(「ねぇ、村正、今のところ視線を感じる以外には何も起こっていないよね?」)
お風呂では今日もあの視線をずっと感じていたせいもあり、寝る前に僕は少し心配になった。
(「まあ、そうじゃな。王女や主殿は問題なしじゃな」)
(「何それ?含みがある言い方だなぁ」)
(「うむ、主殿の同輩の中に気になる匂いを放つものがおるのじゃ」)
(「えっ?それってマズい?」)
(「そうさな。あまり良いものではなさそうじゃな」)
(「どっ、どうしようっ」)
(「うむ。そうじゃなあ…」)
『コンコン』
部屋の扉がノックされる。時計を見て、まだ就寝時間ではないのを確認してドアを開けるとエルザとモニカさんがいた。
二人を部屋に入れる。
「ねぇ、葵」
エルザの顔は普段と違って不安そうだ。
「どうしたの?」
「エルザ様、ここではアリスさんと…」
「あっ、そうだったわね。アリス、相談に来たの」
「うん、えっと、とりあえず座ってよ。何かあったの?」
エルザは勉強用のデスクに、モニカさんはエルザの近くに立ったまま。そして僕はベッドに腰かけた。
「ブリジットさんなんだけど、最近ちょっとおかしいようなの。さっきサラから相談されたんだけど、就寝時間にどこかに行ってるみたいなのよ。ほら、サラの部屋ってブリジットさんの部屋の隣でしょ。夜中に扉の閉まる音を偶然聞いたそうなの。で、気にするようにしていたら、二、三日に一回くらいの割合で出ていくらしいの。帰ってくるのは明け方だそうよ」
「それは確かに変だね。でも、うーん、どこに行くんだろう?」
「サラが一度後をつけたらしいんだけど、気がついたら見失っていたんだって」
(そういえば、最近朝が特に酷いっていってたけど、それが原因なのかな?)
「うーん…」
(「村正、もしかして僕の同輩って…」)
(「そうじゃ」)
(ブリジットさんならすぐに調べないとっ!)
「分かったよ。ちょっと調べてみる」
(「ちょっ!主殿、待たれ…」)
「ゴメンね、あお…、アリスも気を付けてね。なんだか、この間の魔物の襲来以来、学院が変な気がするのよ」
「変?」
「そう…何て言うか、前より暗いっていうか…」
「なるほどね!じゃあ明日から調べてみるよ!」
エルザとモニカさんが部屋を出ていくと村正がため息をついた。
(「全く主殿は考えも無しに…」)
(「なんで?」)
(「主殿も感じているあの視線についても分からぬ上にまたややこしいことになるぞえ!」)
(「大丈夫だよ!村正は心配しすぎ!」)
(「はあ、…だとよいがの…」)
◆◆◆◆◆
学院長室では2人の女がガビーノの前に跪いていた。
「ピチャ、ピチャ、イヴ様ぁ…そこは私のところですわ」
「セリアがのんびりしてるのが悪いのですよ。ウフフ、あーん…んふ♥️」
(おっと、図書館はどうなっておるかな?)
ガビーノが例の鏡を取り出すと、鏡面が輝き、書庫の様子が写し出された。蟲が書庫の奥に向かうと、男女の様子が写し出された。
長い裾は腰のあたりまで捲り上げられて、ラッセルに前から抱えるようにして犯されている。
(ほお!!これは!…教官と生徒の密会か…これはこれで背徳感がたまらんな)
ブリジットはガビーノが指定した通りの体にぴったりと張り付くマキシワンピースを着ていたのだが、これが思わず目を止めるほどに煽情的な姿だった。
柔らかい布で半袖のワンピースは首もとがU字型で、深い谷間が見え隠れする。
(ラッセルにくれてやったのは失敗だったか…)
どうやらちょうど終わったところのようだ。
だが、2人は、興奮でお互いのことしか見えていないように湿った吐息を交わす。そして、そのまま壁際の作業台にブリジットラッセルが体を折り曲げて情熱的に唇を合わせた。
(ぐぬぬ…)
再び2人がお互いの体をまさぐり始める。
ブリジットの上半身をラッセルが乱暴に引き下ろした。すると、これまたガビーノの指定したレースのブラジャーが現れる。
黒い下着は今、ガビーノの前で跪いている2人が着れば、きっと似合うと思うが、ブリジットだとアンバランスさがむしろイヤらしく感じる。
ブラジャーを無理に上に押し上げてラッセルが再び挿入する。ブリジットの着ていたマキシワンピースは腰のあたりに巻きついているだけとなった。
「ンジュジュジュジュ…」
書庫の2人に気をとられていたガビーノだったが、イヴに強く吸い上げられて一旦鏡の中の早咲きの花から目を離した。
「チュッ♥️んんっ♥️重い…たくさん溜まってますわ…♥️」
熱い精液の感触を想像したのか、玉を舐めていたセリアがうっとりとした顔を恥ずかしげもなく晒している。
書庫に咲いた花と比べると、こちらは満開に咲ききった花と言ったところか。甘い蜜の匂いは雄の本能を刺激する。
「一度出しといてやろう。お前達!顔を向けろ!」
鏡の中の2人は抱き合ったまま絶頂に向かって一直線に向かっている。ガビーノもそんな2人にあてられ、たまらず大輪の花達に精を放ったのだった。
「…………ん?誰かが来たようだな」
ガビーノは、2人の顔をザーメンでマーキングした後、もはや日課にもなっているアリスのチェックに入った。
鏡の中には3人の美しい女がいる。
「王女に護衛か…む…深刻な雰囲気だが…声も聞くか…」
鏡に手をかざすと部屋の中の声が聞こえてくる。
「……る音を偶然聞いたそうなの。で、気にするようにしていたら、二、三日に一回くらいの割合で出ていくらしいの。帰ってくるのは明け方だそうよ」
王女の心持ち小さな声が聞こえる。
(何の話だ?)
