FC2ブログ

記事一覧

魂の救済、そして

「っうおおおおおっ」

王様から渡された剣をレヴァイン卿が抜いて大きく振りかぶった。

(いけないっ)

だけど、助けるべきなのか。話を全て聞き、レヴァイン卿の内にある悲しみを知った僕には判断が出来なかった。

そして、それはここにいる皆の気持ちでもあったのだろう。

誰も動けなかった。

王様の顔は見えないけど、微動だにしない。

「ふうっ」

レヴァイン卿が大きく息を吐く。

『カラン…』

レヴァイン卿の手から剣が滑り落ちて床に落ちた。

「くっ…なぜっ、なぜだっ、陛下っ、あの時っ、あなたにジェームズの求めが届いていればっ、私達はっ…こんなことにはっ…」

レヴァイン卿の目から涙がとめどなく流れる。

「ジェームズ…リサ…皆…私は…………うっくっぅぅぅ」

「…レヴァイン…すまぬ…」

跪き、両手を床についたレヴァイン卿の肩に王様が手を置こうとしたその時、突然レヴァイン卿の様子が変わった。

「うぐぁぁぁぁぁっっ」

レヴァイン卿が大きな叫び声をあげる。

「レッ、レヴァインっ、どうしたのだっ?」

「うっがあああっ」

自分の片方の腕を掴んだ。

(レヴァイン卿…?何をしてるんだ?)

ガタガタ震える自分の腕を必死で押さえているように見える。

「やっ、やめろっ」

その手がついに押さえる手を振り切って掲げられた。

「うおおっ、やめろぉっ、陛下っ、離れっ…」

レヴァイン卿は最後まで言葉を続けることができないようだった。

「なんじゃっ、レヴァインっ、どこか悪いのかっ?」

王様もさすがに戸惑ったように立ち上がってレヴァイン卿に近づこうとしたけど、その腕を掴む者がいた。

「旦那様っ、いけませんっ、こちらへっ」

「何をするっ、テレサっ」

いつの間にかテレサさんが王様のそばにいて、無理やり王様を引きずって離れる。

それと同時にレヴァイン卿の掌を中心に周囲から黒い粒子が集まってくる。

そして、手の中に凝縮した粒子が黒い石を生成した。

(あの石…なんとなく…嫌な感じがする…)

「いかんっ、葵っ、レヴァインをっ」

(テレサさんっ)

突如、声が響いて僕の体が反応する。

僕は村正の鯉口を切って前に出た。

「腕を狙えっ」

「はっ」

レヴァイン卿まではわずか数メートル。

抜刀する。

だけど、ほぼ同時にレヴァイン卿の体を黒いオーラのようなものが覆う。

『キッィィィンッ』

(何っ)

村正が弾かれた。

「グオォォォ」

レヴァイン卿の雄叫びが謁見の間に響き渡る。

「何だっ、奴は何をするつもりなのだっ」

シーレ卿の言葉が終わる前に黒い霧が晴れた。

「なっ…」

その場にいた全員が絶句した。

黒い鎧に黒い籠手、顔は兜に覆われて見えない騎士がそこには立っていた。


◇◇◇◇

「ねえ、ジョシュっ、今声がしなかった?」

サラが今度はドアのほうに向かう。

「…え?そう言えば聞こえたような気もするけど…」

暇を持て余して居眠りをしかけていたジョシュが目を覚ます。

「違うのかな…?」

(なんだかお父様の声が聞こえたような気がしたけど…気のせいかな?)

「ジョシュ、ちょっと外に出てみましょうよ」

「えっ?」

「このままじゃ、いつまで経っても帰れないわよ。ちょっと外に出るくらいなら大丈夫でしょ?」

うーん、と伸びをしたジョシュは、それもそうかと思って立ち上がった。

「そうだね」


◇◇◇◇


「おいっ、どういうことだっ。合議の間が空っぽだぞっ」

レヴァイン派の貴族の一人が息せき切って仲間のもとに走ってきた。

「なんだとっ?」

合議の間にレヴァイン派の貴族達が集まった。

「これは…まずいっ、レヴァイン殿にお知らせしなければっ。レヴァイン殿はどこだっ?」

真っ青な顔でそれぞれが顔を見合わせる。

「たしか昼過ぎは軍務卿の執務室に籠られて法務卿、財務卿の書類を読んでおられたが…そう言えば見ないな…」

「まさかっ…裏切られたのかっ?」

「そっ…そんなはずは…」

そうしている間にも合議の間はレヴァイン派の貴族たちが集まってくる。

『ガチャ』

扉の開く音が静まり返った部屋に響き渡った。

「パーマー卿っ、貴様っ」

敵意のこもった視線の中をパーマーは落ち着いた様子で議長席に座った。

「皆さん、お気の毒ですが形勢は逆転しました。これよりここにいる皆さんは監禁させていただきます。また、ここにおられない方はこれから順次捕らえていきますので」

パーマーはそれだけ言うと騎士たちにその場を任せて部屋を出た。

(王子…面倒事は全て私ですか?全く…)


