10周目 9月24日(金) 午後11時40分 島津政信
「んふ…んぅ…」
口の中は権田のいきり立ったチンコでぱんぱんになっている。
「ああ、気持ちエエなあ。これなら何発でもいけるで」
(まだ…やるのか?)
俺が驚いて見上げると、権田はニタアと笑った。
(すごい…)
権田にシャワーを浴びながら犯されてから既に一時間は経っただろうか。
アナルに射精したあと、すぐに敏感になった体を洗い場に敷かれたマットの上に寝かされた。で、ローションやらボディソープやらで体をねっとりと洗われ、さらに湯船に浸かるとフェラチオを強要されている。
アナルを犯したことで権田が満足したと思ったのは間違いだった。
権田の性欲は収まるどころか、ますます盛んになっているようにすら見える。
「ふう…そろそろ出よか」
満足げな顔で笑う権田を睨む元気もないけど俺はこれでようやく終わりだという安堵がジワジワと湧いてくるのを感じていた。
「ワシは先に出るで。最初の部屋の隣が寝間やし、先に待っとるからな。ひひひ」
俺から逃げる気力を削いだと思ったのだろうか。権田が不用意に先に風呂場から出ていって、俺はため息をついた。
(…危なかった…)
アナルを犯された後の風呂の中での愛撫によって俺の体はさらに欲情させられている。
何発でも、その権田の言葉を聞いた時、俺の体は正直なところ期待に疼いてしまった。次に犯されたらどうなってしまうか、だが、それ以上に怖いのはその事を期待してオマンコの奥が疼いている自分の体だった。
(…これ以上続けていたら…本当に逃げられなくなるところだった…)
俺は風呂から上がると気持ちを切り替えようと頭を振ってバスタオルで体を拭いた。
俺はこの体を出来るだけ早く、出来るだけ綺麗な状態で高樹に返さなければならない。
それなのにこれまで権田にいいようにされ、それどころか何度もイカされて、今や権田に犯されることを期待までしてしまっている。
高樹に何と言って謝ればいいのか。
(だけど充分以上に時間は稼いだはず。あとは隙を見て逃げればいい…それで終わりだ)
濡れた制服や下着は諦めるしかない。
(葛城が体操服でも持っていたらいいが…無くてもコンビニででも買えばいい)
俺がバスタオルを体に巻いて脱衣所を出ると、遠くから音がしたような気がした。
(…権田か?)
権田は俺が逃げるなどとは頭にないはずだ。その証拠にさっさと一人でどこかに行ってしまった。
このチャンスに逃げてしまえばいい。玄関から出るのはさすがにバレるかもしれないが、あの縁側から逃げればきっと気づくまでに時間がかかるはず。
足音を忍ばせて俺は暗い廊下を歩く。
「……ぁ……ぁ………」
小さな声が聞こえた気がした。
(テレビか?)
そのわりには妙に艶かしい女の声のような気がしてなんとなく嫌な予感がする。
「……ぁっ……はぁぁ…」
『……ギッ…ギッ……ギッ…ギッ…』
さらに廊下を曲がると奇妙な声に加えて床が軋む音が聞こえてきた。
(…テレビじゃない…?だが、一体どこから…?)
「んあはぁぁっ」
縁側のある部屋に戻ると、ふすまで隔たれた隣の部屋から呻き声がはっきりと聞こえた。
(どうする…無視して逃げようか…。罠の可能性もあるし…)
「んぐ…ゆるしてぇ…」
か細い声に俺は、ハッと顔を上げた。
(まさか…まさか…)
足音を忍ばせていたことも忘れて俺は大股でふすまに向かう。そして勢いよく開いた俺の目に信じられない光景が映った。
「むぐぐ…いやっ、いやぁっ、美紗ぁっ、見ないでぇっ」
そこには捲れたTシャツに太股までハーフパンツを脱がされた葛城が四つん這いで前後から二人の男に犯される姿があった。
葛城も俺に気がついてチンコを口から吐き出して悲鳴をあげる。
「ふふふ。高樹美紗さんだね?」
葛城の口にチンコを突っ込んでいた中年の男が俺に気がついて話しかけてきた。
(この顔…どこかで…)
「ふふ…忘れてしまったかな?」
◆◆◆
10周目 9月24日(金) 午後8時45分 葛城亜紀
『…ガタンゴトン…ガタン…』
携帯のGPSソフトを起動すると、画面に現れた地図に点がついている。
(全く…権田のやつ、なんでバスになんか乗るのよ)
金曜日の夜、電車の中は酒臭いスーツ姿のおじさんばかりだった。楽しそうに会話をしていたり、酔いつぶれて半分寝ていたりと様々だけど、乗車率は80パーセントくらいだろうか。すし詰めではないとは言え、身動きはとれない。
私は部活が終わるとTシャツにハーフパンツのまま一旦学園から出て、事前に予定していた通りに美紗の位置をGPSでチェックしていた。
美紗が学園から動き始めたのは想像よりも遅かったけど、すぐに二人の尾行を開始。
