「はっ!!はっ!!」
走っているのは僕、千手丸だ。長いこと使われていなさそうな獣道、木々を避けながら麓を目指していた。
(こっちの道を選んだのは失敗だったかも!!)
と、言うより、今から考えれば誘導されたんだと思うけど、後悔してもどうしようもない。
ガサッと脇の茂みで音がして、急停止をかけると、目の前をヒュッとクナイが通り過ぎた。
「くっそ!!もうっ!!何なんだよ!!」
間髪入れず、茂みから飛び出してきた黒装束の男を切り捨てる。
だけど、その場で立ち止まることはできない。すぐにその場から前へ飛ぶ。足元は悪いし、道場とは違って剣の美しさなど構っていられない。すぐ後ろに迫る黒装束の凶刃を何とか弾くとそのまま切り伏せた。
(こんなことになるなんて…今朝なんて千手丸もめちゃくちゃ幸せそうだったのに…)
◇◇◇
そう、明日刀が出来上がる、と知らせが来て朝から千手丸はウキウキとしていた。
千手丸の村正への想いに気がついた僕も、そんな千手丸の感情を生温い目で見守っていた。
(あれ?でも、今この体って僕が…)
ふと、気づいてしまった。
(もし、結ばれることになろうものなら、それってつまり僕が村正と―――ってこと?)
頭を抱える僕。
なぜかは分からないけど、千手丸と強く結びついてしまったせいで僕=千手丸になってしまっている。
千手丸の感情に強く引かれることもあるので、村正とそんなことになる時にはきっと…。
ぶんぶんと頭を振って考えるのをやめることにした。
(そういえば夢から覚めないのも不思議なんだけどなあ)
最近千手丸として生きているせいで、もともとの自分の体がどうなっているのかちょっと心配になってきた。
(いろいろと気にはなるけど、まあ、どうしようもないし…夢を見てるってことは、僕の体はまだ生きてるってことだもん、ね?)
そんな普段通りの一日の始まり。そして、道場で汗を流して帰宅。そのはずだったのに。
◇◇◇
「くっそ!!また!!次から次へ!!」
目の前に2人の黒装束が小太刀を構えている。
連携のとれた攻め方は彼らが素人ではないことをあらわしている。
だけど、千手丸も伊達に道場で鍛えてはいない。二人を撫で切りにしてそのまま山の斜面を走り下りる。
そもそも、道場を出て、そのまま家に帰ればよかったのに、浮足立った千手丸に促されるように、村正の工房に向かったのが失敗だった。
そして、工房を遠くから見た後に、体を清めたい、という千手丸の感情に引きずられて山の中の泉に向かった。
三郎に犯されていることもあって、そんな体で村正に会いたくはない、という気持ちは分かるから千手丸を非難することはできない。
だけど、それは黒装束たちに人気のないところで襲う千載一遇の機会を与えてしまうこととなったのだった。
「わっ…と…」
木の根に足をとられて前につんのめると、頭の上をヒュンと風を切って目の前の大木に矢が突き刺さっていた。
(あ、危なかった…)
このまま斜面を下るか、それとも山を登るか…。
だけど、撃たれる矢の精度はかなり高い。先ほども木の根に足がとられなければ確実に当たっていた。
(敵に背を向けて山を下るのは……ん?)
僕は木の裏に隠れて、先ほどから感じている違和感について考える。
これが連射されれば手も足も出ない、それなのに一発だけでそれ以降撃ってくる様子はない。
(単に僕が木に隠れているから?)
だとしても、射手が数人いれば様々な角度で射てくるはず。
(これほどの弓の腕のある者は一人しかいない…?)
それだけじゃない、なぜか、先ほどまでの連携のとれた攻撃もない。
(連携がないのは…手駒を僕が討ち取ったから…?)
つまり、もう相手に戦える人数はほとんどいないということになる。
(これほどの腕の持ち主がこれまで撃ってこなかったのは完璧なタイミングで射るためだった…?)
となると、偶然とはいえ必殺の一撃を躱したことで、僕の方が、俄然有利になったと言える。
(方角も分かってるし…犯人を見つけないと…!!)
そう思って走り出そうとした瞬間、地面から出た木の根に足をとられた。
(ええっ!!またぁ!?)
