14周目 9月24日(金) 午後8時00分 島津政信

14周目 9月24日(金) 午後8時00分 島津政信

(おかしい…)

洗面台の鏡に映った自分の体を見つめる。鏡には女の子が小首を傾げていた。

やはり控えめに言っても高樹は可愛らしい。瞳は大きく鼻はスッと通っているし、唇は小さくプルンとした、テレビのCMで『触れたくなる』と言っていた唇そのものだ。

確かに柔道にしか興味のなかった自分だが、これだけ可愛い女の子が同じクラスにいたなら気づいてもよさそうだが。
そう言えば火曜日に登校したとき、なんだか周囲の視線を感じたし、葛城も少し驚いた顔をしていた。化粧なんて当たり前だけどしたこともない私のために、高樹が薄目の化粧にしてくれたからだろうか。

(それにしても…あああっ)

鏡の中で少女が頭を抱える。

(今日も琢磨にヤられた…。それも学園で…)

放課後のことを思い出して私は自己嫌悪に苛まれた。
まず思い浮かぶのは琢磨の臭いだ。あの臭いを嗅ぐと体から力が抜けて言われるがままになる。
いや、琢磨の言葉に逆らえないだけではない。むしろ、意識していないと私の方から寄って行ってしまうのだ。

冷静になると、この体は高樹のものだし、人の体でこんなことをする自分は最低だと思うのに、恐ろしいことにその時はそれが嫌だとは全く思わないのだ。

(催眠術…?いやいや、そんなことはありえない)

さらに今日は帰りの電車の中で衝撃的なことが起こった。カーブで乗客が動いた、ただそれだけのふんわりした空気の流れで漂ってきたおじさんの臭いに体が反応したのだ。

(琢磨だけじゃなく、男なら誰にでも犯されたいみたいじゃないか…)

鏡に写る少女の目に涙が浮かぶ。

(私は…わたし?…ぁっ)

自分の事を『私』と言い始めたのも最初は高樹の振りをするためで、頭の中では『俺』だった。
それが今では頭の中でも『私』で定着している。セックスの最中に琢磨から刷り込まれたのがきっかけとはいえ、今では時折自分がもともと女であったような錯覚すら覚えることがあった。

(女装癖…女性化願望…)

いやいや、と頭を振る。

(そんなはずはない、わた…俺は男だ、俺は男だ…そうかっ)

不意に頭に一つの考えが浮かんだ。

(高樹だって柔道は出来るし、元々の体の記憶がそうさせるんだ)

この考えが後に俺を狂わせ、救うとはこの時は全く想像もしていなかったが、これで少し落ち着いた。

その時、チャイムが鳴った。

『ピーンポーン』

来た。琢磨の去り際の『今夜も行くからな』という言葉を思い出す。

俺は自分の格好を見る。今俺はシャワーを浴びて部屋着のTシャツワンピースに着替えていた。
タンクトップみたいに肩がまるまる出ているけどどうせ脱がされるだけだし。

既にその考えがおかしいことに俺は気づいていなかった。

◇◇◇

琢磨は勝手知ったるように、キッチンに向かうとビールを片手にリビングに戻ってきた。それからソファにドサッと座る。

「美紗、こっちに来いよ」

ソファに座ってソファをボンボンと叩く。

(なんか昼間と違う?)

いぶかしみつつ俺が隣に座ると、琢磨からは既にアルコールの臭いがした。

「なあ、お前は俺のもんだよな?」

「は、はぁ…」

どう答えたらいいかわからず前を見つめたまま曖昧に返事をしていると、缶ビールを顔に押し当ててきた。

「ひゃんっ」

ビクッと顔をあげると予想外に真剣な顔があって驚いて顔をそらす。

「まだ分からないのか?」

そのまま肩を抱かれてグッと体を引き寄せられた。

「ぁっ、ちょっと、えっと…」

「逃げようとした分、今日はお仕置きするぜ」

アルコールに加えて少し汗くさい男の臭いが鼻をくすぐる。

「ぁ…」

(これは…ダメだ…)