ところが、二人がバス停で立ち止まったところでミスに気がついた。二人しかいないバス停。私は同じバスに乗るわけにはいかない。
それで、急いで駅に戻ろうかとも思ったけど、行き先も分からず駅に戻ったところでどうしようもない。
結局二人の乗ったバスが見えなくなるまで待って、バス停で行き先を調べると権田の自宅に向かうことが分かった。
(一応権田の住所を調べておいて良かった…)
家に向かっていることさえ分かれば問題なかった。急いで駅に戻ってもともとの予定通り電車に乗った。
『ご乗車、ありがとうございます。この電車は…』
車掌の声が熱気で溢れた車内に響く。私はおじさん独特の臭いに囲まれてため息をついた。
(はぁ…最悪…)
GPSは二人が権田の家に間違いなく向かっていることを示している。
(私はこの先で乗り換えて…)
権田の家は電車で行くにはかなりの大回りになってしまう。
(間に合えば良いけど)
『ゴトンゴトン…』
私は真っ暗な窓を眺めながら親友について考えていた。
―小学校からの親友はここ数日でかなり変わった。
そもそも、彼女は幼いときからクラスの保護者の間でも有名な容姿の持ち主だった。それこそ彼女の周りまで明るくなるような気がしたものだった。
両親が共に仕事で成功し、なに不自由なく育った彼女をやっかむ者も居たようだけど、それ以上に友達が多かった。
学年が上がるとマセた男の子や女の子は、好きだ、嫌いだ、付き合うなどという話に夢中になるものだけど、彼女は性格までお嬢様だったからそんな話も一切なかったのも敵を作らなかった理由かもしれない。
ところが、彼女の家庭がおかしくなるにつれ、内面が徐々に変わっていった。
見た目に明らかな不良になったわけではないから教師は気づかなかったけど、荒んでいくのが私には分かった。
この学園に来てもそれは変わらず、斜に構えて友達と群れようともしない姿勢は、彼女の容姿がなまじっか整っていることや濃い化粧、付き合う男と長続きしない事と相まって様々な噂を生んだ。
そしてその噂がさらに彼女を孤独にしていった。
私はもうかつての彼女に戻そうとかそんなつもりはない。今の彼女だって良いところはたくさんある。
ところが、この数日、話している時に彼女の雰囲気がどこか柔らかくなったように感じた。
どこが、と聞かれたら難しいけど、壁が薄くなったと言えば分かりやすいかもしれない。話していると時々昔の彼女を思い出すのだ。
(やっぱり島津君の影響なのかなあ?)
今週になって変わったことと言えば親友の美紗が同じクラスの島津君と親しくなったことくらいしか考えられない。
島津君は全国でも知られる柔道部のエースだ。私の主観では『真面目』『堅物』というイメージ。
男友達は多く、女子の間でも憧れている子は私の知る限りでも数人いるから、実際はかなりいるはずだ。
そんな彼らが一緒に登校してきたことで女子の間では小さな波紋が広がっていた。
(島津君かあ…。これで美紗も落ち着いてくれたらいいんだけどな)
そう考えていた時だった、私のお尻に何かが掠めたのは。
(ん?)
振り向こうとすると人にぶつかった。
背広がチラッと見えたので後ろにいるのはサラリーマンだろうか。
これだけ乗客がいれば偶然当たることもあるだろう。私が再び前を向くと、スッとお尻に何かが触れる。
『ガタ…ゴトン』
電車の揺れに合わせてお尻に押し付けられた。
(まさか…こんなタイミングで?)
『痴漢』という単語が頭に浮かんだ。
(…どうする…?)
後ろ手にお尻に触れているものを払った。これで止めないようなら足を踏んで声を出してやる。まあ、足を踏むあたりで大概の男は気の強い女だと判断して止める。
(あれ?)
ところが、払った手は何も触れなかった。
(諦めた?…それとも気のせいだったの…?)
『キィィィ』
電車がカーブにかかって、グッと体が前に引っ張られた。
(あっ)
バランスをとろうと足を踏みしめて、体が前のめりになったとたんにお尻が揉まれる。
(ああっ)
慌てて振り払おうと再び後ろに手を回した時。
『キィィ』
今度は後ろに力がかかって、背中を痴漢に預けることになってしまった。当然痴漢の手は薄手のハーフパンツ越しに撫でまわしてくる。
(何なのよっ)
「お嬢さん、良いのかい?騒ぎを起こしても」
低い声が耳元で囁かれる。
(なっ…?)
そうだ。騒ぎを起こすと駅員や警察に事情を話さなければいけなくなって…美紗が…計画が…。
「賢いお嬢さんだね」
私の手から力が抜けたのを感じ取った痴漢の余裕の言葉が耳に残った。
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