第二夜
昨夜と同じ、言葉の軽い案内役の男が今夜は緊張していた。
「こ、ここは商人の中でも選ばれた者しか泊まれない最高級なンだ」
静かなエントランスホールは昨夜のホテルよりもさらにグレードが上がっているようだった。
(スッゴいキラキラ…)
身なりの整ったいかにもな紳士とホテルマンがフロントカウンターの横で立っている。
(んー?待ち合わせ?)
音もなくそこに上から何かが降りてきて、それだけでも明らかに高価だと分かる凝った細工をされた柵みたいなのをホテルマンが上げると紳士がそれに入る。
そして、「えっ!?」紳士が上へと消えた。
僕は男を見る。
何か言おうとするけど、何と言っていいのか、口をパクパクしていると、男が口に手を当ててこそこそと説明してくれた。
「あれはな、エレベーターって呼ばれてる最新の魔術具なんだ。都市国家群でもホテルに導入されてンのはここぐらいだ。階段を上らずに上の階まで行けンだぜ」
「えれべーたー?」
さあ行くぜ、そう言って僕らもえれべーたーに乗る。
「わわわっ!!」「おおっ!!」
ぐいーん、って上がる感じに思わず声を出したら、男も僕とおんなじ顔をしてた。
「何笑ってんだよ?俺もさすがにエレベーターは初めてなンだよ」
ちょっと拗ねたような顔をするからまた笑ってしまった。
「さあ着いたぜ」
降りたのは最上階。
(っていうか、ここ屋上じゃん?)
「今日着てた水着は持ってきてンだよな?」
「えっ?あっ、うん」
「よし、ならこの部屋で着替えンだ。そんで部屋の向こう側にも扉があっから出れば今日の相手が待ってるはずさ」
じゃあな、と鍵を僕に渡すと、手をひらひらさせて男は去っていった。
今日は部屋まで案内されなかったことにちょっと驚きつつ、とりあえずドアを開けると、エントランスの少し広い部分から、まっすぐの通路の左右に部屋がいくつもあった。
渡された鍵はその部屋の鍵だったみたいで、僕の鍵には月が刻印されていた。同じく月のレリーフが貼りつけられたドアの鍵穴に差し込むと、スムーズに回り、中に入る。どうやらここはそれぞれ服を着替えるための部屋のようだ。
(シャワーに、ベンチ、それにクローゼットかぁ…)
バスタオルなどもクローゼットの中には準備されていて至れり尽くせりだ。
(こうしていても仕方ないし…もう昨日一回ヤッたことなんだから!!)
僕が持ってきた水着は今日のコンテストで着たもの。
白のビキニの上から黒のレースを重ねるタイプのモノ。ヒールの高いミュールを履いて完成。
(奥の扉…って言ってたよね?)
なるほど、確かに通路の奥は入り口と同様少し広くなっており、その先に扉がある。
この先はどうなっているのか、ちょっと不安を感じつつも僕は一歩踏み出した。
「…あれっっ?」
(ここって屋上だよね?)
むき出しの体に風を感じるから、やっぱりここは屋外なんだけど。
なのに、僕の目の前にはたっぷりの水があるのだった。
ぼんやりと照明が浮かび上がらせているのはプールだった。プールの底にはめ込まれた魔術具で夜のプールは幻想的な景色が広がっている。
その周囲はパラソルとデッキチェアが並んでいて、既に何人かの男と水着姿の女の子がそれぞれおしゃべりしたり、何か飲んだりしていた。
「葵様、ですね?お連れ様があちらでお待ちです」
呆気にとられていると黒服の上品な従業員が僕を一つのパラソルに連れて行ってくれた。
「ごゆっくりどうぞ」
洗練されたスマートなお辞儀をする従業員。
「やあ、よく来たね。…キミ、彼女に何か飲み物を」
デッキチェアに座った男がグラスを片手に声をかけてきた。
サングラス越しなので顔は分からないんだけど、なんだか聞き覚えのある声だった。
「初めまして、葵です」
中年の男で、水着を着ているせいで厚い胸板や太い上腕二頭筋から男が鍛えているのが分かる。
(どこかで会ったことがあるんだろうけど…あっ!!)
