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2015/08/07

ティナちゃんお手柄

どうやら貴族達が夕食を要求したらしく、ティナちゃんのお手柄となった。

王子、テレサさんが相談した結果、この機会を利用してシーレ卿達の様子を窺おう、というのだ。

もちろん僕も参加してできればシーレ卿に顔をつなぎたいわけだけど、そこでティナちゃんが「んー」とお団子にした頭を傾げた。

「葵ちゃんってテーブルマナー知ってるの?」

「テーブルマナー?何それ?」

ティナちゃんの何の気ない質問に答えてから、ハッと気づく。テレサさんの鋭い視線が一瞬こちらを向いた気がした。

僕の脳裏に地獄の特訓がよぎる。

「…あれ?葵ちゃん、どこ行くの?」

「えっ?あの…その…トッ、トイレにっ」

(急がないとっ)

一度振り返ってティナちゃんに返事をして前を向いた僕の動きが止まった。

「あっ…」

(遅かった…)

見慣れた杖の先が目の前に突きつけられていた。

「葵」

杖の先はピクリとも動かず、狙いを定めたまま。テレサさんの低い声が静かなだけに恐怖を煽る。

「はっ、はいぃぃっ」

そして僕はテレサさんに引きずられていくことになってしまった。


◇◇


食事を載せた台車やお盆を持ったメイド達に混じって僕は溜め息をつきかけて慌てて呑み込む。

テレサさんが近づいてきたからだ。

『カッ』

テレサさんがいつもの杖を鳴らして目の前で立ち止まった。

グイッと顔を寄せて来る。

「葵、お前は素人に毛が生えた程度なんだから、他のメイドよりも劣っているのは当たり前さね。いいかい?もう一回言うけどね、お前はどうせ上手く出来ないんだから、上手くやろうなんて思うんじゃないよっ。いいねっ?」

『カッ』

「はっ、はいっ」

(確かにできないけどさ。そんなに『出来ない出来ない』言わなくても…)

テレサさんは去り際に小さな声でブツブツ呟いていた。

去っていくテレサさんの背中を眺めて意気消沈していると、後ろから背中をチョンチョンと叩かれた。

「大丈夫だよ。テレサさんも葵ちゃんが不安にならないよう気遣ってるんだよ」

「そうかなぁ?」

(最後に呟いてた「そもそもお前の体は世継ぎのために大事にしないと…」って、僕を心配してるわけじゃないじゃん)

「そうだよ、ね?」

僕の浮かない顔を勘違いしたティナちゃんが近くのメイドさんに話を振る。さっきからチラチラこっちを気にしていた娘だ。

「うん。ほんと、私もテレサさんがあんなに気にしてるなんて見たことないもの」

(王子のためだけどね)

今度こそ大きな溜め息をついて僕はロングスカートを摘まんだ。

(だけど、確かに失敗して目をつけられたら…このスカートじゃ戦いにくいかな?もしもの時は自分で破いて…いや、それじゃ変態か…)

「葵ちゃん…なんか変なこと考えてない?」

ティナちゃんはなかなか鋭い。

「葵ちゃんなら失敗しても謝ったらきっと大丈夫だよ。ねっ?」

「ウンウン、確かに可愛いから許しちゃうわ。あっ、葵ちゃんって言うのよね?よろしく。私はリリーよ」

先ほどティナちゃんに話を振られたメイドさんはリリーちゃんと言うらしい。

で、リリーちゃんは穴が開くんじゃないかってくらいマジマジと見つめてくる。

「…ああ、でも逆にめだっちゃうかもね。同じ女でも…ほら」

そう言われて見渡すとメイドさん達が一斉に目を逸らした。

「ちょっと、リリー、そんなこと言ったら葵ちゃんが不安になるでしょ。大丈夫だよ、葵ちゃんはきっと上手く出来るから」

ティナちゃんが微笑んだ。

会って間もないティナちゃんに励まされてしまった。

(うぅ、ティナちゃん、良い娘だぁ)

「さあ、時間よ」

前の方で声がしてメイド達が順番に合議の間に入っていく。

「葵ちゃん、私達も行きましょ」

(おぉっ、広いっ)

石の床に茶色の絨毯が敷かれている。

入り口は二ヶ所あるけど、それぞれに兵士が立っていた。

(剣を持っているから突入時は同時じゃないとキツいかな)

階段状の席があって壇上に議長席。

壇の前には20人掛けくらいの長方形のテーブルがある。

そして今は貴族達が長方形のテーブルについていた。

(えっと、シーレ卿は…)

シーレ卿の顔の特徴はロレンツォさんから聞いている。

(こんなに髪は黒くないし…こっちは太りすぎ…、この人は瞳の色が違う…)

貴族達が皆こっちを見てくれるおかげで探しやすい。

(あっ、この人だっ)

テーブルの端に座っている白髪のやせ形、瞳の青いおじいちゃんがシーレ卿だとわかった。

『トントン』

いつの間にか横にいたリリーちゃんに肘でつつかれた。

「葵ちゃん、目立ってるよ。早くナプキンを持って回らないと」

「あっ」

小声で囁かれて慌ててナプキンを持ってテーブルに向かう。

周りを見渡していたせいで一人目立ってしまった。

(怪しまれたかな?)

