管理人ほう

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10周目 9月22日(水) 午後5時00分 島津政信

『ピー』

『バシャバシャバシャバシャ』

「ラスト一本~、一年っ、ちょっと遅れてるよ~」

笛の音と水泳部の掛け声、水音が室内プールに響いていた。

プール特有の塩素の臭いに加え、高い湿度と気温で、歩いているだけで汗ばむ。

俺は渡された水着とバスタオル、キャップを手に権田の後ろに続いて歩いた。

「こんにちは~」

すれ違う水泳部員はいちいち立ち止まって権田に頭を下げる。

(意外に嫌われてないのか?)

だが、挨拶をした後女子は必ず俺をチラッと見てきた。その目には『可哀想に』という同情がありありと出ていた。

「高樹、着替えてこい」

「はい」

俺は間違えて男子更衣室に入らないよう何度も表札を確認して女子更衣室に入った。

ロッカーが壁際と真ん中にあって、着替えるために広めにとられた通路には低いベンチが並んでいる。

(女子更衣室っていっても男子の更衣室と変わらないもんだな)

違っている所といえば、女子特有の甘い匂いが漂っているくらい。

(さあ、着替え…ん?)

そこで、はたと自分の状況に気がついた。

(しまった…女子が着替えていたら大変だっ)

慌てて耳を澄ます。

遠くで水泳部の掛け声が聞こえるが、この部屋の中は人の声はおろか衣擦れの音も聞こえない。

既に部活が始まっていることもあって、着替えている生徒は誰もいないようだ。

(ふう…よかった。誰もいないな。よしっ、今のうちに…)

急いで制服を脱ぐと、水着を手に取る。

(イヤらしい顔してたから心配したけど、普通の競泳水着だよな)

ニタッと笑った権田の顔を思い出しつつ広げてみるが、水泳部の着ていた水着と変わらないように見える。

(さて…あれ?そう言えばどうやって着るんだろう?)

男子の水着は履くだけで良いが、考えてみると当たり前のことだが、女子の水着を着るのは初めてだと今さらになって気がついた。

しばらく水着を眺めていたが、こうしていても埒があかないので、とりあえず足を入れて、水着を上に引っ張ってみる。

「んっ」

ピチピチで上に上げるのも一苦労だ。

(こ、こんな感じ…なのか…?女子っていうのも大変だな)

ちょうど鏡が置いてあったので見てみると、胸が潰れて、腋から肉が押し出されていた。

(うわっ、これは…エロいな…)

このまま出ていって、権田から見られるのを想像して身震いする。

(ど…どうしたら良いんだ?…ええいっ)

水着の腋の部分を引っ張って隙間を作ると、手を入れてはみ出した胸を寄せるようにして水着の中に押し込んだ。

(よし…これで…良いんだよ…な?)

尻の食い込みも確認してみたが思ったほどでもないようだったので、俺はとりあえず更衣室を出た。

(女子の水着って結構締め付けられるんだなあ)

歩くと股に水着が食い込むのが気になって何度も尻のところを直すことになった。


◇◇

9月22日(水) 午後5時15分 権田泰三

『ガチャ』

更衣室の扉が開く音にワシは目を向ける。

(おおっ、ワシの目に狂いはなかった)

高樹の体は細い手足に加え、出るとこはしっかり成長している。むしろ体が細いせいで胸の膨らみが強調される結果となっていた。

尻もプリっと張りがあって、垂れる様子もない。

「高樹、こっちや」

そう呼ぶと駆け足で近づいてくる。

さらさらとした髪が揺れる、その姿はまるでアイドルのイメージビデオのようだった。

(顔もこうして見たら相当やな)

なんで今まで気づかへんかったんや、と自問するほどの美少女振りに年甲斐もなく胸が高鳴った。

「高樹、キャップ被らんと」

そう言いながらも目は高樹から離せない。

(競泳用やし、胸の谷間が拝めないんは残念やけどな…)