男がサングラスを外した瞬間、僕の脳裏に一つの情景が蘇った。
(「ねっ、パパぁ。お願い。私、グランプリ貰えるなら何でもしちゃう…ねっ、ほらぁ、触ってみてぇ」
「ん?おいおい、そんなことしたら水着が濡れてしまうぞ?」
「大丈夫よっ、水着だもん。あんっ、パパの指がっ、あっ、太くてっ、わたし、我慢できなくなっちゃった…いいでしょ?ねっ?」
「フフフ、このステージが終わったらその水着を下に着たまま私のオフィスに来るんだ」)
(そうだ!!前回優勝者の女の子とイチャイチャしてた男…)
「ん?私のことを知っているのかね?」
「あっ、えっ、え~っと…」
どうしようかと思っていると、「ふむ、フィーと一緒にいるのを見たことがあるのかもしれんな」と呟いて、勝手に納得してくれたようだ。それから「おっと、美人を前に他の女の名前など失礼だったね」と言って座るよう促された。
(あれ?でもこの人って、今回も前回優勝者のパトロンしてるんだよね?)
「葵クンは私が誰か知っているようだから、不思議に思っているようだね?」
「あ、はい」
「なかなか賢いお嬢さんだ。そう、デルフィネのパトロンをしているんだが、今回は君の姿を見てぜひ一度相手をしてもらいたくなったのだ」
男の言葉に思わず吸っていたストローを吐き出してしまった。
(つまり、自分の世話している愛人じゃなくて、つまみ食いをしたくなったってこと!?)
「ははは、そう怖い目で睨まないでくれよ。もちろんフィーには充分な生活を保障しているさ」
男には悪びれる様子もない。
「でも、彼女には内緒なんですよね?」
「まあね、彼女はコンテストの優勝よりも、私が他の女を抱いたってことに怒るだろうからね」
まるで、この中年男に対して彼女の方がハマってるとでも言いたげな物言いだけど…。
(確かに盗み聞きした時、デルフィネさんの方から求めていた気もする…)
男を改めて見ると、顔は不細工ではないけど、とりたててハンサムってわけでもない。
だけど自信が滲み出ていて、包容力は感じられる。
あと、第一印象から感じていたのが、筋肉ムキムキでガッチリとした体格。身長も今の僕からすれば十分高い。
(昨日の司会者さんでもされるがままだったのに、この体だと…)
昨夜の男と比べてしまうのみならず、男の下半身を見てしまっている自分に気がついて、僕は慌てて飲みかけのグラスを見た。
昨夜に引き続き、アルコールを飲まされてしまったのかと思ったんだけど、それは即、男に否定された。
「ああ、アルコールは入っていないから安心しなさい。酒に弱いのは知ってるさ」
(さすがは大商人、僕のことは調査済みってことか)
「アルコールなどでキミのような美人を抱いても楽しくないだろう?素面のキミを快楽で酔わせるのが楽しいのだよ」
前言撤回。単なるエロオヤジだった。
「さて、ここで話しているのもいいがせっかく目の前にプールもあるし、お互い水着を着ているわけだ。少し入ってみようか」
男は肩から掛けていたバスローブを脱ぐと、僕をエスコートしてプールに向かった。
◇◇◇
「えーっと…この状況は…」
スライムの体液を特殊な処理をすることで作られるっていう浮き輪を初体験した僕は、ちょっと感動していたはずだったんだけど。
丸い輪っか状の浮き輪に入ってぷかぷかしながら、飲み物を飲む。まだまだ熱帯夜と言って良い時期だからすごく気持ち良くて、お金持ちは凄いんだなあ、なんて考えていたんだけどさ。
飲み物を飲んでいただけのはずが、いつのまにやら持っていたグラスはプールサイドに置き去りで、僕らは気がつけばプールサイドからプールの中央に流されていた。
「フフフ、さて、ちょっと味見させてもらおうかな?」
男が僕の脇腹を撫でるのを止めたいけど、浮き輪が邪魔で手が届かず、その手が上へ上へと上がっていくのをただ感じていることしかできない。
「やっ、あの、他の人もいるから…」
「大丈夫だ、このホテルに泊まれるような者は口が堅いもんさ」
「でも…これ以上は…あっ」
つつーっと撫でる手が…胸まで届かない。そう言えば浮き輪につっかえて、ビキニに包まれた膨らみは浮き輪の上にあったんだった。
ホッとしたのも束の間、男の手が今度は下に向かった。
ゾクゾクっと体が震える。
「そこは…ちょっ…やっ」
これも枕の一環だったことも忘れて思わず足を蹴りだした僕の足は水の重さで威力も速さも弱まって、男にあっさりと掴まれてしまった。
「ははは、なかなかじゃじゃ馬のようだね。それも悪くない」
片手で器用に浮き輪が抜き取られたことで僕は急に浮力を失って目の前の男に頼るほかなくなる。
そして、密着した胸が男の胸板で潰れた。
「さすがにいい身体をしているね」
僕の両腿が持ち上げられて、男の下半身に巻きつけさせられる。
「ほら、こうすれば沈まないだろう?」
男の股間がちょうど水着のクロッチ部分に当たってるんだけど、水の中でもその熱が伝わってくる。
(えっ!?確か今日はデルフィネさんとオフィスで…って言ってなかったっけ?)