せっかくここまで頑張ったのにぃ、と思いながら視界が暗転した。
(うっ、と、まずい!!)
私はその場で転がりながら勢いを利用して立ち上がる。
先ほどまで自分のいた地面に矢が突き刺さる。
一瞬見た矢の刺さる角度から考えて、黒装束のいる方角を確認する。
(やはり…矢以外の攻撃がない…ということは…)
まだ、隠れている可能性は十分あるが、十分注意しながら、射手を目指して走る。
そして、二度、飛来する矢を躱し、走る。
黒い服の端が見えた。
「はっ!!はっ!!」
木々が少し開けた先、そこに黒装束はいた。
(ここは…)
奇しくもそこは私が向かっていた泉。
私が着くと同時に鳥が羽ばたき、飛び去る。
「私を土御門千手丸と知っての狼藉か?」
息を整えながら男に問う。
「…」
「誰の手のものか!?答えろ!!」
男は無言で二本の小太刀を構える。
「答える気はない、ということか…」
私も刀を抜いて下段に構えた。
そして、黒装束の男に呼吸を合わせる。
「ふっ!!」
男の呼吸が変わるその瞬間、私は踏み出し、男の喉元に切っ先を突きつけていた。
「もう一度だけ訊く、誰の手のものだ?」
「くっ!!…すまん…」
男が謝ったのは誰に対してか、男の唇の端から血が流れた。
(しまった!!自害用の毒か!!)
糸の切れた人形のように倒れた男を前に私はようやく気を緩める。
(しかし、いったい誰が…私を狙ったことは間違いないようだが…)
その後、冷たくなった男の体を探ってみたものの、手掛かりとなるものは何も残されていなかった。さらに、帰る道すがら切り倒した黒装束を確認していったが、これも全て徒労となった。
「父上にお知らせせねば…」
街に入って警邏の侍を捕まえると、疑惑の眼を向けられる。その時に初めて気づいたが、私の袴は血まみれだった。
さらに、名のると、今度は驚愕に目を見開く。自分が暴漢に襲われた旨を話すと、すぐに城に案内しようとしてきたが、丁重に断った。そして、明日登城することを城にいる父上に伝わるよう説明して家に戻った。
(少し休みたい…な…)
帰りの道すがらも足元はしっかりしていた。だが、家に戻った私は土間で座り込むと、その場で吐いた。
「う…くぅ…」
倒れた男たちは口元は布で隠していたが、目は隠していなかった。私に対する憎悪にまみれた瞳。
まだ手には肉を斬る感触が残っている。
そして、命を刈り取ってしまったことへの恐怖。
(私が命を奪ったのだ…)
指先が痺れたように感覚を失い、膝がいまさらになって笑っている。
戦いの最中には考えることなど出来なかったが、家に帰ってきたとたん、人を初めて斬ったことが心に重くのしかかっていた。
どれくらいそのまま座り込んでいただろう。私はのろのろと立ち上がり、汚してしまった土間を片付けると、返り血に染まった袴を土間に脱ぎ捨て、顔を洗うために水がめから桶に水を移す。
「うっ!!」
水に映った自分の顔は返り血でところどころ汚れていた。
(戻ってきたのが夕刻でよかった…昼間であれば大変な騒ぎになっていたところだな…)
変に冷静になってそんなことを考え、まだ手が震えていることに気がついた。
(体も冷え切っている…風呂を沸かそう)
風呂を沸かすと、サラシをほどく。
(また、大きくなったか…)
私の体は女として成長していることはもはや半分諦めつつある。
そして、ゆっくりと風呂の中で体をほぐして、私はそのまま布団に入った、のだが…。
「うぅ…」
(眠れない…)
体は疲れているにもかかわらず、気が高ぶって眠れないのだ。早くに布団に入ったはずだが、既に深夜をまわっているころだろう。
