茜色に染まった空を眺めながら僕はとぼとぼと家路についていた。
使う筋肉が違うのか、魔物と戦ったわけでもないのに体が重怠く感じる。
(「のう、主殿」)
(「………」)
(「主殿?」)
(「………」)
(「あ、る、じ、ど、の!」)
(「もう!!聞こえてるよ!!」)
(「聞こえておったのか。耳が遠くなってしもぉたかと心配してしまったぞえ」)
確かに、ディックの部屋に連れ込まれたのは僕に非があったと思う。だけど、そのあとの2回目については完全に村正の口車にのせられたからだ。
(「ご機嫌斜めじゃの」)
僕の気分とは対照的に村正はご機嫌だ。それどころか、なんだか声に艶まで出ている始末。
(「一回や二回突っ込まれただけぞえ?」)
(「突っ込まれただけだって!?僕は男なんだよ!」)
(「体はオンナじゃがのっ!ほほほほほっ!」)
村正と話していると、グヌヌってなってしまうけど、やっぱりいくら考えてもおかしいと思う。
(「あんなので僕、強くなれるの?」)
(「もちろんぞ。サムライの強さには、精神力や肉体の鍛練はもちろんじゃが、刀の力を十全に引き出すことも重要じゃからな。まだまだ妾の力を使いこなせていない主殿には頑張ってもらわぬと!」)
(「あんなことはもう二度とやらないからねっ!僕は男なんだからっ!」)
そんなことを言い合いながら家までたどり着くと、僕はベッドに倒れこんで、そのまま泥のように眠った。
(「ほほほ、オンナの快楽を知った主殿に果たして堪えられるかのぉ?」)
◇◇◇
さて、翌日の昼まで寝ていたけど、昨日のことを忘れるべく、僕は日課の鍛練を始めたのだけど…。
(かっ、体が軽い!?)
普段と比べて体のキレが違うのだ。
(すごい…これが村正の力…)
とはいえ、それを喜ぶべきなのかどうかは悩ましいところだ。
(「主殿…「村正は黙ってて!」)
村正がドヤ顔してるのがありありと分かって、なんだか無性に腹立たしい。
(ゆっくり寝たから調子がいいだけ!)
それからしばらくして、今日の鍛練を終えた僕はお風呂で汗を流すことにした。
お風呂を沸かすと、脱衣所で服を脱いで髪を上で束ねる。そして、体を流してから湯船に浸かった。
(やっぱり体を動かしたあとのお風呂は気持ちいいな)
大きく息を吐くと、何気なく視線を下ろすと、お湯の中で揺れている膨らんだ胸が嫌でも目に入る。
「重たいし、何の役にも立たないんだけどなぁ」
ディックもやたらと揉んだり舐めたりと、執着していたけど、どうしてこれが欲しいのか。
独り言を言いつつ、僕がその膨らみを湯面から持ち上げたそのとき、キュッと体が締めつけられた気がした。
「えっ!?」
ここは自分の家だし、他に誰かがいるわけでもない。
それなのに男の大きな手で後ろから抱き締められているような感覚に思わず体に力がこもった。
(「ほほほ、どうしたのかえ?」)
(「村正!なにかした!?誰かに触られたような感じがしたんだけど!!」)
(「何もしておらんよ。それはじゃな、主殿の体が覚えておるだけぞ」)
(「そんな…」)
反論しようにもこんな感覚は初めてだから判断できない。それに、確かに村正の言う通り、抱き締められた感触が肌に残っている、といった感じなのだ。
(だけど…)
その感覚は、嫌でもディックの大きな手や太い腕を僕に思い出させる。
(ん…………ダメダメ!)
