13.お盆2日目② 女の子の格好
予定外のアクシデントはあったけど、続いて二人で服を見に行った。
「こんなのどう?」
「うーん…」
お姉ちゃんが服を取っては僕に尋ねる。
「じゃあ…そうねえ、こっちならどう?」
「うーん…」
「もうっ、煮え切らないわねえ。」
「だってお姉ちゃんならもっとキレイ系の服の方が似合うし…」
「何言ってるのよ、あなたの服よ。」
「えぇっ!僕の!?」
「当たり前じゃないっ!」
お姉ちゃんが今更何言ってるの、と言う顔をした。
困ったなぁ、僕はどうせ男に戻るんだけどなぁ。
「ダーメッ、今日は私に付き合うんでしょっ。」
僕の心を読んだようにお姉ちゃんがいう。
「うーん…僕、イマイチ分かんないし、お姉ちゃんに任せちゃダメかな?」
「そういうと思ったわ。さっ行くわよ。」
えっ?どこへ?
あっという間に僕は店の奥の試着室へ。
なんかお姉ちゃんと一緒にいると引っ張られてばっかりだなぁ。
「はい、じゃあまずはこれね。」
「うん。」
よくわからないままにTシャツを脱いで渡された黒のTシャツに袖を通す。
「お姉ちゃん、着替えたよー。」
『シャッ』とカーテンが開きお姉ちゃんが腰に手を当てて僕を見る。

「思ったとおりね、似合うじゃない!」
「そうかなぁ…これ体の線がまるわかりじゃない?それにV字に胸元が開いてるしちょっと恥ずかしいかも。」
「良いわねー、よし、これは買いね。」
僕の意見は全然聞いてないし。…って、買うの??
「ちょっ、ちょっと待ってよ。そんなので良いの?」
お姉ちゃんは、「何言ってるの」と言う顔。
「もちろんよ、似合った服を買わないとねっ」
じゃあ次ね、ってもう次の服を渡してくる。
服を受け取ろうと腕を上げた時、脇がぱっくり開いていることに気がついて思わず「きゃっ」と手を下げる。
着るときは全然気がつかなかったけど、男の半袖と違って手を上げたら脇が丸見えになっちゃう。
前を見ればお姉ちゃんはニヤニヤ笑っている。
僕は怒った顔でさっと次の服を取ったつもりだったけど、きっと顔が赤くなってるんだろうな。
さて、次は、ピンクのTシャツと黒のミニスカートかぁ。
着替えて試着室の鏡を見る。
ミニスカートはフリフリで黒いスカート。
けどこれはちょっと短すぎるような…。
それより、何より…
「お姉ちゃんっ」
『シャッ』と開いてお姉ちゃんが顔を出す。
「これって中に着る用のやつじゃないの?」
Tシャツだと思ったものはキャミソールっていうんだっけ?
レースの肩ひもで支えるので肩も鎖骨も全部見えちゃってる。

「良いじゃないっ!似合ってるわ。ねぇ。」
いつの間にやら店員のお姉さんが横にいて「よくお似合いですよぉ」などと言ってる…。
おっぱいのところが開いてるわけじゃないけど…ちょっとしゃがめばおっぱいの谷間が見えちゃう。
「これじゃ恥ずかしくて外に出れないよ~。」
「じゃあこれで最後ね。」
はい、と渡されたのは白の花柄のワンピースだった。
あれ?普通だ。
ホッとして着てみると胸元が大きくV字型に大きく開いている。
けど、胸を隠すために胸当てのピンクの布が内側についているからマシかなあ。
鎖骨と背中が丸見えだけど…これならしゃがんだりしない限り胸元が見えたりしないよね…きっと…
今度は鏡の前で横から見たり手を上げてみたりする。
…これもほとんどノースリーブみたいなもんじゃ…手を上げたらこれも脇が丸見えだよ~。

「ね、どれを着て帰る?」
こう言われて、これ以上着替える元気の出ない僕は最後に着たワンピースのままにしました。
あとミュールを一足、肩掛けの小さなポシェットもその場でお姉ちゃんが決めた。
これだけのものを結局すべてをお姉ちゃんに買ってもらうことになってしまった…。
…ちょっとお姉ちゃんの選ぶ服は露出が高いような気もする…
断りたかったけど、お姉ちゃんに、自分は身長が高くてこういう服が着れないから、と言われると仕方ないかなって思っちゃって…。
さらに下着を買うとお姉ちゃんが言ったのはさすがに僕も断固断ろうとしたけど、お姉ちゃんの口車に乗せられて気がついたときには試着室に…はぁ。
下着も黒のレース付とピンクのTバックのそれぞれのセット。
「お姉ちゃーーんっっ」
はいはいって感じで諭される。
曰くスカートに光が当たった時に透けたら困るとか、ブラも透けたらかっこ悪いとか…。
で、下着ショップのお姉さんにお願いして買った服にその場で着替えることになった。
僕は今の服の方が着やすくて良かったんだけど、買ってくれたお姉ちゃんが言うなら仕方ない。
今着ている服はすべて脱ぐよう指示され、着る服はワンピース、下着はピンクっぽいTバックとブラジャーのセット。
まずはTバックを穿く。
お尻がスースーするよぉ。
毛が薄いせいで不細工ではないと思うけど…、じゃあ次はブラジャーかぁ。…ってブラジャーの着方僕わかんない。
「…お姉ちゃん?」
こそっと顔だけ出してお姉ちゃんを呼ぶ。
「ブラジャーの着け方僕わかんない…」
「あっ、そうね、忘れてたわ。ちょっと待っててね。」
お姉ちゃんがお店のお姉さんに着替えを手伝う旨を伝えに行った。
お姉ちゃんが戻ってくるまで僕はTバックだけって恰好で胸を手で隠しながら待つ。
時折近くを人が歩く音がする。
誰かが今このカーテンを開けたら…、そう考えると恥ずかしくて怖くてお姉ちゃんが帰ってきてくれた時には本当に安心した。
「しょうがないわねえ。ちょっと狭くてあれだけど…」
お姉ちゃんが入ってくる。さすがに二人で入ると試着室はちょっと狭い。お姉ちゃんの声が間近で聞こえる。
「ねえ、後ろを向いてくれる?」
「うん…。」
お姉ちゃんは僕にブラジャーをつけてくれた。
お姉ちゃんはいちいち耳元で話してきて、たまに指でおっぱいの敏感なところを触る。
そのたびに「んっ、うんっ」と声が漏れた。
絶対わざとだよ。
恥ずかしがって声を抑える僕をお姉ちゃんは面白がって弄んで、ようやく着替えが終了した。
Tバックがちょっと濡れちゃったかも…あとでトイレで拭かないと。
それからもアクセサリーを見たりしていたんだけど、お姉ちゃんがそろそろ時間だからと言うので駅に向かった。
お姉ちゃんは僕と一緒に帰るのかと思っていたんだけど、着いたのはターミナル駅。
これから実家に帰らず直接アパートに戻るのだという。
急にどうしたのか聞いてみると「早く遊君のDNAを調べてみたいし」ということ。
僕が家から着てきた服やスニーカー、ポシェットも、買ってもらった服もお店から宅急便で僕のうちに送ってもらっていた。
どうやらもともとそのつもりだったみたい。
僕もターミナル駅まで一緒に行って見送った後、家に帰るために乗り場に向かった。
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