熊さんチョコが欲しいの巻
「おねーちゃん、いってきまーす」
拓海を送り出した俺は怪しい影を見て、玄関を閉めた。
午前中の俺は忙しい。これから朝食の皿洗いを済ませ、洗濯物を干して掃除機をかける。
キッチンに戻ろうとしたところで玄関が開いた。
「おねーちゃん!」
「何だ?拓海、忘れ物…」
拓海の手がなにか握っている。そして玄関の摺りガラス越しに見える巨大な影。
「外にね、ともおにーちゃんがいたから」
「ああ…智也、入ってこいよ」
知っている。拓海よ、知っていて無視したんだよ。俺は額に手をやって智也を呼んだ。
「す、すまん」
拓海に手を引かれておずおずと玄関に入ってきた智也は俺の幼馴染みで腐れ縁の男だ。身長は190近くあり、空手で鍛えた体はゴツくむしろ体型だけなら柔道やプロレスをしていたといわれた方が納得できる。
「じゃー、僕行くねー」
「おお!行ってこい!」「拓海くん、ありがとう」
深々と巧みに頭を下げている智也。こいつは子供に何を助けてもらってんだ?
俺がリビングに戻ると智也もついてきた。テーブルの上の皿を智也がシンクに運び、俺が皿を洗う。それが終わると洗面所に行って洗濯機から洗濯物を取り出して籠に移す。
手持ち無沙汰の智也に籠を持たせて庭へ。手早く干していくと隣で智也も見よう見まねで干していく。
「おいっ、やってくれるんならもっと皺を伸ばして、こんな感じで」
パンパンとシャツを叩いた。
そんな俺をじっと見る智也。
「何だよ?」
「いや、こうしてると…いや、何でもない」
智也の言わんとしていることが分かって何となく恥ずかしくなった俺は急いで家の中に戻った。
それから掃除機をかけ終えるとリビングでコーヒーを入れてテレビをつけた。
「まあ飲めよ、それで人ん家の前で何をコソコソしてたんだ?」
「いや、あの…その、な…」
ちょうどCMでチョコレートが映っている。
なるほど、そういうことか、と俺は理解した。この熊、チョコが欲しかったんだな。
結局智也は他に何も言わず帰っていった。本当にそれだけの用とは…あいつの頭は中坊並みなのか?
▲▽▲
熊さんキスが欲しいの巻
夜、家に和巳がやって来た。
夜に外出して良いのか、と聞けば、拓海は八時には寝る優等生だから安心して夜遊びが出来る、とのことだった。
夜遊び、という単語がなんとなく引っ掛かるが、そんなことより和巳の手に提げられた小さな紙袋。
これはまさか…いやいや、喜ぶのはまだ早い…だけど今日はバレンタインだし…
「ほらよ」
紙袋を押しつけてきたので中身をドキドキしながら見る。
「おおっ!」
赤く包装された小さな箱。これは間違いない!!
「うるせえな、ほらっ、さっさと開けろよ」
もう少し愛でたかったのだが、俺はいそいそと包装紙を剥がした。中から出てきたのはウイスキーボンボン。
…よし、飾ろう!
「ちょっと待てよ!!」
俺が棚の上の段に大事に飾ろうとしているのを和巳が止めた。
「何でしまってんだよ!」
「はっ?」
当たり前のことだが?
