63.学祭二日目① 保健室で叱られる(⑱禁描写無し)
翌朝僕は眠い目をこすって電車を待っていた。
…はぁ…。
原因は昨夜のお姉ちゃんからの電話だ。
もちろんお姉ちゃんが何とかしてくれるってのんきに考えていた僕が悪いんだけど。
僕もこれまで何もしてこなかったわけじゃない。
図書館やインターネットでうちの学園の噂や地域の伝説を調べてみた。
通っている生徒ですら知らないんだから、インターネットに載っていないのは仕方ないのかなぁ。
だけど、図書館で調べてみても僕の欲しいものは全然見つからなかった。
こういう時こそ大人に相談したいけど、相談できる大人っていうと先生とお姉ちゃんくらい。
先生ならこの学園の理事長だし、色々知ってるかもしれないけど…。
それに昨日お姉ちゃんに指摘されて気が付いたこと。
心がいつのまにか女の子になっていた。まさかと思うけど、もう戻れないってことないよね?
悩んでいてもどうしようもなく結局僕は学園に向かう。今日で学祭も終わりだ。
ちょっと気分が悪い。胸を隠すためのブラジャーがきつくなった気がする。おっぱいが大きくなっちゃったのかも…
学園が近づくと、運動場の方から朝練をしている元気な学生の声が聞こえる。
隆にも長いこと会ってないような気がする。
あぁ…こうなってくると隆くらいしか助けてくれそうな人もいないし…もおっ…早く試合が終わってくれたらいいのに。
でも、まずは男に戻らないと…先生か…和也か…。
教室に着くとクラスメートが来る前に今日も急いで服を着替える。
今日は…メイド服かぁ。はぁ…また短いスカートだし、フリフリに、頭につけるカチューシャって言うのかな?まぁいいや、つけてみよう。
服を着替えると携帯を見る。先生から留守電が残っていた。
「今日は忙しいので残念だが遊んでやれない。学園祭を楽しみなさい。」
ホッとしたけど、同時に男に戻ることを考えるともう和也しかいない。
…でも和也は僕のこと柚だって思ってるし…。
午前中は昨日同様忙しかった。
今日もクラスメート達に囲まれて熱烈に褒めちぎられ、お客さんからは熱い目で見られて…。
昨日は先生に入れられたローターのせいで気持ちよくなっちゃって大変だったけど、今日は本当に体調不良で気分が悪かった。
周りからは休むよう言われたけど、僕は学祭の準備にもほとんど参加できていないので無理をして頑張った。
でもだんだん調子は悪化して、顔が青ざめてきたのが自分でも分かった。
そしてついに午前の終わりごろに女の子から保健室に行くように勧められて先にあがらせてもらうことにした。
ついて行こうかってクラスメートに言われて、もちろん断ったんだけど、着替えをもって保健室に向かう間もめまいがしてフラフラする。
やっぱり誰かについてきてもらえば良かったかも…。
保健室までもう少しというところで歩くのもつらくなり、しゃがみ込む。
はぁ…はぁ…胸が苦しい…もう無理…
その時僕の体が揺すられる。
顔を上げると隆の姿があった。
安心して涙が出そうになる。
「遊、大丈夫か?お前のクラスにいったら保健室に行ったって言うから……おいっ、顔色がヤバいぞ。」
「立てるか?」と聞かれて首を横に振ると、体が浮き上がる感覚。
隆に抱き上げられたんだなって思うと安心して僕は意識を手放した。
目が覚めるとベッドに寝かされていて、隆が横から椅子に座って心配そうにこちらを見ていた。
「隆…?」
周りを見るとカーテンが引いてある。ここは…保健室だよね。そうだ…廊下で動けなくなったところに隆が来てくれたんだった。
「起きたか?具合いはどうだ?」
「うん…大丈夫。運んでくれてありがと。」
「気にすんな。だけどお前、俺に言わないといけない事があるよな?」
そう言われて胸を押さえつけていた圧迫感がなくなっていることに気がついた。
…あっ…ばれちゃったんだ。
「あの…女の子になったこと黙っててゴメン。」
隆の顔を覗きこむと顔が強ばっている。怒ってるんだ。
「いつからなんだ?」
「えっと…、先週から…かな。」
「馬鹿野郎、何でもっと早く言わなかったんだ!…俺はそんなに頼りにならないのか?」
抑えていたものが噴き出すように隆が大きな声をあげた。対照的に僕は小さな声になる。
「そんなことないよ…、でも大事な試合が近いし、邪魔したくなかったから…。」
「試合なんてたいした事じゃねえよ。親友じゃねぇか。いいか、これからは何でもまず俺に相談しろよ。」
隆にそう言ってもらえると昨夜から心にのしかかっていた不安も少しマシになった気がする。
「ありがとう。隆にそう言ってもらえるとすごく安心できるよ…。」
隆の顔をうかがうと、もう怒っていないようだった。
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