それなのに、明らかに分かるほどムクムクと大きくなっていく。
「ふーむ、その顔は、やはり私とフィーの会話を聞いたようだね…よし」
男が何やら呟いたかと思うと、強く抱きしめられて。
「ンんんん!?」
舌が僕の口内を蹂躙する。昨夜の司会者さんも興奮して乱暴なキスだったけど、この男のキスはまさに蹂躙される、という言葉がふさわしい。
(息が…)
苦しいほどのキス。でも、苦しいだけならまだしも…。
(口の中がこんなに気持ちいいなんて知らない…)
男のキスは乱暴なわけではなく、口の中の感じるところをどんどん教えられていく。
強く抱きしめられていることと合間って、唇が解放されたころにはぼんやりと思考が定まらなくなっていた。
「うん、いい顔になったな。キミは何も考えなくていい。ただ、快感を貪りなさい」
男の手に導かれて、熱く太い肉棒を掴まされる。
(ああ…こんなとこで…)
抱き合ってキスしてる姿も誰かに見られてしまっただろうか?それに、今してることなんて見られたら…そんなことが頭をよぎるけど、まるで察知したかのように舌を吸われて、それどころじゃなくなってしまう。
「どうかね?」
「大きい…です…」
ふむ、そう言って男の太い指が水着のブラの中に入ってきた。
「こっちも硬く尖ってきたな」
(あっ、そこグリグリしたら…)
僕が握っているものが、体積を増す。
「分かるかね?これからキミを快楽に導くものだよ」
(こんなに大きいのが入ってくる…♡)
「んっ、ふっあっアアっ♡」
それだけじゃない。さっきから差し込まれた男の硬い太腿が僕の股間を強く弱く擦っているのだ。
絶妙な力加減で、もっと欲しいと僕が思うと弱くなり、かといって冷静になりかけると強く擦りつけてきて、気がつけば僕の腰もモジモジと動き始めていた。
「あっ♡もうっ」
僕の口から無意識におねだりの言葉が出そうになってしまった。
昨夜さんざん味わった快感を心と体は覚えている。
(これが入ってきたら、どうなっちゃうんだろ…♡♡)
「今日は気絶しても許してやらんよ」
耳元で囁かれる声。
落ち着いた声だからこそ、男がこれから間違いなく行うであろうことを、僕は確信してしまった。
(気絶しても、犯されて起こされて、また気絶するほど犯されて…♡♡♡)
手の中で暴れる肉棒もいけない妄想を加速させる。
(ああ♡もう逃げられないんだ…♡)
「どうやら欲しくなってきたようだな。ここで挿入(い)れてやろうか?」
さっき拒絶したばかりの言葉。だけど、僕は思わずうなずきそうになってしまった。
「声が絶対でちゃうからぁ…」
「それも面白いな。ギャラリーたちを喜ばせてやるのも一興」
水着の中に手が入ってきて、広げられた体の内側に冷たい水が入ってくる。
「あっ♡ここじゃっ♡んんっ♡」
「だが、こんなに熱くなって、キミももう我慢できないんだろう?」
快感に喘ぐ僕に対して、男にはまだまだ余裕があった。そして、それは僕を絶望させる。
(ああ♡このままじゃ…♡このままここで…♡)
その絶望は甘美な興奮へと変化するのだ。
「そんな目で見つめられたら無理にでもここでヤりたくなるな」
「だめぇ♡ゆるしてください♡」
甘美な妄想と現実の愛撫のせいで強引に迫られれば拒めないのは明らか。
「そうだな、ではデッキに戻ろうか」
よしよし、と男に背中を撫でられてもびくっと反応してしまうほどに僕の体は出来上がっていた。
そして、水から上がった僕は覚束ない足で抱き抱えられるようにしてプールサイドを歩く。
飲み物を運ぶ従業員とすれ違っても体調を伺うような真似はしない。
(プールで遊んだあとだから、とは誰も思ってないだろうな…っ♡)
周囲の女性からの好奇の視線と、男性からの欲情した視線は、水の中で僕らが何をしていたのか間違いなく知っている。
そして、そんな視線に晒されて僕の体の奥は疼く。
さっきとは違う、少し人々から離れたパラソル。
二人が寝転べるデッキチェアに体を横たえる。
「どうかね?」
胸元からへそに向かって指でなぞりながら訊かれても、ビクつくだけで答えられない。
「その…ふっ♡ぁっはぁっ♡」
「さあ、ここで続きをしようか」
もちろん何を求められているのかは明らかで、僕は男に添い寝するようにしながら男の肉棒を握った。
(大きい…)
指がまわらないサイズが僕の体を蕩けさせる。
(にぎって…こすってるだけなのに…)
「私の乳首を舐めてもらえるかな?」
言葉通りに、毛の生えた男の乳輪を舐めて、そのまま硬くなった乳首に吸いつく。
「おおっ、情熱的で素晴らしい奉仕だ」
男が褒めながら指先が背骨のラインを撫でる。
「んちゅっ♡んっ♡」
快感に喘ぎながら必死で奉仕をする僕の反応を見ながら、体の様々な場所が優しく愛撫される。
(なんでこんな気持ちいいとこばっかり…♡♡)
「さあ、そのまま下まで舐めるんだ」
もはや、僕は男の操り人形だった。毛むくじゃらの体を下へ下へと舐めながら降りていく。
「ああ、気持ちいいぞ」
そう言われると念入りに。男の喜ぶ声と、指の中の肉棒の反応だけが意識される。
そして、ついに肉棒まできた。
「玉からじっくり頼む」
片手で持ち上げると、その重量に僕は驚いた。
(こんなに重いの!?)
