(保健室にもいないし、教室にもいない。寮の部屋にも帰っていなかった…一体どこへ行ったのかしら)
なんとなく妙な予感のした私は保健室を出たあと、再び教室に戻り、さらにアリスさんの寮の自室にも行ってみたが、やはりアリスさんの姿はなかった。
(うーん、慌てても仕方ないわよね。落ち着いて考えましょう)
気がつけば慣れ親しんだ実験室に私の足は向いていた。実験室の集まった区域は静かで人の気配がない。
(今日の午後は実験の授業がないのね)
『カチャ』
(あら?)
魔法薬の実験室に鍵を差し込んで違和感を感じた。
(鍵が開いてるわ)
魔法薬の中には強力な毒薬や酸、媚薬など軽い気持ちで扱えば、大問題となる劇薬が含まれているので、教官が責任を持って施錠することが規則で決まっている。
(誰かが利用しているのかしら?)
私と同じように授業の準備をしていそうな教官の顔を思い浮かべながらドアノブに手をかけた瞬間、悪寒が背中を一気に貫いた。
(なっ、何なの?)
嫌な感覚に息を飲んでノブから手を離した私は、手とノブを順番に見つめる。
(今のはなに…?)
私はおそるおそるドアノブを握り直した。今度は慎重に扉を開く。
その瞬間、扉の隙間からネットリとした空気が私の体にまとわりついてきた。
(なにっ…これって…?)
咄嗟に魔法薬が漏れ出したのではないかと疑ってはみたものの、落ち着いて考えてみると、該当するような魔法薬は思い浮かばない。
(まさか…教室を間違えたのかしら?)
それで思わず教室名のついたプレートを見上げる。
【魔法薬実験室】
(そうよね…間違いないわよね…)
再び教室内に目を向ける。
普段使っている明るく清潔な教室は薄暗く禍々しい雰囲気で、まるで知らない教室のように見えた。
(ううん、教室が違うというよりむしろ空間が違う)
私は一枚の扉を境にして広がる異世界に茫然と立ち竦む。
(魔法薬が漏れ出したわけじゃない…だけど絶対におかしい…誰か…そうだわ、ロバートを呼んで…)
ようやく気を持ち直して誰かを呼びに行こうと振り返った時だった。
『むぐ………じゅぽ………んぐ………』
呻き声が私の耳に届いた。
(何かしら?誰かいるの?)
薄く開いた扉の隙間から暗い教室を覗きこんだ私の目に白い物体が映る。
(あれは…)
奥の教壇の上で揺れる何かは最初は全く見えなかったが、薄暗さに目が慣れてくると制服のシャツだと分かった。
誰かが向こうを向いて座っているのだ。
(誰かしら…こんなところに…)
扉のノブを掴んだまま目を凝らす。
誰かがいるのは教卓のそば、教室の一番前だ。私がいるのは教室の一番後ろの扉。
後ろ姿で顔は見えないものの、白い背中に真っ黒な髪が垂れている。床に直接座っているせいか髪は床に届きそうだ。
(…女の子…っ‥まさか…アリスさん?)
先ほどから探していた少女の顔が真っ先に頭に浮かんだ。
(でも、保健室に向かったはずのアリスさんがこんなところにいるはずないわよね)
そうは思うものの、見れば見るほどその後ろ姿がアリスさんにしか見えなくなった。
長い髪が揺れている事から頭が動いているのは分かる。
(何をしているのかしら…。いえ、その前にとりあえず誰がいるのかだけでもはっきりさせないと)
その時、私の気持ちが伝わったのか、少女が顔を横に向けた。
(あっ)
表情までは見えないもののその横顔は見知ったアリスさんのものだ。
(やっぱり…)
「ァ…」
私は『アリスさん』、そう呼びかけようとして寸前でなんとか言葉を飲み込んだ。
(何かしら?)
アリスさんの向こうに何かが一瞬見えたような気がした。
薄暗い教室の奥まではっきりと見えないものの、アリスさんは何かの前に座っている。
(一体何をしているの?)
アリスさんの様子からは今すぐどうこうといった危険はないように見える。
(今するべきことは扉を閉めて応援を呼びに行くこと、それは間違いない。だけど、誰がいるのか、何をしているのか、それも分からずに応援を呼びに行ってもきっと理解してもらえない。それなら、アリスさんの奥に何があるのかを確かめた上で誰かを呼びに行こう)
少しの間逡巡した末に私は決断した。
(よしっ)
教室内にいるのが自分の教え子であることも手伝って、私の中に力が生まれた。
(もしかしたら単にサボっているだけかもしれないし…それならお説教ね)
そう考えると少し口元が綻む。
(大丈夫よ、ちょっと入るだけなんだから)
私は自分を元気づけて薄く開いていた扉を音を立てないように開いて教室内に滑り込んだ。
(うっ…)
粘液の中に飛び込んだような感覚に私は眉をしかめる。ブラウス越しに体を這うように何かがまとわりついてくる気がして何となく体を抱き締めた。
(なんなのよ、これっ?)
私は震える膝でなんとか歩いて一番後ろの席にしゃがみこんだ。
「ふぅ…」
大きく息をついてまとわりついてきた何かを探そうとするが、もちろん何もない。
(気のせいかしら?)
実験室のテーブルには実験中動かないよう、床に固定するための太い脚が取り付けられている。
私はその脚の陰に隠れて前を確認した。
相変わらずアリスさんは向こうを向いてゆらゆらと動いているように見えた。
(アリスさん…?何をしているのかしら…)
私は見つからないよう四つん這いになって一つ前のテーブルの陰に移動しようとした。
『にゅるにゅる』
(え?)
