金髪の男

魔物もいないし道も分かっている。というわけで、さっさとアンナさんのいたところまで降りてきて、ラルフに確認してみた。

「どう?」

「うむ。やはり生物がいる感じはしないな」

(「村正はどう思う?」)

確か、アンナさん達と対したとき、村正やラルフは『誰かに操られている』と言っていた。

(「うーむ、銀狼がそういうのであれば生物はいないのであろうが…」)

(「じゃあ、ウィリアムさんの言う通り、変な薬でも生えちゃったのかなぁ」)

(「いや…あやつらの様子は幻覚などとは違うぞえ。もしも薬による影響であれば主殿に斬れる類ではないからのぉ」)

村正には何か思い当たることでもあるようだった。

(「村正は何か知ってるの?」)

(「妾とて、この大陸に来た時には既に封印されておったからの。実際に見てみんことには何とも言えぬのじゃが…」)

「ふうん。じゃあ行ってみるしかないってことか」

階段を下りていくと、金属製のどっしりした扉が閉まっていた。しおりによると、5階層は1つの部屋とのことなんだけど、こんな扉どうやってつけたんだろう?しおりにも書いてないし。

(やっぱり何かある…?)

「さぁ、開けるよ」

そう言って僕が扉を押すと、そこにはダンジョンの中とは思えない、明るい部屋が待っていた。
五階層への階段が長かったから予想はついていたけど、天井が高く、まるでダンスホールのような空間だ。

ダンジョンらしさなどはまるでなく、他人の部屋に入ったような不思議な感じがする。

(誰もいないようだけど…何だこれ?)

明るい部屋の中には奇妙な装置がたくさんあった。
近づいてみてみると、棚の試験管の中に赤や緑の液体が入っていてボコボコと気体が発生している。

「これ、何…?」

液体の中で小さな肉片が気泡に煽られるように動いていた。
また、いくつかある大きなテーブルの一つには小さな魔法陣が描かれていて、その上にはニョロニョロと蠢くピンクの触手が浮かんでいる。

「これって…何?」

僕が振り返るとラルフもそれらを見て訝しそうに顔を歪めた。

「俺も初めて見る」

(「ほう、これは面白いのぉ!」)

何だか気持ち悪い実験室みたいだけど、村正だけは興味津々だ。ピンクの触手なんて妙に艶々してて気持ち悪いのに。

「ようやく来たか。歓迎しよう」

(ふぁ?)

ちょうどピンクの触手を突っつこうとしていた手を僕はサッと後ろに隠した。

「だが、勝手に人の部屋のものには触らないでくれるかな?」

(げっ!バレてた!)

声の主を探して僕は周りを見渡す。

(誰もいない…よね?それに…)

ラルフはどうかしたのか?と探るような目で僕を見ている。

(この声…僕にしか聞こえていない…!?)

ケイトさんが言っていた上位の魔物なのだろうか?

「ふう、待ちくたびれたぞ。それにしてもダンジョンの中で盛るとは想像すらしていなかったが…」

今度は肉声が部屋の中に響いた。その声にラルフが油断なく周囲を警戒する。

(さかる?さかる…盛る、あっ!)

どうやら僕とラルフの行為は声の主に知られていたらしい。これは相当恥ずかしい。あれが全部見られていたと思うと顔が熱くなる。

(あれはその…じゃなくて、そうだ!)

「自分の方こそアンナさん達を変な鎖で縛っといて!しかも隠れてないで出てきたらどうなのさ!」

「なるほど、それもそうだな」

恥ずかしさを隠す意味も込めて僕がそう言うと、後ろから声がした。

「えっ!?」

そこにいたのは黒いスーツを着た20代の男だ。
癖の強い金髪が肩まで伸びて、切れ長の目の中には髪の毛とお揃いの金色の瞳が輝いている。
血管が浮き出るほど白い肌は病的なほど。