「んなことしても意味ねえだろっ!食うぞ!」
守ろうとした時にはもう和巳の手が伸びていて、敢えなく俺の手からチョコの箱は奪われてしまった。
「あっ!!」
1つ口に入れて和巳はウンウン、と頷く。
「これうめえな。ほらお前も食えよ!」
こんなにチョコがもらえるかソワソワしたのもいつ以来か。彼女とは基本的に数か月で別れを告げられてきたのでバレンタインは初めてかもしれない。
「うん、おっ、旨い!酒とチョコって意外に合うもんだなあ」
ウイスキーだけでなく、リキュールや日本酒なんかも入っていて旨い。俺が頷きながら食べていると和巳がぼそっと呟いた。
「そういや、俺、最後に酒飲んだのいつだっけかな?」
そう言えばここ最近、和巳に外出している様子はない。いや、別に見張ってるわけじゃないけどな?スト●カー?いやいや、たまに窓から玄関とか見てるだけで、ぜんぜんそんなんじゃないからさ。
「そっ、そうだっ!ちょっと待っててくれ」
俺はリビングに降りて親父の買い置きのウイスキーとグラス、氷を持って戻った。
「いつも飲めないなら、たまにはいいだろ?」
「おっ、気が利いてんじゃねえか!」
酒の名前など俺は全く知らなかったのだが、和巳は知っていたらしい。
グラスの半分ほどまで注がれた琥珀色の液体を眺める和巳。それからゆっくりと口の中に入れてすぐには飲み込まず香りを味わうように目を閉じた。
俺もそれを真似て同じように飲んでみる。独特のスモーキーな薫りが口の中に広がった。
「あぁ、うん、確かにこれ、旨いな」
和巳の言う通り、いや、和巳と一緒だから旨く感じるのか。何より俺としては和巳に喜んでもらえて良かった。
その和巳は、というと、ほおっ、と息をついてグラスを見つめている。
心なしか瞳が潤んでいるような気がした。
それからつまみのクラッカーを食べながら二人でたわいのない話に花を咲かせる。
それにしても和巳のペースが早い。飲み始めて一時間くらいか。久しぶりの酒で気分がよいのか、どんどん飲んで出来上がっていく。
「あはははっ!あんときの奴らの顔覚えてるか?」
「いや、忘れようにも…」
これは中学の時、調子に乗ったクラスメイトが俺に喧嘩を売ってきて対峙している時に、和巳がこっそり俺の後ろからズボンとパンツを脱がせた時の話だ。
和巳を除く全員の目が点になり、それ以降喧嘩を売られることはなくなったが女子も近づかなくなったんだったな。
「ひひひっ、あははははっ!あのときの顔っ!!」
どうやら和巳は酔うと笑い上戸になるらしい。最初は床に座って飲んでいたのだが、ベッドに移って脚をばたつかせるので足首まであるワンピースの裾から白いふくらはぎや膝の裏がチラチラと見える。
元々来たときはジーパンにパーカーだった和巳だが、飲み始めてすぐに暑いと言い出して勝手に姉ちゃんの部屋に行って、部屋着に着替えてきたのだ。
「なんらよ!お前、飲んでないな?おら、作ってやっから飲めよ」
さらに呂律が怪しくなってきた和巳はほんのり赤く染まった顔で、ローテーブルに手を伸ばす。向かいに座った俺からは緩い胸元から黒いレースに包まれた果実がはっきりと見える。
「あ?何みてんだよ…んひひ、わかったぞぉ…」
和巳がワンピースから腕を抜くと服の中でゴソゴソとし始める。再びワンピースの袖から出てきた手には黒いものが握られていた。
「ひひっ、これなーんだ?」
もう、途中から何をするつもりなのかは分かっていた。が、ここは我慢だ!これまで幾度となく我慢できずにきたが、俺だって我慢できるところを見せないと!!
「んー?見ないのか?ほれ、どうだぁ?」
豊満な胸を両手で掴んで前に押し出してくる。ビンビンに尖った乳首が布に浮き上がって…ううっ!ダメだ!
「ほらっ、こっちこいよ!」
ベッドの自分の隣をバンバン叩くので仕方なしに俺は座ると、目隠しするようにまだ温かいブラジャーを顔に巻きつけられた。
「和巳様の作ったお酒だぞぉ !」
勢い良く腕を絡めてきて、胸の膨らみがダイレクトに伝わってくる。
さらに俺に完全に体重を預けてくるものだから、その匂いや柔らかな感触に股間が大変なことになってきた。
俺は邪な心を振り払うために、一気にグラスを呷る。
「…?和巳?」
飲み干して和巳を見ると俯いていた。
「うん…」
さっきまでのけたたましいほどの笑い声から一転、小さく、泣きそうな声。
「大丈夫か?気持ち悪いのか?」
小さく首を振ると、和巳がポツリポツリと話し始めた。
「俺さ、毎日毎日…拓海の世話して家事してさ…外にも、晩飯の買い物くらいしか出ないし…夜なんて、10時には寝て拓海に合わせて6時に起きるんだぜ?」
「あ…ああ…」
なんとも湿っぽい空気になった。
「俺さ…もとに戻れるんかな…?一生このまま…なのかな」
顔をあげて潤んだ瞳で俺を見上げてきた。これまで見たこともない気弱な姿に気がつけば俺は和巳を抱き締めてしまっていた。
しまった!こういう女扱いは絶対和巳が嫌がるはず!そう思ったが、和巳は俺の腕の中で動かない。
これは…!!頭に血が上って心臓は早鐘のように打ちまくる!!言うんだ!今言わずにいつ言うんだよ!