◇◇◇◇


「ねえ、これってどういう事?」

「そんなこと言われても…?」

サラとジョシュが王宮から出ようと門まで来てみると、多くの兵が王宮の周りを囲んでいたのだ。その数は二人が見ている間にもさらに増える。

「何なんだろうね?…っていうかこれってちょっとヤバイんじゃ…」

周りを見渡すとまるで自分達が囲まれているような気がして、ジョシュは心細くなる。

その時、一頭の馬が軍隊の輪の中に走り込んできた。

よほど急いで来たのか、馬が嘶くのを必死に抑えながら馬上の騎士が叫ぶ。

「報告しますっ、大規模な魔物が王都に向かっています。その数2000っ」

周囲の兵士がどよめく。

(大規模な魔物?こりゃ大変だ)

「なんだか大変なことになってるよね?」

「うん…どうしよう?」

場違いな二人はやっぱり部屋に戻ろうかと振り返った。その時、門の内側から一人の貴族が現れた。

「パーマー卿っ、今の報告は…」

パーマー卿と呼ばれた貴族はまだ若そうに見えるにも関わらず他の年配の貴族達が集まってくる。

「やむを得ません、この軍で止めましょう」

(黒い髪に黒い瞳かぁ、アリスを思い出しちゃうな)

てきぱきとした指示に兵達が引いて、パーマーと少しの兵だけが残った。

「あのぉ…」

サラが話し掛ける。

「おや?その制服はアヴニールの…」

何か思い当たるところがあったのか話が通じそうな感じがしてサラとジョシュの顔が輝く。

「そっ、そうなんです。あの…父に会いに来たんですけど…」

「今はちょっと難しいな。後日改め…」

そう言いかけたところでその目が大きく開かれる。

「危ないっ」

サラとジョシュが振り返る暇もなく、パーマーの手が伸びて二人を押した。

「うわっ」

さきほどまで自分達がいた地面に大きな爪の跡ができる。

「なっ、何だっ?」

振り返ったジョシュが見たのは体長が2メートル以上、角と尾を持った青い皮膚の悪魔の姿だった。

「ひぃっ」

二人が尻餅をついた姿勢で後ずさる。

「パーマー様っ、ご無事ですかっ?」

数人の兵が慌てて走り寄ってきた。

「グレーターデーモンっ、まさかっ、パーマー様っ、お下がりくださいっ。ここは我々がっ」

そう言うとサラとジョシュの目と鼻の先で戦闘が開始された。サラが胸の前で祈るように手を握る。

「手薄になったところで別動隊…それもグレーターデーモンか…、これは不味いな」

パーマーは周囲を見渡して独りごちた。

(グレーターデーモンは一体であっても騎士一人では勝負にならない…今残っている者で対処できるか…?)

実際兵が4人で戦っているが、戦況は思わしくなさそうだ。さらに、街に目をやると悲鳴や怒号が響いている。

(どうやらこの一匹ってわけじゃなさそうだし…)