これまでと同じ。琢磨を押し返そうと込めていた力が抜けた。

「ほらな、お前はもう俺から逃げられないんだよ」

私の肩にまわされていた琢磨の手がそのまま胸元に入ってこようとする。

「いいのか?手が入っていくぞ」

「あっ、ダメッ」

慌てて琢磨の腕を掴もうとしたけど、男の力に今の高樹の体ではビクともしない。琢磨は俺が抵抗するのが面白いのか笑って眺めている。

「あっ」

それからあっさりと大きな手がブラジャーの上から膨らみを包み込んだ。

「気持ちいんだろ?…っと」

琢磨の腕が素早く動くと、突然胸を押さえていたものがなくなった。

「ぁ…」

浮き上がったカップの隙間に優しく形を確認するように這いまわる手の平。

「ぁっ、んっ、んはぁ…」

指が固く尖った部分に近づく度にビクビクッと震える。

「お前が逃げられねえ事を分からせてやる」

乳首をキュッと摘ままれた。

「あぅっ」

前のめりになろうとする私の体は強い力で無理やり背もたれに体を押しつけられた。涙目で琢磨を見上げる。

「そうそう、その目だ。…その目で男を誑かしたんだろ?」

そう言うと琢磨がソファに俺を倒して覆い被さってきた。

「ぁ…」

目の前に琢磨の切れ長の瞳があった。
俺は思わず目をそらす。

「おらっ、こっち見てろ」

「やっ…ぁっ、んっ、ちゅっ」

琢磨の舌と一緒に煙草とアルコールの臭いが口の中に入ってきた。舌が絡めとられて吸われる。

(これ…ああ…)

絶望的なまでに気持ちがいい。

「あっ、んっ、はぁ…」

舌が吸われる度に体が開いていくのが自分でもハッキリと分かる。

「キスだけで蕩けちまったか?」

そう囁く唇がかすかに俺の唇を掠めた。

「ん…」

「もっと強く吸ってやるから…ほら、舌出せよ」

琢磨の言葉には逆らえない。舌をンーと伸ばすと舌先に吸いつかれて再び痛いくらい吸われる。

「んちゅっ、んっ、んんっ」

チュ~っと強く吸われると頭がくらくらする。

「チュッ」

「んはぁっ」

唇が離れる頃には私の息は荒く、胸が大きく上下していた。

(あ…ん…)

目を閉じていると、肩紐が二の腕にずらされた。ブラジャーも腕を抜かれて外される。

「くそっ、やっぱりお前は最高の女だぜ」

「お…んな?」

「ああ?こんなエロいカラダしてる男なんてキモいだろ?お前は最高の女だ。誰にも渡さねえからな」

(女…そうか…今は高樹の体だから…)

高樹の体だから仕方ない。それが免罪符のように俺の中に染み込んで、『俺』から『私』へと変わっていく。そして、その心の変化は私の体を変える。

これまで心のどこかにあった防波堤。それは高樹への罪悪感であり、自分は男であるという自覚。それらがこれまで快感の波にさらわれても完全に堕ちきるのを紙一重で防いできた。
だけど、今、その防波堤の決壊によって、私は快感の波の前で無防備に体を晒すこととなった。

