学院初日

ホームルームが終わり、休み時間になった。

(えっと…)

サラさんが居てくれるのはとても嬉しいんだけど、他のクラスメートは遠巻きにチラチラと見てくるだけで誰も話しかけてくれない。

(どうしよお…こっちから話しかけた方がいいのかな?)

よし、話しかけよう、そう思って顔を向けるとサッと目をそらされてしまった。

(あうう…)

ケルネにいたときはジェイクがいてくれたし、ロゴスに来たときはラルフがいてくれたけど、独りぼっちになると、自分の頼りなさが思い知らされる。

「ねえ、アリスは貴族なの?」

心が折れそうになって、俯きかけた僕にサラさんが話しかけてくれた。

「いえ、ケルネっていう東の港町の町長の孫です。でも、どうしてですか?」

「だって…あなたみたいな美少女だったら貴族だと思うじゃない!ほら、みんなもアリスに話しかけたいけど、あんまりにも可愛いから遠慮しちゃってるんだ!」

「へ?」

「ね、ジョシュも話しかけたいよね?」

サラさんが前の席に座る男子の背中に声をかけた。

「…」

(…嫌われてるのかな?)

何かしたつもりはないんだけど、ちょっと寂しい。

「ジョ~シュゥ!アリスが泣いちゃうわよ~!」

サラさんがさらに大きな声を出す。

「ああっ!くっそ!」

ジョシュが振り返った。褐色の肌に茶髪を丸刈りにしている。ちょっと耳が赤い。

「はじめまして、キャロルさん。オレっ、あっ、僕はジョシュ・スペンサーです」

「ぼく~?どうしちゃったのよ、ジョシュく~ん!」

サラさんがケラケラ笑い声をあげてジョシュをからかう。するとジョシュの顔が真っ赤になった。

「あのっ、アリスって呼んでください。ジョシュ…さんでいいですか?」

そう僕が言うと、ジョシュも目をあっちこっちに向けつつも答えてくれた。

「僕…いや、オレのこともジョシュって呼び捨てでいいから!」

「はい、ジョシュ…よろしくお願いします」

目を合わせてそう言ったらジョシュは急に前を向いてしまった。

「フフフ、アリスと一緒にいると面白いわぁ!」

サラさんがそう言って笑ったのを皮切りに周りの人の輪がぐっと近づいて、口々に自己紹介が飛ぶ。

「ねっ!キャロルさん、アリスちゃんって呼ばせてもらっていい?」

「はい!」

「あっ!ずるい!私もっ!よろしくね。アリスちゃんっ!」

それからは教師が制止するまで、集まったクラスメートから質問攻めにあった。

授業が始まる間際、僕はチラッとエルザを見る。エルザは喧騒から離れて教壇の方を眺めていた。

(エルザも内密にって知らされてるはず。なんとか自然な感じでエルザと友達にならないと…)

「あの…、サラさん…」

「私のことは『サラ』でいいって。それに敬語は禁止ね!」

「はい」

サラさんは顔をグイッと近づけてきた。

(ふあ?)

「敬語!」

「あっ!ごっ、ごめん…そのエ、王女殿下には私から挨拶した方がいいかな?」

「王女?…ああ、エルザなら畏まらなくても良いよ。堅苦しい方が彼女嫌がるからさ。そうねっ!昼休みにでも話をしに行こっか?」

そして僕の学院で初めての授業が始まった。

「…というわけで魔石を利用した道具は魔術探知に引っ掛かるので、さらにその性質を利用した道具や術式が開発されたわけだ。おっと、時間か…では次回は具体例を挙げながら魔術具の説明をする。以上。」

『ジリリリリリリリ』とベルが鳴り授業の終わりを告げた。

◇◇◇◇◇

「はじめまして、王女様」

昼休みにサラに連れられてオープンカフェに向かうと、そこにはエルザが既にいて、数人の生徒と談笑していた。

さすがは王族、エルザのいる一角は他の場所よりも華やいだ印象があった。木漏れ日でエルザの綺麗な金髪が輝くのと相まって、その笑顔は、思わず「ほぉっ」とため息が出るほどだった。

