73.日記④ 希望
学祭が終わって数日経った。遊は部室で見つけた手がかりに熱中している。
「隆っ、大発見っ!!」
剣道の練習が終わった俺が新聞部の部室に入ると遊が目をキラキラさせてノートを見せてくる。
付箋が貼られたページを開いて読む。
『8/20
図書館でオレに起こった現象についての資料を探す。どうやら真実の鏡というらしい。
もともとこの学園は鎮守の森の上に建てられており、神社があった。その御神体が鏡だったが、学園建造とともに埋まる。
その後いつからか学園内で怪奇現象が起こるようになったのだとか。しかし、前例では急に男らしかった奴が中性的になるとか、男の性的興奮が収まる程度でオレのようになったのはこれまでないみたいだ。』
「…ふーん、なるほど。学園の下には鏡があったのか。」
「もうちょっと先を読んでみてよっ」
『9/30
この地域の慣習を調べていて大変な事に気がついた。どうやらこの地域には女陰を信仰する珍しい土着信仰があったらしい。
そして御神体に供物をしていたらしい、供物とは男性器であり、実際はそれに模したものであったようだ。
ここ100年以上捧げられていないため素養のある者から男性器自体を捧げさせているのかもしれない。』
「はぁ?そんな神様いるのかよ?」
「でも、実際僕らは女の子になってしまってるんだし…もうちょっと先を読んでみて。」
『12/20
分かった!自分は目の前にある答えを見ていなかった!
自分が男に戻るのに必要なものは何か!
精液だ。つまり精液こそが供物となるのだ!
そう考えれば、自分が性転換した時に異常に敏感になる理由も明らかだ。神様は精液がほしいのだ。
次に性転換した時に試してみよう。』
「精液ね。そのまんまだけど…どうやってお供えするんだ?」
「うーん…隆の精液をビンに溜めて持ってくとか?」
「げっ、嫌だな…気持ち悪い。」
ビンに向かってオナニーする自分の姿を想像してゾッとする。
「まぁ、そう言わずに。お願いっ!」
「うーん…ん?…『性転換した時に体が敏感になる』『性転換した時に試す』って書いてあるな。これは…」
「これは?」
「遊もちょっと考えてみろよ。性転換した時に試せて、体が敏感になるってことはどこに精液をためるんだ?」
「えっ…まさか…?」
「多分な。」
俺は最後のページを開く。
『これでダメならもう無理だ。うまくいってもいかなくても日記はこれで終わりにする。「真実の鏡」については誰も知らない方が良いから資料とノートは封印しておこう。』
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