9月26日(日) 午後11時50分 高樹美紗
アタシは布団に体を投げ出して悩んでいた。
(どうも今周はずっと島津の様子がおかしかった。なぜだろう、体調が悪いとか…どうしたらいいんだろう?)
そして、目の前が真っ暗になり、見覚えのある真っ白な部屋に…
「今回はお主が脇役になっとったのう」
「どういうこと?」
「しょうがないのう」
そう言うと空中にモニターのようなものが出て、一人の少女が映る。
少女は旅館のようなところで一人の男に組み敷かれて喘いでいた。
「ええっ?ちょっとっ、これって?えっ?今?誰?」
アタシは予想だにしない映像に焦る。
「うーむ、教えてやってもいいんじゃが、どうしようかの?」
アタシは早く教えるように目で促す。
「この男はの、痴漢じゃ」
「へ?」
「火曜日から毎日のように痴漢に遭ってたのじゃ。それで金曜の夜から二人はずっとこの調子なんじゃ」
「ちょっ、ちょっと待ってよ、どういうこと?」
アタシは神様の襟首を掴んで前後に振る。
「わわわっ、儂は神様じゃぞ、うわわっ、分かった、分かったから、やめてくれっ」
そして、今回の顛末を無理矢理に聞き出した。
「全く…今回だけじゃからな…ん?」
ブツブツ文句を言いながら神様がアタシを見た。
静かに考えをまとめていたアタシはどう考えてもおかしいことに気がついた。
「ねえ、神様、アンタ、アタシに言ってないことがあるんじゃない?」
「ふあっ?いやいや、そんなことはないぞえ」
あからさまに動揺する神様。
「神様、嘘をつくと鼻が伸びるのよ」
「ええっ?」
そう言って神様は鼻を触る。
「あっ」
「やっぱり嘘をついてるのね。言いなさい、何をしたの?」
神様の頭に手を置く。
「いやー、そのー」
「は・や・く」
頭を手でギュッと掴む。
「いたっ、痛いぞっ、わっ、分かったから」
手をどけると自分の頭を撫でながら神様がぼやく。
「儂は神様なのに…」
「早く言いなさい。おかしいのよ、アタシは2年間学園に通っているのに一度も痴漢なんて遭ったことがない。なのに、女になって最初の日から痴漢に遭うなんて」
神様が目をキョロキョロする。
「それに最初の日にアタシがあんなに発情したのも今から考えれば十分おかしかったし」
さあ、と言うと神様が拗ねたように口を開いた。
「ちょこっと弄っただけなんじゃ。それに、儂も最初にちょっと弄るぞって言ったじゃろ?」
「どう弄ったのよ」
「んーと、まずはお主の元の体の感度を上げての…発情しやすくしての…それに周りの男も発情しやすくした…くらいのものじゃな」
無い胸を張って自慢げに話す。
「『ものじゃな』じゃないわよっ、アンタっ、そんなことしたら、そりゃこんなことになるわよっ」
「すまんのじゃ」
「全くスマンじゃないわよ、この馬鹿っ」
思わず、叱りつけていたアタシに神様が反撃を開始する。
「じゃあ、このゲームは終了することにするのじゃ」
(いや、…それは困るのよ)
アタシの脳裏に島津家の団らん風景が思い浮かぶ。
「お主にはすまんかったのじゃが、では、ゲームはこれにて終了で…」
「ちょっと待ちなさいよっ」
その言葉を聞いてニヤっと笑う神様。
「どうしたのかの?」
「わかったわよ、ゲームを続けます」
「それでいいのかや?」
「いいもクソもしょうがないわよ…ってアンタそういえば人の頭の中覗けるんじゃ…さっきまでのやり取りって…」
ふふーん、とごまかす神様に殺意を覚えたが何とかこらえる。
「いいわよ。何が何でもクリアしてやる。その代わり毎回今回と同じように最終日の様子を見せない、分かった?」
「あい、分かった、それでは3周目に突入じゃなっ」
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