10周目 9月24日(金) 午後8時50分 葛城亜紀
『騒ぎにしたくないだろう?』
私が恥ずかしい思いをする、というくらいの意味で男は言ったんだろうけど、この言葉の効果は絶大だ。
私は大きな声を出すことも周りに気づかれるような行動も出来なくなった。
やっぱり島津君を呼んでおけばよかったかもしれない。一瞬そんなことも頭をよぎるけど、今さらどうしようもない。それに、直接は聞けないけど、美紗は体を汚されている可能性が高い。
(美紗もやっぱり好きな人にそんなこと知られたくないだろうし…)
私が抵抗しないのを感じとったのだろう。男は当然のようにTシャツの胸に手を伸ばす。
(いっ、いやっ)
私の胸は美紗ほど大きくはないけど上にツンと向いていて、彼氏からは美乳だね、と褒められる密かな自慢だ。
だけど、今、その胸を包むスポーツブラの上から顔も知らない男に触られている。
「ぅぅっ」
私が自ら声を抑えるのを良いことに、ブラジャーに包まれた膨らみをじっくりと味わうかのように手のひらが包む。
「やめて…」
周りに気づかれないように小さく言う。
「フフフ」
男はこの私にとって最悪な状況を嘲るように笑った。そして、包むだけだった手は中心を避けて円を描くように優しく撫で回し始める。
「…ふっ、はぁ…はっぁあっ」
私の吐く息に掠れた声が混じった。それは男の指が乳首に触れたからだった。
(くっ)
「敏感なんだね」
耳に息を吹き掛けられて寒気がする。
(くっ、こんなオヤジに良いようにされるなんて…)
彼氏の顔が頭に浮かんで申し訳なくて、男の愛撫に声を出してしまった自分が情けなくて、涙が出そうになった。
「なるほど…バスケ部か。背も高いし、素晴らしいスタイルだね」
男は私の思いなどお構いなしに『クンクン』と今度は耳元で臭いを嗅いでくる。
「ちょっと、そんなっ」
(シャワーも浴びてないから)
臭いを嗅いでいるのは見知らぬ男、それも犯罪者だ。だけど、だからと言って恥ずかしくないはずもない。
「逃がさないよ」
逃げようと体を前にそらすと、今度はTシャツの上から背骨に沿って背中を撫でられた。
「はうっ…」
男は性感帯を巧みに見つけ出して、ソフトタッチで快感を産み出してくる。
(こいつ、慣れてる…)
「ん…」
背中を守るために体を後ろに戻すと、胸や脇腹を弄られる。
(ぁ…)
体を捻るときにブラジャーの中で乳首が擦れた。
意識してはいけない、そう思うと逆にどんどん固くなる。
まるでバスケの試合でインサイドを警戒してディフェンスが収縮したところをアウトサイドから狙われ、逆にスリーポイントに警戒して拡散するのをドライブで狙われるような感じだ。
相手のペースに完全にハマっている。試合でも何か手を打たないと試合を決められてしまうレベルだ。
(このままじゃ、いけない…、こんな時はどうすれば…)
「そろそろ直接触ろうかな」
「えっ?」
『プツ』
考えがまとまる前にブラジャーのホックが外れる感触がした。反射的に胸を押さえようとした私の腕が強い力で離された。
中年の卑劣な男とはいえ、やはり男の力には勝てない。私は手を無理矢理下ろされてしまった。
「動いたら、周りにバラすよ?」
私の力が弱くなったのを見計らって、男の手がお腹にまわされて、Tシャツの裾を持ち上げる。
(冗談?電車の中なのよ?)
そのまま、Tシャツの中に入ってくる妙に柔らかい掌の感触にゾクゾクと体が粟立った。
「部活帰りかな?甘酸っぱい臭いがたまらないなあ」
耳元で囁きながら弛んだブラジャーのカップに指が入ってくる。
(いやあっ)
「おやおやあ?固くなってるね、さてはこんな場所でエッチなことをして興奮しているのかな?」
「ん…そんなこと…」
(興奮なんて…あり得ない)
「フフフ、『そんなこと』ね。本当かな?」
Tシャツに続いてハーフパンツの中に指が捩じ込まれる。
「あっ、やめっ」
スカートの制服に着替えてこなくて正解だったと私は思っていたけど、その考えが甘かったこともすぐに思い知らされてしまった。
先ほどまで胸を撫で回していた手が今度はお尻を包む。
(生ぬるいっ、キモいっ)
ハーフパンツ越しに触れられていたのとは違って男の体温まで感じてしまう。
そして男の指は徐々に下がって、クロッチに触れた。
(ひいっ)
「ん?濡れてるじゃないか」
「そっ、そんなはず…」
(こんな状況で濡れるわけないっ)
私は振り向いて男を睨んだ。
「分からないのか?そら?」
『ニチャ』
男が少し指に力を込めると体の中から粘液の音がした。
(あっ)
顔がカッと熱くなる。
「クリトリスも尖ってるな、ほら」
「はうっ」
(どうしてっ?濡れてる?)