「なあ、もし、もしもだけど戻らなかったらさ…俺の…」
言うんだ!さあっ!!
「俺んとこにくればいいから!!」
言い切った!!
和巳がプルプルと震えている。感動の涙か!?
和巳の顔を見ると、笑っていた。
「くっ、アハハハハッ、それって告白か!?プロポーズのつもりかよ?ふっ、ははっ!ブラを顔に巻いて?」
あっ、と気づいてブラジャーを顔から外す。
「ブラ巻きつけて告白っ!くくっ、やっぱ智也はおもしれえ!アハハハハッ!」
さすがに勇気を振り絞って言った手前、こうまで笑われると落ち込みそうになったが、和巳の目尻が光っているのを見て俺は微笑んだ。
「いやあ、…その…なんだ?ちょっとヒーローぶってみたけど、ダメだったか?」
頭を掻いておどけて見せると和巳が抱きついてきた。
「うわっ、…和巳?」
「ありがと…」
そして、頬っぺたにキス。
少し照れたようにはにかむ顔はテレビに出てくる女優などよりもずっと可愛い。
俺はそっと和巳の唇に顔を寄せる。
「それはダメだろ」
ところがこれはあっさり断られてしまった。今度こそちょっと落ち込んだ。
「それは女とヤるもんだからな。男同士でキスとかキモいだろ?」
そう言ってからグラスにウイスキーをなみなみと注いで勢いよく飲んだ。
「ふぅ…クラクラするなぁ…ほら、飲み直しだ!」
▽▲▽▲
熊さん忍耐の巻
俺達は今、二人とも全部脱いで裸でベッドにいる。ベッドに仰向けになった俺の股間には和巳の顔が、そして俺の顔の前には跨がった和巳の剥き出しになった股間があった。
先ほど色々とぶっちゃけた和巳は心が軽くなったのか、ほとんど泥酔状態に。それにつられて飲んでいた俺も楽しくなって、気がつけばこんな状態になっていた。
「んちゅ、ちゅっ、こうふんしてる…♥️」
酔って赤く染まっていた和巳の顔は、今は別の意味で真っ赤になっている。
そして、これまでと違うのは悪態もつかず奉仕してくれている事だ。
「んんっ…あっはぁっ♥️んっ、しょこっ♥️♥️」
何度も舐めたり弄ったりしてきた割れ目だが、何度見ても見慣れることはなく、興奮に胸が高鳴る。
「んっ、クリばっかりぃっ、なめないれっ♥️んっ、もぉっ♥️ちゅっ♥️♥️」
完全に酔っぱらった和巳はキャラ崩壊状態に。可愛らしく喘ぎながらチンコにキスをしまくる。
「んちゅっ♥️あっ、やらっ、なかっ♥️こすったらっ♥️んんっ、なめらんないからぁ♥️♥️」
いつもなら挿入して和巳の膣中を味わうのだが、どうしても欲しいものがあった。断られたばかりだが、やはりキスをしたい。
そのために和巳をとことん快感で堕とす。
フェラしようとした和巳に跨がってもらってシックスナインの姿勢になったのはそのためだった。
「あっ、んっ、やんっ♥️♥️」
和巳は体に力が入らないのか抵抗しない。それでも健気に俺をイカそうと手を、舌を動かす。
「んっ、ちゅっ、あはっ♥️おっきくなって…ちょっ、あっ、イキそっ♥️あっ、らめっ、くるっ、あっっっ♥️♥️」
ビクッと体が跳ねた。だが、まだまだこんなものでは済まない。
「もっとしたい」
「んっ、きょうはっ、あっ、どしたのっ、あっ、やあぁぁっ♥️♥️」
容赦なくイッて間もない和巳の弱いところを狙い撃ちする。
「しょんなとこっ、やっ、あっ、ああっ♥️またっ、イッ、あああっ♥️♥️」
ビクビクッとした瞬間キュッとチンコが握りしめられて、それから弛緩した体が俺に密着した。
「…ん…ぁ…まら、しゅるの?いれないの?♥️」
俺の指がまだ中にあるのを感じて、和巳が涙目で振り返る。もっと啼かせてやる。
「挿れて欲しい?」