タイトスカートに包まれたお尻に何かが這い回る感じがして動きを止める。
恐る恐る後ろを振り向いても何もいない。
(気のせい…よね?)
嫌な予感がする。
チラッと扉を見てやはり戻ろうかと思った時、再び苦しそうな声が聞こえた。
「…んんっ…んぐっ」
(アリスさんっ)
再び四つん這いで進むと、ひとつ前の机の裏まで移動する。
(ふぅ…少し蒸すわね…)
生暖かい室内でじっとりと首もとが汗ばむ。
再びテーブルの陰から顔を出して見るが、まだ前に二脚のテーブルがあるのでよく見えなかった。
(前のテーブルまで行けば斜めから見えるはず)
音を立てないようにゆっくりと這うように進む。今度はニーソックスの上の太股を何かが這い回る。
(はぁ、はぁ…気のせい、気のせいよ…もう少しだけ近づいたら…)
ようやく一番前のテーブルにたどり着いた。
(さあ、これで……あっ)
テーブルの陰から顔を出した私は、アリスさんの奥に何があったのか、いや、居たのかが分かって息を飲んだ。
(まっ、まさか…こっ、こんなことって…)
教卓の椅子に足を投げ出すように座っていたのはガビーノ学院長だった。
しかも、その下半身は何も着けていない。
そして、アリスさんは学院長の脚の間に座って、そそり立つ男性器に舌を這わせていたのだった。
私の頭の中は真っ白になって一旦テーブルの陰に隠れると、混乱する頭を落ち着かせようと大きく深呼吸する。
(まさか…嘘?見間違いよね?)
そう思ってもう一度顔を出して見る。
アリスさんは両手で男性器を握りしめて上下に擦っていた。
(おっ、大きい…あれって…)
何度かロバートとはベッドを共にしているし、彼と知り合う前にも彼氏がいた私にはもちろん男性器も、アリスさんが今何をしているのかも分かっている。
(だけど…)
その男性器のサイズはこれまでの経験からは考えられないものだ。
(あんなに大きいものが…?)
アリスさんは恍惚とした表情で学院長を見つめる。
そして学院長も情欲に濁った目つきでアリスさんを見つめ返していた。
「…になって…に…みせ…」
不意にアリスさんに向かって何かを囁いたように見えた。
(何を話しているのかしら…)
するとおもむろにアリスさんが四つん這いになってお尻を私の方に突き出した。
その結果短いスカートの中身が私に丸見えになる。
(なっ…なんてエッチな下着を…)
お尻の半分も隠せていないピンクのショーツはクロッチに切れ目が入っていて、ピンクの柔らかそうな粘膜が晒された。
『チュッ、んんっ、んはぁっ、んっ、ちゅっ、んっ、はぁ、はぁ』
他に人の気配のない教室内だから、舌を男性器に這わせる音や荒い息遣いまで聞こえる。
(なんてことなの…、教育者である学院長がこんなことをっ)
私の中で驚きが怒りに変わる。
「ごひゅいんふぁま、ろうれふふぁ?」
学院長への怒りが膨らむ私とは対照的に甘えたようなアリスさんの声が聞こえた。
「ああ…上手くなったな…気持ちいいぞ、そんなに激しくして、我慢できないのか?」
「らってぇ…」
口から肉棒を吐き出して学院長を見つめながらアリスさんは言葉を続ける。
「ん…だって、ご主人様が授業中にあんなことするんだもん…もぉ、ほしいよぉ」
(ご主人様…?授業中…?)
「ご主人様、これちょおだい」
『くちゅっ、くちゅっ』
アリスさんの指が亀頭の先の割れ目を擦り、もう片方の手でその下の大きな睾丸を包み込むようにした。
「アリスも随分淫乱になったな。さっき部屋で散々犯してやったろう?」
「だってぇ…もぅ…こんな体にしたの…学院長なんだから」
(えっ、あんなのを?)
再び驚愕の私を尻目に学院長がアリスの耳元で再び何かを囁く。
「ぇ…ゃ…でもぉ…」
アリスさんが俯いて躊躇する。
「そうすれば入れてやるぞ?」
学院長の言葉でアリスさんは、覚悟を決めたように顔を上げて、立ち上がろうとするのが分かった。
「ぁっ」
(まずいっ)
こちらを向いたらバレるっ、そう思って私は机の陰に顔を引っ込める。
(何をするつもり?)
「んっ、あぁっ、だめぇ、ちゃんとご主人様の言うとおりにしたのにぃっ…そんなの入れちゃやだぁっ」
見えない柱の向こうで何が行われているのか、アリスさんの言葉からは想像できない。
(少しだけ…)
顔をこっそり出すと、アリスさんが立ち上がってこちらを向いていた。
スカートをアリスさんは自分で持ち上げて、少し開いた足の間に学院長の手が入っている。
アリスさんの瞳は潤んで耳まで真っ赤になっていた。
「ねぇ、ご主人様…淫乱なアリスのオマンコをご主人様の肉棒でいっぱいにしてください」
(嘘…アリスさん…何言ってるの?)
「そうだな…アリス、ちょっと耳を貸せ……ア……せい……えで……たんを……て……みせ……」
学院長は女の私でも妙な気持ちになるアリスさんのオネダリに応えず、耳元で何かを囁いた。
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