10周目 9月22日(水) 午後7時30分 島津政信
「はあ…」
水泳部がラストの掛け声をかけている横を通って俺はプールから出た。
口であれから二度も射精した権田に例の映像は消してもらった。
(うぅ…くそっ、アゴが痛い。…だけど、これで最悪は脱したよな…)
トボトボと柔道場に向かう。
(そうだ…忘れてたけど、沙紀のこともあったんだった…)
柔道場に向かう足がますます重くなる。
(でも…せっかく柔道部に入ったんだから)
『ガラッ』
柔道場の引き戸を開けると、柔道部も練習がちょうど終わるところで、主将が挨拶していた。
「週末は俺達三年にとって皆と一緒にできる最後の試合になるかもしれん。それぞれが力を出しきれるよう準備しようっ」
「おっす。あっ、したあっ」
力強い掛け声とともに練習が終わった。
「みんなお疲れさまっ」
扉のそばにいて俺が来たことに気づいてないはずがないのに、俺を無視して沙希が部員達に声をかける。
(はあ…。せっかく柔道部に入ったのに…)
「大丈夫か?顔色が悪いな」
そう言って高樹が近づいてきた。
「ああ…うん。大丈夫。水泳の補習が意外にハードだったから」
(高樹に心配させるわけにはいかない)
「じゃあ帰るか。すぐに着替えるから待っててくれ」
高樹が着替えに更衣室に入った。待っている間も、沙希の冷たい視線を感じる。
(なんとか仲良くしたいんだけどな…)
話しかけてみようか…と俺が悩んでいたら、高樹が制服に着替えて出てきた。
「待たせてすまん。よしっ、帰るか」
高樹の言葉に近くにいた一年生が反応した。
「あれ?島津先輩は晩飯行かないんスか?沙希さんも来るって…」
「ああ、やっぱり今日は止めとくよ。高樹、行こうぜ」
そのやり取りの間も、柔道場を出る時まで怨みのこもった視線が背中に突き刺さったままだった。
◇◇◇
9月22日(水) 午後11時50分 島津政信
「美紗、エエやろ?」
ぼんやりした視界の中で俺は権田に頷いた。
「んんっ」
唇を合わせるとすぐに舌を絡め合う。俺はパジャマ姿、権田は海パンだった。
俺は分厚い唇に吸い付かれたまま、ベッドに押し倒された。
ここは俺…いや、高樹の部屋だ。
だけど、権田がいることに違和感は感じない。
「んっ、ちゅっ」
権田にのし掛かられて重いはずだが、不思議にその重みが心地よく、俺も権田の背中に腕を回す。固くなった権田の股間が押し付けられた。
「高樹…」
耳元で囁く。
「んっ…いいよ…」
俺の口から甘い声が出て、権田に頷いた。
『チュクチュク…』
権田の足の間に入ると、今日の放課後咥えさせられたチンコを自ら頬張った。
(気持ちいい…)
何だか舐めれば舐めるほど体に甘い疼きが走る。
「んっ…ねろ…ふぅん…」
「気持ちエエぞ…そろそろエエか?」
俺は頷いて権田と場所を入れ替わる。いつの間にか二人とも全裸だった。甘い疼きがチンコを求めていた。
目一杯開いた足の間にピタっとチンコが当たった。
(あ…、入ってくる…)
◇◇◇
「ううん…」
寝返りをうって目が覚めた。
(何だったんだ、あの夢…)
夢の内容を思い出して、羞恥と困惑に俺は闇を見つめた。特に熱帯夜というわけでもないのに、体が熱を持っていて体が汗ばんでいた。特に下腹の奥がドクン、ドクンと脈打っているように感じる。
(なんであんな夢を…)
夢の中の妙に生々しい感触を思い出して身震いした。
夢の中で嬉々としてしゃぶっていたチンコ。その生々しい感触とともに、現実に放課後顔にかけられた権田の精液の臭いが蘇る。
(くそっ、俺は何をしてたんだ。脅されていたとは言え、男の精液をかけられるなんて)
臭いが呼び水となり顔にかけられた瞬間の事を嫌でも思い出してしまった。
(「舌を出すんや」)
なぜ権田の言いなりに口を開いてしまったのか。
舌の上に発射されたネバついた粘液。鼻にもかけられてその独特の臭いに頭がクラクラした。
(それだけじゃない)
精液の独特な臭いに頭の中が染められて、呆然となっている間に、あろうことか口にチンコを突っ込まれた。
(くそっ、噛み切ってやれば良かった…)
だが、現実には俺は噛み切るどころか、最後には命令されるがままに舌を這わせて射精を促しすらしてしまった。
(なんであんな男に…)
闇の中に権田の体育教官とは思えないほど弛んだ体が浮かび上がる。
(あんなヤツと…まるで恋人同士のようにこのベッドの上で絡みあって…)
自分の体をゆっくりと撫で回す。
「あー、ダメだっ…ふう…俺は何を考えてたんだ」
わざと大きな声を出して、妄想を振り払って起き上がる。
(水でも飲むか)
口の中が乾いていることに気がついて、ベッドサイドの灯りをつけると、俺は喉を潤そうと階下に降りた。
『パキ』
これまでずっとそうだったように新しいペットボトルの口を開けてそのまま飲む。
「ごく、ごく…んっ、ごほっ」
男の時の癖で、勢いよくペットボトルを傾けすぎたせいで水が唇から溢れた。
「しまった」
着ていたパジャマがズボンまで濡れてしまった。
(着替えないと…)
部屋に戻るとパジャマのボタンを外して下着姿になる。
火照った体が少し冷やされる。
部屋に置かれた姿見に映る高樹は身長こそ、同年代の中では高い方ではないにしろ、小さな頭に足も長い。少し痩せぎみだが、女らしい曲線がしっかりと出ていた。
(そう言えば、水着を着るのも一苦労だったしな)
なんとなく権田に狙われるのも分かる気がした。
(それにしても暑いな…)
まだほんのり赤い頬を見ながらふと、下着に目がいった。
(寝苦しいのはこれのせいじゃないか?)
