この日、朝から王都はものものしい雰囲気に包まれていた。
普段は街の外に出るハンター達が今日は完全武装で街の中を巡回している。
ヴァンパイア狩りが始まったのだ。
そんな中、一人の初老の男が暗い部屋で革張りのソファに背中を預けて葉巻を燻らせていた。
閉めきったカーテンの隙間から差し込む光に男がため息とともに吐き出した煙が複雑な模様を描く。
「レイリーがまさかヴァンパイアの眷族にされちまっていたとは…儂も耄碌したもんだぜ」
そう言って葉巻を深く吸うと口の中で香りを味わう。
独特のナッツを思わせる芳醇な薫りも今日は苦々しく感じた。
「こりゃあそろそろ引退を…」
男がそう続けようとして、「うるせえよ!」という声に遮られた。それと同時にカーテンが開かれて明るい陽の光に包まれた。
「おらっ!いらねえこと言ってないでオヤジも働けよ!残党狩りの若手からまた要請があったぜ!」
レオンの怒鳴り声に男は口に咥えた葉巻を忌々しげに灰皿に押しつけた。
「チッ!気分に浸ってんだよ!年寄りはいたわれ!」
「うるせえな!テメエが年寄りってタマかよ?」
実際、男は老年に差し掛かる年齢ではあるものの、筋肉に覆われた体はまだまだ現役だ。というより、この男に勝てる男を探すほうが難しい。
「そんなお遊びに付き合ってる暇はこちとらねえんだよ!」
男は新しい葉巻に吸い口を作って火をつけた。
「ふー、どうした?ロゴスで何かあったのか?」
「アーバインから緊急の連絡が来た。アンナとウィリアムが行方不明らしい。今、うちのルーキー二人が救援に向かっているんだってよ」
「ん?ちょっと待てっ!ごほっ、ごほっ!ルーキーだとぉ?アンナとウィリアムはAランクだろうが?なんでその救援がルーキーなんだ?」
男が睨む。その視線はルーキーを死なせるつもりか?という非難を含んでいた。
なんだかんだ言っても仲間思いなのだ。
「ん?ああ、そうか、オヤジは知らねえんだよな」
レオンが含み笑いで返す。
「並のルーキーじゃねえんだ」
「ああん?」
男の詳しく話せという視線をはぐらかしてレオンは扉に向かう。
「まっ、そういうことで。ヴァンパイアもいねえんなら俺は帰るぜ。それとスレイプニル借りてくからな!」
ヴァンパイア狩りの真っ最中ではあるが、レオンの言う通り、王都にヴァンパイアはいない。
実は昨夜レイリーが薄ら笑いを浮かべて語ったところによると、既にヴァンパイアは王都を去ったらしい。これは魔術で自白させたため嘘はあり得ない。
どこに行ったのかはレイリーも知らなかったためモヤモヤしたものは残るが、残党を狩るだけならレオンがいなくとも十分だろう。
レオンの背中を見送って、全く、どいつもこいつも、と男は応援を呼んできたハンターのもとに向かった。
「おうおう!来てやったぞ!」
「すまねえ、助かったぜ…って、マスター!?なんで!?」
ハンター達が驚いた顔をしているのを見てマスターと呼ばれた男はため息をついた。
「人手が足りねえんだってよ…まったく、こんなロートルを使うんじゃねえよ。早く俺を越えるくれぇになれってんだよ」
「ロートル…誰が…?」
ハンター達はロートルの意味をこの人知っているのか?とばかりに苦笑いで顔を見合わせた。
「まあいい。それで、どこにいんだ?」
ハンター達は一軒の家を指差した。
「ここは空き家らしいのですが、怪しい男女が住み着いてると近隣の住人からのたれこみがありました。」
男は頷いた。
「確認はしたんか?」
「はっ、はい!ぼっ、僕が確認しました!間違いありません!」
魔術師のローブを着た青年が答えた。
捕らえたレイリーで様々な検証をした結果、ヴァンパイアの眷族はある種の魔力を持っていることが分かったのである。
そしてそれは魔術師であれば感知できる。
「いいぞ、よくやった!」
「では、気づかれないよう裏口にまわっ」
パーティのリーダーが言い終わる前に、玄関の扉が蹴破られていた。
