る。

(ちょっと頭が引っ張られているような…うーん、でも…毎朝っていうのは流石になぁ)

教室に入るとサラがさっそく僕の頭に気がついた。

「アリス、どこ行ってたの?…って、何それっ、かわいいっ」

クラスメート達も寄ってきて口々に誉めてくれた。

「あなた、見てないの?はい。」

鏡を手渡されて見ると、いつもと違って、頭の上に二つお団子が作られていた。

「あら、これは手が込んでいるわね。お団子が三つ編みで縛られてるわ。後ろは垂らしたままサイドの髪だけで作るなんて、これ凄いわよ」

エルザもじっくり見てきた。

「ねぇ、私もして欲しいっ」

「私も、私もっ」

という訳で今度は僕からドナにお願いすることになった。

「じゃあ、毎朝食堂でキャロルさんの髪を触らせてくれるのならいいですよ」ということになってしまった。


◆◆◆◆◆


こうして一週間はあっという間に過ぎていった。

そして休みの前日の放課後、クラスメート達が僕のために食堂で歓迎会を開いてくれた。

朝食と夕食は寮の大きな食堂で各自取ることが決められている。だけど今回のような特別なイベント時は寮長からの許可を貰えれば特別な食事も作ってもらえるそうで、今回は夕食の前にバイキング形式の食事が準備された。

「アリスっ、楽しんでる?」

僕がお皿に食べ物を盛っているとエルザとモニカさんが隣から話しかけてきた。

「うん、どれも美味しそうで迷うねっ」

「そうなのよ、思わず食べ過ぎちゃう…って、ちょっとっ、アリスっ」

エルザが驚いて大きな声をあげたせいで、周りの目が僕に集まる。

「おいっ、キャロルさんの皿見ろよっ」

男子がそう言って集まってくる。

「ちょっと、アリスっ、大丈夫なの?」

「へ?」

サラやブリジットさんも僕のお皿を見て目を丸くしている。

「?」

僕はそれ以上盛るのを諦めて席に座って食べ始める。

周りのクラスメート達が固唾を飲んで見守るなか、僕はむしゃむしゃと食べ始めた。

「おいひいよ、エルザも食べなよ」

そう言うと周りの女の子から溜め息が漏れた。

「こんなに食べてあのスタイルなんて羨ましい」「ホントっ、アリスちゃんあんなに細いのにっ」「おいっ、あんなにお前食えるか?」

ひそひそとみんなが喋る。

「アリスを見てたら胸焼けがしてきたわ。それにしても、その細い体のどこにいくのかしらね」

エルザが溜め息混じりに言うと突然後ろからサラの声がした。

「ここしかないじゃないっ」

声と同時に脇の下に手が入ってきて胸が鷲掴みされた。

「キャンっ」

油断していたせいで思わず声が出た。

「ん?ひょっとして、アリス、ここが弱いのかな?」

服の上から器用に指が乳首をとらえた。

「んっ…、サラっ、ダメ…だって」

(男子に見られてるぅ)

「んー、揉みごたえのあるいい胸だねぇ」

「やんっ、そこは…あっ」

顔が真っ赤になる。

「ちょっと、サラ、セクハラもいい加減にしなさい」

エルザのチョップがサラの頭に突き刺さってようやく手が離れた。

「きしし。アリスって敏感な体なんだね」

手をワシャワシャさせながらそんなことを言うサラは全然悪びれてなかったけど。

顔を上げると何人かの男子と目が合ったけど、すぐに視線を逸らされた。

(うわぁ…恥ずかしい、どうしよぉ)

恥ずかしさを隠そうと再び一口食べる。

「んっっっ、これ美味しいっ」

口いっぱいに頬張って食べる。

「ほっひもほいひい」

隣の料理も食べる。

「もう…飲み込んでから喋ってよ」

エルザに笑われるけど、料理の美味しさに恥ずかしさも忘れてしまった。

そうこうしている間にみんな口々に話し出して場が賑やかになった。


◇◇◇◇◇


(ん?)

寮のお風呂に行こうとしてふと振り返る。

(時々感じるけど…、誰かに見られているような)

廊下には何人も生徒がいるけど、視線の主はいない。

(「村正、何か感じない?」)

(「うむ。主殿、確かに視線は感じまする」)

(「だよねぇ。油断はできないね」)
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