「ああっ」

おもむろに固くなった先が熱い粘膜に包まれる。

琢磨が胸の先に吸いついてきたのだと気づいた時には、これまで以上の快感の波に飲み込まれていた。

「はうっ」

歯の端が当たると肩がピクッと反応してしまう。
甘噛みだし痛くしないはずだけど、その僅かな恐怖がスパイスになる。

「あっ、んっ、くうぅぅぅっ」

コリコリと歯と舌の愛撫が続いて、それから、今度はうって変わって、まるで傷を舐めるかのようにチロチロと優しくなぞられる。

「あっ、んっ、あっ、きもちいっ」

口から甘えた声がでてしまう。

「ははっ、胸を反らして、そんなに、欲しいのかよ」

乳首を口に含んだまま喋られると、色んな感触にビクビクと震えた。

「あっ、そんなぁっ、しゃべらないでっ」

私は思わず目を閉じて琢磨の頭を掻き抱く。

「ここなんだな?どうだ?」

「ひゃぁんっ」

そして、ひとしきり胸の愛撫が終わると今度は膝に手が置かれた。

「あっ、そこっ、んっ」

スカートを捲り上げながら太腿を上ってくる。

「そこがどうしたんだ?」

琢磨の声が思った以上に間近で聞こえた。

「ぇ…」

目を開けると今にも触れそうな距離に顔がある。

「んっ、ふぁっ」

視線を交わらせたまま、太腿を撫でる琢磨の手はさらに上へと登ってきた。

「早く答えろよ、そこが何なんだ?」

再び同じ質問をされて、だけど、私は口ごもってしまう。

「そ、そこは…んっ、ひゃぁんっ」

ついに手が太腿の付け根に達してショーツの隙間から指が入ってこようとした。

「だ、だめ…ぇ…」

「なんでだ?」

唇が触れないギリギリの距離。

「ぁ…」

息がかかる。思わず唇を尖らせたけど、琢磨はスッと顔を引いて私の唇は空振りになった。

「どうして駄目なんだ?」

指は隙間から入って割目の脇をくすぐるように動く。

「ぁ…ん……ぁ…ぁ…」

いつまで経ってもそれ以上先に進まない指に焦れた私の腰が動いた。

「そら。どうしてか言えよ?」

(も…だめ…この体のせいなんだ…)

「きもちよく…なる…から…あっ、はあっ、ゅ、ゆるしてぇ…」

最後は消え入りそうな声になった。こんな声でもほとんど唇が触れるこの距離だからしっかり聞かれただろう。

「そうか、駄目か。じゃあ止めるか?」

私の手が琢磨の腕を掴んだ。だけど、それは離すためではない。

「やめないで…おねがい…もっとして…」

私のおねだりに、琢磨がようやく満足したように目を細めた。

「よしよし、ちゃんと言えたご褒美だ」

それから、ようやく二本の指先が私の体に入ってきた。

「きったぁっ、あっんっ、あっ、はぁぁっ」

琢磨の指は私の中を広げ、抉り、擦る。

「あっ、はぁっ、んっ、ふぅぅっ、んっ、あっ、イクっ、イキそっ」

「一回イカせてやるよ」

太い腕を掴んでいた手は今は離れて、今度はソファの布を握って、それから琢磨の羽織るシャツを掴んでいた。その手が絶頂を前に震え始めた。

「んっ、ちゅう、ちゅうしてぇ」

私は琢磨のシャツを引っ張った。

「いいだろう、だがな、お前が誰のものか、ちゃんと言ってからだ」

私は悩む間もなく答えた。

「ああっ、琢磨のっ、私は琢磨のモノですぅっ」

答えると同時に、唇が塞がれた。
ずっと触れられる距離にあって、でも触れることのできなかったのに、それが叶うときはあっという間もなかった。

「んんんっ、ちゅっ、んあっ、んっ、んっ」

私の体の中で琢磨の指が暴れる。

「んああっ、はげしっいぃっ、んっちゅっ」

舌を催促されて、差し出すと強く吸われた。

「んんんっっっっ、んああああっ、あっっっ」

そして、その瞬間、私は達した。

2件のコメント

久々に琢磨に強引に犯されるのもいいですね。
6周目の頃は恋人としてという感じだったので、無理矢理感が上がってますが、フラれた原因が別の男になるとこうなっちゃうんですね。
これはこれで何回でも読んじゃいます(笑)
個人的に女の子になった島津君がかなりお気に入りなので、これからも楽しみにしています!

> 久々に琢磨に強引に犯されるのもいいですね。
> 6周目の頃は恋人としてという感じだったので、無理矢理感が上がってますが、フラれた原因が別の男になるとこうなっちゃうんですね。
> これはこれで何回でも読んじゃいます(笑)
> 個人的に女の子になった島津君がかなりお気に入りなので、これからも楽しみにしています!
コメントありがとうございます。
せっかく周回する設定なので出来るだけ設定を活かそうと今回はこういう方向になりました。状況が変わると関係等も変化していくってのが上手く描ければいいんですけど…。
また、自分は登場人物が多い作品を読んでいると誰が誰だか分からなくなるので、出来るだけ同じキャラを使いたい、というのがあるのでもう一人か二人過去の周回の登場人物を登場させようと思っています。
ここからちょっと辛い話になるかと思いますが、暖かい目で見守っていただければと思います。

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