(「チッ!」)
僕はその感触を振り解くために、わざと勢いをつけて湯船からあがった。
(体を洗ってあがろっと)
と、手にとった石鹸を見て思い出した。
性別が変わったことで見た目でわかる大きな変化はもちろん、細かな変化もある。例えば、今みたいに体を洗うときなんかがそうだ。
男の皮膚と何が違うのかはわからないけど、前までみたいに荒い布でごしごし洗うとすぐに赤くなってしまって痛くなってしまう。
そのため、今のところは手で洗うしかない。
両手で石鹸を泡立てて腕を擦る。続いて足、お腹ときて、僕は動きを止めた。
(………洗うだけ………だしっ!)
胸の膨らみを泡まみれの両手で包む。僕の小さな手のひらでは全然隠しきれない。
その時、胸が包まれる感覚が甦った。
(ぅ…ディックの手…)
後ろから揉まれた時に見た大きな手のひらが脳裏に浮かぶ。
(こんな感じ…だったかな…)
「んっ♥️」
僕はいつの間にかディックの手の動きを真似て指先が沈み込むくらい強く揉んでいた。
(……じゃなくって!!こっ、こんなこと…)
やめないと、そう思ったその時、村正が話しかけてきた。
(「主殿、自分の体を知ることも必要ぞ」)
(「なっ、なに言ってんの!?」)
あまりのタイミングの良さに心の中の声が上ずってしまう。
(「僕は男なんだから!」)
(「己を知り敵を知れば百選危うからず、とも言うぞえ」)
(「えっ?…あぁ…」)
いつものからかうような口調ではなく、鹿爪らしく続ける村正の言葉に心が揺れた。
(「ねえ、ひょっとしてなんだけど…何度も力を使ってたら発情したりしなくなったりするの?」)
ふと思いついたことを聞いてみる。
(「ほほほ、うむうむ。さすがは我が主殿、良いところに気がついたの。その通りぞ」)
なんだかべた褒めされて、いやあ、と思わず照れてしまった。
(「そうじゃ。今から少しだけ力を使ってみてはどうじゃ?以前よりも発情する度合いは小さくなっておるはずぞ」)
(「ほんと!?」)
(「嘘はつかぬよ」)
僕はまず耳に集中する。あまり力を使いすぎないように壁の向こうの音を拾う程度にコントロールする。
(「おおっ!素晴らしい!もうここまでコントロールされるとは!」)
(「えっ?そ、そうかな?」)
(「いやはや、素晴らしい才能ぞ。妾の主になった者の中でも成長の早さは抜きん出ておる!」)
(「いやあ…そんなに褒めなくても…」)
(「それに、ほれ、いまだ発情しておらぬぞ?」)
言われてみれば少し体が暖かくなった気はするけど、確かにまだ発情というほどではない。
(「ほんとだ!よーしっ!もうちょっとやってみる!」)
目に力を込めると天井から落ちる水滴がお風呂の湯面に波紋を作るのがくっきりと見えた。
(「主殿、目や鼻を鋭敏にしてもここではあまり意味がないの。肌に集中してみてはどうじゃ?」)
(「え?そう?…わかったよ!」)
肌に意識を集めると、湯船から立ち上る湯気やわずかに外から入ってくる風を肌が感じとる。
(「これって戦いでも使えそうだよね?」)
相手の動きを肌で感じられれば、索敵でも、戦闘でも、有利に進められるんじゃないか。
(「うーむ、痛みなども鋭敏に感じるから使い方次第かの。じゃが、悪くない視点ぞ!」)
(「でしょ?これで強くなれそうな気がする!」)
(「うむうむ、その意気ぞえ」)
気分よく笑っていた僕は、この時、またも村正にのせられていることに気づいていなかった。
『ピチョン』
「んあっ!!」
そして、すぐにその時はきた。
無防備なうなじに受けた刺激に思わず声をあげた僕は、そのまま首筋を垂れる甘い感覚に体を震わせる。
すぐにそれが天井から落ちた滴によるものだと理解したものの、体の方は手遅れとなっていた。
滴の垂れる感触に触発されたのか、ディックの舌が肌に甦える。
「んっっ♥️」
とにかくなんとかしないと、そう思うんだけど、今度は脇腹を掴まれる感覚が甦って、まるで拘束されているかのように僕は座ったまま動けなくなっていた。
(んっ…ひぁっ…♥️)
湯気の充満したお風呂で汗が肩から滴り落ちて、それすら敏感になった肌は快感に変えてしまう。
「はぁっ、はぁっ♥️」
両手で持ち上げたままになっていた胸の先は固く尖って、それを見つめる僕の吐息は湿ったものになっていた。
不意に滲んだ視界にディックのニヤついた顔が映る。
(違うっ!ディックなんていない!)