「おうおうおうおう!隠れてねえで出てこいや!」
男は無造作に家の中に入っていく。
「キシャアアアアッ!」
「うわっ!」
ヴァンパイアの眷属が死角から飛びかかってきて、後ろからついてくるハンターが思わず叫び声をあげた。
ヴァンパイアの眷族は人間であったときと比べて身体能力が著しく上がっている。例えば、握力などはリンゴを片手で簡単に握りつぶせるほどだ。
「あん?」
だが、男はそれを見ることもなく殴りとばした。
「まずは一匹。ほれ、止めを刺すんは任せたぜ。さあ、他にもいんだろ?出てこいよ?」
こうして王都のヴァンパイアは一掃されていった。
◇◇◇
空間に黒い霧が漂う。
僕はきょろきょろと周りを見渡した。
「葵、私の拘束を今すぐ解くんだ…」
「えっ…?何を言ってるんだよ?」
僕の反応を見てヴァンパイアが今度はラルフに向かって叫ぶ。
「おいっ!主人を守れっ!」
その言葉でラルフが目を覚ましたけど、ラルフが動くより先に僕の目の前に黒い霧が集まって人を形作った。
ストレートの腰まで伸びた黒髪。
フリルのついたシャツの上に足元まである黒のロングコートをマントのように羽織った男がそこに姿を現した。
「チッ、間に合わなかったか!」
ヴァンパイアが舌打ちした。
「だっ、誰っ?」
僕は状況についていけない。
「ダミアン…か?王都で馬鹿なことをしたらしいな?」
「馬鹿なこととは何のことだ?俺は食事をしただけのことよ。ククク、ジル、いや、昔のように兄上と呼ぼうか?もうすぐオレの一部になる者への餞に、な」
どうやら新たに現れたのもヴァンパイアで、ダミアンという名前らしい。そして、金髪のヴァンパイアはジルという名前みたいだけど…。
(あれ?つまりどういうこと!?)
「おい、女」
「えっ!?」
不意に呼ばれてダミアンと目が合った。
「クク、兄上のお気に入りの女か…既にヤった後のようだな」
(いっ?)
そうだった、僕の来ている服と言えばジルのワイシャツだけ。
「まあいい、そうだな、兄上の前でお前を犯すのも面白い!」
そう言うとダミアンの瞳が赤く輝く。
「葵っ!その目を見るなっ!」
ジルが叫ぶ。
(えっ!?)
「グオオオオッ!!!」
何かが起きる前に横から飛び出したラルフの顎(あぎと)がダミアンの上半身を食いちぎっていた。
そのままラルフが僕を守るように間に入った。
「いいタイミングだった。銀狼、そのまま時間を稼ぐのだっ」
「オマエノ、サシズニハ、シタガワン。オレハ、アオイヲ、マモルダケダ」
ラルフが忌々しそうに唸り声をあげて、再び姿を取り戻したダミアンに向かった。
「それでいい!葵っ!さあっ、今のうちに早く私の拘束を解けっ!お前だけじゃない!このままでは銀狼も殺られるぞっ!」
「えっ?…でも…」
戦いの場での判断ミスが命取りになることはアンナさんの槍をラルフが受け止めた時に十分わかったつもりだったのに。ここで僕は躊躇してしまった。
「いいから早くしろ!」
『ドスッ』
「グォォ!!」
苦悶の声に、はっとラルフの方を見ると、影から出た黒い杭のようなものがラルフの脚に突き刺さっていた。
「グルルルッ!」
杭を引き抜こうとするラルフだったが、続けて2本3本と杭が影から突き出て、ラルフがついには完全に地面に縫いつけられる。
「ラルフっ!」
(僕はまた同じことを繰り返してしまった…)
ダミアンは僕の目の前に無防備な背中をさらしている。
村正を出そうとした僕にジルが叫んだ。
「だめだ!それでは傷つけられんっ!」
「兄上を捕えたのはそこの駄犬の能力では無さそうだな。ならば女の方か?」
ダミアンは僕を単なる女だと思っているのか、こちらを見ることもない。
「クク、女の色香に惑わされて魔道具でも使われたのか?クハハハハ!!だが…動けないのならちょうどいい。まずは兄上の力をいただくとしよう!!」
(どうしよう!?)
