2.合宿当日① 校舎にて(⑱禁描写無し)

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2.合宿当日① 校舎にて(⑱禁描写無し)

合宿はお盆前に一泊で行うことになっており、夕方に学校に集合した。

僕らの学園には生徒会館という名前の合宿所があり、そこにはシャワーや台所などの宿泊施設が備えられている。

僕ら文化部が合宿をすることはあまりないが、天文部などは夜中に星を見るためにかなり頻繁に利用しているとか。

今回七不思議を調べるにあたり、夜中でないとチェックできない部分が多かったため、僕らもせっかくの施設を利用することにしたのだ。

「先輩、今日は由依ちゃんと花火の予定だったんですよ!!」

文句を言っているのは後輩の相沢和也(アイザワカズヤ)。やっぱり、彼女との予定を入れていたのか。

「予定を決める会議の日に和也が来ないからじゃないか。」

ため息をつきながら僕が返すと

「由依ちゃんからは、『先輩先輩って先輩と私とどっちが大事なの!?』って言われるし・・・もしものことがあったら責任取ってくださいよ!」

「お前言ってる意味が分からねーよ。自分の彼女のことは自分で何とかしろ!」

どう返していいのか悩んでいると横から隆が和也の頭をはたいて助けてくれた。

「ところで遊、学校の七不思議って何があるんだ?」

いじけた和也は放置して隆の質問に答える。

「えっと、まずは音楽室のベートーヴェンの肖像画の目が光る。あと誰もいないピアノが2時に鳴る。それから、夜中に2階の女子トイレからすすり泣く声が聞こえる。あと…」

「あー、分かった分かった、どこにでもあるような怪談話か。」

隆がつまらなさそうに僕の話を切ろうとした。

「いや、そうなんだけど、この学校の七不思議には他ではあまり聞かないのがあって、その名も『真実を映す鏡』。これはちょうど日付が変わるときに鏡を見るとその人の真実を映すとか。」

これにはちょっと興味がわいたみたいだ。

「ふーん、で、それはどこの鏡なんだ?」

「いや、それが分からないんだ。」

「「は??」」

声が重なる、和也まで驚いた顔をしている。

「なんで和也が驚いてるの?」

「いや、先輩ちゃんと調べておいてくださいよ。」

「いやいや、言い出しっぺの和也が一番調べるべきでしょ!」

そんなこんなで夜中。トイレを見て水漏れがあったり、ピアノはうんともすんとも鳴らなかったり、ベートーヴェンは暗くて見えなかったり。

「いやあ、たいしたことないですねえ。」

和也は先程から携帯を何度もチェックしていた。

「まあ、こんなこったろうとは思ってたぜ。」

隆もあくびを噛み締めながら言った。

「そろそろ、日付が変わるんじゃない?」

僕は時計を見てみんなに声をかけた。

「ほら、『真実の鏡』の時間だよっ!」

「本当だな。けどよ、そもそもどの鏡かわからないんだよな?どうすんだ?」

「先輩、指示してくださいよ。」

さっきまで携帯で彼女と連絡のやり取りしていた和也も携帯のディスプレイの薄い明りのもと僕の指示を待つ。

「そうだなあ。うーん、どうしよう…。」

とは言え、悩んでいる間にも時間は刻一刻と12時に近づく。

「ああっ、もういいやっ!みんな適当に鏡を見ようっ!3人いれば当たりがあるかもしれないし。」

「まあしょうがないっすね。」

和也が同意する。

「そうだな。じゃあ俺は1階の職員トイレにするか、ちょうど便所に行きたかったんだ。」

隆がそう言い、「じゃあ、あとでな」、と階段を降りていった。

「僕は2階の便所で。ちょうど由依ちゃんから電話も掛かってきましたし…」

和也は「もしもし~」っと甘えた声で電話しながらトイレに消えていった。

僕もどこかにしようと思ったけどあまり時間もないし、鏡って他にどこにあったかな?と思いながら、ふと3階から屋上への階段の踊り場に鏡があったのを思い出した。

よし、ちょっと急いで行くか、と階段を駆け上がる。腕時計を見るとあと5分。

鏡の前について時計を見るとあと1分くらいだった。全身が写る鏡には月明かりのもとちょっと息を切らせた僕の姿がある。

あと30秒、20秒、10秒、0、うーん何も変わらないように見えるけどなあって思った時、鏡がぼんやり光り始めた気がする。

「あれ?」

最初はほのかに、徐々に強い光に。

「えっ!なにこれっ?うわわわっ!」

最後には目を開けていられないほどの光が僕を包む。