(「そら?俺に舐められたがってるぜ!」)
「あっ♥️んっ♥️そんなことっ、ないからぁっ♥️」
ディックの吐息が胸の先端をくすぐった。それだけで体が震えて、僕はいつの間にか絞り出すように前に突きだしていた。
「んんっ♥️」
口に入れられたら分厚い舌にピンと尖った蕾が蹂躙される。昨日さんざん味わわされた快感。
それを思うと口からは絶え間なく甘く湿った息が漏れでる。
「はぁ♥️はぁ♥️はぁ♥️」
(「ククク、もっと気持ちよくしてやるぜえ」)
幻のディックが口を開く、たったそれだけのことで頭の中は真っ白になってしまった。
「あっ♥️やだっ♥️」
(だ…だめ…こんなの…♥️)
逃れようと体を揺するけど、まるで目の前の男を誘惑するように胸が左右に震えただけ。そして、次の瞬間には、無情にもピンクの先端はディックに飲み込まれた。
「あっ…はぁぁぁ♥️♥️」
(「自分で乳首こねてイッちまうのか?」)
そう、僕は自分で乳首を摘まんでいた。
「ちっ、ちがっ、うんんんっ♥️」
否定しながら親指と人差し指がコリコリした蕾を押し潰す。
「んっ♥️んんんんっ♥️もっ♥️だめっ♥️」
驚くほど甘い声がお風呂場の中で反射して、まるで自分じゃない誰かの声のようだ。
「先っちょそんなキュッキュしたらっ♥️あっ♥️おかしくなるっ♥️」
そう言いながら、固く尖った胸の先を摘まんで強く引っ張ると体がガクガクと震えて、その瞬間僕は絶頂に達した。
「くっ♥️うぅぅっ♥️イックゥッ♥️」
だけど、まだ足りない。
「…ぁ……ぅうぅぅ…♥️」
僕は俯く。その視線は…。
(「そら、今度はお待ちかねだぜ」)
手が太腿の付け根に滑り込んだ。
「んっ♥️これっ♥️」
指先から伝わる感触はお湯とは違う滑り。
「はぁ♥️はぁ♥️ふぅ♥️ふぅ♥️ふぅ♥️ふぅ♥️」
(あぅぅっ♥️これって…もしかして…♥️)
わざわざ確認しなくても、それが何かなんてはっきりとわかっている。だけど僕はそれを言い訳にして、人差し指を入り口に向けた。
「あっ♥️くぅっ♥️」
そのままゆっくりと指を侵入させる。
「んっ♥️はあぁぁっ♥️」
そこは思った以上に柔らかく、熱かった。
「こんなにっ♥️あっ♥️だめっ♥️そこ擦ったらっ♥️」
クチュクチュと音をたてる指先。ディックに犯された時の感触を思い出して指は自然と気持ちいいところを探り始める。
「んっ♥️んっ♥️んっ♥️」
(ここじゃないっ♥️もっと♥️もっと…♥️)
「あっ♥️んっ♥️んっ♥️」
(もっと…♥️)
僕は一度指を抜くと、今度は快感を求めて躊躇することもなく中指も一緒に挿入した。
「ふぁっ♥️これっっ♥️はぁぁぁっ♥️」
二本になったことで、同時に色んなところが擦れて体がビクビクと震える。だけど、トロトロに蕩けた粘膜はそれを歓迎して強く締めつける。
「あっ♥️んんっ♥️んっ♥️んっ♥️んっ♥️」
もう僕は周囲を、村正を気にすることもなく、ただひたすらに指を動かす。ジュボジュボとかき混ぜる音とくぐもった高い声が響いた。
「あっっっ♥️♥️」
その時、不意に気持ちいいところを指が探り当てた。
「あっ♥️んっ♥️こえっ♥️でちゃうっ♥️」
快感の波が僕を高みに押し上げてくる。
(んっ♥️またっ♥️くるっ♥️きちゃうっ♥️)
