魂の残り香5(完)
王都近郊の花畑、見渡す限りの花の絨毯を明るい日差しが見守り、緩い風が時折髪を揺らす。 「こんなところに連れてきて、どういうつもりなんじゃ?」 車椅子に乗ったリンドン伯爵を俺はここに連れてきた。車椅子を押すのは老執事だ。そ...
王都近郊の花畑、見渡す限りの花の絨毯を明るい日差しが見守り、緩い風が時折髪を揺らす。 「こんなところに連れてきて、どういうつもりなんじゃ?」 車椅子に乗ったリンドン伯爵を俺はここに連れてきた。車椅子を押すのは老執事だ。そ...
「知りたいことはリンドン伯爵令嬢の噂とトウェインの出征の経緯、この二つだったな?」 散々自分の弱味を見せてしまった男は女の顔を見ずに封筒を投げた。 「ありがとう。さすが、早いわね」 女はそんな男の顔を楽しそうに見つめる。...
この国の中央であり最重要都市、王都。 だが、だからといって人々の生活は他の街と比べて何ら変わるところはない。 もちろん歓楽街もその一つ。夜になれば酒場は冒険者や商人、その他、様々な人達で賑わう。だが、その中の一軒の店はそ...
さて、俺が馬車を降りたのは王城の城下町、王都の目抜通りだ。 『人形工房レオナール』 これが俺の店の名前だ。 「む」 店に入ろうとしたところ、一陣の風が吹いた。石畳の埃が舞い、一枚の紙が俺の方に向かって飛んできた。 俺はそ...
最初は蔦か何かだと思った。 だけど、スカートの内側にそれが入ってきた時、ようやく私にも今時分に降りかかってきた不運を理解した。 「いっ、いやっ」 蔦だと思っていたものが私の足に絡みつく。その瞬間、顔から血の気が引くのが分...