コクコクと頷く和巳。アルコールと快感でいろいろ麻痺しているようだ。
「じゃあ、そろそろ…」
俺は和巳を仰向けに寝させて向かい合って挿入した。
「あっ、んんっ、おっきぃ♥️…あっああっ♥️♥️」
蕩けた媚肉がネットリとチンコを包み込む。
「こしゅれるっ♥️オマンコこしゅれてるぅっ♥️やあんっ♥️んっ、あっ、あっ♥️♥️」
頭を振る和巳、長い黒髪が乱れ、汗で雪のような肌にへばりついているのがなんだか色っぽい。
「んっ、あっ、しゅごっ♥️ジュボジュボいってるぅ♥️♥️」
それにしても酒に酔ってするセックスも気持ちいいものだ。
これまで何度かヤッた時は、和巳は感じているのを俺に見せないように必死に堪えていた。だけど、そんな顔にも、そしてそれを崩すのにも興奮した。
だが、今日の和巳は素直に快感を受け入れて悶える。
「あっ、はうぅっ♥️♥️あんっ、んっ、んんんっ♥️」
俺は和巳を抱き締めて腰を大きくグラインドした。ズンッと打ちつける俺の腰の動きに合わせて柔らかいオッパイが前後に振れる。
「んあっ♥️おくっ、やあっ♥️♥️イクっ、なかでっ♥️やあっ、イクっ、イクよぉっ♥️♥️」
絶頂を迎える瞬間、和巳の方から腕と脚を絡みつかせてきた。
「あっ、イッくゥゥゥゥっっっ♥️♥️♥️」
和巳の汗ばんでしっとりとした肌が気持ちいい。俺は荒い吐息が落ち着いたところで顔を近づける。
「ん♥️あっ、しょれは…らめ…ゆるしてぇ」
「なんで?」
「らって…それしたら…たぶん、もどれなくなりゅ…」
ああ、なんていう可愛らしさ。戻れなくなっていいから、俺のものになってくれ!
俺は無理矢理にでも唇を奪いたいのをグッと堪えて耳もとに顔を埋めた。
「んっぁっ♥️耳のなかは、らめっ、んあっ♥️あたまのなか、いっぱいになるぅ♥️♥️」
それと同時に腰を小刻みに振る。
「んっ、あっ♥️おくもらめぇっ♥️とんとんしちゃ、やらぁ♥️♥️」
ぎゅうっと俺は下から抱き締められた。耳元に息がかかる。
「ほしい…ほしいよぉ…」
「中で出していいのか?」
お互いに耳元で囁きあって、正面で見つめ合う。
「うん、おなかのおく、きゅんきゅんしてるっ♥️♥️」
快感に蕩けた顔で俺を誘う和巳。その表情に危うく暴発しそうになった。
「か、和巳っ!」
一瞬、顔をほんの少し動かすだけで唇を奪えるのでは?という考えがよぎる。今なら和巳も逃げられない。
だけど、なんだか違う気がした。
「ともや♥️♥️ちょうらいっ♥️♥️ぁっ♥️おっきぃ♥️♥️♥️」
可愛いおねだりにググっとチンコに力が籠る。
「中でっ、イクぞっ!」
「うんっ♥️うんっ♥️」
そして俺は溜め込んでいた精液を解き放つ。
「あっっっっ♥️♥️♥️♥️」
和巳の膣中をパンパンに膨らませる勢いで射精が続く。
「んっっっ♥️まだっ、でてるっ♥️♥️しゅごっ♥️♥️♥️ともやでいっぱいになりゅうぅぅ♥️♥️♥️」
溶け合うほどにくっついたまま俺達は絶頂に達した。
▲▽▲▽▲
熊さん忘れられてショック
翌朝、俺が起きると、隣で寝ていたはずの和巳の姿はなかった。
とりあえず情事の匂いにまみれた空気を入れ換えようと窓を開けた。
「おねーちゃん、行ってきまーす」
声のする方に俺は顔を向ける。
「あっ!」
玄関のドアを閉めようとする和巳と目があった。昨夜のことを思い出して俺の顔が熱くなる。
いやいや、あんなに乱れたんだから和巳の方が恥ずかしいはずだ。男の俺がどっしり構えないでどうするんだ!
「おう!智也、おはよう!ん?何だよ?変な顔してんな」
……あれえ??
コメントを残す