30.海へいこう① 傷心の和也と海へ(⑱禁描写無し)
よしっ!夏休みの宿題終わったぁ!
僕が机を前にしてガッツポーズを決めた時だった。
『リリリリン、リリリリリン』
携帯の画面を見る。和也からだ。
「もしもし…?」
「先輩っ、明後日って何してます?」
「え……えっと…あさって?…特に何もないけど?」
「じゃあ海に行きましょうっ!」
「えっ?」
「海ですよ、海っ!こんな暑いのに海にも行かずに家にこもってるなんてっ!不健康ですよっ!夏休みといえば海、青春を楽しみましょうっ!」
和也がまくし立てる。何、このテンション?
ひょっとして……
「…………彼女にフラれた?」
「………ぇっ……なんで分かったんですか?」
「それだけ変なテンションなら誰でも分かるよ。良いよ。宿題も終わったし、付き合ってあげる。でも明日じゃなくて良いの?」
「明日はバイトがどうしても休めなくて…」
「和也ってバイトしてるんだ!知らなかったよ。いつから?何してるの?」
「………………………うぅっ」
あれ?ひょっとして地雷踏んだ?
「…先月から…由依ちゃんへのプレゼントを……うぅっ……聞いてくれますかっ?後輩の悲しい話聞いてくれますかっ?」
しまったっ!大変なの踏んじゃった!
「うっ、うん。」
………………………………。
………………。
………。
長い長い電話で由依ちゃんとの馴れ初めからフラれるところまで聞かされました……。
その翌日はお姉ちゃんから電話があった。
「もしもし、遊君」
「もしもし。もしかして、お姉ちゃん結果出たの?」
「まだよぉ。そんなにあ・せ・ら・な・い・で♪」
…何…このテンション…僕のまわり変なテンションの人ばっかり…。
「愛しい遊君に明日帰るからねってラブコールよ!」
「あっ、明日は和也と昼前から約束があるんだった。明後日でも良い?」
「和也…ああ、街で会ったあの子ね。しょうがないわねぇ、じゃあ明日の朝から行くわ。」
「ゴメンね、お姉ちゃん。」
ここまでは普段とそんなに変わらない日常だった。
翌日朝10時。
「柚ちゃーん、もう良い?」
「まだぁ、もうちょっとっ!」
今、どこにいるのかと言うと、デパートの水着売場。
電話の翌朝起きると僕の身体は女の子になっていた。
三回目なので落ち着いて服を着て朝ご飯を食べていたらお姉ちゃんが来て和也との予定を思い出した。
和也との予定を断ろうとした僕をお姉ちゃんが押し止めて、結局水着を買いに来たのである。
「これなんかどう?」
「ええっ、ダメダメッ色々見えそう!」
「良いのよ、夏なんだから。はい、決まりね。」
「えー」
「時間もないんでしょう?」
以前お姉ちゃんと相談していた「次に女の子になったらその日にエッチしてみる」良い機会だからと嫌がる僕に和也に電話して、柚が代わりに行く旨を伝えさせた。
で、海に行くなら水着を買わないと、って事で急いで開店直後のお店に来たってわけ。
試着室の鏡にはピンクの生地に黒のフリルをあしらったビキニに身を包んだ僕がいる。
はぁ…こんな格好して和也と海かぁ。
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