その時、村正が僕を呼んだ。
(「主殿!鎖じゃ!」)
(そうか!)
斬れなくても動けなくすることはできる。そこで、僕がダミアンに鎖を繋ごうとその背中に目をやろうとして…。
(うわっ!)
血のような紅い瞳が僕を射る。
気づいたときにはダミアンがすぐ目の前で整った唇を歪めて嗤っていた。
「クククク!何をするつもりだ?」
(あ…れ…?)
「ひゃんっ♡」
不意にワイシャツと肌が擦れて、この状況にそぐわない声が口から溢れた。
「あっ♡んっっ♡♡♡♡」
そして、体が強制的に発情させられたのだと分かった時には腰から崩れ落ちていた。
(せめてジルの拘束だけでも…)
「変なことを考えるなよ?お前はそこで見ていろ。後で兄上の前でゆっくりと味わってやる。ククク」
「あっ♡んんっ♡」
せめてジルを縛る鎖を解こうとしたけど、耳を触られただけで、また軽い絶頂に導かれて意識がとびそうになる。
(ぁ…)
涙に霞む視界の先で、影から伸びた細く尖った槍のようなものがジルの体を串刺しにするのが見えた。
「ぐふっ!」
ジルの傷口からは血ではなく、黒い霧が噴き出して、それがダミアンのもとに集まる。
「クハハハハ!、素晴らしい力が流れ込んでくるぞっ、これが兄上の力か…ヒャハハハハハ!」
「あっっ♡んんんんんんっ♡♡」
黒い霧を取り込んで力が強くなったのが力を通して感じられる。僕は服が擦れただけであっさりと絶頂に至った。
(は…やく…しないと…んんん♡♡だめだ…あっ♡またイクっ♡)
「ヒャハハハハハ!愚かな人間よ!お前のおかげで楽にこいつを殺せるぞ!!」
ダミアンの嘲笑が遠くで聞こえる。悔しい、悔しいけどどうしようもない。
(あっ♡もっ♡だめっ♡このまま…♡♡)
心が折れそうになったその時。
「アオイ!グオオオッ!!」
僕のところに来ようとするラルフの姿が目に映った。ラルフの足は無理矢理動かしたせいで血塗れになっていて、今にもちぎれそうだ。
「あお…い…鎖を…外せ…!」
続いてジルと目が合う。
その目はまだ死んでいない。
この状況を切り抜けるためには僕が動くしかない。それなのに…。
「ヒャハハハハハッ!期待するだけムダムダァ!その女はもうダメだぜぇ!」
(くそ!)
怒りで腸が煮えくり返る。
だけど、ダミアンの言う通り、立ち上がろうと少し動いただけで体は蕩けて、僕は口から漏れそうになる声を堪えるので精一杯だった。
(くそぉ!!)
何の理由もなくラルフを傷つけるダミアンに対してもちろん腹が立つけど、何度も同じ失敗をする自分が情けない。
(僕は何をやってるんだ!)
さらに、みんなに守られて自分だけが怪我もなくのうのうとしていること、にもかかわらず快感に流されそうになってる自分自身に怒りがこみ上げた。
「くそぉっ!!!」
僕は村正を抜いて太腿に突き刺した。
「うぐっ!!」
(主殿!?)
