最後の7日間 9月21日(火) 午前8時10分 島津政信
(あれ…?)
いつの間にか胸を揉む手が1本になっていることに気がついた。
(あっ…そこはっ)
胸から離れた手がスカートの中、パンツを触ろうとしていることに気がついて、慌ててその手を両手で捕まえた。
「んっ」
俺は渾身の力で腕を離そうとする。
人ごみの中で密かな攻防が繰り広げられた。
女の力とは言え、両手で本気で止めようとすると痴漢も片手では対処できないようだ。
俺がこれはなんとかなりそうだと思った瞬間、乳首を強くひねられる。
「ひゃんっ」
胸に意識が向いて一瞬力が抜けたところで股間に指が届いた。
「ふぁっ」
乳首を触られた時以上の快感が頭を突き抜ける。
(あぁっ…これ…ヤバイ…)
体が無意識にビクンッと震える。その衝撃で痴漢の手を離してしまった。
(…あっ…まずいっ)
予想通り、邪魔するものがなくなった指はパンツの上から割れ目を行き来し、同時に胸が激しく揉まれる。
「んんっ」
無理やり女の快感を初めて味わわされたカラダは言うことを聞かない。
(手を止めないと…)
足を閉じようにも、足元のカバンのせいで閉じることもできない。
それでも、なんとかしようと股間に手を持っていくと、腕をつかもうとすると、ブラジャーの中で尖って敏感になった乳首を摘まれて力が抜ける。
その繰り返しが徐々に抵抗しようとする心を奪い去っていった。
そして、もはや指を止めるものがなくなって、痴漢のなすがままになる。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
下を向いて耐える。
俺の頭の中から声を出すという発想は完全に消えていた。
そして胸を揉んでいた手がブラウスのボタンにかかった。
「えっ、や…めろっ」
思わず声を出したが、思った以上に声が小さく、かすれて、周りに届かなかったようだ。
痴漢は味をしめたように、そのままブラウスの中に手を入れてきた。
(うぅ…どうしたら…)
どうしたらいいのか悩んでいると、ブラジャーのカップの隙間から入った指が乳首に当たる。
『ビクッ』
(直接だと…こんなに…)
指の腹が乳首を押しつぶすようにこね回す。
「ん、ふぅっ…んんっ…んっ…ふぁっ…」
ずっと同じ姿勢でいるせいもあって膝が笑い始めた。
(だめだ…立っていられなくなる…誰か…助けてくれっ)
その時、俺のブラウスに入った男の手の動きが止まる。
(なんだ?)
そう思って見ると男の手首を別の太い手が掴んでいた。
「おい、おっさん、何痴漢してんだ?」
高樹の野太い声に周りの乗客が気がついた。
おじさんの手は俺の胸に入っている。言い逃れできない状況だった。
周りの好奇の目が俺と高樹、それに痴漢に注ぐ。
俺は下を向いて早く時間が過ぎるよう祈った。
次の駅までは大した時間ではなかったはずだが、俺にはとても長い時間に感じた。
駅に着いてドアが開いた瞬間、痴漢は死に物狂いの力で高樹の手を振り切ると走って出て行った。
(うわあ…)
その後ろ姿を呆然と見つめる。
高樹もそれ以上追いかけたりはしなかった。
「大丈夫か?」
高樹に優しく声をかけられて俺は頷くことしかできなかった。
「…ごめん」
(これは高樹の体なのに…自分でなんとかしないといけなかったのに…)
コメントを残す