31.海へいこう② カップルみたいに(⑱禁描写無し)
11時に集合予定の5分前に改札に着いた僕を和也が見つけて声をかけてくれた。
「ゴメン、和也くん、待った?」
「いえいえ、それより先輩大丈夫ですか?食中毒って、見舞いに行った方が良かったかなあ。」
「大丈夫っ、大丈夫だから!昨日病院でもう大丈夫って言われたみたいだしっ!せっかくだから楽しみましょっ!」
お見舞いになんか来られたら困っちゃうよ!
「そうですか?…うん、そうですね!先輩の分まで楽しみましょう。あっ柚さん、僕の事は和也って呼び捨てにして下さい。」
「うん、わかった、和也。」
電車では和也はさりげなく僕に手すりを持たせてくれた。
「柚さんは今日も可愛いですね。服も似合ってます。」
今日は以前お姉ちゃんに買ってもらったキャミソールにひらひらのスカート。
以前買ってもらった服装だ。
一応夏用の薄いカーディガンを今は着ている。
和也はブルーのTシャツにベージュのシャツ、下は白のチノパン
茶髪にピアスの和也と自分はきっとまわりからはカップルだと思われてるだろうな。
お姉ちゃんの言葉が思い出される。
「いい?遊君、必ずエッチして来るのよ。その場ではおそらく戻らないだろうから大丈夫。」
「…さん?柚さん?」
和也の顔が僕の目の前にあった。
ボッと顔が赤くなる。
「なっ、何?」
「いえ、ぼおっとしてたんで。疲れてるのかなって。」
「ゴメンね、ちょっと考え事してた。ところで和也は泳げるの?」
「もちろんです。これでも小学生の時はスイミング通ってたんですよ。柚さんはどうなんですか?」
「えっと…実は泳げないの。」
「大丈夫です。オレに任せて下さい。」
和也は話上手だ。楽しくおしゃべりしている間に電車は目的の駅に着いた。
駅を降りると潮の匂いがして少し歩くと目の前に海が広がった。
早速更衣室に入って僕は日焼け止めを塗ってお姉ちゃんに買ってもらったビキニに着がえて更衣室を出た。
「和也っ!」
既に着替え終えて待っていてくれた和也に声をかけると、なんだか和也の顔が赤い。
「どうしたの?」
「いえ、柚さんが可愛くて…」
ストレートな褒め言葉に僕の顔まで赤くなる。
「オっ、オレ、パラソル借りてきますね。待ってて下さい。」
和也が走って行った。
和也の後ろ姿を見送って、しばらく待っていると、いかにもチャラそうな男に声をかけられた。
「キミ、今一人?オレ達男ばっかりでつまんないから一緒に遊ばない?」
ちらちらと僕のおっぱいを見てる。
「あのっ…」
「あっ、友達と来てるの?なら友達も一緒にどう?」
「いえ、あの…」
「いいじゃん、ちょっとだけ、こっちに来てよ。」
手を掴まれて引っ張られる。知らない男に触られて体にぞわっと鳥肌が立つ。
怖いっ…和也っ
「いやっ」
そう言ったとき、
「柚、ゴメン、遅くなった。」
和也が帰ってきた。
「和也っ!」
男の手が弱くなったので急いで和也にくっつく。
「ちっ、彼氏付きかよっ!」
男が和也を睨みつけて去っていく。
はぁ、良かったぁ。
ホッとして和也を見ると顔が真っ赤だ。
僕は和也の脇腹におっぱいを押し付けるように立っていた。
ばっと離れる。と同時に耳まで赤くなった。
「ゴメンなさい!くっついちゃってっ!」
「いえっ、オレっ…も柚って呼び捨てにしちゃって…いっ、行きましょう。」
ぎこちなく二人で歩いて、空いているところにパラソルを立てた。
荷物を置いて波打際で遊ぶ。
照り付ける日差しにほてった体に冷たい水が気持ちいい。
腰までの深さで遊んでいたら波が来て僕の顔に掛かる。
「きゃっ」
和也が笑った。もう、馬鹿にして。
和也に水をかけた。
「うわっ、ハハハッっ」
しばらく遊んで、一度パラソルに戻る。薄いパーカーを羽織ってのんびり二人で話をする。
ふぅ、海って楽しいな。
「そうだ、柚さんゴムボートでちょっと遠くに行ってみませんか?」
「深いとこ…?」
「不安ならやめときますけど、さっきパラソル借りに行った時、ゴムボートもあったんで。」
ゴムボートかぁ、それなら大丈夫かな?
「良いよ、お腹も空いたし。一緒に行こっ。」
もう変な男にナンパもされたくないしね。
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