頭の中で小さいビキニを着た高樹を立ったままバックから犯すのを想像したらブーメラン型の水着をチンコが押し上げる。

(おっと、いかんいかん)

「あの?先生?」

「なっ?」

高樹が想定外にかなり近くにいて思わず驚きの声を上げてしまった。

股間をさりげなくタオルで隠して高樹に向き合った。

「おっ、おうっ、じゃあ…ってキャップはどうした?」

「あっ、そうだ」

高樹がキャップを慌てて被ろうとしているが、何か変やな。

「おいっ、まさか被り方知らんのか?」

高樹は恥ずかしそうに頷いた。

「おいっ、誰かっ。ああ、本庄、こっちに来てくれ」

「はーい」

ワシはプールサイドで荷物を運ぶマネージャーを呼びつけて高樹にキャップのつけかたを教えさせている間にも高樹を観察した。

(変やな…さすがにこれまでキャップくらい被る機会あったやろ)

高樹は、締め付けが気になるようで、腋や尻のくい込みを気にしているが、弄る度に水着の隙間から日に当たったことのない雪のように白い肌がチラチラと見えた。

(ワシがこんだけ見とったら、女子生徒はすぐに体を隠そうとするもんやけどな)

実際、高樹の両手をあげた無防備な腋をワシの視線から隠そうとでもするように、本庄がワシと高樹の間に立っている。もちろんワシも自然を装おって見える角度に移動する。

(しっかし、高樹は男の視線にもエライ無頓着やな…こんな奴やったかいな?)

ワシと本庄の無言の攻防にも気づかないように高樹がキャップに髪を収めて戻ってきた。

「よっしゃ、やっと始められるな。こっちでやるで」

ワシは警戒されないようわざと明るい声で水泳部の使っていない奥のレーンに高樹を連れて行った。


◆◆◆

9月22日(水) 午後5時20分 島津政信

(おおっ、さすがは本職、速いなあ)

飛び込む水泳部員達の泳ぐ姿に俺は目を丸くしていた。

「おいっ、高樹、見ててもしゃあないし、さっさとやるでっ」

権田からの注意で我に返った。

(そうだ、早く終わらせて柔道部にいかないと…)

俺の脳裏に一瞬沙紀の顔が浮かんだ。

(いやいや…でも…応援だけでも…)

「まずは準備体操からや」

権田に従って着いたのは水泳部の使っていない一番奥のレーンで、こちらのプールサイドには誰もいなかった。

「はい」

権田の掛け声に合わせて屈伸やアキレス腱、前屈等をしていると、水着姿でちょっと肌寒かった体がポカポカしてきた。

「お前一回もワシの授業出てへんし、どんくらい泳げるんか分からへんからちょっと試しに泳いでみよか?何でもエエから25メートル泳いでみてくれ」

『チャポ』

俺は恐る恐る水に足先を浸した。

(思ったほど冷たくないな。よしっ)

『ザバン』

そのまま足からプールに入った。

(身長がないとこんなに違うのか)

男だった時なら腹の上くらいまでだった水面が今は肩の下くらいまである。

(これ、ひょっとして真ん中辺りだと足がギリギリつくくらいじゃないか?)

『ピッ』

権田の笛に慌ててプールの壁を蹴って泳ぎだした。

(まずはクロールで…)

高樹の推理によれば体が記憶していることなら出来る、というし、試してみることにする。

(おっ、高樹、泳げるんじゃないか)

水泳の授業を休んでいるって聞いて、水が苦手なのかと心配していたが、問題なさそうだ。

「高樹っ、あと半分やぞっ」

ところが、泳ぎだした時は良かったが、真ん中くらいまで来たあたりで体が辛くなってきた。

(高樹、体力無さすぎだろ)

フォームが乱れて息をしようとした時、口の中に水が入ってきた。

(うえっ、でも、あとちょっと…)

最後の力を振り絞ってなんとか25メートルを泳ぎきった。


次話 10周目 9月22日(水) 午後5時25分 島津政信
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