痛みで一時的に他の感覚が麻痺している。
「くそおおおおっ!!」
僕は立ち上がった。
「アオイッ!!」「葵っ!?」「なっ?」
ラルフとジルの声、それにダミアンの驚いたような声が聞こえた。
「ふぅっ、ふっ、んんんっ!」
そして、僕は鎖を断ち斬った。
「ぐぁっ…はあ、はあ…」
ジルは糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる。自由になったとはいえ、こんな状態では依然として危機には違いない。
「ククク、犬のように這いつくばって、ああ…、惨めだなあ、兄上」
「はあ、はあ…貴様、同胞を殺して力を手に入れたか…」
ジルが睨みつけた。
「これでオレは一族のトップに立つのだ。散々馬鹿にしてきたこのオレにお前らが跪く姿が目に浮かぶぞ…ヒャハハハハハ!!」
「ふん、下品だな。お前のようなものに一族が束ねられるとでも?」
「何とでも言うがいい。どうせお前はこれからオレの糧となって死ぬだけなのだからな」
それだけ言うとダミアンの深紅の瞳が輝く。
同時にジルの黄金の瞳も輝き、その瞬間、轟音とともに激しい衝撃が僕らを襲った。
「うわっ」
顔を腕で覆って、隙間から見ると、二人の姿がない。
『ギンッ、キンッ、ギャンッ』
激しい剣戟の音。
(上っ!?)
見上げると天井近くでお互いが闇を背負っている。そして、ダミアンの闇からは刃が射出され、それをジルが闇から伸ばした棘で打ち落としていた。
「アオイッ」
いつの間にかラルフが僕の傍にいた。
「オレノ、チヲ」
ラルフの血で僕の太腿の傷がなおっていく。だけど、ラルフの足からまだ血が滴っていた。
「ラルフ…ひょっとして…」
「シンパイスルナ、スコシ、チヲナガシスギタダケダ…ソレヨリ…」
ラルフにつられて見上げると、ヴァンパイア達の戦いが続いていた。
(「不味いの」)
戦いの趨勢は僕には分からない。しかし、村正の言う通り、押されているのは金髪の方だった。
「ヒャハハハハハ!!こんなものか?こんなものなのかァ!!」
徐々にダミアンの放つ闇の刃の数がジルの棘を抜けて体をかすめ始めている。
「そらそらそら!どうしたァァ!」
「ぐっ!」
掠った場所から黒い霧が漏れ出てダミアンの後ろに広がる闇に吸収された。
「おオォォォ!ウマイぞぉぉォォ!」
そして、ついに刃がジルの腕を深く切り裂いた。血ではなく黒い靄が飛び散る。
「ぐぅぅっ!」
『ドサッ』
そのまま姿勢を崩して目の前に落ちてきて、ジルは僕らがそこにいるのを見て唖然としたように言った。
「なぜ、まだいるのだ…」
「だって、悪いのはあっちでしょ?だったら、あいつをやっつけないと!!」
ジルの顔は髪に隠れて見えないけど、少し笑ったようだ。
「馬鹿な人間だな……やはり興味深い。…いいか、私を拘束した能力は使うな。あれを使えば真っ先にお前が狙われる」
ダミアンはゆっくりと降りてきて、興味の無さそうな目でこちらを見ている。
「今のところ奴の意識は私に向いている。いいか、私が合図をしたら、魔石をあの魔法陣に突っ込むのだ。そうすれば奴に必ず隙ができる。そうなったら葵、お前が奴を斬れ」
「僕が?…分かった。じゃあ、ラルフ、魔石をお願い」
「ワカッタ」
そして、僕ら3人はダミアンに向かって立ちあがった。
「雑魚どもの作戦会議は終わったか?」
「ああ。お前は私が殺す!!おおおぉぉぉっ!!」
ジルの雄叫びに合わせて、その背後に真っ暗な闇が広がった。そして闇の中から棘が無数に展開される。
それを見る間もなく僕とラルフもそれぞれに走っていた。
「なんだ…何をするのかと思えば結局あいつらを逃がすだけか!つまらんなぁ…クッ、フフハハハ!お前の前であの女を食い散らかしてやるからなあァァァ!」
ダミアンの背後。空間を埋め尽くす刃にゾッとする。
「死ねぇっ!!ヒャハハハハハハ!!」
そう黒髪が勝利を確信したその刹那。
「魔石を!!」
ラルフが積み上げられていた魔石を魔法陣にぶちまけ、魔石が魔法陣の内側に転がった。
『カッ』
魔石が砂のようにサラサラと崩れて、魔法陣の中央に黄色い光球が浮かび上がる。
(うわっ!)
