(こ、今度は何?)
アリスさんが何かを学院長に耳打ちされ、私の方を向いたままカッターのボタンを外し始めた。
後から冷静になって考えれば、この時が逃げられる最後のチャンスだったのに、既にこの時、私の感情は滅茶苦茶になっていて正常な判断ができなくなっていた。
「ああぁ♥️見られちゃう…♥️」
『プチ』
そして、とうとう最後のボタンを外し終えたアリスさんが、こちらを向いたまま、まるで私に見せるようにカッターを大きく開いた。
「っ…」
私はアリスさんの体を見た瞬間、思わず叫び出しそうになる口を必死で押さえた。
(何?一体どうなってるの?)
アリスさんの形の良い大きな胸にグロテスクな触手が絡みついていたのだ。
ほんの数メートル先で赤銅色の触手がヌルヌルとした粘液を垂らして蠢いている。
「あっ♥️やあんっ♥️」
両方の乳房に巻き付いた触手がギュッと絞りあげるように動く。すると、赤く充血した乳首が強調されて、アリスさんの口からは喘ぎ声が漏れた。
(な…)
まるで現実とは思えない光景に、驚きと恐怖で歯がカチカチと鳴った。
恐い、それなのに目が離せない。
この間、長いようで一瞬だったのかもしれない。
馬鹿みたいに触手がアリスさんを蹂躙する様を見ていたが、ようやく私が考える事が出来るようになった時、いつの間にか自分が四つん這いからお尻をついて座り込んでいる事に気がついた。
(あ…私は…何を…)
その時、ふいに『ニュルニュル』と乳房を弄っていた触手の先がまるで周囲を警戒するように鎌首を持ち上げた。
(…いけないっ)
隠れなければ、とは思うのだが、金縛りにあったように私は動けなかった。
触手はウネウネと何かを探るように動く。
(お願い…気づかないで…)
私は呼吸を殺して、祈る。
ところが、私の祈りとは裏腹に触手の先がこちらを向いて動きを止めた。
(気づかれたっ…?)
腋を冷や汗が伝う。
次の瞬間、クルッと向きを変えた触手がアリスさんの乳首に吸いついた。
「んっ♥️はあっ♥️そんなとこぉっ♥️やっ、あんっ♥️だめっ♥️だめになるよぉっ♥️♥️」
カクンカクンと痙攣して、崩れ落ちようとするアリスさんの両手両足は絡みついた触手によって倒れることすら許されない。
両手に絡み付いた触手は天井に繋がっていて、アリスさんは両腕を万歳するように上に伸ばして立たされた。
そして、アリスさんの体をかろうじて隠していた前ボタンが全て外れたカッターとスカート、ショーツに触手が狙いを定める。
(そんな…ダメよ!)
『ブチブチブチ』
だけど、残された布の破られる激しい音とともに、アリスさんは全裸にされてしまった。
「んあっ、やっ」
アリスさんの足に巻きついていた触手が太股を這い登っていく。
「やあんっ♥️そこっ♥️だめぇっ♥️♥️」
ゆっくりと登っていく触手の先が目的地に到達するのが、隠すものの無くなった視界にくっきりと映し出されて私は思わず息を呑んだ。
『ジュブッ』
触手が勢いよく、しとどに濡れた割れ目に突っ込むとグネグネと動き始める。
「はぅっ♥️あっ♥️あっ♥️」
きっと膣中を激しく擦っているのだろう。アリスさんの喘ぎが大きくなる。
「はぁ♥️はぁ♥️あっ♥️くるぅっ♥️きちゃうよぉっ♥️♥️ああっ♥️ぁぁあああああっ♥️♥️」
さらに喘いでいたアリスさんの体がビクビクと動き始めて、喘ぎ声も切羽詰まったものに変わる。
「やっ♥️あっ、ダメっ、ダメぇっ♥️♥️せんせいに見られてイっちゃうよぉっ…♥️やっ♥️あっ♥️ダメっ♥️それいじょうしたらぁっっ♥️♥️」
アリスさんの体がググっと伸びて、一度ビクンッと大きく震えたたかと思うと、股間から『ジョロジョロ』とオシッコが漏れた。
「ぁ…ぅ…♥️」
(アリスさんっ)
アリスさんは意識を失ったようにガックリと頭を垂れたまま時折痙攣する。
私はその時になって、ようやくアリスさんの言葉の奇妙さに気がついた。
(「見られちゃう」?、「せんせいに」?…ま…まさか…!)