「あら?アリスさんね。私の事はエルザって呼んでね、私もアリスって呼ばせてもらうから」

エルザは挨拶をした僕にあっさりと名前で呼ぶことを宣言した。

「ねっ、言った通りでしょ?」

サラがなぜか自慢げに胸を張る。

「ちょっとぉ!サラっ!アリスに何を言ったのよ!」

「うひひ、エルザは王女様らしくないって話よ」

そう言って二人は軽口を叩き合った。

「でも、そうね。私、堅苦しいのは好きじゃないのよ。それにここのモットーは『実力主義』でしょ?アリスなんて編入試験に合格したんだから私なんかよりよっぽど優秀なはずよ」

「そうだっ!ねっ、すごい勉強したんでしょ?テスト前は期待してるからね!」

二人が僕を見る。

「いえっ、そんな…ただ覚えることばっかりだったから…」

「ねえ、せっかくだし、サラもアリスもお茶しましょうよ」

エルザに誘われて僕らも席に着く。ウェイトレスさんが僕らのためにオーダーを取りに来てくれた。

「アリスは何を飲む?ここでは生徒は何を飲んでも無料なのよ」

そう言えば入学案内にそんなことが書かれていた。

(たしか、この学院は学費と生活費で年間250万イェンほどかかるんだよね。その代わり飲食は自由、朝食と夕食は寮の食堂でとるのが決まりだけど)

「えっと、じゃあコーヒーを」

サラもレモンティーを注文した。

「さ、それじゃあ、質問タイムかしらね」

エルザが周りを見渡すと、今か今かとウズウズしていたクラスメートたちがワッと話し出した。それで結局、昼休みの間も僕は質問攻めにあうことになってしまった。

◇◇◇◇◇

「ふぅ…」

僕は寮の食堂での食事の後、寮のあてがわれた個室に入って安堵の息を吐いた。

寮といってもさすがは貴族やエリートが暮らすだけあって、ロゴスの家の自室ほどではないにしても、備え付けのベッドと、勉強机、本棚があっても、まだまだゆとりのある大きさだ。

僕はベッドに制服のまま転がった。

(やっぱり疲れるなぁ)

ほとんどサラのお陰だったけど、初日としては大成功だろう。休み時間ごとに質問攻めにあって警護どころじゃなかったけど。

(今日はエルザと友達になったから、明日からはさりげなく護衛もするぞ…よしっ!今日はもうお風呂に入って寝よっ!)

高級な寮とは言え、それぞれの部屋にお風呂まではさすがにない。だけど、男女それぞれの寮に大浴場があると聞いていたので準備することにした。

「うわっ!アリスもお風呂?ちょうど誘おうと思ってたら、これってもう運命!?」

部屋を出たところでサラと鉢合わせた。

「サラ、あんまり大きな声を出しては…」

サラの隣にはクラスメートの濃い茶色の髪を三つ編みにした眼鏡の少女がいる。

(この人も貴族の令嬢なのかな?)

「アリスさん、私、ブリジット・レンナーと言います。ブリジットって呼んで下さいね」

「あっ、はい。私のことはアリスと呼んでください」

サラが貴族って聞いた時は、失礼ながら驚いたけどブリジットは正真正銘お嬢様って感じだ。

「ブリジットは学生自治会の会長なのよ!成績だっていつもトップなんだから!」

確かに真面目そうだし、適任のような気がする。

「そんなこと…」

「はいはい、謙遜しなくて良いからっ、さっ、行くわよ!」

三人でお風呂に向かう。

(うーん、何か忘れてるような…?)

首を傾げて考えるけど、思い出せない。

「アリス!早くっ!」

「はーい!」

そしてお風呂の脱衣場で、二人が服を脱ぎ始めたところで、僕はハッと気がついた。

(うわあ、ここ女湯だよね!?どうしよぉ?)