「溜まっているんでね」
昼間にデルフィネさんに出したと思われるけど、そんなこと関係ないくらいの重さだった。
「さ、頼むよ」
まずは毛の生えた玉を舌先でチロチロと舐めてみた。
「おっ、なかなか新鮮な感触だな」
それから慣れてくると、チュッと吸いついてみる。
「ああ、それもいいぞ」
口に含んでじっくりと味わう。
「ふむ、分かるかね?この中に溜め込んだものをこれからキミの中に吐き出すからね?」
この重さ分だけ出される。そう思うと、お腹の奥の扉がキュッと締まって、それからトロトロの粘液が溢れ出した。
「竿も舐めてもらいたいが、そろそろ我慢の限界だな」
男が僕の体を優しく押して、上に重なってくる。
「キミの膣中も十分ほぐれているようだし、このまま、いいね?」
僕は頷くだけ。奉仕を始めた頃から、とっくに体は男に対して白旗をあげていた。
「周りからキミが見えないようにしてあげよう」
そう言われるまで忘れていた。
(そうだ…ここは…)
「あのっ」
そう言いかけた瞬間、僕の入り口に硬いモノが押しつけられる。
「ここじゃっ、あっやぁぁぁっっ♡♡」
ズルっと音がしたんじゃないかって思うほどの衝撃とともに体の奥が求めていたものが与えられて頭がおかしくなりそうな幸福感にフワッと体が浮き上がった。
だけど、その声はすぐに途切れる。
「んちゅうぅぅっっっっ♡♡♡」
口が塞がれ、舌が絡めとられ、吐く息と声が男の口の中に吸い込まれる。
気持ちいいところをゴリゴリと押しつぶされ、擦られ、体全体で押さえつけられる。
(きもちいいっ♡だめっ♡こんなのっ♡かてないよぉっ♡)
怖いくらいの快感に溺れながら、逃げようにも男の重みで逃げようもなく、絶望感の中で快感を受け入れさせられる。
様々な敵と戦い、無力な自分に何度も落ち込んだことはあるけど、それ以上の絶望。自分が変わってしまうのが分かる。
(こわれちゃうぅっ♡♡♡もどれなくなっちゃうぅぅ♡♡♡)
「んんんんんっっっっっ♡♡♡♡♡」
もう何度も何度も瞼の裏を光が飛び、体は痙攣し、頭は狂いそうになってる。それなのに…
(きもちいいよぉっ♡♡♡♡♡)
僕は男の体をかき抱いて、与えられる快楽を貪る。
「ぷはあ!!さあ、最後は膣中を私の子種で満たしてやろう!!」
その言葉だけでも体がビクッと痙攣してしまう。
男の顔が迫ってきて僕は目を閉じてそれを待つ。
「んちゅうぅぅっ♡♡♡♡♡」
舌が絡みあうのに合わせるように肉棒とヒダヒダが絡み合う。
肉棒の先から本物ではない熱いものが吐き出されて、それを残さず味わおうと体の奥が柔らかく開く。
バチュンバチュンと打ちつけられていた肉棒からひと際大きな音が鳴り響いた。
「んぁぁぁぁっっっっっっ♡♡♡♡♡」
体の奥にこれまでとは明らかに違う種類の熱い粘液が浴びせられ、僕の口から声にならない喘ぎ声がこだました。
(おぼれりゅぅぅぅっっっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡)
★★★★★★★★★★★★
二夜目は水着回…のはずだったのですが、あまり水着を生かせなかったかも…。
勢いで書いたので読み返しておかしな点は修正していきたいと思います。
水着回はもう一話くらい続けたいと思っています。
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