「分かったようだね?」
「ぁっ、んんんっ」
パンティの上から巧みにクリトリスを弄る指に声が出そうになり、慌てて唇を噛む。
「じっくりほぐした分、体はもう充分出来上がっているんだよ」
中年のねちっこい攻めが強くなる。
(あっ、ダメっ)
「周りを意識してみろ。みんながお前を見ているぞ」
そんな馬鹿な、気づいているなら誰かが助けてくるれるはず。そう思いながら顔をあげると、いつの間にか私と男の方を周りの男達が囲んでいた。
「ぇっ、うそっ…」
目の合った小太りのサラリーマンは興奮した目で曇った眼鏡越しに私の胸を凝視していた。
(ひっ、何で?助けてくれないの?)
「皆にイクところを見てもらおうな」
「いやっ、やだっ、やめっ、んんっ」
一人のサラリーマンが私の口に手をあてた。
「はぁっ、はぁっ、んっ、くっ」
(こいつら…みんな…)
残り10分くらい、だけど亜紀にとっては地獄の時間の始まりだった。
◇◇◇
10周目 9月24日(金) 午後9時15分 葛城亜紀
「たっ、助けてっ。この人っ」
少女の声は電車の音にかき消される。
「彼氏にはもう体を許したのかな?葛城亜紀君?」
ビクッと少女の肩が反応した。
「そうか…処女を頂くのもいいものだが、反応が悪いこともあるからね。それに比べて…」
指がパンティの脇から浅く体の中に侵入する。
「んあっ、むぐぐぐっ」
「いい具合にこなれているね。彼氏君も相当楽しんでいるとみえる」
男が指の第一関節を器用に曲げて柔らかい体の中をまさぐる。
「んぐぐっ」
(そこっはぁっ…)
「くくく。ここがお気に召したようだな」
口を前から見知らぬ男に塞がれながら、後ろの男の指の腹がくいくいと擦りつけてくる。
(ヤバいって、これ以上はっ)
亜紀が暴れようとしたとき、左右から腕が掴まれた。
「くくく。私もあまりこういうのは好きではないのだが…」
指が深くまで差し込まれた瞬間、それまでとは異なる快感が亜紀を襲う。
「んんん~」
(だめっ、こいつっ、上手いっ)
圧倒的なテクニックに亜紀の心は今にも折れそうになっていた。
「じゃあ、一回イカせてやろうな」
男の指が二本に増えて、手前と奥が同時に攻められる。
(あっ…ダメっ、イッたら負けなのにっ)
「ほら、指をぎゅうぎゅう締め付けてるぞ。イクのか?さあっ」
(あっ、だめっ、イキそ…)
股間からはジュブジュブと音がして、もう周囲に気づかれるレベルだ。
「ほらっ、我慢するだけ無駄だよ。気持ちよくなってしまうんだっ」
「むぐっ、むっ、んんんんんんっ」
亜紀は目の前が真っ白になって、体は自分のものではないかのように震える。
(イクっ、イクっ、あっ、ああぁぁぁっ)
その瞬間、亜紀の顔が歪んで、同時にハーフパンツの色が変わるほど愛液が溢れ出た。
「ぁ…ぅぅ…」
いつの間にか口を押さえていた男も、両手を掴んでいた男も消えていた。だが、快感に支配された亜紀の中には抵抗する気力も既に消えていた。
「ふふ。潮まで吹いてくれるとはな」
男は抜いた指を亜紀の口に入れる。そして舌を絡めて鼻を鳴らす亜紀に満足げに微笑んだ。
◇◇◇
「んふぅっ、ん…」
乗り換えの駅まで残り五分。亜紀は差し出された肉棒に口で奉仕していた。その目は虚ろで輝きを失っている。
「手がお留守だよ」
亜紀の周りに肉棒が差し出され、左右の手で異なる肉棒を握らされる。
「あと五分で満足させないと終点まで行く事になってしまうよ」
僅かに残った意識が、手を舌を動かす。
「くうっ、やっぱり若いのはエエのおっ…くっ、イッちまうっ」
顔に熱いものがかかる。
「おいおい、じいさん、エラい早いな。ってだめだっ、俺もっ」
逆側から臭い汁が飛ぶ。
「ふふふ、亜紀君、あとは一本だね」
「んん…ん…」
亜紀は口に咥えた肉棒を吸いながら手で擦りあげる。
「おおっ、上手いなっ。それじゃあ頑張りに免じてイッてやろう」
男の手が亜紀の髪を掴むと、前後に振った。
「んんっ、んっ、んんんんんんっ」
口の中で肉棒が張りつめたかと思うといきなり、熱い粘液が口の中に注ぎ込まれた。
(らめ…美…紗…ごめん…)
喉に絡み付くドロドロの粘液を必死で飲み干した亜紀の目から涙が零れる。