『ハッ』と前を向く。
(そう言えば学院長、学院長はどこに?)
「いけませんなあ。教職者が覗きなどしては。生徒達に示しがつきませんよ」
学院長の声が近くで聞こえたかと思うと、肩に手がのせられた。
「きゃあっ!」
振り向いた私の目にイヤらしく舌舐めずりをする禿げ上がった頭が映る。
(がっ、学院長っ!)
逃げようとするけど、恐怖から体に力が入らない。
「全く…悪い先生には罰を与えないといけませんね」
「いっ!やっ、やめてくださいっ!」
学院長は私の髪を優しく持ち上げると、首から耳にかけてなぞってきた。
ゾゾゾっと背筋に悪寒が走る。
「いやっ!がっ、学院長っ、あなたはっ!それでも教職者なんですかっ?」
私が死に物狂いで叫んだ言葉に反応したように、手が止まった。
(え……?た…助かった…の?)
「ふむ。私の事をそのように糾弾するなら、あなたは立派な聖職者ということですかな?」
振り向くと、学院長は顎に鹿爪らしく手をあてて、考え込むように眉間に皺を寄せていた。
「えっ?ええ!もちろんですっ!」
学院長が何を考えているのかは分からない。だけど、最悪は免れたと感じた私は恐慌状態から脱することができた。
(なんとかしないと…落ち着いて考えればきっと何かあるはずよ)
私は冷静になれと自分に言い聞かせる。
「なるほど…そうですか。では一つ私と勝負をしませんか?」
(勝負…?)
「そう。あなたが勝てばアリスさんもあなたも解放しましょう。しかし、負けたときは一晩だけあなたの体を私の自由にさせていただく。どうです?」
(このままだと、私はアリスさんと同じように触手や学院長に犯される。それにアリスさんを救い出すことも出来ない…)
「勝負…ですか…?」
「そう。しかもあなたは仮に負けても一晩だけ我慢すればいいだけだ」
(負けても一晩だけ…)
学院長の提案は私に有利すぎた。
(こんな有利な条件はきっと裏がある。簡単に飛びついてはいけない)
「ねえ先生、いかがです?」
「確かに魅力的な提案ですが、どんな勝負か分からないのに乗ることはできません」
これは私の賭けだった。学院長が鋭い眼差しを向けてきたけど、私は目を逸らさなかった。
しばらく睨みあった後、学院長が小さく息を吐いて笑いだした。
「ハッハッハッ。さすがは才色兼備のアシュリー先生だ。良いでしょう。ルールを説明した上でご判断いただいて結構です」
ホッとするような肩透かしを食ったような不思議な感覚だが、どうやら私は賭けに勝ったようだ。
学院長は愉快でたまらないといった顔つきでさらに続ける。
「では、ルールですが、まず私があなたに質問をします。それに正直に答えられたらあなたの勝ち。どうです?」
(正直に話せば良いだけ…)
「『勝負に私が負けない限り、私に触れない』をルールに追加してください。あと、本当か嘘かの判定はどうやって行うのですか?」
「ふーむ。なるほど、良いでしょう。それから判定ですが、そうだな…魔術具を使いましょうか」
そう言って学院長の出してきた魔術具は尋問などに使うわりと有名なものだった。ハチマキのような布に魔石がついている。ハチマキの布には魔方陣が書かれていて、嘘をつくと魔石が赤く光るのだ。
「私の道具だと不安ですか?では、まず私が着けますので確認してください」
おでこに魔石がくるように学院長が巻く。
「この道具に何かイカサマはありますか?」
私が質問する。
「いいえ、ありません」
学院長が答えると、魔石が青く光った。
「どうですか?」
(嘘はついてない)
学院長が外した後、さらに布に書かれた魔方陣を確認した。
(専門外だけど、特に不審なところは無いわね)
「納得していただけたようですね。では始めましょう。さあ、この椅子にお掛け下さい」
学院長の差し出した教員用の椅子に座ると開始された。
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