こっそり心の声を読んでみる。

(「このメイド、なんて可憐な…」)

(「どこぞの高位の令嬢か?なぜメイドなどを…」)

(「ひひひ、それにしてもイイカラダしてるぜ」)

最後のは兵士の一人から聴こえてきた。

どうやら怪しんではいないみたいだ。さすがに慣れたとは言え、僕は男なんだけどなぁ、と苦笑する。

「シーレ卿、どうぞ」

指環が見えるようにナプキンを置こうとしたその時だった。

「待てっ」

僕がナプキンを置こうとした時、広い部屋に大きな声が響いた。

ハッとして手を止めた僕に、部屋全体を確認していたちょっと偉そうな兵士が近づいて来た。

「メイド、手を止めよ。妙な動きはしないように。レヴァイン卿からシーレ卿とレンナー卿、それにパーカー卿には注意するよう言われている。さて、そこのメイド、ナプキンを広げよ」

意地悪そうに笑う。

「なっ、何もありませんが…」

「それはこちらで判断する。それとも、見られては困るのか?」

(「何か出てきたらいい口実になるぜ…」)

「そんなっ」

「いいから早く広げろっ、それとも何か不都合でもあるのか?」

パッと顔を上げると兵士と目があった。

兵士の頭の中では服を乱された僕が、多数の兵士に輪姦されていた。ゾワゾワと背筋が冷たくなる。

部屋中の視線が集まった。

「分かりました」

『フワリ』

裏も表もチェックして兵士が返してくる。

「ふむ…問題ないか…、よし、配膳を続けろ」

(「チッ」)

「はい」

僕は頭を下げて、皿を置き始めた。するとスイッチが入ったように固唾を飲んで見守っていた皆が再び動き出した。

◇◇

「で、上手くいったんだろうな?」

再び王子の私室に戻った僕らは頷く。

「葵、合議の間の様子はどうだった?」

王子が僕に尋ねる。

「えっと、合議の間の入口には二人ずつ兵がいます。部屋の中にもそれぞれの扉ごとに兵が一人ずついます。それに、二十人ほどの貴族が軟禁されていました。パーマー卿と二人の大公も含まれています」

王子が頷く。

「そうか…。ティナ、お前の方は?」

(へ?ティナちゃん?)

「バレないか冷や冷やしましたよぉ。でも、みんな葵ちゃんを見てたから無事パーマー様にメッセージを渡せましたよぉ。うふふ」

(あれ?ティ、ティナちゃん?)

僕はキョロキョロとティナちゃんと王子の顔を見比べた。

「それで、王子の方は準備は出来たのですか?」

(えっ、あれ?どういう事?)

ティナちゃんが自然に王子に質問した。

「ああ、問題ない。そろそろ…」

(ひょっとして…僕って…)

「ちょっ、ねぇ、ティナちゃん?王子?もしかして…」

『ガチャッ』

「僕って囮だったの?」そう言おうとした時、激しく扉が開いた。

丸坊主頭に後ろだけ伸ばした髪を三つ編みにしたガチムチ系のお兄さんが僕に向かってすごい勢いで近づいて来る。

(今度は何っ?)

「王子っっ、この方がっ?」

「そうだ」

(へ?)

「あなたが、ラウル将軍の仇を討って下さったハンターの方ですねっ。お会いするのを楽しみにしておりましたっ」

鼻息が僕にかかるくらい接近してきた。

「え?あっ、ええ…」

ちょっと引き気味に答える。

(「なにやら男臭いのぉ」)

鼻を摘んだような声で村正が苦笑いする。

(「男の友情というか師弟愛みたいなもんなんだよ…きっと…」)

ぐいっと手を掴まれ、ブンブンと握手をされながら僕は曖昧に笑った。

「本当なら私がラウル将軍の仇を討つべきなのに若輩ゆえに…しかし、今度は私どもがお手伝いさせていただく番ですっ」

「あ、はぁ…お願いします…」

「こいつは俺の専属の騎士でゲオルグだ。ラウルの愛弟子の一人だから間違っても裏切ることはない。近衛騎士団は今やレヴァインに操られている可能性があるが、後宮警護の騎士団にはレヴァインの息はかかっていないはずだからな」

王子の紹介にゲオルグさんが大きく頷いた。

「もちろんです。相手は王に毒を持った不届者、我ら精鋭30人が一人たりとも逃がしません」

「さて、首尾は上々だ。予定の時間になったら行くぞ」

何だか色々納得出来ないことがあった気がするけど、ゲオルグさんの強烈なキャラに押しきられてしまった。
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