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服がないっ

「王都で一番人気のレストランってどんななんだろうねっ?」

僕は朝からルンルンだった。そもそも、ワクワクし過ぎて夜も眠れず起きたのも昼前。

「そうだっ、お昼御飯どうしよう?食べたら夜食べれないかな?」

「葵、落ち着け」

宿の部屋の中をうろうろ歩き回る僕に、ラルフが呆れたように今日三度目の「落ち着け」を言った。

「でもさ、でもさっ、外国の偉い人も来るお店なんだよ?予約がとりたくても一杯なんだよ?」

「葵…」

「ああっ、しまった、お店の名前も時間も聞いてないっ」

ラルフもさすがに諦めたようにため息を一つついて黙った。

『カチャ』

「葵、店の名は『シュクラン』だ。王宮の近くにある。予約の時間は夕方五時半からだ」

ジルがちょうど部屋に入って来て教えてくれた。

「それよりも葵、『シュクラン』はドレスコードがあるが、服は持っているのだろうね?」

「ドレスコード?」

「外国の要人も来る店だ。あまりカジュアルな身なりでは入れないのだよ」

さすがはヴァンパイアの始祖の血統、色んな事に詳しい。

「えっと…?」

僕は自分の服を見る。

マギーさんから半ば強引に買わされたニット生地のワンピース。

このワンピースは、ノースリーブなんだけど、まだまだ昼間は暑いからちょうどいい。襟回りがタートルネックというのも胸の露出がなくていい。

だけど体の線がはっきり出るのと短いスカート丈は何とかして欲しい。

僕も要望を伝えようとしたんだけど、「隠れてる方が創造力を刺激するのよ」と、マギーさんのよく分からない持論を聞いているうちに丸め込まれてしまったのだ。

それはさておき問題は…。

「ジル、この格好だと…?」

恐る恐る聞いた僕にジルが冷たく言い放った。

「かなり浮くだろうな。最悪断られるかもしれないな」

(そんなあ…僕、服持ってないよぉ)

ガックリと座り込んだ僕は時計を見た。

(昼過ぎっ、まだ間に合うかもっ)

「じゃあ、すぐに服を買いに行こうっ」

一人で街に出るのは不安なのでラルフを捕まえる。

「ラルフも服持ってないよねっ?」

ジルはスーツを持っているので宿で留守番。僕はラルフを引っ張って王都の街にくり出すことにした。

「ラルフ君、分かっているね?」

「…ああ」

「ラルフ~、何してるの?早く行くよっ」


◇◇◇


さて、服と言えば…僕らはまずマギーさんの宿を訪ねることにした。

今日も秋晴れの空は雲ひとつない。外に出ると僕は後ろで手を組んで鼻唄混じりに歩く。

「ラルフはスーツだよね?僕は何を着ればいいんだろ?」

後ろを歩くラルフを振り返った。

「さあな」

ラルフは素っ気ない返事で周囲を見渡している。

(ん?)

僕もキョロキョロと同じように周りを見てみたけどこれといって変な所はなかった。

さて、僕らの泊まっている宿とマギーさんの宿は通りが一筋違う。だから大きな通りの間にいくつもある裏通りを抜けた方が早い。

ちなみに、裏通りといっても庶民の住む下町で、危ない場所ではない。さすがに王都だけあって治安は他の街よりも格段に良いらしい。

「いらっしゃいっ、そこのお嬢さんっ、お菓子を食べていこうよっ」

裏通りに入るとすぐに、屋台のお兄さんが声をかけてきた。

「お菓子?」

甘く香ばしい匂いに僕の足が止まる。

「そうそう、おいしいよっ、彼氏さんも見てってよ。ほらっ、彼女さんが欲しがってるよ。買ってあげてよっ」

お兄さんもこれは脈ありと見たか、ラルフに向かって猛アピールを開始した。

(えっと、夕方から美味しいご飯を食べるから今は我慢…うーん。でも…いやっ、やっぱり…)

……数分後。

(僕ってそんなに物欲しそうな顔をしてたかな?)

ラルフに買ってもらった小さなカステラを頬張りながら僕は歩く。

「美味しかったぁ…」

ところが、カステラの入っていた紙袋をゴミ箱に入れようとした時、僕の体に異変が起こった。

『ドクンッ』

「あ…れ…?」

『ドクンッ』

(足が…)

膝から力が抜けて、僕は道の真ん中でしゃがみこむ。

「わわっ」

さらにバランスを崩してそのまま尻餅をついてしまった。

「葵っ」

すぐに僕の異変に気がついてくれて、ラルフが手をさしのべてくれる。

「ありがとう」

そう言って手をとろうとした時、ラルフの向こうに目を見開いたおじさんの顔が見えた。

「おっ、おおっ…」

フランクフルトを売っている屋台から、身を乗り出してかぶりつくようにしてこっちを見つめている。

(ん?何をそんなに…)

手を上げかけたままおじさんの視線を追って目線を下げていく。

開いたままの僕の膝が目に入る。

おじさんの位置からだと、ちょうどスカートの中が丸見えになって…。

(スカートの…中?)