これほど存在感のある男なのに、僕もラルフも全く、その気配すら感じなかった。

「そもそも、最初に手を出してきたのはあの者達だ。ちょうど実験中だったので、誰も入ってこれないようこの部屋の外に追い出しておいたのだが…」

男は顎に手を添えてこちらを見ている。

「ああ、そうだ。挨拶が遅れたが、初めまして、お嬢さん」

そう言って僕を見つめて頬笑む男の佇まいからは舞踏会でダンスに誘われているような印象を受けた。

「それでは、名前を教えてくれるかな?」

「…あっ…えっと…」

思わず答えそうになってどもった僕の前にラルフが立った。

「お前、…何だ?」

ラルフの強い声に場の雰囲気に呑まれかけていた僕も正気に戻る。

「うるさいな。興味があるのは君じゃない。そちらのお嬢さんに話があるのだ」

男の言葉にラルフの殺気が膨らむ。

「ふっ」

男はごく自然な動きで指を鳴らした。
その直後、目の前に立っていたラルフの姿が消える。

「えっ」

激しい音とともに壁際に砂埃が舞い上がっていた。

「ラルフっ」

吹っ飛ばされたラルフを見る僕の頭の中に村正の声が響く。

(「主殿っ」)

村正からの注意を促す声に慌てて男の方を見ると、さっきいたはずの場所には既に姿がない。

(どっ、どこに消えたっ!?)

僕が周りを確認しようとしたその時、耳元に気配を感じてゾクッと体が震えた。

「聞こえなかったのか?」

「うぇっ?」

ビクッとして振り返ると金色の瞳が至近距離にあった。

「私は名前を聞いたのだが?」

「くっ」

僕は村正をいつでも抜けるように掴んだまま、後ろに跳ぶ。

「え?」

ところが脚がいつまで経っても地面につかない。
空中に浮いたまま僕は必死に逃げようとするけど、僕の体がまるで空中に磔(はりつけ)にされたように固定されていた。

「なっ、どういうことっ!?」

「ふむ、私は名前を聞いただけなのだが?」

ゆっくりと男が近づいてくる。

「仕方ない、体に直接聞くことにしよう」

男の金色の目に捕えられたように僕は目が逸らせない。

「なに、怖がる必要はない」

(くっ、だけど…)

男の意識が完全に僕の方に向いているのを僕らは見逃さなかった。

(今だっ、ラルフっ!)

男の後ろからラルフが最速で突っ込む。
そしてラルフの拳が男の顔面を捉えた。ラルフの渾身の一撃は男の頭を消し飛ばす。

(やったっ!)

ところが喜んだのもつかの間だった。

「ぬうっ!」

(あれ?なんか変だ…)

男の頭部からは血も出ていなければ、倒れることもない。それに、僕も動けないままだ。つまり、男は頭を失ったこの状態で生きている、ということ。

「ラルフっ!」

直接攻撃したラルフももちろん気づいている。男を睨んだまま戦闘態勢を解いていない。

「なるほど、速いな」

弾け飛んだと思った頭が黒い霧となって霧散する。
そしてその霧が男の頭部に集まると弾けとんだはずの頭が無傷で元に戻った。

「だが、それだけでは私を倒すことはできない」

再び男の指が鳴らされる前にラルフが動いた。

『グォォォォッ』

ラルフの服が破れて巨大な狼の姿になった。

『パチンッ』

指が鳴らされて、ラルフに何か衝撃が当たるが、今度はラルフの力が優る。

『グシャッ』

そのまま男の上半身を噛み砕いた。

(今度こそっ)

ところが牙をむき出しにしたラルフの口から先程と同じ黒い霧が立ち上る。
そしてその霧が下半身のもとに集まって上半身を形作った。

(どういうこと?これって…幻かなにか?)

(「いや、主殿、これは幻ではない。そう言えば物理攻撃は効かないんじゃったかの?」)

(「えっ?村正、何か知ってるの?」)

ラルフは男に向かって唸り声をあげる。

「少々面倒だな。ちょっと眠っていてもらおう」

(ラルフっ、逃げてっ!)