「それは確かに変だね。でも、どこに行くんだろう?」
「サラが一度後をつけたらしいんだけど、気がついたら見失っていたんだって」
(サラ?サラ・レヴァインだな…だとするとブリジットのことか…チッ、面倒なことを)
「分かったよ。ちょっと調べてみる」
「ゴメンね、あお…、アリスも気を付けてね。なんだか、この間の魔物の襲来以来、学院が変な気がするのよ」
「変?」
「そう…何て言うか、前より暗いっていうか…」
(ほう…さすがは王女というべきか…勘づいていたか)
「なるほどね!じゃあ明日から調べてみるよ!」
(王女がこんなことを依頼するとは…アリス・キャロル、単なる編入生かと思っていたが。私の眼にも気づいているようだし、戦闘術の身のこなしといい、どうやら何かありそうだな。…少し探りを入れてみるか)
ガビーノの濁った瞳に一瞬獰猛な光が灯った。
◆◆◆◆◆
翌日はアヴニールに来て初めての休日となった。
とはいえ、生徒も教員も休みの日と言えどもアヴニールを出ることはできない。
そこで昨日の歓迎会の時にみんなにどう過ごすのか聞いていた。
外部からお店が来てくれるから買い物をする人もいるし、図書館や、テニスコート、乗馬場、プールなど、様々な施設を利用して過ごす人もいるようだった。
ちなみに、サラは乗馬をしたり、水泳をしたりするとのこと。ブリジットさんは図書館で本を読んだり、学生自治会の執務室で仕事をしているそうだ。エルザは王族としての公務がある場合は特別アヴニールを出ることを許可されており、ほとんど休日はいないそうだ。たまの公務のない休日はモニカとお茶をしたり、サラとスポーツをしたりしているんだって。
(さて、さっそく学院内で調査でもしてみようかな)
休日は学院内でも制服を着る必要はないので、膝上丈で腰で絞られた半袖の花柄ワンピースを選んだ。まだちょっと寒いので長袖のカーディガンを羽織る。
エルザは今日は公務らしい。昨夜のうちにアヴニールを出ていった。今晩戻ってくるらしい。
(まぁ、モニカさんがいるし、そもそも僕がついて行く事は出来ないからね)
着替えをしながら考えていたら、ノックの音がした。
「はい」
ドアを開けるとサラがテニスウェアで立っていた。
「ジョシュ達とテニスするんだけどアリスもしない?」
サラにそう言って誘われたけど、学院内にはまだまだ行ったことのない場所があるから今日は歩き回ってみるつもりだと断った。
「んー、じゃあさ、テニスコートにいるから暇なら来てよ」
サラはそう言って階段を下りていった。
僕は地図を見ながら順番に見て回る。まずは、自分の教室から始めて様々な専門の部屋のある棟に来てみた。
(えっと、ここが、魔術実験室、その隣は準備室、で向かいのこの部屋は魔術具実験室、そう言えば今度この部屋で授業をするって先生が言ってたなぁ)
各部屋からは声や物音がうっすらと聞こえる。
(多分専門の生徒が休みの日も研究してるんだろう)
ジェシカやマリーがそんなことを言ってたのを思い出した。
様々な教室のある本館を見て回ったけど、時計を見るとまだお昼には一時間くらいある。
(…そうだっ、ブリジットさんに会いに行ってみようっ)
学生自治会の執務室は一階なので一度階段を降りた。
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