高樹に寝るときは必ず着けるよう言われていたブラジャーを外してみると、胸がポロンと出て、急に締め付けがなくなった。
(ふう、やっぱり寝るときくらいは外した方が良いよな)
「…えっ」
鏡に映った俺の履いているパンティは薄い青色だったが、一部分だけ色が明らかに濃い。
(嘘だろっ…まさか…漏らした?)
慌ててパンティに手を入れると指先にヌルっとした感触。
(ん?)
慌てて手を抜くと指先がベッドサイドの柔らかな灯りに照らされてヌルヌルと光っていた。
(なんだこれ?)
再び手を入れた。
(…んっ、あっ)
濡れた原因を探ろうと指を動かしていくと、割れ目に指がはまった。
『ジュプ…』
まるで熱い湯の中に指を入れたような感覚。
力を入れているわけでもないのに誘われるように指は割れ目に入っていく。
「あっ、はっ、あぁ…これっんあぁっ」
鏡には悶える高樹が映っていた。治まりかけていた体の火照りが再び強くなった。
(これって…あれ…だよな?…ってことは…今俺が、してるのって…)
いけない事をしている、高樹に申し訳がたたない、と思うが指は止まらない。割れ目の浅い部分を何度も擦る。
「ふぐっ、んっ、なんだっ、んっ、あっ、あぁっ」
立ったまま悶えていると先日の体験が自然に思い浮かんだ。
(そうだ…痴漢…にもされたんだ…)
痴漢に触れられた時も、公共の場で、たくさんの人の前で快感に危うく声が出そうになった。
乳首が甘く疼く。
(固くなって…る?)
手が意思を持ったように勝手に胸の膨らみに伸びた。
「あっ、んっ、んんっ」
乳首を触った瞬間電気が走って体がビクビクと震えた。
(なんだ…この感じ…立っていられない…)
『パサ』
ベッドに仰向けに倒れこんだ俺はいつの間にか目を閉じていた。
瞼の裏にはだらしなくたるんだ体が映る。
(「分かってんで、気持ちエエんやろ?そしたらもっと気持ちようしたろか?」)
(なんで権田が…)
妄想の中では、足をマッサージされていた時に見た権田の太く短い指が太ももから上に上ってくる。
(あそこで俺が止めていなかったらどうなっていただろう…?)
俺の指が妄想を現実にした。
指がパンティをずらして、そのまま割れ目をなぞる。足を大きく開かされて、綻んだ割れ目の上で膨らんだ突起を指の腹で潰した。
「あっ、うんっ、うくぅっ、これっ」
ビクビクっと再び体が震えた。
(「おっぱい弄る手が止まってんで」)
権田の声がさらに俺を動かす。
(そんな…両方なんて…)
だが、なぜか瞼の裏に映る権田のイヤらしい目つきに逆らうことができず、言われるがままに胸を揉みしだいた。
「んっ、くっ」
(「気持ちエエんやったら声に出して言うてみい」)
「あっ、そんなこと言えるわけないっ」
(「もったいないなあ。言うたらもっと気持ちようなんのに」)
(もっと…気持ち良く…)
(「ほれ、クリトリスが勃ってきてるで」)
「んふぅっ、はっ、あぁぁっ」
胸は痴漢の的確に乳首を狙った責め、股間は権田のねちっこい動きで、シーツを乱して俺は快感に酔った。
(「エエか?」)
夢の最後、足を開いて権田のチンコを待っていた、同じように足を開く。
(あれが入ったら、どんな感じがするんだ…?)
「ふぅっ、ふぅっ」
指がそろそろと割れ目に向かい、『チュク』ゆっくりと肉襞を掻き分けて入っていく。
「んあっ…」
(もっと奥まで来るよな…)
『ジュブジュブ』
指の付け根まで入った。
「んああっ、こんっなぁっ、きっ、きもちいいっ」
声に出すと妄想の中の権田が言うように、ますます気持ちいい気がする。
さらに指を動かして、夢の中と同じように甘い声で快感を味わった。
「あっ、なんかっ、クるっ、あっ、クるっ、あっ、なにこれっ、すごっ、おかしくなるぅっ」
瞼の裏が真っ白に光って体が本能に従って痙攣した。
(これが…イくっ、てやつ…か…?)
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