6周目 9月24日(金) 午前10時 島津政信

6周目 9月24日(金) 午前10時 島津政信

昨日は映画館での出来事に怒って自分の家に帰ろうとしたけど、琢磨に上手いこと言いくるめられて、結局、琢磨の部屋に帰ることになってしまった。

琢磨にムカついていた俺だったが、ベッドに倒れこむように寝転がると緊張と疲れで、気がついたときには朝になっていた。

先に起きていた琢磨に起こされて、風呂に入るよう言われる。

「美紗、準備したら今日も遊びに行くからな。俺はちょっと準備してくるぜ」

髪を洗っていると風呂の扉の向こうから琢磨の声がした。

「えっ、あっ、分かった」

『シャー』

シャワーの湯が気持ちいい。

『シュコシュコ』

ボディシャンプーを泡立てて体を洗う。

「んっ」

(なんだか体が敏感になっているような…)

鏡にを見ると綺麗な胸が映る。ピンクの乳首がツンと尖っていた。

ウエストは細く、腰がむっちりと張り出している。

(高樹の体ってこんなにエッチだったかな?)

しばらくしてバスタオルを体に巻いて出ると、下着や、服がベッドの上に置かれていた。

(これを着ればいいのか?)

紫のブラジャーとパンティを着けて、一緒にあったワンピースを着る。

青い花柄でノースリーブのワンピースだったが、胸元も過剰に開いていないし、上に着る薄いカーディガンもあるので露出は思ったより少ない。腰の上できゅっと絞られたスカートはひらひらとしている。

琢磨の趣味らしい、お嬢様のような格好だった。

「だけど今日のはちょっと短いな」

着替えて鏡を見ると膝の上までのワンピース姿の少女が鏡の中にいた。

少し化粧をすると、肩に当たらない程度に切り揃えた黒髪が美しい美少女がこちらを見ている。

(…そう言えば琢磨はどこに行ったんだろう?妙に遅いな)

日中は暑そうなのでカーディガンを脱ぐと、ベッドに座って足をぶらぶらさせながら琢磨を待つ。

『ガチャ』

「おっ、準備できたか?おっ、やっぱり思ったとおり似合うな」

琢磨が帰ってきて俺の姿を見ると驚いたように近づいてきて抱きしめられた。

「そっ、そうか?」

気持ちわるいが、琢磨に力では敵わないことは分かっているのでされるがままになる。

「ああ、清楚なお嬢様で思わずヤリたくなっちまうぜ」

(はぁ、…ヤリたいって…こいつそんなことばっかり考えているんだな…)

「さあ、こっちも準備オッケーだ。行こうぜっ」

琢磨が俺から離れると手を引いて玄関に向かった。

「え?どこへ?」

「いいから行くぜ」

手を引かれて外へ出た。

(学校もサボって…いいのかなぁ…?)

雲一つない晴れ渡った青い空を眺めながらそのまま歩こうとした俺を琢磨が引っ張った。

「こっちだ」

「えっ?」

そこには車が止まっている。

「こっち?」

車を指さして琢磨を見上げる。黒いツーシーターのオープンカーで新車のように光り輝いていた。

「びっくりしたか?」

車の助手席のドアを開けて琢磨が笑う。

「これって…外車じゃないの?」

「ああ、ポルシェだ」

(ポルシェって…あの?)

エンブレムを見ると確かにカッコイイ見たことのないエンブレムだった。

(P…OR…SCHE…ポルシェ…ホントだっ)

「レンタルしたんだよ。さっ、乗ってくれ」

(うわっ、シートも革だっ。すごいっ)

「すごいっ、うわぁ、ポルシェなんて初めて乗ったっ」

思わずテンションが上がってしまう。

「お前、そんなに車好きだったっけ?たしか前は移動できればいい、みたいなこと言ってなかったか?」

琢磨が意外そうな顔をして俺を見ていた。

(あっと…そうだった。いかんいかん)

「えっと…ポルシェね…うん、たいしたことないなっ」

とは言え、男たるものカッコイイ車は好きだ。こっそり見てみよう。

◆◆◆

6周目 9月24日(金) 午後1時 川合琢磨

どうも隣に座っている美紗の様子が変だ。

俺は高速を走りながら助手席に座る美紗をチラチラとチェックする。

高級車には興味がないと言っていた割に興味津々に色んな所を触っている。

それに、以前「オープンカーなんて無意味だ」って言っていたので幌を付けるか迷っていたのだが、隣にいる美紗は「風が気持ちいい」と言いながら外を楽しそうに眺め回している。

「なあ、美紗。そんなにこの車気に入ったのか?」

そう言うと、途端に触るのをやめた。

「なっ、何言ってんの?気に入る?そんな、全然興味なんてないわよ」

(こいつ何言ってんだ?だけど、まあ可愛いからいいか…)

「そっか、興味はないのか」

「そっ、それより、どこに行くの?」

明らかに話を変えようと美紗がどもる。

「ん~、まあ、着いてからのお楽しみってやつだな。おっ、美紗っ、見ろよ、海だぜ」

「うわぁっ、海だっ、綺麗だなぁっ」

髪をなびかせて美紗が嬉しそうな声を上げる。