鍛冶依頼/イリスのその後

あれからもほとんど日を置かず三郎に犯される千手丸(というか僕)。
一度快感に負けてしまった千手丸がどうなってしまうのか心配したけど、翌朝起きた時には元の千手丸の意識に戻っていた。

どうやら僕が防波堤になったようで、完全に屈服はしなかったらしい。

(あんまり繰り返されすぎると、千手丸に戻れなくなりそうで怖いけど…)

それは千手丸も感じているようで、三郎に迫られると最初は恐怖の感情を抱く。

(それにしても、三郎は絶対おかしい!!)

恐怖を感じている千手丸だけど、毎度あっという間に快感に溺れさせられてしまうのだ。

(媚薬…ではなさそうだけど…)

体が敏感になる理由が分からない。以前、三郎が触れていないはずの時に愛撫されるということがあったけど、あれが一体何だったのかはやっぱりわからないままだった。

そんなことを考えながら歩く僕の前に小さなあばら家が姿を現した。

「ここかぁ」

家の裏の方から煙が立っていることから、家にいるようで一安心。
この日、千手丸の意識がやけにうるさく訴えてくるため、山の麓にある村正の工房を訪ねることになったのだった。

周囲には何もなく迷わずに済んだのは助かったけど、見るからにボロボロで、僕は大丈夫かなあ?と思いつつ木戸を叩く。

「こんにちは!」

(…あれ?留守のはずないんだけど…?)

「こんにちはー!!お留守ですかぁー!?」

しばらくしてガラッと開かれた。

「う・る・さ・いわね!!誰よっ!!…ってアンタ…何の用なの?」

顔を出したのはアメ…じゃなくて菖蒲だった。

「えっと、刀を打っていただきたくてきました」

胡散臭そうに僕を見る。

「アンタ…本当に来たのね」

「?」

「ちょっと調べさせてもらったわ。アンタ、ここの領主の子なんでしょう?それなら選び放題でしょ?そんな金持ちの遊びにうちの村正を使わないで!!」

僕には千手丸の心が震えるのが分かった。
選び放題、僕もケルネの家で刀の声を聴いていたころのことを思い出していた。毎日地下室に入っては何も聞こえなくて落ち込む日々。

(うん…自分にピッタリ合った刀を求める気持ち、分かるよ)

僕は千手丸のためにも気合を入れてお願いすることにした。

「いえ、遊びではありません。以前私を見ただけで刀の長さがあっていないとおっしゃった村正殿の腕に感服いたしました。ぜひ彼(の腕が)が欲しい、私のためだけにお願いしたいのです!!」

なんだかまた千手丸の心が震えている。きっと僕の言葉に感動したんだろう。

(やっぱり剣士を志す者同士、お互いの気持ちが分かっちゃうんだよなあ)

「ふ、ふーん、な、なんとなく分かってたけど…そこまで言うなら取り次いだげるわ。そこで待ってなさい」

菖蒲が少し顔を赤らめて家の中に消えた。それを見送って、ふう、と僕は息をついた。心臓がバクバクしている。

単なる夢じゃなくなってから、千手丸と僕が共存するようになったこの体。千手丸の意識は基本的には心の奥にあって、僕が主導権を握ることがほとんどなんだけど、時折、千手丸の意思が強制的に僕を動かすこともある。

今もなんだか必死で僕を止めようとする千手丸の意思を感じるのだ。

(千手丸も刀を打ってもらえるか不安なんだな。いいからいいから、ここは僕に任せて!!)