『間もなく~、■■駅~。お降りのかたは忘れ物などないよう~…』
周囲の男達は素早く身なりを整え、続けて立ち上がることすら出来ない亜紀の顔をウェットティッシュで拭う。そして男が抱えるようにして立たせた。
『間もなく~、■■駅~、■■駅~』
「乗り換え駅のようだな。では行こうか」
駅に着いた電車の扉が開き、乗り込む客の数人が、少女の肩を抱いた男を胡散臭げに眺め、その後、車内にうっすらと漂う性臭に眉をひそめたが、その違和感も一日働いてきた疲れからすぐに記憶の中から消えた。
◆◆◆
10周目 9月24日(金) 午後11時50分 島津政信
「あんっ、ダメっ、美紗ぁ、見ないでぇ…んああっ、そこはっ、だめぇっ」
「おうおう、友達に見られた途端きゅっきゅっ締めとるでっ」
「そんなっ、ことぉっ、はうううっ」
俺は目の前で起こっていることが理解出来ず、呆然と見ていることしか出来なかった。
クラスメートが、高樹の親友が権田に犯されている。
膝に力が入らない。
気がつけば俺は畳の上に座り込んでいた。
「え……なっ?」
(どういう…ことだ?葛城はパソコンを消しているはずじゃ…)
「なん、で……」
だが、その時俺は権田が葛城を犯していることに気をとられ過ぎて、その部屋にもう一人男がいたことを失念していた。
「待っていたよ」
背後から男の手が両肩に乗せられた。
(ぇ……だっ、誰だ?)
「ふふ。こっちを向いてごらん?」
(この顔…どこかで…)
「…………あっ」
振り向き、間近に顔を見て俺はようやく思い出した。
「電車で…」
手が前に回され、バスタオルの結び目が解かれる。
「ふふふ。思い出してくれて嬉しいよ」
体を隠していたバスタオルがゆっくりと落ち、耳元で男が囁いた。ゾクゾクと体が反応する。
「待って」
「ん?」
俺の二の腕を撫でていた手が止まった。
「駅員に知らせたから?」
俺が言葉を探す間にも男の両腕は俺を抱き締めるように首に回された。
「いいや、あれは私のミスだ。あんなことをする以上、捕まる覚悟はしているさ」
そう言いながら男の手が胸に伸びる。
「んっ…それなら…」
これだけ近いと俺の掠れた呟きも男まで届く。
「どうしても君にもう一度会いたくてね」
まるで愛を囁くような中年の男の告白に何と言って良いか分からない。
黙りこんだままの俺に巻き付いた男の手が胸を弄び始めた。
「…んんっ」
乳首をコリコリと弄られ、こんな状況にも関わらず声が出てしまう。
「この体、顔、そして心を私の色に染めたいんだ」
すっと、指が足の付け根に入ってきて、窪みに沈む。
『チュク』
「もう濡れているね」
(ちがっ、権田に散々されたから…)
「ち…ぁっ、んっ」
言い訳しようにも割れ目を指先が行き来するだけで言葉に詰まってしまう。
「友達も素直になったわけだし、仲良く楽しもうじゃないか。さあっ、部屋に入って、布団は敷いてあるぞ」
そう言いながらクイッと指を差し込んできた。
「いっ、あっ、…んっ、そこはっ、くぅっ」
抵抗しようとすると、男の指が膣の壁を擦られ、結局布団の上に連れてこられた。
『パンっ、パンっ』
「いやあっ、らめっ、あっ、はううっ」
間近に葛城の快楽に歪んだ顔がある。権田にバックから攻められ、背中を仰け反らせている。
(葛城…)
嫌だ、やめて、と言うわりには目元は真っ赤に染まり、半開きの口から絶えず出ている喘ぎ声からは快楽に酔っているのを如実に語っていた。
親友にセックスを見られるというあり得ない状況は葛城の理性を溶かしてしまったのだろうか。
そして、目の前で汗だくの白い体が波打つのを見ている俺もあてられ、理性が狂い始めていた。
(そんなに…いいのか…?)
「あふっ、あっ、みさぁ…あっ、見ないでぇっ」
「さあ、友達だけ恥ずかしい姿を見せるんじゃ不公平とは思わないか?」
男が愛液に濡れた指を舐めて立ち上がると襖を閉めた。
閉まるに従って隣の部屋の蛍光灯の光が遮られていく。
『パタン』
完全に蛍光灯の光が消えた時、それはまるでそれは俺たちの希望がなくなったように感じた。
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