6周目 9月21日(火) 午後10時30分 島津政信
『ガチャ』
琢磨の部屋に着く。ワンルームの部屋で、家具はテレビとベッドとローテーブルで意外にすっきりしている。
琢磨が先に入って俺は玄関で立っていた。
「お前の服を探すからちょっと待っててくれよ」
ガサガサとクローゼットを探す音がする。
「スマン、ちょっと時間かかるから中に入ってテレビでも点けて適当に食べててくれよ」
(そうだ、コンビニでご飯買ったんだった)
俺は仕方なくラグに座って、買ってきたパンを食べながら待つ。もう10時半か。
「おおっ、あったぞ…だけど、これじゃ、今とあんまり変わらねえな」
そう言って琢磨が出してきた服はタンクトップだった。
「ちょっと待っててくれよ、確か長袖があったんだ」
『グゥ、キュルル』
琢磨の腹から音がする。
「ああ、腹減っちまったな。オレも服を探す前に食っていいか?」
(まあ、仕方ないな。俺だけ食ってるのも申し訳ないし)
「うん。いいよ」
俺がそう言うと琢磨もコンビニ弁当と缶ビールなどを取り出して食べ始める。
テレビではお笑いタレントが何かしてみんなで笑っている。
「ははははっ」
琢磨が笑ってビールを飲む。
(いつになったら服を探すんだろう)
俺の考えとは裏腹になかなか琢磨は立ち上がらなかった。
「なあ、お前もちょっと飲んだらどうだ?」
「いや、私はいいよ」
「前まではお前めちゃくちゃ飲んでたのに?なんかお前変わったよな。喋り方もそうだけど…実は双子?なんてな」
琢磨がおどけたように言ったが、その目は笑っていなかった。観察するような目が俺を見る。
(ひょっとして俺が高樹じゃないって疑ってるのか…?だとしたら少しは飲まないと…)
「う、うん、じゃあ今日はちょっとだけね」
「よーし、コップ出すわ」
琢磨が立ち上がって準備を始めた。
(俺、酒なんて正月の日本酒をお猪口一杯飲むくらいのもんだからなあ。飲めるのかなあ)
コップに半分くらいカクテルを入れられて俺も一口飲んでみた。
「あっ、…おいしいっ!」
カクテルなんて初めて飲んだけど、こんなジュースみたいな酒があるなんて知らなかった。
「だろ?」
そう言って琢磨は二本目のビールを開ける。
最初はきちんと正座していたのがだんだん崩れてお尻をペタンと床につけて座っている。
(ちょっと琢磨のペースに乗せられて飲み過ぎたかな?体が熱い。)
手でパタパタ顔を扇いでいると
「ん?暑いなら上脱いだら良いんじゃね?」
ほろ酔いの目つきで琢磨が言う。
「…ん」
俺はぼんやりとパーカーを脱いだ。
その一部始終を琢磨が濁った眼でジッと見ている事にも気づかずキャミソール姿になる。
それから、またしばらく琢磨はビールを飲み、俺はちびちびとカクテルを飲み続けた。
(なんだか楽しい。大人が酒を飲む理由がちょっと分かったかも…)
フワフワしたいい気分で、俺はテレビを見て笑っていた。
「ん?」
一緒にテレビを見ていた琢磨がそう言って琢磨が俺のグラスを見る。
「なあ、コップ空じゃん」
確かにさっき最後の一口を飲んでコップの中は空になっている。
「うん。でも、もういいよぉ」
「そんなこと言わずに、もう少しだけ残ってる分だけでもさっ」
そう言われて見てみると、琢磨の持つ瓶には、あとコップに半分くらい残っている。
「んん…でもぉ…いいよぉっ、これ以上飲んだら酔っ払っちゃうからぁ」
そう言って立ち上がろうとしたらフラフラっとする。
「おっと」
琢磨が体を支えてくれた。ちょうど胸のあたりに手が当たっていたが、俺は酔っ払っていて気が付かなかった。
「大丈夫か?」
「んっと…だいじょうぶ…あっ」
『どさっ』
琢磨の力が弱まってベッドに座り込んでしまう。尻が沈み込んでバランスを崩すとマットに背中から転がる。
「なっ、ちょっと酔を覚まさないと帰れないだろ?」
「ん…そう…だね…」
俺はスカートとキャミソールがずり上がって、琢磨が素肌をジッと見ていることにも気づかずにくるくる回る景色を楽しんでいた。
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