パーマーの背中を嫌な汗が流れた。

「うわっ」

その時、一人の兵が転んだ。

もちろん、立ち上がるのを待ってくれる魔物はいない。非情にもグレーターデーモンの爪が倒れた兵に振り下ろされる。

「きゃあっ」

目を瞑って叫ぶサラの肩をジョシュがギュッと抱いた。

「うわあああっ」

サラの耳に兵の叫び声と、『ズバアァッ』と肉の切れる音が響く。

『ズシャ』

しばらくしてサラが覚悟を決めて目を開いた時、サラの目に映ったのは、想像していた兵士の死体ではなく、上半身のないグレーターデーモンだった。

「ぁ…」

「はあ…はあ、…た…助かった…」

尻餅をついていた兵が血塗れで立ち上がる。

「貴族さんよ、手が必要なら依頼してくれるかい?」

『ドスンッ』

グレーターデーモンの下半身を蹴り倒して一人の男がパーマーに近づいてきた。

フルプレートを着込んで異常に大きいハルバードを担いだ壮年の男をマジマジと見てパーマーの頭の中に光が差した。

「あなたはっ?…そうか、助かりました。ご助力をお願いいたします」

「よっしゃ、そしたらギルド総出で狩りを始めるぜっ。ヨアヒムっ、伝令だっ」

「おうっ、了解したぜっ」

フルプレートの男と猟師風の男を見送って、小さく安堵の息を吐いたパーマー卿の目に抱き合ったままのサラとジョシュの姿が映る。

「私は指揮のためにここに残りますが、君たちは王宮に戻りなさい」

「え?」

ジョシュはパーマーを見上げる。

「君たちも先程の戦いを見たでしょう?この街のどこにあれが現れるかは分からない。それならばまだ王宮の方が安全だ…」

『ドゴォォ』

パーマーが二人に話しかけている最中、パーマーのすぐ横を激しい衝撃が通り過ぎた。

「うわぁぁ」

数人の兵士が吹っ飛ぶ。

(なっ…?)

振り返ると、王宮の正門が吹っ飛んでいた。

(今度は何ですか…王宮から…まさか王子の身に…?)

「予定を変更します。私も王宮に戻ります。あなたたちも一緒に来なさい」
関連記事

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

スポンサーリンク

サイト内検索/作家・サークル・ブランド

変身  入れ替わり 憑依 まる寝子 安治ぽん太郎 若宮参太 赤髭  羅ぶい グレッグ僧正 林田虎之助 あむぁいおかし製作所 氷月 ToL●VEる ガットマキア RAYMON M小説同盟 Q akys本舗 DATE パルコ長嶋 桐下悠司 きつね長官 なるせ 谷口さん せみもぐら 枝空 犬神ラボ かかし朝浩 L.P.E.G. 忍桐ずん 砕骨子 大和田朋輝 あむ 命わずか H9  夢幻館 九条志玲 柚子鉄線 うえにあるみかん もちもち堂 龍企画 ぶーちゃん ジンギスカンの玉葱は俺の嫁 アサノシモン サナダ ゆきまろゆっきー TSFのF ダイナマイトmoca むらさきにゃんこバー エムシー販売店 HB あめしょー 狩野景 艦●れ いそふら 猫丸恋太郎 坂井リンゴ あるざ流人 U.R.C 大人の幼恥園 紫紀 ドウモウ Norn けんたろう 蜥蜴重工 鹿島田しき ノーリミット 宮里えり tes_mel Norn/Miel/Cybele かると LAZY_CLUB 稲葉COZY やまガラス 幾夜大黒堂 ヴァニラCREAM 泥酔桜国 午前七時の合わせカガミ 新堂エル 大嶋亮 一輪車でねこらっしゅ gallery_walhalla BANANA Cothurnus 水利硝 TS内燃機 夏川冬 無計画主義 ニイマルサン ウィルテイム 緑木邑 赤人 ピンクパイナップル 福龍 せぼい 恥辱庵 ひらたいら シルキーズ エロエ さいもん もくふう 高宮はいり 桐生真澄 男体化 神谷ズズ 狼亮輔 あべつくも まぐろどんぶり 松園 成田コウ 鈴月奏 双龍 PoRore トキサナ 座間翔二 龍炎狼牙 クラウド 永田まりあ キングピン ピンポイント 綾瀬はづき くろの 眠たい猫 蒼田カヤ OKAWARI 山猫スズメ アカギギショウ 雪月楓花 ふじや #define Hisasi 吉田犬人 NOIR 花妻見枝豆丸 真城の秘宝館 アロマコミック タケユウ 零覇 菅野タカシ 石野鐘音 零零零 飛燕 にくじゃが 君の●は。 