無意識に僕の空いた手がおっぱいにのびる。柔らかい肉に痛いくらい指が食い込むと、ゾクゾクとした快感が背中を駆け上った。
「んあっ♥️くっうぅぅぅっ♥️」
座ったまま、体がくの字に折れて、それでも指は止まらない。
(「そらっ!イケよっ!」)
「んっくぅぅぅっ♥️♥️」
それどころか、さらに激しさを増した指がさっき見つけた気持ちいいところに集中した。
(おかしくなるっ♥️イクっ♥️いっちゃうぅぅぅっっ♥️)
「んっ♥️んんんんっっっ♥️♥️」
ひときわ高い声が出て、そのまま僕は絶頂に押し上げられた。
◇◇◇
(や…やってしまった…)
しばらくその場でへたりこんでいた僕が指を抜くと、指の付け根に白い泡がこびりついていた。
(「主殿♪」)
村正のうきうきとした声が頭に響く。
(「な…なに?」)
(「何、ではなかろ?オンナの快感は楽しめたかの?ホホホホホ!」)
さすがに自分でヤッてしまったこともあって何も言えない。歯軋りして悔しがる僕だったけど、村正の次の言葉で悔しがっている場合ではなくなってしまった。
(「ホホホホホ!とはいえ、男の精を体に受け取っておらぬゆえ、また衝動が起こるぞえ!」)
(「はあ!?どっ、どういうこと!?」)
(「ん?言葉通りの意味ぞ。妾の力の反動は男の精を吸うまで続くのじゃ」)
(「ええっ!?そんなぁ…」)
またこんなことをしないといけないのかと思うと、落ち込んでしまう。
(「何を悩まれておるのじゃ?ちょうど良いのがおるではないか」)
村正は全くわかっていないようだった。
(「それに妾にはお見通しぞえ」)
(「くっ!村正っ!」)
考えてみると、村正の反動のせいか、それとも銀狼に既に犯された経験があるからか、はたまた僕が生まれながらの女の子ではないからだろうか。
昨日は犯されたにも関わらず、僕の心には辛さや喪失感みたいなものはない。
むしろ、ともすれば溺れかねないほどの快感の方が大きい。
そして、僕はさっき知ってしまったのだ。
オンナの快感と、指では満たされない現実を…。
はじめまして。今回はじめてコメントさせていただきます。
いつも更新楽しみにしています。
特にこの妖刀戦記のシリーズはお気に入りです。
最近また頻繁に更新されているので嬉しいです。
これからも更新楽しみにしていますので、無理をしない範囲で継続していただけたらと思います。
コメントありがとうございます。
このように感想をいただけると本当に励みになります。
自分で読み返してみて、あり得ないミスに大慌てで修正することも多々あったりするのですが、今後も定期的に更新できるよう頑張っていきたいと考えています。
今後ともよろしくお願いいたします。
妖刀戦姫if√ですが再開嬉しいです♪ この展開だと改題前の旅立つことすらできずという展開もガチでありえそうですねw
村で延々ディックに犯されてそうw ディックも葵が旅立つなんて許さないでしょうしw
コメントありがとうございます!!読んでくださる方がいると思うだけで気合が入ります!!
今回はぶっちゃけその通りの方向性を考えてます。本編は葵があんまりドロドロのヤラレ方をしないため、ifは肉欲に溺れてもらおうかと(笑)
ちなみに本編も最新の章が見切り発車すぎて、もう一度考えて直すつもりです。
今後ともよろしくお願いします!!