なぜか千手丸が天を仰いでいる姿が見えた気がしたけど、きっと気のせいだろう。

それからすぐに村正がいつもと同じ柔和な笑みとともに現れた。
後ろには赤い髪の菖蒲ではなく青い髪の少年がいる。

「お待たせしてすみません、ああ、そうだ、この子は紫苑(しおん)と言います。菖蒲と一緒に私の日常の世話をしてくれているんです」

紫苑君は見るからにハルだった。

「私の師匠の形見としていただいてから…っと、そうそう、ちょっと頼まれていた鍬を打つ必要がありまして鍛冶場にいたもので、お待たせしてしまいました」

話しかけたところで菖蒲が玄関から出てきて、途端に話を変える村正。

(メチャクチャ菖蒲の尻に敷かれてるじゃん)

僕もアメにはいつもツンツンされているので、思わず笑ってしまった。

「ええ、刀だけでは食べていけませんから…」

刀鍛冶が鍬を打っていることを笑われたと勘違いしたのか、村正がちょっと悲しそうな顔をした。
千手丸の非難の眼差しが痛い。

「いやっ、そういうつもりで笑ったのではありません!!ただ、菖蒲殿に尻に敷かれている姿が面白かったので!!」

「ああ、そうでしたか…それなら良かった」

村正がほっとしたような顔を浮かべて笑った。

「うん、確かに菖蒲にはいつも怒られてばかりです。いやあ、紫苑と違ってですね…」

村正の背後だから本人は気づいていないけれど、僕は笑っていた顔が引きつる。

「紫苑と違って…何?」

氷のような声に村正の顔が固まったのだった。

「ええっと…ああ…いやあ…千手丸さんのお話を伺いましょう」

「なるほど。では私にあなたの…ゴホンゴホン」

「いかがしましたか?」

(あれ?なんで咳き込んだんだろ?おかしいなあ)

「ぜひ、私の刀を打っていただきたいのです」

勝手に声が出た。

「その…私でよろしいのですか?もっと世間に名の通った刀鍛冶師もいますのに…」

「あなただからこそお願いするのです!!」

強く言い切った千手丸。そして村正とがっちり握手をして村正の鍛冶場で説明と前金を渡してその日は帰った…んだけど、なんだか心の中の千手丸の機嫌が悪かった気がしたのは気のせいかなあ?

◇◇◇◇

セピア色の視界に死んだ仲間たちの首が並んでいる。
私は彼らを助けることはできなかった。そして、目の前には満面の笑みを浮かべて剣を振るう…アテナ…様!?

「うわああああああああああ!!」

飛び起きてそれが夢だったと理解した。

「ん?ここ…は?」

「ここは私の研究室だ。やっと目が覚めたか」

目の前でフラスコにコーヒーを入れているのは、アオイの診察をした金髪の医者だった。

「私を運んでくださったのですか?」

どうもこの男には逆らえない何かがあるように感じて無意識に丁寧な言葉となった。

「運ぶ?いや、自分でここまで来たのだ。ドアの前で寝ていたのでここで休ませていた。一応医者、ということになっているのでな」

(確か私はあそこで倒れて…まさか無意識で移動できるはずもない…)

脳裏に浮かぶのは地獄のような光景。先ほど見た夢もその残滓のせいだろう。

(あの場にいたのは私以外には不気味な男が二人…か)

一人は巨躯のアオイが探している男。もう一人は小柄な頭の禿げた男だが。

(どちらかが運んでくれた、ということか…)

「巨躯の男と禿げた小さな男に見覚えはありませんか?」

「うむ…巨躯の男ならばおそらくは知っている。私がここに来てまだ数週間ほどではあるが、一度階段に向かう姿を見たことがあるな。禿げた小男でスケベな男なら知っているが…」

「いえ、そのような男ではないと思います。あの場で立っていられただけでも歴戦の戦士だと思われます」

イリスは医者の言葉を冗談だと思って笑い飛ばしてふと考えた。

(あの巨躯の男は何らかの力で裂け目を広げようとしていた。そして、あの小男はそれを止める訳でもなく見ているだけ…二人は仲間なのか?)