舘石奈々 消火器 鶯羽佯狂 山田ゴゴゴ 一夢 田中竕 BENNY’S ダルシー研Q所 マグナプラン AV 大石コウ 白羽まと 工藤詩乃 spika 真黒皇子 久壁おと 上原ヨヨギ すずしろやくも あきちん  中川優 walhalla 立川立夏 @子猫 有栖リツカ ちり 都氏 能都くるみ 愛内なの 無限軌道 満足堂 酒井仁笹弘 松任知基 春日まゆ 緋衣響一 ココロコネクト gallery アパタイト ちょこばにら 橘真児 カワディMAX 花門初海 舞麗辞 しまちよ ごまさとし ゆきマンゴー 種梨みや ちみチャンガ TLB アシオミマサト 勇者乾電池 ねじろ 葛城ゆう りこ丸 さじぺん 極フェロ 高山ねむ子 式神くろ子 如月奏 ボクの女子力はあの娘のパンツに詰まっている。 SPINDLE 47.5% ほんじょう山羊 オジィ 八尋ぽち 雪乃つきみ 愛昧亭 高尾鷹浬 ボクガール 樋口あや エクスプロージョン あんにん 水姫七瀬 レトロスター アシオ スピンドル アクオチスキー先生 D-ivision 彩葉チヨ 伊駒一平 クリムゾン LIBERTYWORKS 風雅ゆゆ ikak 天鬼とうり 吹浦ハギ ポン貴花田 鳥之倉 TinkerBell コトキケイ しなのゆら アクシス bodied 岸里さとし ディーゼルマイン Medium ぬるはちぽんぽん 浅野屋 蔵乃 シュガーミルク 蒼沼シズマ 夜のひつじ タナカミノリ 椿山パリィ ゆうきつむぎ ケラトン メイビーソフト 森島コン 藤馬奈緒 雷蔵 百合原明 萌姫ねねね  小武 一夜猫の夢 早乙女もこ乃 松山はやて 福徳紗織 鳥茶丸 松阪剛志 愛昧亭うまみ 藤島製1号 桂あいり じぃすぽっと vivi-sectr 井ノ本リカ子 Lilith 月下冴喜 pastgadget 白濁系 高瀬むぅ ら○ま1/2 ヨノイ誠一郎 あまね紫狼 浅草寺きのと CrookedNavel ヨシフミカオル くりおね社 ろれろれ屋 小女子 フジツナ ピロンタン 小倉脩一 百合 いちよんよん taro 仁志田メガネ 蒟吉人 天野タマキ アロマフラッシュ! 納屋 くどうひさし 南京本舗   十月兔 るいす・まくられん ねとろもりこん 三夜 チロリアン 左カゲトラ ぷりてゐ まうめん だーくすぴりっと 合丼来来 ゆめみきらら りーるー ほりとも 四葉チカ 不確定空間 布施はるか 篠塚醸二 鎖ノム メロンバロン モフ2製作所 楽人唯夏 ふかふか天職 高槻遠名 bpm12 あましょく 南郷じんげる 南ちさと kupa Miel 托卵JP 花巻かえる Cybele さいだ一明 大橋薫 木ノ碕由貴 星逢ひろ 馬せんた 南乃映月 東方Project Quu 女騎士の城 我心達吉 うたのはかせ runa 白家ミカ みなこなみ RIKI サ●ーウォーズ なちすけ 雛瀬あや 日月ネコ ミッドナイトむぅむズ すみすず 柚木N' 絵を描くマン 眠り猫四郎 四八楼 TSF専用 地縛霊の巣 鉄巻とーます tsxy CHU-S たけし 睦茸 4階絵画室 美矢火 瀬奈陽太郎 144 とも福 脳縮還元 B-DASH JUMP とめきち はみ部屋 鉄腕うーぴー Red.D 虹のれん 白駒らい TSUBASA 高柳カツヤ 宇行日和 雨雅 若井いくお 伊佐美ノゾミ ハイエンド 千変万化式 アイド●マスター 壱状什 しおん majoccoid はるゆきこ 氷室芹夏 DLメイト 松波留美 福田りお たなかけいご みうら悶絶 みよし かふぇもかそふと Q-Gaku 九波ヒメヒコ 黒色彗星帝国 碧本さり 夏が夜かおる ZEQU 雑菌工業 風呂井戸ソフト しいなかずき 東航 天崎かんな チリモズク茶 KEN 汚惣菜屋 たいやきトランプ MasterMind 目指せ絵師様 さかもと(猫) もねてぃ たいやき 

スポンサーリンク

小説系相互リンクサイト様


Mikiko's Room

ゴシック系長編レズビアン小説ならここ。登場人物の変態度はNo.1



凛 騎 応 変!

近親相姦から浮気、人妻、寝盗りといった内容の小説サイト様。背徳感がたまりません。



18's Summer

少女たちが男に屈服させられる。寝取られ属性、陵辱表現に溢れた中身の濃い小説サイト様です。



制服フェチ小説

制服、女装、エロ、百合、触手などに加え、ストーリーもしっかり備わった小説サイト様です。可愛い挿絵もあって美味しいですぞ。



変態小説

『変態小説』の名に恥じない素晴らしい内容の小説サイト様。半端ない変態性を惜しみなく晒してくれます。


かみやなぎの官能小説もどき

性描写ばかりというわけでもないのに不思議にエロい。読み終わったあとも爽やかさの残る絶品小説です。

官能小説ランキング

ブログランキングに参加しています。 押していただけると励みになります。
にほんブログ村 大人の生活ブログ 恋愛小説(愛欲)へ



当サイト人気記事ランキング

ツイッターこっそりやってます