僕の焦りを尻目に二人はどんどん脱いで既に下着姿になっている。チラッと見ると、サラはスレンダーで、胸やお尻は慎ましいけど、引き締まった綺麗な体だ。青と白のボーダーの下着が褐色の体を引き立たせている。

それに対してブリジットさんは服の上からは想像できない大きな胸をしていた。性格と同様下着も清楚な白だけど、どうしても胸の大きさに目がいってしまう。

(…仕方ない、見たくて見てる訳じゃないもんね。どうせ誰も僕が男だって知らないんだし!)

覚悟を決めて僕も脱いだ。で、下着を脱いだところで、二人が目を丸くして僕を凝視していることに気がついた。

(?)

なんとなく胸と股間を手で隠す。

「アリスさんって凄いスタイルなのねぇ」

ブリジットさんが、ほぉっとため息をつくと、サラも興奮ぎみに捲し立てる。

「ホントっ、体は細いのに何これっ?」

「へ?」

「羨ましいわぁ。私なんてほら、ここに脂肪がついちゃって…」

そうは言うけど、僕にはブリジットさんのどこに無駄な肉がついているのかさっぱりわからないんだけど。

「ねっ、何かエクササイズとかしてるの?」

サラが僕ににじりよってきた。

「いやぁ、何も…」

「そんなわけないじゃない!さっ、お姉さんにそのおっぱいの仕組みを教えなさい!」

何かを揉む仕草をしながら近づいてくる。

(手の動きがやらしいよ)

「やっ!あのっ、風邪引いちゃうから早く入ろうっ!」

そう言ってタオルで胸元を隠してお風呂の扉を開く。

後ろで「いつか揉んでみせるからっ!」と意味不明な決意表明が聞こえてきた気もするけど、上手く逃げられて良かった。

「あら?アリスさんもお風呂?」

クラスメートが数人いたようだ。

当然みんな全裸。

(うわぁ、どうしよぉ)

目を泳がせていると鋭い視線を感じる。
視線の元を見ると胸元を隠したエルザと目が合った。

「あ…」

(しっ、しまったぁ!)

誰も僕のことを知らないから大丈夫だと思ってたけど、1人知ってる人がいるのを忘れていた。

(違うんだよぉ、これはわざとじゃなくて…)

冷たい視線が突き刺さって、お風呂の中なのに冷や汗がだらだら出る。

こうしてようやく学院での僕の初日が終わった。

◇◇◇◇◇

ガビーノは風呂での一幕を映像で眺めて楽しんでいた。

『ジュポッ、ジュポッ』

大きく開いた膝の間に秘書がうずくまって、顔を上下に動かしている。

だが、ガビーノはそんな秘書を無視して、濁った目をアリスの体に向けた。何も知らないアリスは無防備に裸を晒している。

魔術具の明かりに照らされて、サキュバスもかくや、という染みひとつない雪のような肌に玉のような汗が光る。それに加えて、無駄な贅肉のないスレンダーな体に不釣り合いな2つの乳房が魅惑的な陰影を作っている。

(この容姿にこの体…むうう)

「んはぁっ、大きいっ、ガビーノ様っ、今日はいつもにもまして逞しいですわ♥️」

股間では秘書が必死に肉棒に舌を這わせるが、ガビーノは一顧だにしない。

そして、映像がアリスの股間の間を映し出す。
一瞬無毛症なのかと疑うほど薄い陰毛。うっすらその中がかいま見えて、ガビーノはついに我慢できなくなった。

「おいっ!尻をこちらに突き出せっ!」

まるで性欲を解消するための道具のような扱いだが、秘書の目は淫欲に潤んでいた。

「はいっ♥️どうぞ使ってくださいまし♥️」

自らその淫唇を広げて見せつけられて、ガビーノは慌ただしく肉棒を突き刺した。