67.学祭二日目⑤ 密室の誘惑
部室のドアを開けた僕らは荒れ果てた惨状に固まっていた。
入り口付近はいつものままなんだけど、奥に行くとロッカーは開いたままだし、その横には段ボールや、その中に入っていたであろう書類、本が床に散乱している。
そういえば昨日の和也とのエッチの時になんかドサドサいってたような気も…。
「ん?おかしいな、昨日お前来た?俺も昼頃来たけどこんな感じじゃなかったけどな。」
「え?あっ、そ、そうなんだ?ぼ、僕も昨日来れなかったし、あっ、そうだっ、昨日メール気づかなくてゴメンね。」
「そんな焦らなくても返信がないくらい気にしたりしねえよ。」
…すみません、それだけじゃないんです…
「で、服はどこにあるんだ?」
「えっと…、たしかこの辺に…」
指差したところは段ボールがごちゃごちゃになっていた…。
「どけるか?」
「ありがとう。」
隆にどかせてもらうと、お目当ての段ボールが出てきた。
中を見れば、お目当ての学園の制服はもとより、体操服、色んなユニフォーム、スーツなど、コスプレ趣味?って言いたくなるほどのラインナップだった。
僕は一通り出して並べていく。
「…すごいな」
隆が半分呆れたように感想を言った。
「ねぇ…た・か・し、どれ着て欲しい?」
僕がチアリーダーの服を体に合わせてからかうように言ってみた。
「バカ!」
ちょっと調子に乗ってみただけなのに頭を叩かれた。
「着替えるなら俺はちょっと出てるよ。」
隆がそう言って外に出ていったのを確認して僕は目の前の服からうちの制服を手に取った。
ふと目をやると、もうひとつ箱があって中にはカツラが入っていた。
…あっ、そうだっ!
「遊、まだか?もう入るぞ。」
「良いよぉ。」
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~隆視点~
扉を開けると見知らぬ女の子がこちらを見ていた。俺は一瞬間違えたかと思って入り口を振り返りそうになる。
「ふふ、驚いた?」
「ゆっ、遊…か⁉」
女子用の制服にベストを着た遊が得意気な顔で笑った。
「…ああ、カツラに眼鏡までするとは…どうりで時間がかかるわけだ。」
ショートヘアの時は前から女顔だったから違和感もそれほどなく気にならなかったが、長い髪だと、本当に女の子のようだった。
じっと見つめてしまっていたことに気が付いて慌てて目をそらすと調子に乗った遊がニヤニヤと笑いながら「照れてるの?」などと聞いてくる。
「いっ、いや…」
…なんで俺が焦るんだ。落ち着け、こいつは幼なじみの「遊」なんだ。
遊はそんな俺をニヤニヤと見つめ続けていた。
「ねぇ、隆、見て…」
艶かしい声に遊を見るとスカートのすそを摘まんで少しずつ持ち上げていく。
膝上のスカートが持ち上がって、太ももが露わになる。
俺の目が白い太ももにくぎ付けになる。
保健室で散々見たはずなのに…ごくりと喉がなった。
あと少しというところで、手が離れて、ふわっと紺のスカートが白い太ももを隠した。
慌てて遊を見る。
「ふふ。どう?隆。興奮した?」
からかうような目が笑っていた。
「な…何言ってんだ。行くぞっ」
太ももを見つめていたやましさから乱暴な口調で外に連れ出す。
できるだけ誰にも会わないように、と思ったが、保健室にいた時間が長かったせいで、暗くなり始めた学園には人の気配はなく、数人の先生に会っただけですんだ。
遊もカツラと眼鏡で全く気づかれなかった。
電車は帰宅ラッシュと重なったせいで俺たちは扉の近くに滑り込むようにして乗り込んだ。
俺はさりげなく扉側に小さい遊を置いて向かい合わせに立つ。
「そういえば、学祭ってどうなったのかな?」
「ああ、途中から抜けてそのままだったし、クラスには迷惑かけちまったな。」
『ガタン、ゴトン』
電車が揺れて周りから押される。
「うわっ」
遊にぶつかりそうになったが、扉に手をあててこらえる。
「すまん、大丈夫か?」
遊の顔を見れば、何やら眼鏡の奥が輝いて、子供がいたずらでも思い付いたように笑っていた。
電車の揺れに合わせて遊がぎゅっと胸を押し付けてくる。
第二ボタンまで外した胸元に深い谷間ができる。
柔らかい感触が俺の胸に伝えられ、股関がすぐに反応する。
こういう時は…おばあちゃんを思い出すんだったかな…、いや、母ちゃんか、…素数を数えたら良いんだったか…?
「ねぇ…たかし…僕…ブラしてないんだよ。柔らかい?」
遊がつま先立ちで俺にだけ聞こえるように囁く。
大きな黒目が眼鏡の奥で少し濡れているように見えた。
遊の体はすっぽり俺に隠れて周りからはほとんど見えないはずだ。
遊が俺の胸を指でなぞる。
『ごくり』思わず唾を飲み込む。
「やめろよ、電車の中だぞ。」
「でも隆の…硬くなってるよ…」
遊が小首を傾げて困った顔を作る。
抱き締めたくなる可愛らしさだ。
顔が傾くのに合わせて長い髪が揺れて俺の腕をサワサワと刺激する。
「ね、ここで…触って…」
遊の指が俺の胸から腹に向かい、腰をくねらせて誘惑してきた。
「だめだ、こんなとこで…」
俺の股間はもうはっきりわかるほど勃起していたが、それでも場所を考えてこらえる。
遊の人差し指が腹から股間に移り、爪を立てるようにゆっくりとなぞりながら、
「ねぇ…触って…いいんだよ…」
濡れた唇が俺を誘惑する。
握りしめた俺の手の平は汗でべたべたしている。
限界だ…そう思った時、突然遊が反転して背中を向ける。胸の感触がなくなってほっとするような、残念なような。
…なんだ?急に…?
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