38.理事長の呼び出し① 女の子で初めての授業(⑱禁描写無し)
翌朝目を覚まして自分の身体をチェックする。
僕、今日からどうなっちゃうんだろ?
不安を抱えたまま服を着替える。
階段を降りると誰もいない。お母さんはしばらくお父さんの所に行ってしまったので朝食も自分で作る。
さぁ行こう。
隆は朝練だから一人で電車を待つ。
…女の子の身体で学校に行くのは初めて…緊張するなあ。バレなきゃいいけど…。
ええっと、今日の授業は…数学、現代文、英語、体育、古典、世界史かぁ。
あっ、体育があるんだったっ、どうしようっ!
みんなが着替えるのを待ってたら遅れちゃうし、かといっていっしょに着替えてこんな胸を見られるわけにはいかないしっ。
どうしよっ…ああ…
電車の中で考え込んでいると下車駅に着いた。
ああっ、もうっ、来てしまったものはしょうがない。なんとかなるって…多分…
学校に着くと色んな友達から声をかけられる。できるだけ高い声を出さないように…違和感がないように…。
僕の言葉が少ないのを「大丈夫か?」と聞いてくる友達はいたけどなんとか切り抜けた。
朝のホームルームが始まって先生が点呼をとる。僕の番、ちょっと低めの声を出す。大丈夫、誰も気にしてない…はず。
先生が伝達事項を言った後、声をかけてきた。
「そう言えば高梨、」
「ひっひゃいっ」
「どうした?大丈夫か?」
クラスに笑いが起こる。赤くなる。
「今日は体育を休めよ。保護者の方から連絡があったからな。」
周りの生徒が不思議そうな顔をするので先生が続ける。
「…ああ高梨は最近病院の検査で引っかかったそうだ。特に自覚症状のようなものはないみたいだから心配はいらないと思うが、一応はっきりした結果が出るまで体育は休んどけ。体育の先生にも俺から伝えておくからな。」
「えっ…あっ、はい。」
返事はしたものの…あれ?保護者?病院の検査?
なんだかわからないけど体育の問題は回避できた。
…ところで、女の子になったのに全然気づかれない…それはそれでちょっと悲しい。みんな僕のことを普段からどんな目で見てるんだろ?
今日は気を張ってたせいか、あっという間に授業が終わった。
「あー、今週末が学祭なので7時半までは居残りしても良くなるが、あまり張り切りすぎないように。時間内にちゃんと片づけて帰れよ。」
「ねえ、高梨君、今日居残りできる?」
女の子が声をかけてくる。
「うっ、うん、いいよ。どうしたの?」
「高梨君は学祭でうちのクラスの目玉なんだからきっちり採寸しときたいのっ」
まずい。
「えっ…服を脱いで測るの?」
周りで会話を聞いていた友達がげらげら笑う。
「もう、男子笑わないっ、高梨君、脱がなくても大丈夫よ。ふふっ」
…赤くなった僕は女の子に連れられて教室のすみで身長やらウエストやらを測られた。
データを見た女の子たちの集団からは「羨ましい」だの「女の敵」だのぶつぶつ聞こえるけど…はぁ。
採寸を終えて一息ついて、…あっ!そうだっ…理事長室に急がないと…
走って理事長室に向かう。…はぁはぁ…
ノックをすると「開いているよ。」という理事長の声。
「失礼します。」と言って入る。
理事長は仕事中かな?書類が机に積まれている。
「高梨君、いや、ここでは遊君と呼ばせてもらおう。ふむ…なるほど、今日は女の子になっているね。」
あれっ?今日1日誰にも気づかれなかったのに…
「分かるんですかっ?」
「そりゃそうだ。私を誰だと思ってるんだ。」
目を細めて理事長が僕を見る。ねっとりとした…まるで服を透かして裸を見られているような気分になる。
「私がこの作業が終わるまで…そうだな、まずは鍵をかけてブラインドを閉めなさい。」
書類に再び目を通しながら理事長が言う。
「えっ?」
どうして?と思ったけど、こちらを見ない理事長の無言の圧力に、言われた通り職員室側と廊下側の両方のドアに鍵をかけて、ブラインドを閉める。
鍵なんか掛けて何をするのかと身構えたけど、理事長は特に何もせず、書類を読んではそこに何か書き込み、ハンコを押している。
僕は手持無沙汰で理事長を見ていた。時計の「カチッ、カチッ」という秒針の音が静かな部屋の中で響く。
「おっと、そうだ、そこに紙袋があるだろう。その中の服を着なさい。」
「はい。」
理事長が書類をまとめながら言う。
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