いや、違うな、とイリスは思った。

(巨躯の男は明らかに消耗していたし、苦し気だった。もし仲間であるなら助けないはずがない…だとすると、あの小男は何が目的なのか…裂け目の様子を確認しているとしたら…)

陛下やゼノンの部下だろうか。イリスはそこまで考えて頭を振った。

(だとしたらやはりおかしい。私をここまで連れてきてくれる理由にならない…駄目だな、まだ情報が足りなさすぎる)

「ありがとうございました。もう大丈夫そうなので私は戻ろうと思います」

いったん戻ってアテナ様やアオイの元に戻ろう。イリスはそう思ってベッドを降りた。

「うむ。衛兵にはこれを渡せば通してくれるだろう」

すると、医者は一枚の紙を差し出す。そこにはイリスにアオイについての詳細を伝えるために医者が呼んだ旨が書かれていた。

「これは…ありがとうございます。ヴラド…殿?」

「で、だな、一つ頼まれごとをしてほしいのだが」

医者がもう一つ手紙を手渡してきた。

「これをアオイのところにいる少年に渡してほしい」

「ハル君に…ですか?それは構いませんが…」

この医者とハルの関係が分からないが、医者は特にアオイとは関係ないという。

「くれぐれもよろしく頼んだぞ」

もう少し詳しく聞きたいところもあったが、この医者を相手にするとどうも委縮してしまい、結局気がついた時には手紙を二通持って廊下に出ていた。

◇◇◇◇

「どうやら、イリスが裂け目を知ったようです」

アキレウスにゼノンが報告をする。

「ほう…見たのか?」

これは、地下三階に行って無事に戻ってこれたのか?ということを意味する。

ゼノンは頷いた。

「はい」

「くっ!!ははははははははっっっっ!!そうかあ!!あれを見て無事戻ってきたかっ!!アテナの騎士にしておくには惜しいなあ!!なあ、ゼノン!!」

そう言われて、ゼノンは歯を噛みしめる。彼は地下三階に降りることはできなかった。階段で一歩も動けなくなったのだ。

「確か、あの女は…ヴァンパイアと…それ以外に何の血を引いていたっけな?」

これはゼノンへの質問ではなかった。

「ん♥…ギュボッ、ギュボッ…んあ♥…お父様ぁ…もっとぉ…♥」

股間にうずくまる愛娘。今は剛直を口いっぱいに頬張っている。

「おい、アテナ、聞いてたか?イリスは何の血を引いているんだ?」

アキレウスはアテナの首にはめられた首輪から伸びた鎖を引く。

「ん…イリスの血れすかぁ?…んんー?ヴァンパイア以外は知りませんの」

「そうか、知っていたらこいつを引いて犬のように後ろから攻めてやったのになあ?」

「犬みたいに…♥」

アテナは想像しただけで疼いたのか、ゴクリと唾をのみ込んだ。
だが、そのあと、犬のようにしょんぼりと俯く。

「ごめんなさいお父様…アテナも本当に知らないの…あの娘とそれは聞かない約束にしてたから」

「ふーん、アテナ。じゃあ、次だ。これに答えられたら後ろから獣の交尾のようにしてやンぞ?」

アテナが顔をぱっと上げた。もう既に目は潤んで準備はできているようだった。

「あれは処女か?それと男はいるンか?」

「それならわかりますっ♥あの娘は処女ですぅっ♥それと恋人って言っていいのかなぁ?幼馴染の男の人が気になってるみたい♥」

その言葉にアキレウスの股間の力が増す。包んでいた両手でそれを感じてアテナがビクッと体を震わせた。

「お前も可愛い近衛と一緒に可愛がられたい、だろ?」

「はいっ!!イリスにも気持ちよくなってほしいですぅっ♥」

鎖でアテナに後ろを向くよう指示すると、アキレウスは豊満な尻を掴んだ。

「さあて、入れるゼ!!」

鎖をぐっと引くと首の絞まったアテナの膣がきつく締めつける。

「おうおう、処女ンときみたいな締めつけになりやがった!!」

「あんっ♥ぐっ♥ぐむむっ♥♥」

苦しげな顔の中に愉悦に表情を滲ませるアテナ。

「はっはっはっはっ!!楽しみになってきたゼエ!!」