(ふぅ…)
寝返りをうつのはもう何度目か、数えることもあきらめたその時、戸が叩かれた。
「…!!」
私は枕元の刀に手をやると、いつでも抜けるように鯉口に親指をかけたまま戸の向こうに声をかける。
「誰だ…!?」
だが、戸の向こうから聞こえてきたのは聞き知った声。
「いいのかよお?叫んじゃうぜえ?」
「はぁ…」
施錠を外すとひょろっとした背の高い影が入ってきた。
「ん~?なんだお前、獲物準備してよお?」
息が酒臭い。
「ふん、今日は貴様を成敗してやろうと思ってな」
三郎は自分の後ろ盾があるため、私の言葉にも全く動揺したそぶりは見せない。
「ふーん?やるならやってみろよ?」
土間から上がると、まるで自分の家だとでも思っているのか、何も言わずに布団の上に座って、持ってきていた酒をドンと畳の上に置いた。
「ふぅい!!おいっ、酌しろよ!!」
どうせこのまま布団の中でまんじりともせず朝を迎えることになりそうだった私は、ため息をついて三郎に言われるまま、隣に座った。
「ふいっヒヒ!!そら、お前も飲んでいいぜ?あ?俺の酒が飲めねえってか?アン?」
酔っぱらった三郎から酌をされて私も一口二口と飲む。
「ふぅ…」
喉から胃に向かって熱いものが通るのが分かった。
「おっ!!いい飲みっぷりだな!!もう一献!!そら、呑めや!!」
盃になみなみと注がれた酒をグイッとあけた。
「よっし、次は俺だ!!」
私の呑み干した空の盃が差し出される。私は徳利をもって、そこに酒を注ぐ。
(私は何をしてるんだろうな…)
大嫌いな男の酌をして、まるで花街の女のようだ。
「なんかよお、今日は警邏の侍どもがそこら中にいたぜ?お前、なんか知ってんのか?」
(父上だ…)
私の報告が届いたのだろう。街の警戒を強めたのだ。
(だが、三郎が知らないということは…あれは芦屋の手のものではなかったのか?)
「ふいっく…おかげでここまで来るのに難儀したぜ」
三郎の手が私の襟元を緩めて入ってきた。
「ちょっ!!おいっ!!」
「あん?育てたんは俺なんだからいいだろうが?」
三郎の手が膨らみを持ち上げるように包み込んで優しく揉む。
「んっ♡」
「もっとお前も呑めよ…っと、ちょっと待ってろよ」
三郎は盃をぐっと傾けるとそのまま私に顔を寄せてきた。
「やめっ…んあっ♡」
断ろうとすると、胸の先が摘ままれて力が抜ける。
「ん…ちゅ…こくん…」
そして、その一瞬を見計らって口移しで酒を飲まされてしまった。
「ぷはあ…おらっ、呑んだら返杯だろ?」
持たされた盃に酒が注がれる。三郎が何を求めているかは明らかである。
「ほらよ…」
舌をべろべろと出す三郎の姿は気持ち悪い。が、少々私も酔っぱらってきてしまっていた。
ふわっとした気持ちのまま三郎に唇を近づけて…
「こくん…あっれ?」
「おいい!!お前が呑んじまってどうすんだよ」
「あはは?」
三郎の苛立った声も、夢の中にいるようなフワフワした気持ちで全く気にならない。
「もっかいだ!!」
「ん…ごくん」
「てめえ!!何するか分かってんのか?…もういい!!」
あははは、と笑いながら布団に押し倒された私は三郎に口づけされる。
「ん…ちゅ♡~~~ジュルジュルジュル」
舌を痛いほど吸われる。口の中で舌と舌が絡まり合う。
(ん…これ…♡気持ちいい…♡)
三郎の体重も心地よく感じる。
「ふぅい、…なんだあ?お前、盛ってんのか?」
言われてみて気がついたが、既に私の股の間はトロトロに蕩けていた。
(戦のあとは催すと聞いたことがあるが…まさか女も?)