男の瞳が光った。

「グォォォオオオオオオオッ!!」

「おおっ、私の魔術に耐えるとは…素晴らしい。…だが、血を失って万全ではない分、君にとっては分が悪い」

再び瞳が輝き、ラルフが崩れ落ちた。

「ラルフっ!」

「心配いらん、ちょっと眠ってもらっただけだ。彼にも興味が湧いたから殺したりはしない。さて、せっかく素晴らしい素材が自分から来てくれたわけだ…」

そう言って男が近づくにつれて僕のコートのボタンが外れていく。

(えっ?)

男が再び僕の前に立つ頃には、コートの前が完全に開かれていた。

「どうやって君が彼らの洗脳を解いたのか教えてもらいたいのだが」

僕は何も言わないぞ、とそっぽを向く。

「ふむ、その剣に秘密がありそうだな…」

それから僕の体を上から下まで観察し始めた。

「…それにしても前衛にしては軽装だな。んっ?…その剣は?…そうか、東の国のサムライは鎧を着ないと聞いたことがあるな」

そう言って目の前に立った男に僕は何も答えない。

「さて、何も教えてくれないのか?では仕方ない。体に聞くとしよう」

顔が近づいてきて、僕の目が金色の目に覗き込まれる。

(なっ!)

ゾクッと背筋が粟立つと同時に僕の口から予想外の甘い息がもれた。

「んっ♡はうぅぅっ♡♡♡」

まるで体の中が弄られているような感覚に、下腹部の奥がキュンっとなる。

(どうして…気持ちいいわけないから…)

「なるほど…葵…というのか。それに、その刀…意思があるとは…面白い………面白い!」

(なんで2回言うの?)

「はぁ…はぁ…」

睨みつける僕に対して、金髪の男がしばらく考えるように黙った。

「じっくり研究するためにどうすれば…むう…」

男は殺伐とした空気の中、顎に手をやってブツブツと呟き始めた。

「…まずは説得…そうだな。説得するか」

(説得…?闘わなくて済むのかな…?)

男の目が光ると僕の服が切り裂かれた。肌には傷ひとつないけど、生まれたままの姿になってしまう。

「ひゃっ」

(説得って言ってたじゃん?)

「ほう、美しい体じゃないか」

そう言って男にしては細く長い指が耳たぶを弄る。

「ちょっ、ちょっと、やめてっ!話し合うんじゃ!?」

「うむ、葵はどうやらこういうのが好きなようだからな。まずはこれを味わってもらった上でこちらの話を聞いてもらおうと思うのだ」

(ちっ、違うぅぅぅ!!)

話しながら男の指は鎖骨から徐々に下がってきた。

「んぁっ♡」

声を出したらますます勘違いされてしまうに違いない。思わず声が出そうになって唇を噛んだ。

男の指の爪がグググッと伸びる。
そしてスーっとその爪が僕の脇腹を引っ掻いた。

「ふっ♡んっ♡♡」

今度は触るか触らないかというくらいの繊細なタッチ。

(いけない…体が…でも、なんでっ?)

「この世界は面白い。特に生命というものには興味が尽きんな」

「んっ♡んんっ♡♡」

胸の先の敏感な部分を避けるように爪がくすぐる。

「ぅんっ♡♡♡」

「耐える必要はない。人間の体については研究済みだ」

それでも僕は声が出そうになるのを必死でこらえた。

「堪えるか…うむ、確かに堪えることによって快感を強めるという方法もある。流石だな」

(ちっ、ちがぁぁう!)

