35.理事長と取引① 夏休みが終わって(⑱禁描写無し)
夏休みが明けた最初の月曜日、新学期が始まった。
制服を着るのもかなり久しぶりだ。
鏡を見れば、見慣れた僕の姿。
顔は髪はサラサラで耳が余裕で隠れるくらい。
クラスの女の子にも羨ましがられるパッチリした目…もっとキリッとした目が欲しいけど。
「可愛い」って褒められてもなぁ。
身長もあと10センチで良いから欲しいんだけど…。
台所に降りると、お母さんが朝ごはんを作ってくれる。
「おはよう、遊。早く食べてちょうだい。今日から新学期でしょ。しっかりしてよ、来週の土曜からは私もいないんだからね。」
「あっ、そういえばお父さんのとこに行くって言ってたね。いただきまーす。」
トーストとミルクティの朝食を終え、家を出た。
いろいろあったけど、頑張って女の子になった原因も見つけるぞ。
夏休みの成果としては残念だったけど。
学園の図書館にも街の図書館にも資料はなかったから、次はインターネットかなぁ。
隆の家に迎えに行って一緒に学園に向かう。
満員電車に揺られること30分、学園の最寄り駅から10分ほど歩く。閑静な住宅街の奥に学園はあって、大きな敷地に古くからの校舎と最近建てられた校舎が建っている。
隆は理系クラスだから昇降口で別れて僕は自分の教室に向かった。
「おはよう。」
「おう、久しぶり。夏休みどうだった?」
真っ黒に日焼けした友達、夏休み前と比べて垢抜けた女の子、提出の宿題を慌ててやってる友達もいる。
もちろん僕は宿題を終わらせてあるから友達と夏休みの話で盛り上がった。
あの話はできないけどね。
さて、今日は始業式とホームルームだけ。
講堂に移動して式が始まるのを待つ。
生徒たちが口々にしゃべっていて講堂の中はざわついている。
「えー、静かに。それでは始業式を開始します。」
進行の先生の声で生徒が静まったところで始業式が始まった。
僕は美鈴お姉ちゃんの仮説を思い返していた。
だいたい2~3週間で性転換しちゃう…かぁ。
えっと、前回が5日前だから…
ということは、仮説が正しければ来週末か、再来週には性転換しちゃう…はぁ。
学校で女の子になっちゃったらどうしよう、ブラジャー準備しとかないとっ。
『理事長挨拶』『パチパチパチ』
壇上では理事長なる人が昨今の世界情勢だとかニュースの話をしている……。
うーん、もし来週女の子になったらどうしよう…。
隆にお願いするしかないか…って言ってもなんて頼んだらいいんだろ?「性転換しちゃったから中出ししてっ」なんて言えないし…
…でも隆以外に頼みたくないし…。
『パチパチパチ』
あっ挨拶終わったのかな。僕は壇上を見上げる。
あれ、理事長ってどこかで見たことあるような……入学式とかでも見てるからかなぁ?うーん、でももっと最近のような…?
講堂での始業式が終わって教室に戻る途中、理系のクラスの列に隆を見つけた。
一人頭が出てるからわかりやすい。
小走りで近づくと隆も片手を上げて待ってくれる。
列から少し遅れて隆と歩く。
「ねぇねぇ、隆、折り入ってお願い事があるんだけど…」
「何だ、いきなりどうした?」
「あのー、来週って忙しい?」
「んっ?何かあるのか?来週なあ、…あっ!来週から今月末まで試合に向けて朝練だった!危ねぇ、部員に連絡忘れてたっ、危ねえ。」
えぇ!隆忙しいんだぁ…
「遊、サンキューな!…んで、遊の方はどんな相談なんだ?」
「えっ!ううん、何でもないよ、大丈夫。」
「本当に大丈夫なのか?」
「うんっ!それより剣道頑張ってね!」
「おぅ!」
隆忙しいなら無理だなぁ…まずいなぁ…どうしよう…
悩んでいる間に僕のクラスが近づいてきた。「じゃあね」と隆に言った時
『♪ピーンポーンパーン♪二年D組高梨遊君、高梨、遊君、至急理事長室に来て下さい。』
えっ?
「ねぇ、今、僕呼ばれた?」
「ああ、お前なんかしたのか?」
「ぜんぜん、あっ、うちのお父さん今月から転勤で単身赴任する話かな?」
「そんな事で呼ばれるか?」
「お母さんもちょくちょくお父さんのとこ行くみたいだから、僕一人の日が増えるってお母さんが担任の先生に相談してたから一応とかじゃない?」
「そっか…じゃあな!」
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