最後の7日間 9月21日(火) 午前7時45分
電車が動き出して数分後、俺は人ごみにもみくちゃにされながら必死で立っていた。
(身長がないとこんなことになるんだなあ)
つり革も持てなくて電車が揺れると周りの人に体を預けて耐えるしかない。
(毎日こんなんじゃ体が持たないぞ)
そんなことを考えていたら停車駅でさらに人が乗ってきた。
(おいっ…これは無理だろ)
そう思うがどうしようもない。押されるままに前の人の背中に体を密着させる。
カーブになったところで今度は後ろの人の体が背中にぴったりと当たって挟まれてしまった。
人の中に完全に埋もれてしまった俺は周りを見ようとしても男の人の服ばかりで全然どこを走っているのかもわからない。
その時、背中に当たっていた体が少し離れて手のひらが背中に当たる。
(ふぅ、俺も離れないと…)
そう考えて前の人の背中から体を離す。
なんとか一人で立つが、足の位置を直そうとしたところでローファーに何かが当たる感触。
俺の足の間に誰かのカバンが置いてあるのに気がついた。
(ん、これじゃ足が動かせないな)
仕方なしに肩幅程度に開いたままで揺れに耐えていると、背中に当たっていた手が徐々に下がってきた。
(ん?)
違和感を感じた時には俺の尻に手が触れていた。
(まさか…これが痴漢かっ?いや…この混み具合だからただ単に当たっているだけかもしれないし…)
俺のその甘い判断が失敗だった。
手のひらが尻を掴むようにして、じっくりと揉んでくる。
(うぅ…気持ち悪い…男に尻を揉まれるなんて)
しかし、痴漢の手は執拗に俺の尻を撫で回す。
「はぁ…はぁ…」
無意識に自分の呼吸が荒くなっていることにも俺は気づいていなかった。
『間もなく~◆◆駅~』
停車駅のアナウンスで痴漢の手がようやく離れた。
かなり長い間触っていたように思うが、意外に短い時間だったようだ。
電車の中の人たちが入れ替わる。
(ふぅ、これでもう…)
もう大丈夫だと安心した途端、再び手が前に回って今度は太ももを撫でる。
「ひっ」
思わず声を出しそうになって我慢した。
そしてその手は内側に周り、どんどん太ももの付け根に向かって上がってくる。
ゾワゾワっと鳥肌が立つ。
「やめっ、んっ」
股間に向かって上がってくる手を両手で押さえると男のもう一方の手が胸に伸びた。
胸の先端を刺激された瞬間、電流が走ったように体から力が抜ける。
「やっ」
(なっ、なんだこれっ?)
思わず声が出てしまった。慌てて口を押さえて周りを見渡す。しかし特に注目されているようなこともなかった。
(これくらいの声は当たり前なのか?ちょっとした悲鳴がカーブで押された時とか聞こえるし)
そんなことを少し考えている間にも胸を這い回る手はじっくりゆっくり、柔らかさを味わうように揉んできた。
(うわっ、やめろっ)
俺は痴漢の手を掴む。
しかし、痴漢も男だ。今の俺の力では何の効果もなかった。
さらに、痴漢は俺の反応に気をよくしてか、乳首を避けるようにもんだと思ったら、いきなり摘んだりする。
俺のカラダは、止めようとする俺の意思に逆らって、その度に『びくんっ』と反応してしまった。
痴漢の手に添えるようにして曲がりそうになる膝を必死に立てることしかできない。
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