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2015/01/05

調査依頼

(「ねぇ、村正、今のところ視線を感じる以外には何も起こっていないよね?」)

お風呂では今日もあの視線をずっと感じていたせいもあり、寝る前に僕は少し心配になった。

(「まあ、そうじゃな。王女や主殿は問題なしじゃな」)

(「何それ?含みがある言い方だなぁ」)

(「うむ、主殿の同輩の中に気になる匂いを放つものがおるのじゃ」)

(「えっ?それってマズい?」)

(「そうさな。あまり良いものではなさそうじゃな」)

(「どっ、どうしようっ」)

(「うむ。そうじゃなあ…」)

『コンコン』

部屋の扉がノックされる。時計を見て、まだ就寝時間ではないのを確認してドアを開けるとエルザとモニカさんがいた。

二人を部屋に入れる。

「ねぇ、葵」

エルザの顔は普段と違って不安そうだ。

「どうしたの?」

「エルザ様、ここでは…」

「あっ、そうだったわね。アリス、相談に来たの」

「うん」

「ブリジットさんなんだけど、最近ちょっとおかしいようなの。サラから相談されたんだけど、就寝時間にどこかに行ってるみたいなのよ。ほら、サラの部屋ってブリジットさんの部屋の隣でしょ。夜中に扉の閉まる音を偶然聞いたそうなの。で、気にするようにしていたら、二、三日に一回くらいの割合で出ていくらしいの。帰ってくるのは明け方だそうよ」

「それは確かに変だね。でも、どこに行くんだろう?」

「サラが一度後をつけたらしいんだけど、気がついたら見失っていたんだって」

(朝が最近特に酷いっていうのはそれも原因なのかな?)

「うーん」

(「村正、もしかして僕の同輩って…」)

(「そうじゃ」)

(ブリジットさんならすぐに調べないとっ)

「分かったよ。ちょっと調べてみる」

(「ちょっ、主殿、待たれ…」)

「ゴメンね、あお…、アリスも気を付けてね。なんだか、この間の魔物の襲来以来、学院が変な気がするのよ」

「変?」

「そう…何て言うか、前より暗いっていうか…」

「なるほど、明日から調べてみるよ」

(「全く主殿は考えも無しに…」)

(「なんで?」)

(「主殿が感じている視線についても分からぬのに…」)

(「大丈夫だよ」)

(「はあ、だとよろしいが…」)


◆◆◆◆◆

「ん?誰かが来たようだな」

ガビーノはもはや日課にもなった鏡による盗み見をしていた。

「王女に護衛か…む…深刻な雰囲気だが…」

鏡に手をかざすと部屋の中の声が聞こえてくる。

「……る音を偶然聞いたそうなの。で、気にするようにしていたら、二、三日に一回くらいの割合で出ていくらしいの。帰ってくるのは明け方だそうよ」

王女の心持ち小さな声が聞こえる。

(何の話だ?)

「それは確かに変だね。でも、どこに行くんだろう?」

「サラが一度後をつけたらしいんだけど、気がついたら見失っていたんだって」

(サラ?サラ・レヴァインだな…だとするとブリジットのことか…チッ、面倒なことを)

「分かったよ。ちょっと調べてみる」

「ゴメンね、あお…、アリスも気を付けてね。なんだか、この間の魔物の襲来以来、学院が変な気がするのよ」

「変?」

「そう…何て言うか、前より暗いっていうか…」

(ほう…さすがは王女というべきか…勘づいていたか)

「なるほど、注意して明日から調べてみるよ」

(王女がこんなことを依頼するとは…アリス・キャロル、単なる編入生かと思っていたが。私の眼にも気づいているようだし、戦闘術の身のこなしといい、どうやら何かありそうだな。…少し探りを入れてみるか)

ガビーノのニヤついた瞳に一瞬獰猛な光が灯った。


◆◆◆◆◆


翌日はアヴニールに来て初めての休日となった。とはいえ、生徒も教員も休みの日と言えどもアヴニールを出ることはできない。

そこで昨日の歓迎会の時にみんなにどう過ごすのか聞いてみた。外部からお店が来てくれるから買い物をする人もいるし、図書館や、テニスコート、乗馬場、プールなど、様々な施設を利用して過ごす人もいるようだった。

ちなみに、サラは乗馬をしたり、水泳をしたりするとのこと。ブリジットさんは図書館で本を読んだり、学生自治会の執務室で仕事をしているそうだ。エルザは王族としての公務がある場合は特別アヴニールを出ることを許可されており、ほとんど休日はいないそうだ。たまにある公務のない日はモニカとお茶をしたり、サラとスポーツをしたりしているそうだ。

(さて、さっそく学院内で調査でもしてみようかな)

休日は制服を着る必要はないので、膝上丈で腰で絞られた半袖の花柄ワンピースを選んだ。まだちょっと寒いので長袖のカーディガンを羽織る。

エルザは今日は公務らしい。昨夜のうちにアヴニールを出ていった。今晩戻ってくるらしい。

(まぁ、モニカさんがいるし、そもそも僕がついて行く事は出来ないからね)

着替えをしながら考えていたら、ノックの音がした。

「はい」

ドアを開けるとサラがテニスウェアで立っていた。

「ジョシュ達とテニスするんだけどアリスもしない?」

サラにそう言って誘われたけど、学院内にはまだまだ行ったことのない場所があるから今日は歩き回ってみるつもりだと断った。

「んー、じゃあさ、テニスコートにいるから暇なら来てよ」

サラはそう言って階段を下りていった。

僕は地図を見ながら順番に見て回る。まずは、自分の教室から始めて様々な専門の部屋のある棟に来てみた。

(えっと、ここが、魔術実験室、その隣は準備室、で向かいのこの部屋は魔術具実験室、そう言えば今度この部屋で授業をするって先生が言ってたなぁ)

各部屋からは声や物音がうっすらと聞こえる。

(多分専門の生徒が休みの日も研究してるんだろう)

ジェシカやマリーがそんなことを言ってたのを思い出した。

様々な教室のある本館を見て回ったけど、時計を見るとまだお昼には一時間くらいある。

(…そうだっ、ブリジットさんに会いに行ってみようっ)

学生自治会の執務室は一階なので一度階段を降りた。
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