光球は直視できないほどの眩しい光を放ち、その光は今まさにジルの命を奪おうとしていた闇の刃を一瞬にして消しさった。
「ヒャハハ…っ!なっ!?」
僕は目を閉じてダミアンの姿を瞼の裏に映し出す。勝ち誇った表情のまま固まったその顔はむしろ滑稽ですらあった。
「葵っ!今だ!」
その声に従って光の中に僕は飛び込む。
「まっ、まさか…この光は太陽の…」
呆然としたまま呟くダミアンを射程に捉えた。
「終わりだよ!」
「やっ、やめろっ!やめろぉっっ!!」
それが意味のある最後の言葉。
「グッァァァアアアアッ!!!!」
両手を前に出したまま、ダミアンの体が崩れ落ちた。
そして、魔方陣の光が消えると、切り口からは黒い霧が溢れ出して金髪のヴァンパイアの体に吸収されていく。
「勝った…の…?」
膝をついた状態でジルが僕を見上げた。ダミアンから流れ出た黒い霧を吸収したことで回復しているはずだけど、まだ辛そうだ。
「はぁ、はぁ…どうやらお前たちに助けられたようだな…巻き込んでしまって済まなかった」
「僕らは何もしてないよ。って言うか、僕のせいでこんなことになってしまったんだし…」
「いや、ダミアンがここに現れたのは私のせいだ。葵とラルフ君にかける必要のない命をかけさせてしまった。これはとうてい許されることではない」
「えっと、でも結局勝てたのはジルの力だし…」
「奴に勝てたのはともに最後まで戦ってくれた二人のおかげだ」
こんなに殊勝な態度をとられると、僕の勘違いのせいで追い詰められてしまったこともあるから、むしろこちらが申し訳なくなる。
「もし僕にできることがあったら…」
すると、ジルはまるで何もなかったかのようにすくっと立ち上がった。
「そうか…すまない。では遠慮なく。葵の家に住まわせてもらおう」
「えっ!?」
(僕の家に住む?)
「いやっ、あの、それは…」
「それから葵、お前はとても興味深い。調べさせてくれないか?」
「ええっ!?」
どうやって断ろうか考えているとさらに要求が増えていた。
「それはダメ!」
あの気持ち悪い触手を思い出すと鳥肌が立つ。
「だが、お前は今、自分のせいでこの事態を招いたと言ったではないか?私の命を危険にさらした責任を取らなければいけないのではないかな?」
だけど、こう言われるとこちらにも負い目がある分弱い。
「えっ?えっと…」
(ひょっとして、上手いこと言いくるめられそうになってる?なんとか断らないと!)
「だっ、ダメ!」
理屈とか考えちゃうとジルのペースに巻き込まれる。
「では、そちらはやめておこう。住まわせてもらうのだから無理は言うまい」
「そ、そう…?ありがとう」
(………ん?あれ?)
僕は助けを求めるべくラルフを見上げた。
「アオイノ、スキニシタライイ」
(ああ…ラルフはそう言うよね…)
(「主殿、面白いではないか。ヴァンパイア一族は長いあいだ生きておる分、様々な知識を与えてくれるかもしれんぞえ」)
(「うーん、まあ、悪い事と言っても全員無事だったし、実際この人がいなかったらヴァンパイアを倒すこともできなかったし…」)
僕は大きくため息をついてジルを見た。
「じゃあ、名前を教えて」
「ジル・ヴラドだ」
「わかった。僕は葵・御門、彼はラルフ・シルバーね。よろしく、ジル」
「よろしく。葵、ラルフ君」
こうして僕らは新たにヴァンパイアのジルという仲間を得ることになった。
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