男の爪は膨らみの上で固く尖った先を弄ることはなく再び場所を変えた。

「あっ♡♡♡」

「なんだ?期待していたのか?」

男は楽しそうに僕の表情を見ながら体の線に爪を沿わせていく。

「んっ♡はぁはぁ…んんんっ♡♡」

長い時間が経った。

浮いた僕の足の先からはボタポタと床に愛液が垂れている。

「気持ちいいんだろう?どうして欲しいか言ってみたらどうだ?」

「くっ、んあっ♡やめて…」

僕の言葉を聞いて満足そうに男が笑った。

「ふふふ、そうきたか…なるほどな…分かったぞ」

(きっとまたいらないことを…)

何か理解したようなことを言うので、嫌な予感がしたけど、どうやら僕の想像は当たってしまったようだ。
男の口調が芝居がかったものになる。

「クハハハッ『やめて』だとぉ?違うだろう?正直に言わない体にはお仕置きが必要だな!」

(やっぱり…)

これはさすがに斜め上過ぎる展開だ。一体何を理解したのだろう?
だけど、それから先の男の行動は予想外だった。僕の前からあっさり離れると、装置の中から、ピンクの触手を手に取って戻ってきた。

(まさかっ?)

「葵が気になっていたモノだ。クククッ、大丈夫だ、気持ちよくなるだけだからな!」

そう言って僕の足先に触手を置いた。

(うわっ、気持ち悪い…)

僕の全身に鳥肌が立った。

「こいつは私の作った生命体だ。単なる触手ではないぞ!オークを配合したせいか女の愛液が大好物なのだ!ククク!」

芝居がかった声で説明してチラッと僕の反応を見てくる。

(いや!そういうのいらないから!)

だけど、その言葉通り、触手は足の内側に垂れた愛液を辿って徐々に上がってきた。

(ひぃぃぃ!)

太ももの内側を吸われて思わず体がビクッと震えた。

「クハハハハッ、そらっ、お前の一番大切なところに近づいてきたぞ!」

触手の一本が割れ目に触る。

「んんっ♡♡」

電流が走ったように頭が仰け反る。

そのまま、触手は割れ目の上を上下して、小さな突起を見つけて吸い付く。

「んぁぁっ、そこはっ♡敏感だからっ、だめぇっ♡♡♡」

思わず声を出してしまった。

先程まで噛んでいた下唇から薄く血が滲みでた。

「おっと、味見をしておこう」

そう言うと男が僕の唇を挟むようにキスをしてきた。
滲んだ血を舐めるように吸う。

「んあああああっ♡♡♡♡なにこれぇっ♡♡♡」

吸われた瞬間、いきなり僕は絶頂に達した。
割れ目からはピチャッピチャッと愛液が飛び散る。

「久しぶりの人間の血だが、特に葵の血は甘いな。極上だぞ」

(血を吸う…ってもしかしてヴァンパイア…!?)

男が舌なめずりをして再び僕を眺めた。
愛液の噴射が終わって、ビクつく体に二本目の触手が侵入した。

「ふぁっ♡だめっ♡だめぇっ♡♡♡」

僕がどれだけ声を出しても、耳の無い触手には当たり前だけど意味はない。
僕が何を言ってもどんどん奥に侵入してくる。

「ククク!オークと同じように牝を発情させる液を出すように調整しているからな!」

「ちょっ、そこは奥っ、それいじょうっ♡むりぃっ♡♡♡」

奥の壁をこじ開けるようにさらに進もうとする触手。

『グリュグリュ』

普通なら絶対に味わわないような体の奥の刺激に僕の体がまた絶頂に押し上げられる。

「やだぁっっ♡♡♡んっぁぁぁぁああああっ♡♡♡♡♡」

「ククハハハハッ、さらに追加だ!」

もう僕からはとっくにこの男へのツッコミが出来るだけの余裕は失われている。それどころか、三本目の触手は胸に巻きついて、乳首に吸いついた。

「りゃめぇっ、あっっ♡♡ちくび♡しゅわないでぇ、あっ♡あっ♡らめ♡やぁっ♡あっ♡あっ♡いってりゅのにぃ♡♡♡」

イカされ続けたせいで言葉がうまく話せない。
白目をむいて意識を失っても快感で無理矢理起こされる。

(だめぇ…♡♡これ以上されたら…おかしくにゃるよぉ♡♡♡)

「んはぁっ♡ねっ、もう、ゆるしてぇっ♡♡…にゃんでもしゅるからぁっ♡♡♡」

『パチンッ』

その瞬間、触手は消えたけど僕の体の痙攣が止まることはなかった。

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