顔から血の気が引くのが分かる。

「あっ、やっ」

慌てて膝を閉じて、ラルフの手を掴もうと出しかけていた手でスカートの裾を掴んで引っ張った。

(見えなかった…とか、ないよね…)

チラッとおじさんの顔を窺うと、鼻の下を伸ばして何だか嬉しそうだ。

(うわあん、あの顔…絶対見られた…)

下唇を噛んでおじさんを睨む。今度は恥ずかしさに耳まで赤くなった。

「うぅ…」

マギーさんは下着にもこだわりがあって、今履いているパンティはお尻に食い込む紐のような形だ。

下着の線が出るとカッコ悪いから必ず履くように、と口酸っぱく言われたから履いてきたけど、こんなの絶対人には見せられない、と思っていたのに。

(うぅ…見られた…)

「おお…お…」

低い声と人の気配で現実に戻ってきた僕の周りにはいつの間にか男達が集まっていた。よく見るとフランクフルトを売っていたおじさんも屋台を放って男達の輪に加わっている。

そして、男達の視線は僕が押さえているスカートに向けられていた。

(ちょっと…そんなっ、また見られちゃうっ…)

スカートの裾を引く手に自然と力がこもる。

「うう…あぁぁ…」

男達は呻き声をあげながら一歩一歩僕に近づいてきた。

(なっ、みんなどうしたのっ?)

僕の目には近づいてくる男達の股間が否応なく映る。

(ぁ…)

男達のズボンの股間は例外なくもっこりと膨らんでいた。

(興奮…してる…の?)

一人のおじさんと目が合う。昼間からお酒を飲んでいたのか、赤ら顔のおじさんは僕と目が合っても全く動じる様子もない。むしろ舌舐めずりをして、にやにや笑う。

なんだかその濁った目は僕の服の中まで見ている気がしてゾワゾワっと鳥肌がたった。

「あ…いや…」

僕の体が無意識に逃げようと動く。

『ニチャ…』

(あれ…?)

腿のつけ根の奥で粘液の絡む音がした。

(…おかしい…どうして…?)

「んっ」

なんだかおじさん達の欲情が伝染したように体に疼きが走った。

「はぁ…んくっ…」

その疼きは徐々に強くなって、視界は涙でぼやけ始める。さらにそれに呼応するように頭の中まで霧がかかったようにぼんやりとして、考えられなくなる。

男達の股間から目が離せない。

(こんな人数で襲われたら…)

「あぁ…」

深い吐息が口から漏れた。

「葵っ」

「…ぁっ」

ラルフの声で我に返った僕は、自分が男達の股間を凝視していた事に気がついた。

(…危ないとこだった)

ラルフは周りの男達とは違って正気を保っているように見える。

「ラルフ…」

「葵、立てるか?」

ラルフの手が伸びて今度こそ僕の手を掴む。僕がスカートを気にしながら立ち上がると、ねっとりした視線がスカートから胸に移った。

(胸が…)

見られている…そう思ったら、ニットを押し上げる胸の尖端がブラジャーの中で固くなる。

「ふあぁ」

ブラジャーに尖端が擦れて、甘い痛みが頭に広がった。

『ニチャ…ニチャ…』

早くこの場から逃げないと…そう思うのだけど、まるで無数の欲情した目に操られるように僕は腿を擦り合わせてしまう。

(あぁ、また立っていられなくなるよぉ)

あとからあとから溢れてくる粘液は小さなパンティでは吸収しきれない。太腿を伝ってニーソックスまで垂れる。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

男達は僕までほんの数歩のところまで近づいてきていた。

「んっ…あ…」

ネットリとしたたくさんの視線がまるで触手のように体を這いまわるように感じて思わず体をくねらせる。

(このままじゃ…)

僕は男達に組み敷かれて犯される自分を想像して体を震わせた。

(あぁ…そんな…)

「はぁっ、はぁぁ…だめっ、なのにぃ…」

何人もの男を相手する、そんなこと絶対嫌なはずなのに、なぜか興奮に息が荒くなった。
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