「フヒヒ!!よっしゃあ、今日は金玉ん中空っぽになるまで全部出してやっからな!!」
三郎が立ち上がって自分の帯をほどくと、着流しを脱ぎ捨てる。
「まずは…ヒヒヒ、分かってんだろ?」
褌をほどくと、既に十分大きくなった肉棒が。
私はむわっと広がる生臭い匂いを嗅ぎながら肉棒を手で押さえて、その下に垂れ下がった袋に口をつけた。
「おお…!!分かってるじゃねえか。そうだ、大事にするんだぜ?」
口の中に含んで舌で優しく転がす。手の中で肉棒が時折ビクッ、ビクッと震えた。
「んふふふ♡」
ゆっくりと手で肉棒を擦り始める。
「うっ!!おまっ、そんな手つきいつの間に!?」
手にヌルッとした感触。
潤滑油のおかげで擦る動きが滑らかになる。
「ぐっ!!出そうだ!!ちょっと待て!!」
髪を引っ張られて無理やり顔を引きはがされた。
「どうせなら、お前の口ん中に出してえからな」
仰向けになった三郎の足の間に入ろうとすると、止められた。
「跨って、ケツを俺の顔の方に向けろ。お前の準備も一緒にしてやるぜ」
自分から男の顔に陰部を晒すなど素面では出来そうもない。だが、今の私はむしろ興奮が勝っている。
跨ると、すぐに目の前の屹立に唇をかぶせた。
「くっ!!おまっ、今日はどうしたってんだ!?」
返事の代わりに顔を上下すると、太腿が開けさせられて、そのつけ根の閉じていた部分に指がかかった。
「ヒヒ、いつもに増してここは正直だなあ?今にも自分から開きそうになってるぜ?」
「んふっ♡ふっ♡ふっ♡」
指がヌルッと入ってくる。
「んっ♡はあっ♡んあっ♡」
「おうおう、漏らしたみてえにぐっちょぐちょだぜ!!」
指が入り口付近を擦る。
(そこ…じゃなくて…♡)
私は三郎の指を奥まで咥えこもうと尻を押しつけた。
「おっ、自分からおねだりたぁ、いいじゃねえか!!」
「んふぅっ♡んちゅぱっ♡もっと奥までっ♡」
口を離して私は三郎におねだりをする。
「ヒヒ、指でいいんかあ?」
「いやっ♡三郎様のオチンポ、オチンポで千のトロマンをほじくりまわしてくださいぃっ♡♡♡♡」
ウヒヒヒと、気持ち悪い笑い声をあげながら、三郎が私を布団の上に寝かせて、そのまま何の合図もなく押し入ってきた。
「んんっっっっ♡♡♡♡入ってきたぁっ♡♡♡♡」
「どうだっ?欲しかったものか?」
「はいっ♡三郎様のおっきいのが千のトロマンに入ってますぅっ♡♡そのまま孕み袋までほじくり返してくださいぃぃ♡♡♡」
私は入ってきた三郎の腰に足を巻きつけた。
「ウヘヘヘヘ、ついにここまできたかあ?まずは一発目を子袋に出してやっからなあ?」
「きてぇっ♡千の孕み袋をいっぱいにしてくださいぃぃぃっっ♡♡♡♡」
私の体が三郎の肉棒をキュンキュンと締めつけているのが分かる。
「くっおおっ!!すげえぞ!!俺のチンコにぴったり合ってやがんぜ!!さすがは俺専用マンコだなあ?あ?」
聞かれれば口が勝手に開く。
「ああっ♡だって、千のマンコは三郎様専用ですからぁっ♡三郎様しか入ったことのない穴ですぅっ♡」
(もっとしてぇっ♡無理やりやってぇっ♡)
「好きにしてくださいぃっ♡三郎様ぁっ♡」
首をのけぞらせると、そこに三郎の手がかかった。
「ウヒヒ!!こんなのはどうだあ?」
ギュッと首が絞められた。
(く…苦しい…♡♡)
人を斬ったせいか、無理やり酷いことをされても受け入れて興奮に代わってしまう。
「んぐぐぐぐっっっっっ♡♡♡♡♡」
(苦しいのに…すごいっ♡これっ♡あっっっっ♡♡♡♡♡)
「おおっ!!今イッたよなあ?締まって…うおっ!!イキそうだ!!」
「んぐぅぅぅっっ♡♡♡」
意識が飛びかけながらも体の奥に熱いものが注ぎ込まれるのを感じて。
(子種汁いっぱいぃぃ♡♡♡イクイクイクイクッ♡♡♡イッくぅぅぅっ♡♡♡♡)
◇◇◇
翌朝、
「うわあああっっ!!」
布団が真っ赤に染まっていた。
どこか怪我でもしたのかと思ったが、その原因が自分の太腿の間であることを知って、気づいてしまった。
(これ…もしかして…)
気づいてみると、下半身が怠いし、下腹が締めつけるように痛い。
千手丸も知識としては理解していたが、これまでこなかったので気づかなかった。
「これ…生理だ…」
それは千手丸が女である証。そして、妊娠の可能性を示すものだった。
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