3周目 9月22日(水) 午後4時20分 島津政信
「じゃあ、また夜に」
「うん、電話待ってるから」
高樹に手を振って俺は帰路に着く。
行きの電車でも今日は何もなかったから気分は軽やかだ。
駅に着いて電車を待つ。
(どうやったら元に戻るんだろうな…)
そう思っていたら、聞き覚えのある声がした。
顔を上げると俺の座る前に昨日の二人組が立っていた。
「なあ、そういえば昨日言ってた痴漢の女の子の写真って送られてきたのか?」
昨日はほとんど喋らなかった男が話しだした。
「ん?珍しい、興味あんの?」
「ああ、ちょっとな」
どうやら、昨日俺を観察するような目で見ていた男は普段はお喋りな男の話にはあまり乗らないらしい。
「あるよあるよ…ちょっと待って…ええっと…ああ、これこれ」
どうやら携帯の画像を見せているようだ。
(うわ…俺の写真だったらどうしよう…ああ、早く駅に着いてくれ…)
「顔がはっきり写ってないんだよな」
「ふーん、ちょっと俺にも送ってくれよ」
「マジで?どうしちゃったのよ?」
どうも上から視線を感じる。
(見たらダメだ)
そう思って俺が意識して二人の足元を見つめていると
「この顔どっかで見ような気がするな」
そう聞いた瞬間思わず一瞬顔を上げてしまった。
その一瞬で俺は見てしまった。
確認するようにじっと俺を見つめる男の目を。
しかし、それ以上は特に何もなく、降車駅に着き、俺は急いで電車を降りた。
◇◇◇◇◇◇
9月22日(水) 午後9時 島津政信
「いやあ、お疲れ様、雨が降りそうだけど送っていこうか?」
そう店長が言うのを丁重に断って俺は帰る準備をする。
(あんな制服だなんて聞いてなかったぞ)
フリフリのブラウスにピンクのミニスカート。スカートは肩ひも付きで、コルセットみたいなのでウエストを絞って胸が強調される。
(全く…高樹も知ってたなら教えてくれても良かったのに)
店を出ると街灯がたくさんあるので不安は感じないものの、時間が遅いせいか人通りはほとんどなかった。
『ゴロゴロ』
遠くで雷の音が聞こえる。
(これは急がないと…一雨来るな)
小走りに店から出たところで声がかけられた。
「すみません」
「えっ、はい」
振り返った俺の前に背の高い男がいた。
(ん?どこかで見た顔のような…)
通りは街灯はあるが薄暗い。
(この目つき…あっ)
あの大学生の二人組の眼鏡の方だった。
(偶然か?)
俺がそこまで考えたところで脇腹に熱い衝撃がきた。
「今日の獲物ゲットォ」
意識を失う中、後ろから聞こえたのはおしゃべりな男の声だった。
◇◇◇◇◇◇
9月22日(水) 午後9時30分 高樹美紗
(あれ?)
メールが来ているのを知らせるランプが携帯についていた。
(島津からか)
『今日は疲れたのでもう寝ます。また明日の朝に。』
(あのカフェ、意外に人気あるもんね。それにしてもあの制服を着て働いていたんだ…明日からかってみよう、ふふふ)
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